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最終更新日:2026/8/5

共有持分とは?不動産を共有名義で相続する5つのリスクと解消法を徹底解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

VSG司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profiletakana/

記事の要約

  • 共有持分の不動産は、売却や大規模リフォームに共有者全員の同意が必要なため、1人でも反対すると身動きが取れなくなる
  • 共有者の相続が繰り返されるたびに持分が細分化され、共有者の数がねずみ算式に増えていくリスクがある
  • 共有状態を解消する方法は複数あり、自分の持分だけであれば他の共有者の同意なく単独で売却することも可能

相続をきっかけに、実家や土地が兄弟姉妹などとの共有名義になっているケースは少なくありません。共有名義の不動産は、単独名義の不動産に比べて自由に扱えない場面が多く、放置すると将来的なトラブルの火種になります。

この記事では、共有持分の基本的な仕組みから、共有名義で不動産を相続することで生じる5つのリスク、実際によくあるトラブル事例、そして共有状態を解消する具体的な方法と税金の注意点までを、相続登記の実務に詳しい司法書士が解説します。

目次

共有持分(共有名義)とは?基礎知識をわかりやすく解説

まずは共有持分がどのような仕組みで発生し、どのように割合が決まるのかという基本を確認しておきましょう。

共有持分の定義と仕組み

共有持分とは、1つの不動産を複数人で所有しているときに、それぞれの所有者が持っている所有権の割合のことです。共有している不動産のことを「共有不動産」、共有している人のことを「共有者」と呼びます。

たとえば、評価額3,000万円の実家を兄と弟の2人で相続し、それぞれの共有持分が2分の1ずつであった場合、兄と弟はこの実家に対してそれぞれ2分の1の所有権を持つことになります。

ここで注意したいのは、共有持分はあくまで権利の割合であり、土地や建物を物理的に分けるものではないという点です。100坪の土地を持分2分の1ずつで共有している場合でも、「北側の50坪は兄のもの、南側の50坪は弟のもの」というように敷地が線引きされているわけではありません。

共有者はそれぞれの持分割合にかかわらず、不動産全体を使用する権利を持っています

法定相続分と共有持分の関係

遺言書がなく、遺産分割協議もまとまらない場合、遺産分割前の不動産は相続開始時から法定相続分に応じた共有状態にあり、その割合で相続登記をすることもできます。

たとえば、被相続人の相続人が配偶者と子ども2人であった場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつです。この割合で相続登記をすると、実家は配偶者2分の1、子どもがそれぞれ4分の1の共有持分を持つ状態になります。

法定相続分での共有は、遺産分割協議がまとまらない場合の「とりあえずの措置」として選ばれることが多い方法ですが、後述するとおり将来的なリスクを抱え込むことになるため、本来はできるだけ避けたい選択肢です。

不動産を「共有持分」で相続する5つのリスク

不動産を共有名義のまま相続すると、単独名義では起こらない特有のリスクが生じます。主なリスクは次の5つです。

リスク 内容
① 処分の制約 売却・大規模リフォームには共有者全員の同意が必要
② 権利関係の複雑化 共有者の相続でさらに共有者が増える
③ 費用負担のトラブル 固定資産税・管理費の立て替えや按分で揉める
④ 第三者の混入 共有者が自分の持分だけを売却できてしまう
⑤ 法律行為の停止 共有者の認知症等で手続きが進まなくなる

それぞれのリスクについて、具体的な内容を順番に見ていきましょう。

① 自由に売却・リフォーム(変更・処分)ができない

共有不動産に対する行為は、内容によって必要な同意の範囲が民法(第249条第252条)で定められています。

行為の種類 具体例 必要な同意
使用 共有住宅への居住 持分に応じて使用可能
保存行為 雨漏りなどの修繕 各共有者が単独で可能
管理行為 短期の賃貸借、著しい変更を伴わない改良 持分価格の過半数
変更・処分 不動産全体の売却・建替え・抵当権設定 原則として全員

不動産全体の売却や抵当権の設定といった処分行為には、共有者全員の同意が必要です。共有者のうち1人でも反対すれば、たとえほかの全員が賛成していても売却は実現しません。

「実家を売って現金化したい」と考えても、遠方に住む共有者や疎遠になった共有者が同意しないだけで、手続きが止まってしまいます。

なお、各共有者は持分に応じて不動産全体を使用する権利がありますが、自分の持分を超えて使用する場合は、別段の合意がない限り、他の共有者に使用の対価を支払う義務がある点にも注意が必要です。

② 共有者の相続が発生すると権利関係が複雑になる

共有者の1人が亡くなると、その人が持っていた共有持分はさらにその人の相続人へと引き継がれます。

たとえば、兄弟3人(それぞれ持分3分の1)で実家を共有していたとします。この状態で兄が亡くなり、兄に配偶者と子ども2人がいた場合、兄の持分3分の1は配偶者6分の1、子どもがそれぞれ12分の1ずつというように、さらに細分化されて相続されます。結果として、共有者はもともとの3人から5人に増えることになります。

