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最終更新日:2026/4/22

不動産等の売却益にかかる譲渡所得税の計算方法をわかりやすく解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

VSG相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、立川、千葉、埼玉、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡などの全国の主要都市14拠点にオフィス展開し、年間3,500件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
YouTube:相続専門税理士チャンネル【VSG相続税理士法人】

記事の要約

  • 譲渡所得税は「譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額」で求めた譲渡所得に税率を掛けて計算し、所有期間が5年超かどうかで税率が長期20.315%・短期39.63%と大きく異なる
  • マイホーム特例(3,000万円控除)や空き家特例、取得費加算の特例など、要件を満たせば税負担を大幅に軽減できる特例が複数ある
  • 相続した不動産の所有期間は被相続人の取得日から引き継ぐため、相続直後の売却でも長期譲渡所得になるケースが多い

不動産や株式を売って利益が出た場合、「譲渡所得税」と呼ばれる税金がかかります。しかし「どうやって計算するのか」「自分はいくら払うのか」がわからず、売却を前にして不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、譲渡所得税の計算を3つのステップに分けてわかりやすく解説します。特別控除の種類や税率の違いも含めて、具体的なシミュレーションとともに確認していきましょう。

譲渡所得税は資産(不動産や株式など)の売却益に課される税金

譲渡所得税とは、土地・建物・株式などの資産を売却して得た利益(=譲渡所得)に対してかかる税金の総称です。正確には所得税・住民税・復興特別所得税の3つを合わせたものを指しますが、一般的に「譲渡所得税」とまとめて呼ばれます。

譲渡所得税は「分離課税」といって、給与所得や事業所得とは切り離して別途計算・申告する仕組みになっています。そのため、会社員の方であっても不動産を売却して利益が出た場合は、翌年に自分で確定申告をする必要があります。

なお、売却して損失が出た場合(譲渡損失)は原則として税金がかかりません。税金が発生するのは、売却益がプラスになったときのみです。

譲渡所得税の計算手順(3つのステップ)

譲渡所得税の計算は、大きく3つのステップで進みます。

STEP1:課税譲渡所得を計算する

売却代金から取得費・譲渡費用・特別控除額を差し引いて、税率をかける前の課税譲渡所得を求めます。

STEP2:特別控除の適用可否を確認する

マイホームの売却や相続不動産の売却など、一定の要件を満たす場合は特別控除が使えます。STEP1の計算で控除できる特例に該当するか確認しましょう。

STEP3:税率を掛けて税額を確定する

課税譲渡所得に、不動産の所有期間に応じた税率を掛けて最終的な税額を算出します。

それぞれのステップについて、以下で詳しく解説します。

STEP1:課税譲渡所得の計算方法

国税庁の定義に基づき、課税譲渡所得は以下の計算式で求めます。

課税譲渡所得

譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額

特別控除は一定の要件を満たす場合に適用されるもので、要件に該当しない場合はゼロとして計算します。取得費・譲渡費用・特別控除のそれぞれについて以下で解説します。

譲渡価額とは(売却代金)

譲渡価額とは、不動産を売却したときに受け取った代金のことです。売買契約書に記載された売却価格が基本になります。また、固定資産税の精算金を受け取った場合はその金額も加算します。

取得費とは(購入代金から手数料などを足した価格)

取得費とは、売却した不動産をもともと購入したときにかかった費用の合計です。具体的には以下が含まれます。

  • 不動産の購入代金(土地・建物)
  • 購入時の仲介手数料
  • 登録免許税・不動産取得税
  • 購入後の増改築費用・設備費用 など
土地や建物を購入(贈与、相続または遺贈による取得も含む)したときに納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税など、事業所得の必要経費に含めたものは取得費になりません。

取得費がわからない場合は概算取得費(売却代金の5%)を適用

相続した不動産や、昔に購入した不動産の場合、購入時の契約書が見つからず取得費が不明なケースがあります。この場合、「概算取得費」として売却代金の5%を取得費として計算することが認められています。

ただし、概算取得費(5%)はあくまで実際の取得費が証明できない場合の最低保証です。実際の取得費の方が高い場合は、実費を使った方が譲渡所得を抑えられるため、可能な限り購入時の書類を探しましょう。

建物の取得費は「減価償却」の計算が必要

建物は年数が経つにつれて価値が下がるという考え方から、取得費から「減価償却費相当額」を差し引く必要があります。土地は劣化しないため減価償却の対象外です。

減価償却費相当額の計算式は以下のとおりです。

減価償却費相当額

建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率は建物の構造によって異なり、木造は0.031、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)・鉄筋コンクリート造(RC造)は0.015などが定められています

