記事の要約
- 相続税の申告書は、まず「第11表とその付表」などで財産・債務の明細を書き、各人の「課税価格」を確定させる
- 次に「第2表」で、課税価格の合計から基礎控除を差し引き、「相続税の総額」を計算する
- 最後に「第1表」で、配偶者の税額軽減などを反映し、各人が実際に納める税額を確定させる
「相続税の申告が必要だけれど、たくさん書類があって、何から書けばいいのかわからない」
はじめて相続税の申告に直面すると、書類の多さに戸惑ってしまうのは当然のことです。
本記事では、モデルケースを見ながら「相続税申告書の書き方」を、わかりやすくお伝えします。
なお、ご自身で申告書を作成する自信がない方は、相続専門の税理士に依頼するのも一手です。
私たちVSG相続税理士法人では、初回の相談は無料なので、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
相続税の申告書を「書く順番」と「作成する表」
相続税の申告書には、「第1表〜第15表」までの様式があります。
これらの表を作成する際には、下記のように3ステップで記入していくのがおすすめです。

| ステップ | 概要 |
|---|---|
| ① 財産・債務の明細を記入する | 【記入する表】 ■ 第11表とその付表 ■ 第13表 ■ 第15表 など 【目的】 |
| ② 相続税の総額を計算する | 【記入する表】 ■ 第1表の一部 ■ 第2表 【目的】 |
| ③ 各人の納付税額を確定する | 【記入する表】 ■ 第1表 ■ 第5表 など 【目的】 |
ポイントは、「第1表から順番に記入していく」わけではないことです。第1表は、各表を書き終わった後で、申告全体を取りまとめる役割があります。
また、申告にあたっては、第1表〜第15表のすべてを作成するケースはほとんどありません。ご自身の相続に関係する表のみ作成することになります。
この記事では、下記の「佐保家」のモデルケースを使って、実際に表を作成していきます。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 亡くなった方 | 佐保 太郎さん |
| 相続人 | 妻の花子さん、長男の一郎さん、長女の優子さんの3人 |
| 相続開始日 | 2026年(令和8年)4月15日 |
| 遺産分割 | 2026年9月30日に遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決定した |
亡くなった太郎さんが残した「財産」と「債務」の取り扱いは、下記のとおりだったとします。
| 財産・債務 | 取得・負担する人 |
|---|---|
| 自宅の土地(3,000万円) | 花子さん |
| 自宅の家屋(500万円) | 花子さん |
| 預貯金(3,500万円) | 一郎さん(1,500万円) 優子さん(2,000万円) |
| 上場株式(1,000万円) | 一郎さん |
| 家具等一式(50万円) | 花子さん |
| 生命保険金(2,000万円) | 花子さん(受取人) |
| 未払いの医療費(△100万円) | 花子さんが負担 |
| 葬式費用(△200万円) | 優子さんが負担 |
このケースで作成する表は、下記の12種類です。
- 第1表:申告内容まとめ
- 第2表:相続税の総額
- 第5表:配偶者の税額軽減
- 第9表:生命保険金
- 第11表:プラスの財産
- 第11表の付表1:土地・家屋
- 第11表の付表2:有価証券
- 第11表の付表3:現金・預貯金
- 第11表の付表4:その他の財産
- 第11・11の2表の付表1:小規模宅地等の特例
- 第13表:債務・葬式費用
- 第15表:財産まとめ
それでは、ステップ1から順番に見ていきましょう。
ステップ1:財産・債務の明細を記入する

実際に記入をはじめる前に、まずは「申告書の様式」を準備しましょう。様式は、国税庁のWebサイトでダウンロードできます。
このとき、必ず「被相続人が亡くなった年」の様式を使ってください。たとえば、2026年(令和8年)に亡くなった方の相続では、「令和8年分用」の様式を使用します。
また、作成する際の基本ルールとして、下記の2点も押さえておきましょう。
- 黒のボールペンで丁寧に書く(鉛筆や消せるボールペンは使用できない)
- 申告書を折り曲げたり汚したりしない
ステップ1で作成する表は数が多いですが、下記のような関係になっていることを意識すると、頭を整理しやすいです。

