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最終更新日:2026/5/15

未成年後見人とは?選任方法や役割、申立て手続きの流れをわかりやすく解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

VSG司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/profiletakana/

記事の要約

  • 未成年後見人とは、親権者がいない子どもの「財産管理」や「生活のサポート」を担う法的な代理人のこと
  • 選任には、親権者が遺言で指定する方法と、家庭裁判所へ申し立てる方法の2種類がある
  • 選任後は家庭裁判所の監督を受け、定期的な収支報告などの義務が生じる

親権者が不慮の事態に直面し、親権を行使できなくなった場合、未成年の子どもの財産や生活を守るための法的な代理人として「未成年後見人」の選任が必要となります。

金融機関での口座手続きや、相続発生時の遺産分割協議において、突如として未成年後見人の選任を求められ、制度の仕組みや手続きの方法についてお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、未成年後見制度の概要や親権者との権限の違いをはじめ、家庭裁判所での申立て手続きの流れ、必要書類、費用について解説します。未成年後見人が担う役割と生じる義務を正しく把握し、不備なく速やかに申立て手続きを進めるための参考としてご活用ください。

未成年後見人とは?

未成年後見人とは、未成年者に対して親権を行う者がいないとき、または親権者が管理権(財産を管理する権利)を有しないときに、その未成年者の法的な代理人として選任される人を指します。

通常、子どもが成人(18歳)に達するまでは親権者がその監護や財産管理を行いますが、親権者が死亡したり、親権を喪失したりした場合には、子どもの利益を損なわないようこの制度が運用されます。

未成年後見制度の概要

未成年後見制度は、未成年者の福祉を守るための「保護制度」です。未成年後見人は、親権者とほぼ同等の権限を持ち、子どもの生活全般を支える「身上監護」と、預貯金や不動産などの「財産管理」の二つの大きな職務を担います。

この制度には、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 遺言による指定:最後に親権を行う者が遺言で指定する方法
  • 家庭裁判所による選任:遺言による指定がない場合に、家庭裁判所が選任する方法

親権者との違い

未成年後見人は、子どもの生活を支え、法的な手続きを代理するという点では親権者と共通していますが、選任の経緯や家庭裁判所による監督の有無に明確な違いがあります。

親権者 未成年後見人
選任の根拠 実親(または養親)として当然に有する 遺言による指定、または家庭裁判所の選任
主な役割 監護教育、財産管理 監護教育、財産管理
裁判所への報告 原則として不要 定期的な報告義務(財産目録等)がある
監督体制 特になし 家庭裁判所(または後見監督人)が常に監督

親権者と異なり、未成年後見人は家庭裁判所の監督下に置かれます。そのため、財産の状況を定期的に報告する必要があり、子どもの財産を自由に処分することは厳格に制限されます。

特別代理人との違い

未成年後見人と混同されやすい制度に「特別代理人」があります。これらは「誰の代わりに」「いつ」選任されるかという点で異なります。

未成年後見人 特別代理人
選任が必要な主な理由 親権者がいない、または親権者が管理権を持たないとき 親権者と子どもの利益が衝突(利益相反)するとき
職務の範囲 未成年者の生活全般および財産管理(広範かつ継続的) 特定の行為(遺産分割協議など)に限る(一時的)
終了のタイミング 未成年者が成人したとき 特定の行為(手続き)が完了したとき等

たとえば、父親が亡くなり、母親と未成年の子どもが相続人となる場合、母親と子どもは遺産を分け合う関係(利益相反)になります。このとき、母親が親権者として健在であれば、その「遺産分割協議」のためだけに特別代理人を選任します。

一方で、両親がともにいない場合には、日常生活すべての代理人として未成年後見人が必要となります。

未成年後見人の選任方法

未成年後見人が就任するルートは、大きく分けて「遺言書による指定」と「家庭裁判所への選任申立て」の2種類が存在します。

親権者が生前に対策(遺言書の作成)をしていたかどうかで、残された親族がとるべき手続きや、就任までのスピードが大きく異なります。現在の状況がどちらに該当するかをご確認ください。

遺言書による指定

未成年者に対して最後に親権を行う者(実親など)は、自身の生前に作成した遺言によって、未成年後見人を指定することができます(民法第839条)。

この方法の最大の利点は、親権者自身が「最も子どもを任せるのに適している」と考える人物(祖父母や信頼できる親族など)を指定できる点にあります。

指定された人物が未成年後見人になるための主な手続きとルールは以下の通りです。

  • 就職の承諾:遺言は親権者の死亡と同時に効力を生じますが、指定された本人が強制的に後見人にされるわけではありません。本人が就職を「承諾」することで初めて後見人となります(辞退することも可能です)。
  • 役場への届出:就職を承諾した場合、その日から10日以内に、未成年者の本籍地または届出人の所在地の市区町村役場へ未成年後見人就職の届出を行う義務があります。
  • 裁判所の審判は不要:家庭裁判所による選任手続きを経ることなく、速やかに未成年後見人としての業務を開始できます。