取得費

取得費 ─ 減価償却費相当額

となるため、建物の価値が低く計算されるほど譲渡所得が増え、税負担が重くなる点に注意が必要です。

事業に使用していた建物の場合計算方法が異なります。

譲渡費用とは(売却時の仲介手数料や印紙代など)

譲渡費用とは、不動産を売却するためにかかった費用で、以下のようなものが該当します。

  • 不動産会社への仲介手数料
  • 売買契約書の印紙税
  • 土地の測量費・境界確定費用
  • 建物の取り壊し費用(売却のために取り壊した場合)

一方、引越し費用や修繕費など「売却のために直接必要でない費用」は譲渡費用に含めることができません。

特別控除とは

STEP1の計算式にある特別控除は、一定の要件を満たす場合に課税譲渡所得から差し引くことができる控除です。要件に該当しない場合はゼロとして計算します。主な特別控除については次のSTEP2で解説します。

STEP2:特別控除の適用可否を確認

特別控除はいくつかの種類があります。自分の売却状況に当てはまる特例がないか確認しましょう。該当する特例がない場合、STEP1の計算式の特別控除額はゼロになります。

マイホーム特例(3,000万円特別控除)

自分が住んでいるマイホームを売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です(租税特別措置法第35条)。所有期間の長短に関係なく適用できるため、多くの人が利用できる非常に使いやすい特例です。

主な適用要件

  • 現在居住している家屋を売却すること(居住しなくなった場合は、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること)
  • 売却した年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと
  • 売却相手が配偶者や親子など特別な関係者でないこと
  • 売却した年・前年・前々年にマイホームの買い換えや交換の特例を受けていないこと

空き家特例(3,000万円特別控除)

相続によって取得した、被相続人(亡くなった方)が一人で住んでいた空き家とその敷地を売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です(租税特別措置法第35条3項)。正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。

主な適用要件

  • 相続または遺贈によって取得した家屋・敷地であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準の建物)であること
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続開始から売却まで、貸付や居住の用に供していないこと(ずっと空き家であること)

取得費加算の特例(相続税額を取得費に加算)

相続で取得した不動産や株式などを売却したとき、支払った相続税の一部を取得費に加算することで課税譲渡所得を圧縮し、税負担を軽減できる特例です(租税特別措置法第39条)。相続税の納税資金を確保するために売却するケースも多く、短期間に多額の税を負担することになる相続人の負担を和らげる目的で設けられています。

厳密には特別控除ではなく取得費を増やす仕組みのため、計算式上は「取得費」の金額が大きくなる形で機能します。相続不動産の売却を検討している方は、併用できる特例・できない特例がありますので、マイホーム特例や空き家特例とあわせて適用可否を確認しましょう。

適用要件(3つすべてを満たす必要があります)

  • 相続または遺贈によって財産を取得した個人であること
  • その財産の取得者に相続税が課税されていること(相続税額がゼロの人は対象外)
  • 相続開始から3年10カ月以内に売却していること

買い替え特例(特定居住用財産の買換えの特例)

マイホームを売却して別のマイホームに買い換える場合に、売却益への課税を将来に繰り延べられる特例です(租税特別措置法第36条の2)。税額が減るわけではなく、買い換えた物件を将来売却するときに今回分の譲渡益もあわせて課税される仕組みです。現時点で納税資金が不足しているケースや、売却益が大きく今すぐの税負担を避けたいケースで選択肢になります。

主な適用要件

  • 売却した年の1月1日時点で、家屋・敷地ともに所有期間が10年を超えていること
  • 自身の居住期間が10年以上であること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 売却の前年から翌年までの3年間に買い換えること
  • 買い換える建物の床面積が50㎡以上、土地面積が500㎡以下であること
  • 特別な関係者(配偶者・親子など)への売却でないこと

収用交換等の特例(5,000万円特別控除)

道路整備・公共施設建設など公共事業のために土地や建物が買い上げられた(収用された)場合、譲渡所得から最高5,000万円を控除できる特例です。公共事業の施行者から最初の買取申し出を受けた日から6カ月以内に売却することが主な要件の一つです。

STEP3:譲渡所得税の税率(短期譲渡と長期譲渡)

課税譲渡所得が算出できたら、税率を掛けて税額を計算します。税率は不動産の「所有期間」によって大きく異なり、判定は売却した年の1月1日時点での所有期間で行います。実際の所有期間とは異なるため注意が必要です。