簡単に言うと、「第11表」と「第13表」に記載した内容を「第15表」でまとめるイメージです。
また、「第11表」を記入するためには、「いくつかの表・付表」を作成することになります。
それでは、各表の書き方を順番に見ていきましょう。
第11表と関連する表:相続税がかかる財産を確定する

「第11表」は、相続や遺贈※1によって取得したすべての財産について、「誰が・どれほどの財産を取得したか」を記入する表です。
財産の明細は「付表」などに記入し、「第11表」はそれらをまとめる役割を持っています。
ここでは「第11表の上段」から書き始め、「ほかの各表」を作成した後、再び「第11表」に戻って集計する、という流れで進めます。
- ※1
- 遺言によって財産を譲り渡すこと
第11表(上段):財産を取得する人に番号を振る

最初に、「第11表の上段」を記入します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 被相続人の氏名 | ■ 亡くなった方の氏名を書く ■ 今回のケースでは、「佐保太郎」 ■ なお、被相続人の氏名は、これ以降の表にも同じように記入することになる |
| ② 遺産の分割状況 | ■ 「1:全部分割、2:一部分割、3:全部未分割」から該当する番号を書く ■ 今回は、協議によってすべての財産の分割方法が決まっているので「1」 |
| ③ 分割の日 | ■ 遺産の分け方が決まった日を書く ■ 今回は、遺産分割協議が成立した「令和8年9月30日」になる |
| ④ 財産取得者の一覧 | ■ 財産を取得する人の氏名を書き、それぞれに番号を振る ■ 番号を振る順番にルールはないが、今回は年長順に「1:花子さん、2:一郎さん、3:優子さん」とした |
③で記入する「元号」のコードは、令和の場合は「5」です。
元号コード
引用元 相続税の申告書の記載例 |国税庁
以降の表でも、元号を記入する際は、上記の「元号コード」を使います。
なお、この時点では、下段の部分は空欄のままで構いません。ほかの表を書き終えた後に戻ってきて、残りの部分を記入します。
第11・11の2表の付表1:小規模宅地等の特例を計算する

「第11・11の2表の付表1」は、小規模宅地等の特例を適用する土地の価額を計算するための書類です。
次に作成する「第11表の付表1」では、土地の評価額を記載するため、その前に特例を適用した後の金額を出しておく必要があります。
今回は、花子さんが相続した「自宅の土地」の特例を適用できるものとして、この表を作成します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 特例の適用にあたっての同意 | ■ 「特例の対象になり得る土地を取得した人」全員の氏名を書く ■ 今回、土地を相続したのは「花子さん」のみのため、記入が必要なのは1人だけ |
| ② 小規模宅地等の明細 | ■ 「小規模宅地等の種類」の欄には、特定居住用宅地等を示す「1」を書く※1 ■ 特例を適用する土地の「所在地・面積・価額」と、取得する人の「氏名」を書く ■ 今回は、自宅の土地(200㎡・評価額3,000万円)を、同居していた配偶者の花子さんが取得する |
| ③ 適用後の価額 | ■ 特例を適用できる土地の面積を書く ■ 様式の案内に従って、特例の適用で「減額される額」と「適用後の価額」を計算する ■ 今回の減額金額は「3,000万円 × 80% = 2,400万円」で、適用後の価額は「600万円」 |
| ④ 限度面積要件の判定 | ■ 小規模宅地等の特例は、適用できる土地の面積に限度があるため、それを超過していないか確認する ■ 今回該当する「居住用宅地」は、限度面積が330㎡のところ、適用を受けるのは200㎡のため、全部分が対象になる |
- ※1
- 「事業用宅地」や「貸付事業用宅地」に特例を適用したいときには、それぞれ対応する番号が様式に記載されているので、それを記入する
今回のケースでは、評価額3,000万円の土地が、税額を計算するうえでは600万円になりました。
このように「小規模宅地等の特例」を適用できると、税負担の大幅な軽減につながります。
ただし、「特例を適用できるかどうかの判断」や「土地の評価額の算出」には、専門的な知識が求められます。
小規模宅地等の特例については、下記の記事で詳しくお伝えしているので、併せてご覧ください。
第11表の付表1:土地・家屋を記入する

