記事の要約
- 遺言書の検認は、家庭裁判所が遺言書の状態を確認・記録する手続きで、自宅などで保管されていた自筆証書遺言と秘密証書遺言に必要となる
- 封印のある遺言書を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科されるおそれがある
- 検認の完了までは1〜2カ月かかるため、相続税申告などの期限から逆算して早めに申立てる
自宅などで「自筆の遺言書」を見つけた場合、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。
特に封印されている場合は、自分で開封してはいけません。
この記事では、遺言書を見つけた方に向けて、検認の目的や必要書類の集め方、申立書の書き方、期日当日の流れ、そして検認後の相続手続きまで、時系列に沿ってお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
遺言書の「検認」とは?見つけても開封してはいけない理由
自宅などで保管されていた遺言書を見つけた場合、開封せずに家庭裁判所の「検認」を受ける必要があります。
ここでは、検認とはどのような手続きなのか、なぜ勝手に開封してはいけないのかをお伝えします。
検認とは、家庭裁判所が遺言書の状態を確認・記録する手続き
遺言書の検認とは、家庭裁判所が遺言書の形式や記載内容などを確認し、公的に記録する手続きです。
遺言書を見つけた人や遺言書を保管していた人は、家庭裁判所へ遺言書を提出し、検認の申立てをすることが民法で定められています。

検認の目的は、以下の3つです。
- 相続人全員に対して、遺言書が存在することおよびその内容を知らせること
- 遺言書の形状や日付、署名などの状態を記録として残すこと
- 検認後の偽造や改ざん、隠匿を防ぐこと
遺言書は個人が作成する文書であるため、保管状況や加除訂正、日付、署名などを確認し、証拠として保全することが求められます。
遺言書の検認
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。引用元 e-GOV法令検索┃民法
検認では遺言書の「有効・無効」は判断されない
注意点として、検認は、遺言書の内容が法的に有効かどうかを判断する手続きではありません。
家庭裁判所が行うことは、遺言書の存在・形状・封印の有無・記載内容などを確認し、記録として残すところまでです。
そのため、検認が済んだ遺言書であっても、後日ほかの相続人から「遺言書作成当時、父には判断能力がなかったのではないか」といった無効を主張されるケースはありえます。
もし、遺言無効確認訴訟などで遺言書が無効と判断された場合には、相続人全員による遺産分割協議を行うことになります。
封印のある遺言書を開封すると5万円以下の過料の可能性がある
封印のある遺言書は「家庭裁判所において相続人またはその代理人の立ち会いのもとで開封しなければならない」と、民法で定められています。
民法の規定に違反して勝手に遺言書を開封してしまった場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。
なお、誤って開封してしまっても、それだけで遺言書自体の効力が失われるわけではありません。
しかし、ほかの相続人から「遺言書の内容を書き換えたのではないか」といった不信感を持たれ、トラブルに発展するおそれもあります。
もし、遺言書を開封してしまった場合は、すみやかに家庭裁判所へ事情を説明したうえで、検認の申立てを行いましょう。
検認が必要な遺言書・不要な遺言書の判定フロー
遺言書の種類や形式によって、検認が必要かどうかが異なります。
- Q1:見つけた遺言書は「公正証書遺言」ですか?
- はい → 【検認不要】です。公証役場の正本・謄本で手続きへ。
いいえ → Q2へ - Q2:法務局の「自筆証書遺言書保管制度」によって保管されていましたか?
- はい → 【検認不要】です。遺言書情報証明書を取得して手続きへ。
いいえ → Q3へ - Q3:遺言書に封印(封がされている状態)はありますか?