例えば2020年8月1日に取得した不動産を2025年9月30日に売却した場合、2025年1月1日時点では4年しか経過していないため短期譲渡所得となり、長期譲渡所得にするには2026年1月1日以降の売却が必要です。

短期譲渡所得(所有期間5年以下)の税率

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合、「短期譲渡所得」として扱われ、税率は合計39.63%になります。

税目 税率
所得税 30%
復興特別所得税 0.63%(所得税の2.1%)
住民税 9%
合計 39.63%

短期譲渡所得は税率が非常に高いため、所有期間が短い不動産を売却する際には注意が必要です。

長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率

売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている場合、「長期譲渡所得」として扱われ、税率は合計20.315%になります。短期の約半分の税率です。

税目 税率
所得税 15%
復興特別所得税 0.315%(所得税の2.1%)
住民税 5%
合計 20.315%

復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源として平成25年(2013年)から令和19年(2037年)まで上乗せされる税金です。

長期譲渡所得の課税の特例(マイホームの軽減税率)

マイホームを売却した場合で、売却した年の1月1日時点での所有期間が10年を超えているときは、さらに税率が軽減される特例があります。

課税譲渡所得の金額 税率(合計)
6,000万円以下の部分 14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%)
6,000万円超の部分 20.315%(通常の長期税率と同じ)

この軽減税率の特例は、3,000万円特別控除と併用することができます。特別控除を引いてもなお譲渡所得がプラスの場合に特に効果的です。

主な適用要件は以下のとおりです。

  • 売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
  • 現在居住している家屋の売却であること(居住しなくなった場合は3年以内)
  • 売却の前年・前々年にこの特例を受けていないこと
  • 親子・配偶者など特別な関係者への売却でないこと

相続した不動産の所有期間の数え方

相続によって取得した不動産の所有期間は、被相続人(亡くなった方)が取得した日から引き継ぐのが原則です。つまり、相続した日ではなく、被相続人が最初にその不動産を取得した日を起算点として所有期間を数えます。

そのため、相続した実家や土地は、被相続人が長年所有していたケースが多く、相続直後に売却しても長期譲渡所得(税率20.315%)となることがほとんどです。

譲渡所得税の計算シミュレーション

具体的な数字を使って、実際の計算を確認してみましょう。

マイホームを売却して利益が出た場合

事例

  • 売却価格:4,000万円
  • 取得費(購入代金+手数料):2,500万円(建物の減価償却費控除後)
  • 譲渡費用(仲介手数料など):130万円
  • 所有期間:売却年の1月1日時点で8年(長期譲渡所得)
  • マイホーム特例(3,000万円控除)を適用

譲渡所得税の計算

課税譲渡所得
4,000万円(譲渡価額) - (2,500万円(取得費) + 130万円(譲渡費用) ) - 3,000万円(特別控除)= -1,630万円

譲渡所得税
特別控除の適用により課税譲渡所得がマイナスのため譲渡所得税は0円

この例では、マイホーム特例の適用により税額がゼロになります。なお、税額がゼロになる場合でも確定申告は必要です。

相続した実家を売却した場合(取得費不明)

事例

  • 売却価格:3,500万円
  • 取得費:不明のため概算取得費(売却価格の5%)を使用 → 175万円
  • 譲渡費用:120万円
  • 被相続人の所有期間:30年超(長期譲渡所得、税率20.315%)
  • 相続税:800万円納付、そのうち本物件に対応する部分:200万円
  • 取得費加算の特例を適用(相続開始から3年10カ月以内の売却)

譲渡所得税の計算

課税譲渡所得
3,500万円(譲渡価額) - (175万円(概算取得費) + 200万円(取得費加算額) + 120万円(譲渡費用) ) = 3,005万円

譲渡所得税
3,005万円 × 20.315%(長期譲渡所得) = 約610万円

取得費加算の特例を使わなかった場合の課税譲渡所得は3,205万円となり、税額は約651万円です。特例を活用することで約41万円の節税になります。

まとめ

譲渡所得税の計算は、以下の3ステップで進めます。

  • STEP1:課税譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
  • STEP2:特別控除の適用可否を確認(マイホーム特例・空き家特例・取得費加算の特例 など)
  • STEP3:税額 = 課税譲渡所得 × 税率(長期20.315%、短期39.63%)

適用できる特例があれば、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。特にマイホーム特例(3,000万円控除)や取得費加算の特例は活用できるケースが多い特例です。

ただし、各特例には細かい要件があり、要件を満たさない場合は適用できません。売却を検討する際は、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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