「第11表の付表1」は、土地や家屋といった「不動産」の明細を記入する書類です。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 土地の細目 | ■ 項番に、通し番号「1」を入れる ■ 細目コード「13(宅地)」と、利用区分「自用地(居住用)」を書く ■ 小規模宅地等の特例を適用するため、特例欄に「1」を書く |
| ② 土地の情報 | ■ 所在場所と面積を書く ■ 価額欄には、第11・11の2表の付表1で計算した、特例適用後の金額「600万円」を書く |
| ③ 土地を取得する人 | ■ 取得する人を第11表の上段で振った番号で書く ■ 今回、土地は花子さんが取得するので「1」 ■ 取得財産の価額に、土地の価額(600万円)を書く |
| ④ 家屋の細目 | ■ 項番に、通し番号「2」を入れる ■ 細目コード「21(家屋等)」と、利用区分「自用家屋」を書く ■ 利用区分には、建物の構造・用途(鉄コ2※1・居宅など)も記入する |
| ⑤ 家屋の情報 | ■ 所在場所と面積を書く ■ 家屋の評価額は「固定資産税評価額 × 1.0」のため、単価又は倍数欄は「1.0※2」と入れる ■ 固定資産税評価額(500万円)を記入する ■ 価額には「固定資産税評価額 × 1.0」の金額を入れる |
| ⑥ 家屋を取得する人 | ■ 取得する人を第11表の上段で振った番号で書く ■ 今回、家屋も花子さんが取得するので「1」 ■ 取得財産の価額に、家屋の価額(500万円)を書く |
- ※1
- 「鉄骨コンクリート造2階建て」などの構造の略。登記簿の「構造」欄の表記に合わせて記入する
- ※2
- 自用家屋の場合。貸家の場合は、借家権割合が差し引かれるため「0.7」などになる
①と④で「細目コード」を入れる際は、国税庁の「記載要領」を見て、数字を記入します。
第11表の付表2:株式などの有価証券を記入する

「第11表の付表2」は、株式や投資信託などの「有価証券」の明細を記入する書類です。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 株式の細目 | ■ 項番に、通し番号「1」を入れる ■ 細目コード「48(上記以外の株式)」と、細目「上記以外の株式」を書く ■ 銘柄には、株式の発行会社名を書く |
| ② 株式の情報 | ■ 所在場所等の上段に、金融商品取引業者等コード「6(証券)」と証券会社名を、中段に支店等コード「2(支店)」と支店名を書く ■ 数量(5,000株)と、1株あたりの単価(2,000円)を書く ■ 価額には「数量 × 単価」の金額(1,000万円)を入れる |
| ③ 株式を取得する人 | ■ 取得する人を第11表の上段で振った番号で書く ■ 今回、株式は一郎さんが取得するので「2」 ■ 取得財産の価額に、株式の価額(1,000万円)を書く |
①と②でコードを記載する際は、国税庁の「記載要領」を見て、数字を記入しましょう。
なお、上場株式の評価額は「亡くなった日の終値」だけではなく、「直近3カ月の月平均額」から、最も低い価額を選べます。
相続した株式の扱いは、下記の記事でもお伝えしているので、併せてご覧ください。
第11表の付表3:現金・預貯金を記入する