- はい →【検認が必要】です。 開封はしないこと。
いいえ → 【検認が必要】です。 - ▶ 結果が【検認が必要】の場合
- 遺言者の「最後の住所地」を管轄する家庭裁判所で、検認を申立てます。

検認が必要:自宅などで保管されていた自筆証書遺言・秘密証書遺言
「法務局以外の場所で保管されていた自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は、検認が必要です。
| 遺言書の種類 | 検認の要否 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言 | 必要 | 遺言者が自筆で全文・日付・氏名を書き、押印して作成したもの ※財産目録は一定の要件のもとパソコン等で作成可能 |
| 秘密証書遺言 | 必要 | 遺言内容を秘密にしたまま封印し、公証人と証人の前に提出して存在を証明したもの |
| 公正証書遺言 | 不要 | 公証人が作成に関与し、原本が公証役場に厳重に保管されているもの |
| 自筆証書遺言(法務局保管) | 不要 | 法務局に預ける際、職員が形式面を確認して保管されているもの |
自宅で保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言は、第三者による偽造や改ざんのリスクを完全には排除できないため、家庭裁判所による検認が求められます。
検認が不要:公正証書遺言・法務局保管の自筆証書遺言
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認しながら作成し、公証役場で原本を保管します。
形式不備や改ざんのおそれが極めて少ないため、検認は不要です。
また、2020年に開始された「自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局で保管されていた自筆証書遺言も、検認は不要です。
保管時に法務局職員が形式を確認しており、改ざんリスクが低いためです。
この場合、相続手続きには法務局で発行される「遺言書情報証明書」を利用します。
検認手続きの流れ:必要書類の収集から申立てまで
検認の申立てまでの流れを、順を追ってお伝えします。

(1)必要書類をそろえる
検認の申立てには、主に以下の書類が必要です。
- 遺言書の検認申立書
- 遺言者の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの)
- 相続人全員分の戸籍謄本
- 法定相続情報一覧図(作成していれば戸籍の代わりに利用可能)
遺言書の原本は、検認期日当日に申立人が持参します。
なお、必要な戸籍の範囲は「誰が相続人になるか」によって変わります。
| 相続人の構成 | 収集が必要な戸籍の範囲 |
|---|---|
| 配偶者・子(または孫) | ・遺言者の出生から死亡までの連続した戸籍 ・相続人全員の戸籍謄本 |
| 直系尊属(父母・祖父母) | 上記に加えて ・死亡している直系尊属の死亡記載がある戸籍 |
| 兄弟姉妹・甥姪 | 上記に加えて ・遺言者の父母の出生から死亡までの連続した戸籍 など |
遺言者の子やその代襲者が死亡している場合には、その人の出生から死亡までの戸籍も必要です。
また、兄弟姉妹が相続人になるケースなどでは、集める戸籍の通数が多くなります。
必要な戸籍の範囲は、申立先の家庭裁判所で確認しましょう。
戸籍収集をスムーズに進めるための制度
2024年3月からスタートした「戸籍証明書等の広域交付制度」を使えば、全国各地の戸籍謄本を、最寄りの市区町村の窓口からまとめて請求できます。※
また、法務局の認証を受けた「法定相続情報一覧図」の写しを取得しておけば、検認申立てだけでなくその後の名義変更手続きでも活用できます。
- ※
- 戸籍謄本の広域交付制度では、兄弟姉妹、おじ・おば、おい・めいの戸籍は取得できません。
(2)検認申立書を作成する
検認申立書の書式と記入例は、裁判所のホームページからダウンロードできます。
- 申立人の氏名・住所・申立資格
- 遺言者の氏名・本籍・最後の住所・死亡日
- 申立ての趣旨(遺言書の検認を求める旨)
- 遺言書の保管・発見の状況(いつ、どこで見つけたか)
- 相続人等目録(相続人、受遺者の氏名・住所一覧)
記入例に沿って事実関係を記載していきます。
押印は認印で差し支えありません。
申立書の記入例
引用元 裁判所
(3)遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てる
検認の申立て先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
