記事の要約
- 遺言書がある場合、遺産分割協議が不要になり、手続きがスムーズに進みやすい
- 相続手続きの流れは、自筆証書遺言と公正証書遺言で異なる
- 遺言書の内容に不満があるときには、「全員の合意による変更」や「遺留分侵害額請求」といった対処法がある
「亡くなった家族が遺言書を残していた。でも、この場合の相続手続きは、一体何から始めればいいの?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、本記事では「遺言書があるときの相続手続きの流れ」を、はじめての相続の方にもわかりやすくお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するお悩みに無料でお答えしています。何かお困りのことがあれば、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
遺言書がある場合の相続手続きの流れ

遺言書があるケースでの相続手続きの特徴は、「遺産分割協議」が不要になることです。
遺言書がない場合、相続人全員で「誰が・どの財産を・どれくらい引き継ぐのか」を話し合わなければなりません。
一方、遺言書があるときには、原則として遺言の内容どおりに遺産を分けるため、この話し合いを省略できます。
ここでは、遺言書がある場合の具体的な相続手続きを、次の5つのステップでお伝えします。
それぞれステップについて、順番に見ていきましょう。
ステップ1:遺言書の種類を把握する

具体的な手続きに入る前に、まずは遺言書の「種類」を把握しておきましょう。
遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」という、2つの種類があります。

- 故人が自分の手で書いた遺言書
- 便箋や市販の用紙に書かれていることが多い
- 自宅や法務局で保管されている

- 公証役場で「公証人」に作成してもらった遺言書
- 「公正証書」と記載のある書類で、公証役場の封筒に入っていることもある
- 原本は公証役場に保管されている
この2つの最大の違いは、「家庭裁判所での検認が必要かどうか」です。
自筆証書遺言は、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けなければ、その先の相続手続きに進めません。
一方、公正証書遺言は検認が不要なので、すぐに内容を確認して次の手続きに入れます。

補足
故人が秘密証書遺言を残していた場合は、自筆証書遺言と同じく検認が必要です。
ステップ2:遺言書を探す

種類の把握ができたら、実際に遺言書を探しましょう。
ここでは「遺言書」のほかに、法務局の保管制度を利用した場合に交付される「遺言書保管証」がないかも確認します。
遺言書保管証のイメージ
引用元 自筆証書遺言保管制度|法務省
まずは、自宅の次のような場所を捜索してみてください。
- タンスや机の引き出し
- 仏壇の引き出し
- 金庫の中
- 愛用していたカバンの中
- 本棚に立てかけてある本の隙間
ほかにも、下記の場所に遺言書が保管されている可能性があります。
| 場所 | 概要 |
|---|---|
| 公証役場 | ■ 「遺言検索システム」で、全国の公証役場に保管されている公正証書遺言を一括で照会できる ■ 法定相続人などの利害関係人であれば、最寄りの公証役場で無料で利用可能 |
| 法務局 | ■ 「遺言書保管証」があったときには、故人は「自筆証書遺言書保管制度」を利用している ■ この場合は、法務局へ連絡して「遺言書情報証明書」の交付請求をする |
| 銀行の貸金庫、弁護士・税理士など | ■ 銀行の貸金庫や、生前に相談していた弁護士・税理士のもとに遺言書が預けられていることもある ■ 心当たりがある場合は、問い合わせて確認する |
なお、故人が「公正証書遺言」を残していたときの対応は、下記の記事でお伝えしています。該当する方は、併せてご参照ください。
遺言書を発見したときの注意点は、すぐには開封しないということです。
見つかったものが「自筆証書遺言」だった場合、未開封のまま、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けなければなりません。
もし検認前に開封してしまうと、5万円以下の過料※1を科される可能性があります。
なお、「公正証書遺言」の場合には、検認は不要なので、そのまま開封して問題ありません。
- ※1
- 行政上の罰金に相当するもの
ステップ3:家庭裁判所で検認を受ける

注意
「公正証書遺言」を残していた場合には、次のステップ4に進んでください。
「自筆証書遺言」が見つかったときには、開封する前に、家庭裁判所で「検認」の手続きを受けましょう。
この検認という手続きは、裁判所が遺言書の形式や内容を確認して、偽造・改ざんを防ぐために行われます。
ポイント
検認の手続きが必要かどうかは、下記のように、遺言書の種類によって異なります。
| 遺言書の種類 | 検認の要否 |
|---|---|
| 自筆証書遺言(自宅などで保管) | 必要 |
| 自筆証書遺言(法務局で保管) | 不要 |
| 公正証書遺言 | 不要 |
| 秘密証書遺言 | 必要 |
検認を受けるためには、「故人の最後の住所地」を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
この申立てから検認が完了するまでには、1〜2カ月ほどかかることが一般的です。
裁判所による検認が終わったら、「検認済証明書」の交付を受けましょう。

この証明書は、「預貯金の解約・払い戻し」や「不動産の名義変更(相続登記)」などの手続きで必要となります。
検認の手続きの詳細は、下記の記事でお伝えしているので、併せてご覧ください。
ステップ4:遺言書の内容を確認する