「第11表の付表3」は、故人が残した「現金」や「預貯金」の明細を記入する書類です。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 預貯金の種別 | ■ 項番に、通し番号を入れる ■ 口座種別等コードと、口座の種別を書く。定期預金はコード「14」、普通預金はコード「12」 ■ 口座番号も記入する |
| ② 預貯金の情報 | ■ 所在場所等の上段に、金融機関等コード「1(銀行)」と銀行名を、中段に支店等コード「2(支店)」と支店名を書く ■ 価額には、亡くなった日時点の残高を書く ■ 今回は、定期預金「1,500万円」と普通預金「2,000万円」 |
| ③ 預貯金を取得する人 | ■ 取得する人を第11表の上段で振った番号で書く ■ 今回、定期預金は一郎さんが取得するので「2」、普通預金は優子さんが取得するので「3」 ■ 「取得財産の価額」に、それぞれの金額を書く |
①と②で記入するコードは、国税庁の「記載要領」に書き方が載っています。
また、②で記入する「亡くなった日時点の残高」について、定期預金は「亡くなった日までの利息(既経過利息)」を加えた金額を記入します。
預貯金の相続については、下記の記事で詳しくお伝えしているので、併せてご覧ください。
第9表:生命保険金の非課税枠を計算する

「第9表」は、故人にかけられていた「生命保険金」について、非課税枠を差し引いた「課税対象となる金額」を計算するための書類です。
ここで算出した「生命保険金の課税金額」は、次の「第11表の付表4」に記載することになります。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 保険金の情報 | ■ 保険会社の所在地・名称、保険金の受取年月日、受取金額、受取人の氏名を書く ■ 今回は、花子さんが生命保険金「2,000万円」を受け取った |
| ② 保険金の非課税限度額 | ■ 「500万円 × 法定相続人の数」を計算して記入する ■ 今回は法定相続人が3人なので、「500万円 × 3人 = 1,500万円」が非課税枠となる |
| ③ 課税される金額の計算 | ■ 保険金を受け取った相続人ごとに、受け取った金額、非課税金額、課税金額を書く ■ 今回は、花子さんが受け取った「2,000万円」から、非課税金額「1,500万円」を差し引き、「500万円」が課税金額となる |
なお、生命保険金の非課税枠を使えるのは「相続人」のみです。
「相続放棄した人」や「相続人ではない孫など」が受取人になっている保険金は、受け取った金額がそのまま課税対象になるのでご注意ください。
生命保険金と相続の関係は、下記の記事で詳しくお伝えしています。
第11表の付表4:家財や保険金などその他の財産を記入する

「第11表の付表4」は、付表1〜3に当てはまらない「その他の財産」の明細を記入する書類です。
「家庭用財産(家具や家電)・自動車・貴金属」などのほか、生命保険金のような「みなし相続財産」についても、この表に記入します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 財産の細目 | ■ 項番に、通し番号を入れる ■ 細目コードと細目を書く。家庭用財産はコード「61」、生命保険金はコード「71」 |
| ② 財産の情報 | ■ 家庭用財産は、財産の名称(家具等一式など)と所在場所(自宅の住所など)、価額を書く ■ 生命保険金は、名称・所在場所は空欄のままでよく、価額には第9表で計算した「非課税枠を超えた金額(500万円)」を書く |
| ③ 財産を取得する人 | ■ 取得する人を第11表の上段で振った番号で書く ■ 今回は、家具等一式も生命保険金も花子さんが取得するため、どちらも「1」 ■ 「取得財産の価額」に、それぞれの金額を書く |
①で記入するコードは、国税庁の「記載要領」に一覧が掲載されています。
第11表(下段):全員の取得財産を集計する