このように相続のたびに共有者が枝分かれのように増えていく状態は「メガ共有」とも呼ばれ、共有者全員を把握することさえ難しくなるケースもあります。共有者が増えるほど、売却や活用に必要な同意を集めるハードルは高くなっていきます。

なお、2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと過料の対象になる可能性があります。共有名義のまま相続登記を放置すると、この点でも注意が必要です。

③ 管理費や固定資産税の負担で揉める

共有不動産の固定資産税については、地方税法上、共有者全員が固定資産税の全額について連帯して納付する義務を負います。持分ごとに分けて課税されるわけではなく、納税通知書は通常代表者1人にまとめて送付されるため、実務上は代表者がいったん全額を立て替え、後から他の共有者に持分割合などに応じて請求する形になることが多くあります。

この立て替えと精算のプロセスで、支払いが遅れる共有者がいたり、修繕費用の負担割合について意見が食い違ったりすることで、共有者間の関係が悪化するケースは少なくありません。不動産を活用できていない状態でも税金や管理費だけは発生し続けるため、負担感だけが積み重なっていくこともリスクの一つです。

④ 共有者が自身の持分を処分(売却)して第三者が共有者になる

共有不動産全体を売却するには全員の同意が必要ですが、自分自身の共有持分だけであれば、他の共有者の同意を得ることなく単独で売却できます。これは民法上認められた権利です。

つまり、ある共有者が「他の共有者に相談せず、自分の持分だけを共有持分専門の買取業者などに売却する」ということが可能であり、実際に起こり得ます。この場合、面識のない第三者が新たな共有者として権利関係に加わることになり、残された共有者にとっては予期しない相手との交渉を迫られる事態になりかねません。

⑤ 認知症などにより共有者が法律行為ができなくなる

共有者の誰か1人でも認知症などにより判断能力が低下すると、その人は売却や賃貸契約といった法律行為に有効な同意を与えることができなくなります。不動産全体の売却など全員の同意が必要な手続きは、この時点で進められなくなる可能性が高くなります。

一方、管理行為については、認知症の共有者を除いた他の共有者の持分だけで過半数に達していれば、決定できる場合もあります。このような場合、家庭裁判所で成年後見人の選任を受け、後見人が本人に代わって同意する手続きを取る必要があります。

後見人選任には数か月単位の時間がかかるうえ、対象の不動産が本人の居住用不動産にあたる場合は、後見人が売却するにも別途家庭裁判所の許可が必要になります。後見人はあくまで本人の利益を最優先に判断するため、必ずしも他の共有者の希望どおりに手続きが進むとは限りません。

不動産の共有持分をめぐるよくあるトラブル事例

前章で挙げたリスクは、実際の相談の現場では次のような具体的なトラブルとして表面化することがよくあります。

不動産を共有名義にした親族と意見の調整ができない

遺産分割協議で「とりあえず均等に共有にしておこう」と決めたものの、いざ活用や売却の話になると、持ち続けたい人と現金化したい人とで意見が割れるケースです。感情的な理由(思い出のある実家を手放したくない)が絡むと、話し合いが平行線のまま長期化しやすくなります。

親から共有持分を相続したが他の共有者と連絡が取れない

親の代から共有状態が続いている不動産で、共有者の1人が転居先不明になっていたり、疎遠になっていたりするケースです。全員の同意が必要な処分行為はもちろん、過半数の同意で足りる管理行為についても、連絡が取れない共有者がいると意思確認自体ができず、手続きが滞ってしまいます。

なお、令和3年の民法改正により、他の共有者の所在が不明な場合には裁判所の関与のもとで手続きを進められる制度も整備されていますが、いずれにしても通常より時間と手間がかかります。

一部の共有者が不動産を独占的に使用している

共有者の1人が実家に住み続けている一方、他の共有者はその不動産から何の利益も得ていない、というケースもよく見られます。共有者は持分に応じて不動産全体を使用する権利があるため、居住している共有者を一方的に追い出すことはできません。

ただし、居住していない共有者は、自分の持分割合に応じた使用の対価(賃料相当額)を請求できる場合があります。この点を知らずに長年権利を行使していない相談者も少なくありません。

共有名義の不動産を売却(解消)する方法

共有状態を解消したい場合、主に次の5つの方法があります。

方法 同意の要否 特徴
全員で売却 全員の同意が必要 売却価格が最も高くなりやすい
自分の持分のみ第三者へ売却 単独で可能 買い手が限られ価格は低くなりやすい
他の共有者への売却・贈与 単独で可能 交渉相手が身内のため心理的抵抗は少ない
土地の分筆 原則全員の合意が望ましい 土地に限られ、測量・登記の手間がかかる
共有物分割請求訴訟 協議不成立の場合に裁判所へ請求可能 時間と費用がかかる最終手段

それぞれの方法について、メリットと注意点を確認していきましょう。

共有者全員で協力して不動産全体を売却する

最も高い価格での売却が期待できるのが、共有者全員の合意による不動産全体の売却です。買主にとっては権利関係がすっきりした状態で不動産を取得できるため、相場どおりの価格がつきやすくなります。