家庭裁判所への選任申立て

遺言による未成年後見人の指定がない場合、あるいは指定された人物がすでに死亡している、または就職を辞退した場合には、家庭裁判所に選任の申立てを行う必要があります(民法第840条)。

突然の事故などで親権者が亡くなったケースや、親権喪失の宣告を受けたケースでは、原則としてこちらの方法で手続きを進めることになります。

両者の違いを明確にするため、手続きの特性を表にまとめました。

遺言書による指定 家庭裁判所への選任申立て
後見人を決定する者 最後の親権者(遺言作成者) 家庭裁判所
手続きを行う人 指定された本人が就職を承諾し、役場へ届出 未成年者本人、親族、その他の利害関係者
後見開始までの期間 比較的速やか(承諾と役場への届出のみ) 約1〜2カ月程度(裁判所の審判を待つため)
候補者の確実性 指定された者が承諾すれば確定する 申立時に候補者を立てられるが、最終決定は裁判所

家庭裁判所での選任申立てにおいては、申立書に「後見人候補者(例:同居して子どもの面倒を見る祖母など)」を記載して提出するのが一般的です。

ただし、家庭裁判所は未成年者の年齢や生活状況、そして「管理すべき財産の規模」などを総合的に考慮して判断します。そのため、未成年者が多額の生命保険金や不動産を相続している場合など、財産管理が複雑になると予想されるケースでは、親族ではなく、弁護士や司法書士などの第三者(専門家)が選任されることもあります。

未成年後見人の主な役割・権限

未成年後見人は、未成年者の福祉を目的として、親権者とほぼ同等の広範な権利と義務を有します。その職務は大きく分けて「財産管理」と「身上監護」の二つに分類されます。

未成年後見人が行使できる主な権限と、課せられる義務の詳細は以下の通りです。

権限・義務の名称 内容の詳細
財産管理権 預貯金の管理、不動産の保存、相続手続きの代理、契約の締結・取消し など
居所指定権(身上監護) 未成年者が居住する場所を決定し、指定する権利
監護教育権(身上監護) 日常の生活指導、教育方針の決定、進学や医療行為への同意 など
職業許可権(身上監護) 未成年者が職業を営むことに対する許可、およびその許可の取消し・制限
定期報告義務 家庭裁判所に対し、財産目録や収支状況を定期的に報告する義務

財産管理権

未成年後見人は、未成年者の財産を包括的に管理し、その財産に関する法律行為を代理する権限を持ちます(民法第859条)。

具体的には、未成年者名義の銀行口座の管理、税金の支払い、家賃の収受、さらには相続が発生した際の遺産分割協議への参加などが含まれます。未成年後見人は「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」を負っており、自分の財産に対するのと同等以上の注意を払って、未成年者の利益のために財産を保護しなければなりません。

なお、未成年後見人が遺産分割協議に参加する場合、未成年者の利益を保護する観点から法定相続分での分割を主張することが一般的です。そのため、特別な事情がない限り、未成年者は法定相続分どおりの遺産を取得するケースが多くなります。

居所指定権

未成年者がどこに住むかを決定する権利です(民法第822条)。未成年後見人は、子どもの養育環境を考慮し、最適な居住地を指定します。

監護教育権

未成年者の心身の健全な成長を期して、日常生活の世話(養育)や教育を行う権利と義務です(民法第820条)。

学校への入学・転校の手続きや、進路の決定、病気や怪我の際の医療契約の締結などがこれに該当します。単に食事や住居を提供するだけでなく、未成年者の人格形成に深く関わる重要な職務です。

職業許可権

未成年者がアルバイトなどの職業を営む場合に、その許可を与える権限です(民法第823条)。

また、許可した職業であっても、学業に支障がある場合や、健康を害する恐れがある場合には、その許可を取り消したり、制限したりすることも可能です。

家庭裁判所への定期報告義務

親権者と決定的に異なるのが、家庭裁判所による厳格な監督を受ける点です。

未成年後見人は、就職後速やかに「財産目録」を作成しなければなりません。その後も、通常は1年に1回程度の頻度で、家庭裁判所に対して「後見事務報告書」や「財産目録」を提出し、収支の状況や未成年者の生活状況を報告する義務があります。

これは、未成年者の財産が不適切に消費されることを防ぎ、後見事務が適切に遂行されているかを公的に担保するための重要な仕組みです。

未成年後見人を選任するための申立て手続きの流れ

遺言による指定がない場合、家庭裁判所へ申立てを行い、審判(裁判所の判断)を経て未成年後見人が選任されます。申立てから選任までの具体的な進め方を解説します。

申立てができる人(申立権者)と管轄の裁判所

申立ては誰でもできるわけではなく、法律で定められた「申立権者」が行う必要があります。

  • 申立権者:未成年被後見人(子ども本人)、その親族、その他の利害関係人
  • 管轄裁判所:未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所