付表1〜4がすべて書き終わったら、再び「第11表」に戻って、下段の「取得財産の価額の合計表」を記入します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 財産を取得した人の番号 | ■ 上段の「財産取得者の一覧」で、各相続人に振った項番を書く |
| ② 取得財産の価額の集計 | ■ 分割財産の価額に、付表1〜4の「取得財産の価額」を相続人ごとに合計した金額を書く ■ 未分割財産の価額は、全部分割済みの場合は「0円」になる ■ 取得財産の価額を計算して記入する |
今回のケースでの各相続人の「取得財産の価額」は、下記のとおりです。
| 相続人 | 取得財産の価額 |
|---|---|
| 1 花子さん | 土地600万円※1 + 家屋500万円 + 家具等一式50万円 + 生命保険金500万円※2 = 1,650万円 |
| 2 一郎さん | 定期預金1,500万円 + 上場株式1,000万円 = 2,500万円 |
| 3 優子さん | 普通預金2,000万円 |
- ※1
- 小規模宅地等の特例を適用した後の価額
- ※2
- 生命保険金の非課税枠を差し引いた後の価額
これで、相続税がかかる「プラスの財産の金額」が確定しました。
続いて、マイナスの要素である「債務」と「葬式費用」を整理します。
第13表:債務・葬式費用を記入する

「第13表」は、亡くなった方の借入金などの「債務」や、支払った「葬式費用」について記入する書類です。
これらの費用は、先ほど確定させた「プラスの財産」から差し引いて、相続税を計算できます。詳細は、下記の記事をご参照ください。
第13表の書き方は、次のとおりです。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 債務の種類・細目 | ■ 債務の種類と細目を書く ■ 今回は、入院費の未払い分なので、種類「未払金」・細目「医療費」 |
| ② 債務の情報 | ■ 債権者(支払先)の名称と住所を書く ■ 発生年月日には、その債務が発生した日を書く。未払いの医療費は、亡くなった日(令和8年4月15日)でよい ■ 未払いの金額(100万円)も書く |
| ③ 債務を負担する人 | ■ 債務を引き継いで支払う人の氏名と金額を書く ■ 今回は、花子さんが負担する |
| ④ 債務の合計 | ■ 債務の金額の合計を書く |
| ⑤ 葬式費用の情報 | ■ 支払先の名称と住所、支払年月日、金額(200万円)を書く |
| ⑥ 葬式費用を負担する人 | ■ 葬式費用を負担した人の氏名と金額を書く ■ 今回は、優子さんが負担した |
| ⑦ 葬式費用の合計 | ■ 葬式費用の金額の合計を書く |
| ⑧ 負担者ごとの内訳 | ■ それぞれの人が負担した金額をまとめる ■ 「負担することが確定していない債務・葬式費用」の行は、負担者が決まっていれば空欄でよい |
| ⑨ 各人の合計 | ■ 各人が負担した、債務と葬式費用の合計額を書く |
①の債務の種類と細目は、国税庁の「記載例」を参考にしながら、書いてみてください。
なお、葬式費用に関しては、「香典返しの費用」や「墓地の購入費用」など、控除の対象にできないものもあります。詳しくは、下記の記事をご参照ください。
第15表:財産の種類別に集計し、課税価格を出す

ステップ1の最後に、「第15表」にこれまで作成した各表の内容を集約します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 取得者ごとの財産の内訳 | ■ 第11表の付表1〜4から、土地・家屋・現預貯金などの種類ごとの金額を、取得した人ごとに転記する ■ 第13表から、各人が負担した「債務・葬式費用」の金額を転記する ■ 「財産の合計」から「債務・葬式費用の合計」を差し引いて、各人の課税価格を計算する |
| ② 各人の合計 | ■ ①で記載した、各人の金額を合計して記入する |
財産を取得した人が2人以上いる場合には、「第15表(続)」を追加して記載します。

今回のケースでの各人の課税価格は、下記のようになりました。
| 取得した人 | 課税価格 |
|---|---|
| 花子さん | 1,650万円 − 100万円 = 1,550万円 |
| 一郎さん | 2,500万円 − 0円 = 2,500万円 |
| 優子さん | 2,000万円 − 200万円 = 1,800万円 |
| 合計 | 5,850万円 |
この合計額「5,850万円」をもとに、ステップ2では「相続税の総額」を計算することになります。
ステップ2:相続税の総額を計算する