ただし、共有者が1人でも反対すればこの方法は選べません。

自分の持分だけを「第三者(専門業者など)」に売却する

他の共有者の同意が得られない場合でも、自分自身の共有持分だけであれば単独の判断で売却できます

共有持分専門の買取業者に売却する方法が一般的ですが、買主にとっては権利関係が複雑な持分のみの取得になるため、不動産全体を売却する場合に比べて価格はかなり低くなる傾向があります

他の共有者に自分の持分を「買い取ってもらう(または贈与する)」

他の共有者が持分を増やしたいと考えている場合は、その共有者に自分の持分を買い取ってもらう、あるいは贈与する方法もあります。

第三者が新たに共有関係に加わらないため、他の共有者の心理的な抵抗は少なくなります。ただし親族間の交渉であることが、かえって話をまとめにくくする場合もあります。

土地を分筆して単独名義にする

土地であれば、1つの土地を複数の区画に分割し、それぞれの区画を従前の共有者が単独で所有する「分筆」という方法もあります。ただし、分筆登記はあくまで土地を登記上複数の区画に分ける手続きにすぎず、それだけでは共有状態は解消されません。

分筆後の各区画は、原則として従前の持分割合のまま共有された状態が続きます。単独名義にするには、分筆に加えて、共有者間の合意(共有物分割)に基づく持分移転登記を別途行う必要があります。分筆や持分移転登記には、土地の測量や境界の確定、法務局への登記申請といった手続きが必要で、費用や時間がかかります。

また、建物が敷地全体にまたがって建っている場合や、区画によって道路への接し方(接道状況)に差が出てしまう場合など、そもそも分筆が難しい、あるいは分筆後の資産価値に差が生じてしまうケースもあるため、事前に土地家屋調査士や司法書士へ相談しておくと安心です。

共有物分割請求訴訟を起こす

共有者間の協議がまとまらない場合、または協議自体を行うことができない場合の最終手段として、裁判所に共有物分割請求訴訟を起こす方法があります。

裁判所は事案に応じて、不動産を物理的に分割する現物分割、共有者の1人が他の共有者に金銭を支払って単独所有とする賠償分割(価格賠償)を検討し、これらの方法が難しい場合には競売にかけて代金を分配する競売分割を命じます。ただし解決までには相応の時間と費用がかかるため、あくまで最終的な手段と考えておく必要があります。

共有持分の解消・売却にかかる税金の注意点

共有持分を売却したり、親族間でやり取りしたりする際には、次の3つの税金に注意が必要です。

持分を売却したときにかかる「譲渡所得税」

共有持分を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算しますが、共有持分を相続で取得している場合、取得費の按分や取得時期の引き継ぎなど計算が複雑になりやすい点に注意が必要です。

なお、マイホームを売却した場合に使える3,000万円特別控除は、要件を満たせば共有者1人につき最高3,000万円まで、それぞれ個別に適用を受けられます。たとえば夫婦2人の共有名義であれば、最大で合計6,000万円まで控除の対象になり得ます。

共有物分割をしたときにかかる税金

共有物分割請求訴訟や合意による共有物分割で、土地を持分の価額に応じて現物分割した場合は、原則として所得税上の譲渡はなかったものとして扱われ、譲渡所得税は課税されません。

ただし、取得する土地の価額が従前の持分割合と大きく異なる場合や、分割にあたって共有者間で清算金(代償金)のやり取りが生じる場合は、その差額部分について譲渡所得税や贈与税の課税対象となる可能性があるため注意が必要です。

低額譲渡によって発生する贈与税(みなし贈与)

共有持分を親族間で売買する際、時価より著しく低い金額で取引すると、その差額分について贈与を受けたものとみなされ、贈与税が課税される可能性があります(みなし贈与)。

「身内だから安く譲ってもらった」というつもりでも、税務署から見ると実質的な贈与と判断されるケースがあるため、親族間で持分を売買・譲渡する際は、事前に適正な時価を確認しておくことが欠かせません。

まとめ|共有持分のトラブルや解消は専門家への相談しよう

共有持分は、相続をきっかけに意図せず発生することが多く、放置すると共有者がどんどん増え、権利関係が複雑になっていくという特有のリスクを抱えています。売却や活用を検討する際は、まず自分たちの共有持分がどのような経緯で発生したのか、共有者は誰と誰なのかを正確に把握することが第一歩です。

なお、次の相続で同じように共有名義になることを避けたい場合は、遺産分割の段階で分割方法を工夫する方法もあります。詳しくは「共有分割とは」の記事もあわせてご覧ください。

共有持分をめぐるトラブルの解消方法や、共有名義の不動産の相続手続きは、権利関係の調整から登記実務まで専門的な判断が必要になる場面が多くあります。お困りの際は、早めに司法書士や弁護士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

ベンチャーサポートグループでは、税理士・司法書士・行政書士・弁護士が連携し、共有名義の不動産に関するお悩みを相続税申告から登記手続きまでワンストップでサポートしています。共有持分のことでお困りの方は、お気軽に無料相談をご利用ください。

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