親族(おじ・おば、祖父母など)が申立人となるケースが一般的ですが、未成年者本人に判断能力がある場合は本人が申し立てることも可能です。

申立てに必要な書類一覧【チェックリスト】

申立てには、未成年者本人や後見人候補者の戸籍謄本、財産状況を証明する資料など、多岐にわたる書類が必要です。主な必要書類を以下の表にまとめました。

カテゴリ 必要書類 備考
基本書類 家事審判申立書 裁判所の窓口やウェブサイトで取得可能
戸籍関係 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書) 発行から3カ月以内のもの
未成年者の住民票(または附票) 世帯全員の記載があるもの
後見人候補者の戸籍謄本・住民票 候補者がいる場合のみ
財産関係 財産目録 預貯金、不動産、有価証券などの内訳
通帳のコピー、不動産登記事項証明書など 財産の裏付けとなる資料
収支関係 収支予定表 月々の生活費や教育費の概算
その他 親族の意見書 他の親族が、候補者が選任されることについての意見を記載
管轄の家庭裁判所によって、追加の資料(照会書や報告書など)を求められる場合があります。事前に管轄裁判所のホームページ等で確認が必要です。

手続きにかかる費用と期間の目安

手続きに要する費用は、主に裁判所へ納める印紙代と、書類取得の実費です。

  • 手数料(印紙代):未成年者1人につき800円
  • 連絡用の郵便切手代:数千円程度(裁判所によって金額が異なります)
  • 書類取得費用:数千円程度(戸籍謄本や住民票の発行手数料)

申立てから選任の審判が下りるまでの期間は、概ね1~2カ月程度が目安です。ただし、親族間で争いがある場合や、調査官による家庭訪問・面接などの調査が必要な場合は、さらに時間を要することがあります。

【注意】必ずしも希望者が選任されるとは限らない

申立時に「後見人候補者」を立てることは可能ですが、裁判所はその候補者を必ず選任するとは限りません

裁判所は「未成年者の最善の利益」を基準に、以下の要素を総合的に考慮して判断します。

  1. 未成年者の意向(年齢や状況に応じる)
  2. 未成年者の財産状況(多額の財産や複雑な権利関係があるか)
  3. 候補者の経歴、資産状況、未成年者との関係性
  4. 親族間の意見の対立の有無

特に、未成年者が多額の相続財産(生命保険金、不動産、預貯金など)を有している場合は、財産管理の透明性と安全性を確保するため、親族ではなく弁護士や司法書士などの専門家が選任される、あるいは親族と並んで専門家が共同後見人に選ばれるケースがあります。

未成年後見に関するよくある疑問

実務において、未成年後見制度の検討段階や選任後に寄せられることの多い質問をQ&A形式でまとめました。

はい、複数人を選任することが可能です。

かつては「後見人一人の原則」がありましたが、法改正により現在は複数人の選任が認められています(民法第840条第3項)。

例えば、「身上監護については近隣に住む親族」を、「多額の相続財産の管理については弁護士や司法書士等の専門家」を、というように役割を分担して選任することで、よりきめ細やかで安全な支援体制を構築できます。

まとめ|未成年後見人の手続きや相続トラブルでお困りなら専門家へ

未成年後見制度は、親権者がいない状況において、子どもの生活と財産を守るための不可欠な仕組みです。家庭裁判所が関与する厳格な制度であるため、選任後の義務や責任についても正しく理解しておく必要があります。

本記事の要点を整理すると以下の通りです。

  • 選任の方法:遺言による指定、または家庭裁判所への申立てによる選任。
  • 主な権限:財産管理権、居所指定権、監護教育権、職業許可権など。
  • 後見人の義務:家庭裁判所への定期的な収支報告・財産目録の提出義務。
  • 終了の時期:原則として未成年者が18歳(成人)に達したとき。

未成年後見人の選任が必要となる場面では、多くの場合、背後に「遺産分割協議」や「相続税の申告」といった複雑な法的手続きが控えています。特に以下のようなケースでは、早い段階で司法書士、弁護士、税理士などの専門家へ相談することをお勧めします。

  • 多額の相続財産がある場合:不動産や株式、多額の生命保険金などが含まれる場合、適切な財産管理と正確な申告が求められます。
  • 親族間で意見の相違がある場合:後見人候補者を巡って親族間で争いがある場合、裁判所は公平性の観点から専門家を選任する傾向にあります。
  • 相続税申告の期限が迫っている場合:未成年後見人の選任には1〜2カ月を要します。相続税の申告期限(10カ月以内)に間に合わせるためには、迅速な手続きが必要です。

未成年後見の手続きは、単なる書類の提出に留まらず、その後の子どもの人生と財産を守り続けるための重要な第一歩です。手続きに不安がある場合や、相続が絡む複雑な状況にある場合は、各士業が連携する専門家ネットワークを活用し、総合的なサポートを受けることが円滑な解決への近道となります。

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