ステップ2では、ステップ1で確定させた「課税価格の合計額」をもとに、「全員で納めるべき相続税の総額」を計算します。
ここで作成する書類は、「第2表」と「第1表の一部」の2つのみです。
第2表:基礎控除を引いて相続税の総額を出す

「第2表」では、下記の流れで「相続税の総額」を計算していきます。
具体的な記入の方法は、次のとおりです。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 課税価格の合計額 | ■ 第15表で計算した「課税価格の合計額(5,850万円)」を記入する |
| ② 遺産に係る基礎控除額 | ■ 法定相続人の数(3人)を記入し、基礎控除額(4,800万円)を計算する |
| ③ 課税遺産総額 | ■ 「課税価格の合計額(5,850万円)」から「基礎控除額(4,800万円)」を差し引いて、課税遺産総額(1,050万円)を計算する |
| ④ 法定相続人と法定相続分 | ■ 法定相続人の氏名・続柄コード・法定相続分を書く ■ 今回の法定相続分は、配偶者の花子さんが1/2、一郎さんと優子さんが各1/4 |
| ⑤ 法定相続分に応ずる取得金額と税額 | ■ 課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定して、各相続人の取得額を計算する ■ 取得金額から、様式下部の「速算表」を使って、各人の税額を算出する |
| ⑥ 法定相続人の数と相続税の総額 | ■ 法定相続人の数を書き、法定相続分の合計が「1」になることを確認する ■ 計算した各人の税額を合計して、相続税の総額を出す |
④で記入する「続柄コード」は、下記を見ながら書き入れましょう。
続柄コード
引用元 相続税の申告書の記載例 |国税庁
今回のケースでの計算をまとめると、下記のとおりです。
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 基礎控除額 | 3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 5,850万円 − 4,800万円 = 1,050万円 |
| 花子さんの法定相続分に応ずる取得金額・税額 | 【法定相続分に応ずる取得金額】 1,050万円 × 1/2 = 525万円 【税額】 |
| 一郎さんの法定相続分に応ずる取得金額・税額 | 【法定相続分に応ずる取得金額】 1,050万円 × 1/4 = 262万5,000円 【税額】 |
| 優子さんの法定相続分に応ずる取得金額・税額 | 【法定相続分に応ずる取得金額】 1,050万円 × 1/4 = 262万5,000円 【税額】 |
| 相続税の総額 | 52万5,000円 + 26万2,500円 + 26万2,500円 = 105万円 |
以上により、佐保家全体で納める相続税の総額は「105万円」とわかりました。
第1表(前半):あん分割合と各人の算出税額を出す

続いて、「第1表」に取りかかります。
第1表は申告全体をまとめる表ですが、この段階では最後まで書き切らず、「各人の算出税額」を出すところまで記入します。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 提出先・相続開始年月日 | ■ 提出先には、「亡くなった方の最後の住所地」を管轄する税務署を書く※1 ■ 提出日は、実際に提出する日を書くので、作成の段階では空欄でよい ■ 相続開始年月日は、元号コード「5(令和)」と亡くなった日を書く |
| ② 被相続人の情報 | ■ 故人の「氏名・生年月日・亡くなった日時点の年齢・住所・職業」を書く ■ 昭和の元号コードは「3」 |
| ③ 財産を取得した人の情報 | ■ 財産を取得した人の「氏名・マイナンバー・生年月日・年齢・住所・電話番号・職業」を書く ■ 続柄は、第2表で使ったコード表の番号で書く ■ 取得原因は、該当するものに「1」を書く。今回は、全員「相続」に1を入れる |
| ④ 財産を取得した人の計算 | ■ 「取得財産の価額(第11表)」から「債務及び葬式費用の金額(第13表)」を差し引いて、課税価格を出す ■ あん分割合は「各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額」で計算する ■ 算出税額は「相続税の総額 × 各人のあん分割合」で計算する |
| ⑤ 各人の合計 | ■ 全員分を合計した金額を記入する ■ 「法定相続人の数・基礎控除額」と「相続税の総額(105万円)」は、第2表から転記する |
- ※1
- 管轄の税務署は、国税庁のWebサイトで調べられる
財産を取得した人が2人以上いる場合には、「第1表(続)」を追加して記載しましょう。