続いて、遺言書の内容を確認します。
ここでは、「誰に・どの財産が・どれほど渡されているか」に加えて、次の2点をチェックしましょう。
以下では、この2つのチェックポイントについて詳しく見ていきます。
チェック1:すべての財産が記載されているか?
まずは、「遺言書の内容」と「実際の財産状況」を照らし合わせて、遺言書に記載のない財産の有無を確認します。
故人の財産の調査方法は、下記の記事でお伝えしているので、ぜひ併せてご参照ください。
遺言書に記載されていない財産があるときは、その財産については、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が取得するかを決めなければなりません。
反対に、遺言書にある財産がすでに故人のものではなかった場合、その部分の遺言は効力を失います。ただし、遺言書の残りの部分は、引き続き有効です。
チェック2:遺言執行者が指定されているか?
次に、遺言書のなかで「遺言執行者」が指定されているかどうかも確認します。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために、相続人を代表して各種手続きを進める人のことです。
遺言執行者が指定されている場合は、その人に連絡をとり、相続手続きを進めてもらいましょう。
一方、遺言執行者が指定されていない場合は、相続人が自ら手続きを進めることになります。
なお、遺言書で遺言執行者の指定がなくても、家庭裁判所に選任を申し立てることも可能です。
ポイント
ステップ5:各種の相続手続きを進める

最後のステップは、各種の相続手続きを進めることです。主な手続きには、次のものがあります。
これらの手続きでは、「遺産分割協議書」の代わりに「遺言書の写し」を提出することになります。
また、自筆証書遺言の場合には、「検認済証明書」も併せて必要です。
なお、遺言執行者が指定されているときは、「預貯金の解約・払い戻し」や「相続登記」などの手続きを、執行者が代表して進められます。
遺言の内容に不満があるときの対処法

遺言書がご自身にとって不利な内容だった場合、納得できないこともあるかと思います。
そのようなときの対処法としては、主に次の3つがあります。
ここでは、それぞれについて詳しく見ていきます。
対処法1:相続人全員が合意して、遺言と異なる分け方にする

「相続人・受遺者※1・遺言執行者※2」の全員が合意すれば、遺言書の内容とは異なる方法で遺産を分割できると考えられています。
たとえば、遺言書に「自宅は長男に相続させる」と書いてあっても、関係者全員が合意すれば、妻に相続させることも可能です。
ただし、「遺言執行者が指定されていて、その人が同意しない」など、相続人や受遺者の合意があっても、分割方法を変更できないケースもあります。
このため、判断に迷うときは弁護士に相談しましょう。
- ※1
- 遺言で財産を受け取る人
- ※2
- 指定されている場合のみ
対処法2:遺言書が無効でないか確認する

遺言書が「法律で定められた要件」を満たしていない場合、遺言そのものが無効になる可能性があります。
特に、自筆証書遺言では、次のような場合に無効になります。
- 全文がパソコンで作成されている※1
- 「日付の記載」や「押印」がない
- 複数の人が共同で作成している
- ※1
- 自筆証書遺言は「財産目録」を除き、自筆しなければならない
また、遺言書を書いた時点で、作成者が認知症などにより判断能力を失っていた場合にも、遺言が無効になることがあります。
遺言書の無効を主張するには、「家庭裁判所での調停」や「遺言無効確認訴訟」といった手続きが必要です。
これらの手続きは、弁護士のサポートを受けながら進めるのが一般的です。
ポイント
検認済みであっても、遺言書が無効と判断される可能性はあります。
対処法3:遺留分を侵害されていたら、取り戻しを請求する

配偶者や子どもなどの一定の相続人には「遺留分」と呼ばれる、最低限の相続分が保障されています。

遺言書が遺留分を侵害する内容であっても、遺言自体が無効になるわけではありません。
しかし、遺留分を侵害された相続人は、遺言で多く財産をもらった人に対して、金銭の支払いを請求できます。この手続きを「遺留分侵害額請求」といいます。
遺留分侵害額請求の詳細は、下記の記事でお伝えしているので、必要な方は併せてご覧ください。
遺言書がある場合の相続でよくある質問

Q1:遺言書を間違えて開封してしまったら?
Q2:遺言書に有効期限はある?
Q3:複数の遺言書が見つかった場合は?
Q4:遺産分割協議の後に遺言書が見つかったら?
Q5:遺言で渡された財産を相続放棄できる?
Q6:遺言書を隠したらどうなる?
まとめ|手続きで迷ったら、税理士に相談しましょう
この記事では、遺言書がある場合の相続手続きについてお伝えしました。
- 遺言書がある場合、遺産分割協議が不要になり、手続きがスムーズに進みやすい
- 相続手続きの流れは、自筆証書遺言と公正証書遺言で異なる
- 遺言書の内容に不満があるときには、「全員の合意による変更」や「遺留分侵害額請求」といった対処法がある
遺言書があるときの相続手続きは、遺言書がない場合に比べて、負担が軽くなる傾向にあります。
しかし、遺言書の種類によって検認の要否が異なったり、記載のない財産については別途協議が必要だったりと、注意すべきポイントも多いです。
特に、相続税がかかる場合は、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内」に申告と納付を完了させなければなりません。
遺言書の検認だけでも1カ月以上かかることを考えると、早めに動き出すことが大切です。
「手続きの進め方がわからない」「相続税の申告が必要かどうか判断できない」という方は、まずは相続専門の税理士に相談してみましょう。
私たちVSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けております。
あなたの状況を丁寧にお伺いしたうえで、最適な進め方をご提案いたしますので、ぜひお気軽にご連絡ください。