なお、今回のケースの「あん分割合」と「算出税額」は、下記のように計算しています。
| 取得した人 | 計算 |
|---|---|
| 花子さん | 【あん分割合】 1,550万円 ÷ 5,850万円 ≒ 0.26 【算出税額】 |
| 一郎さん | 【あん分割合】 2,500万円 ÷ 5,850万円 ≒ 0.43 【算出税額】 |
| 優子さん | 【あん分割合】 1,800万円 ÷ 5,850万円 ≒ 0.31 【算出税額】 |
あん分割合は、小数点以下2位未満の端数を「全員の合計が1.00になる」ように調整します。
ここまで記入できたら、いったん第1表から離れて、次のステップに進みましょう。
ステップ3:各人の納付税額を確定する

最後のステップでは、取得者ごとの状況に応じた「税額の控除・加算」を反映させて、各人が実際に納める相続税の金額を確定させます。
今回のケースでは、配偶者の花子さんに「配偶者の税額軽減」が適用されるため、「第5表」の作成が必要です。
第5表:配偶者の税額軽減を計算する

「第5表」では、亡くなった方の配偶者が使える「配偶者の税額軽減」の控除額を計算します。
この制度を適用することで、配偶者が取得した財産には、下記のいずれか多いほうの金額まで相続税がかかりません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分に相当する額
具体的な第5表の書き方は、下記のとおりです。

| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 軽減の上限額 | ■ 「課税価格の合計額(5,850万円) × 配偶者の法定相続分(1/2)= 2,925万円」を計算する ■ この金額が1億6,000万円に満たない場合は、「1億6,000万円」と書く |
| ② 配偶者の課税価格 | ■ 分割財産の価額に、第11表の配偶者の金額(1,650万円)を書く ■ 債務及び葬式費用の金額に、第13表のうち「配偶者が負担した金額(100万円)」を記入する ■ 「分割財産の価額」から「債務及び葬式費用の金額」を差し引き、「軽減の対象となる課税価格(1,550万円)」を算出する |
| ③ 軽減の基となる金額 | ■ 「相続税の総額(105万円)」と「課税価格の合計額(5,850万円)」を第1表から転記する ■ 「配偶者の税額軽減の上限額(1億6,000万円)」と「配偶者の課税価格(1,550万円)」の少ないほうを書く ■ 様式の計算式に従って、軽減の基となる金額(27万8,205円)を計算する |
| ④ 配偶者の税額軽減額 | ■ 限度額の欄に、第1表の「配偶者の算出税額(27万3,000円)」を転記する ■ ③と「配偶者の算出税額」を比べて、少ないほうが軽減額になる |
今回のケースでは、配偶者の税額軽減を適用した結果、花子さんの納付税額は「27万3,000円 – 27万3,000円 = 0円」になります。
第1表(完成):最終的な納付税額を確定する

最後に「第1表」に戻って、税額控除の金額を反映させます。


| 項目 | 記入方法 |
|---|---|
| ① 花子さんの納付税額 | ■ 第5表で計算した「配偶者の税額軽減額(27万3,000円)」を書く ■ 算出税額から軽減額を差し引くと、納税額は0円になる |
| ② 一郎さん・優子さんの納付税額 | ■ 2人には適用する税額控除がないため、算出税額がそのまま納税額になる |
| ③ 各人の合計 | ■ 全員分を合計した金額を各欄に記入する |
今回のケースでの「各人の納税額」は次のとおりで、合計「77万7,000円」となりました。
| 財産を取得した人 | 納付税額 |
|---|---|
| 花子さん | 0円 |
| 一郎さん | 45万1,500円 |
| 優子さん | 32万5,500円 |
| 合計 | 77万7,000円 |
以上で、申告書は完成です。
税務署に提出する際には、ここで作成した申告書のほかにも「添付書類」が必要になります。
詳細は下記の記事でお伝えしているので、ぜひ併せてご覧ください。
また、税務署に申告書を提出する前には、下記の2つを行っておきましょう。
- 国税庁が公開している「相続税の申告のためのチェックシート」を使い、記入ミスや添付書類の漏れがないか確認する
- 申告書一式のコピーを取っておく
申告書の提出方法については、下記の記事で詳しくお伝えしています。
【補足】そのほかの表が必要なケース
ここまでに紹介した表のほかにも、「相続財産の内容」や「相続人の状況」によっては、下記の表の作成が必要になる場合があります。
| 表 | 作成が必要なケース |
|---|---|
| 第4表:相続税額の加算金額の計算 | 財産を取得した人のなかに、2割加算の対象者がいる場合 |
| 第6表:未成年者控除額・障害者控除額の計算 | 財産を取得した人に未成年者や障害者がいて、控除の適用を受ける場合 |
| 第7表:相次相続控除額の計算 | 10年以内に相次いで相続が発生し、今回亡くなった方が前回の相続で相続税を納付していた場合 |
| 第8表:外国税額控除額などの計算 | 相続財産に外国の財産が含まれ、その国で相続税に相当する税を納付した場合など |
| 第10表:退職手当金などの明細 | 亡くなった方の死亡退職金などを受け取った場合 |
| 第11の2表:相続時精算課税適用財産の明細 | 生前に「相続時精算課税制度」を利用して、亡くなった方から贈与を受けていた人がいる場合 |
| 第12表:特例農地等の明細 | 農地等を相続し、一定の要件を満たして「納税猶予の特例」を受ける場合 |
| 第14表:暦年課税分の贈与財産価額などの明細 | 相続開始前7年以内※1に亡くなった方から暦年課税での贈与を受けていた場合など |
- ※1
- 対象となる期間は、2024年の税制改正により段階的に3年から7年に延長されている
これらの表の作成には専門的な知識が求められます。提出が必要そうな場合は、相続専門の税理士に相談することをおすすめします。
相続税申告書の書き方に関するよくある質問
Q1:そもそも「相続税の申告が必要かどうか」は、どう判断する?
Q2:申告書はパソコンで作成できる?
Q3:申告書は相続人ごとに別々に作る?連名で出す?
Q4:書き間違えたときは、どう訂正する?
Q5:申告書と一緒に提出する添付書類には何がある?
Q6:税務署に申告書の書き方を相談できる?
Q7:申告書はいつまでに提出する必要がある?
Q8:遺産分割がまとまらないまま期限が来たら?
まとめ|相続税申告書の作成は少し難易度が高い
今回は、モデルケースを使って、相続税の申告書の書き方をお伝えしました。
- 相続税の申告書は、まず「第11表とその付表」などで財産・債務の明細を書き、各人の「課税価格」を確定させる
- 次に「第2表」で、課税価格の合計から基礎控除を差し引き、「相続税の総額」を計算する
- 最後に「第1表」で、配偶者の税額軽減などを反映し、各人が実際に納める税額を確定させる
記事をご覧いただいてわかるとおり、相続税の申告では、作成すべき書類の量が非常に多いです。
また、申告の方法を間違えて、本来使えるはずだった「税額軽減の制度」を適用できていないと、税負担が重くなります。
ご自身で申告書を作成できるか不安な方は、相続専門の税理士に依頼することをおすすめします。
私たちVSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けております。何かお困りのことがございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。