申立てには、以下の費用がかかります。
- 収入印紙:800円分(遺言書1通につき)
- 郵便切手:家庭裁判所から相続人への連絡用(金額・枚数は裁判所ごとに異なる)
持参による提出のほか、郵送での申立てを受け付けている裁判所も多くあります。
(4)家庭裁判所から検認期日の通知が届く
申立てが受理され、家庭裁判所が「検認期日」(検認を行う日)を決めると、相続人全員のもとへ通知書(呼出状)が届きます。
申立てから期日までは、おおむね1カ月程度です。
通知書には、期日・場所・持ち物などが記載されています。
申立人は遺言書原本を持参のうえ、検認に出席する必要があります。
一方、申立人以外の相続人の出席は任意であり、全員がそろわなくても検認は行われます。
検認期日当日の流れ:所要時間と裁判所で聞かれること
検認期日当日の持ち物や裁判官とのやりとりなど、主な流れを紹介します。
検認期日当日の持ち物リスト
検認期日の当日は、以下のものを持参しましょう。
- 遺言書の原本(封印のまま)
- 家庭裁判所から届いた検認期日通知書
- 申立人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 認印
- 収入印紙150円分(検認済証明書を当日申請する場合。遺言書1通あたりの費用)
- 筆記用具
当日の流れと所要時間
当日は、指定時刻に家庭裁判所の受付を済ませ、検認が行われる部屋へ案内されます。
検認では、出席した相続人等の立会いのもとで裁判官が遺言書を確認し、結果を「検認調書」に記録します。
検認の手続き自体は、状況にもよりますが、通常10〜15分程度で終わります。
受付や待ち時間、終了後の検認済証明書の申請手続きを含めても、1時間前後で完了する見込みです。
裁判官から質問されること
検認の場では、裁判官から出席者に対し、事実確認のための簡単な質問がなされます。
- 遺言書をいつ、どこで見つけたか(発見の状況)
- 遺言者の生前は、誰がどのように保管していたか
- 筆跡は遺言者本人のものと思われるか
- 印鑑は遺言者本人のものと思われるか
いずれも、わかる範囲で答えればよい内容です。
ほかの相続人と顔を合わせることはある?
検認期日に出席した相続人は、同じ部屋で検認に立ち会うため、出席者同士は原則として顔を合わせることになります。
相続人間で感情的な対立がある場合でも、検認の場は遺産の分け方を話し合う場ではないため、基本的には遺産分割を巡る争いになることはありません。
欠席した相続人には、後日、検認手続きが終了した旨が家庭裁判所から通知されます。
欠席者は、家庭裁判所で検認調書の閲覧や謄本の取り寄せによって、遺言書の内容を知ることができます。
検認済証明書の申請手続き
検認が終わったら、その日のうちに「検認済証明書」の交付を申請しましょう。
検認済証明書は、遺言書に「検認済み」であることを証明するものであり、相続登記や金融機関での手続きで必要になります。
検認済証明書の申請には、遺言書1通につき150円分の収入印紙と印鑑が必要です。
検認にかかる費用と期間の目安
検認に要する費用と期間の目安は以下のとおりです。
(1)自分で手続きを行う場合の費用目安
実費の合計はおおむね5,000円〜10,000円程度です。
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 800円 | 申立手数料(遺言書1通につき) |
| 郵便切手 | 約1,000円〜2,000円 | 家庭裁判所から相続人への連絡用(裁判所により異なる) |
| 検認済証明書 | 1通150円 | 検認完了後に発行する証明手数料 |
| 戸籍謄本等の取得費 | 数百円~数千円程度 | 通数により変動通数により変動 |
戸籍謄本類は、転籍が多い場合や相続人が全国に散らばっている場合は、通数が増え、取得費用がかさむこともあります。
(2)専門家に依頼した場合の費用相場
戸籍の収集や申立書の作成は、専門家に依頼することもできます。
| 主な依頼先 | 費用の目安 | 依頼できる範囲 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 3万〜5万円前後 | 戸籍等の収集、検認申立書の作成代行 |
| 弁護士 | 5万〜10万円前後 | 書類収集・申立書の作成に加え、検認期日への代理出席も可能 |
検認申立てから検認完了までは1〜2カ月かかる
検認の申立てから完了までは、おおむね1〜2カ月程度かかります。
戸籍謄本の収集などの期間も含めると、遺言書の発見から検認完了までは2〜3カ月程度かかると見込んでおきましょう。
- 必要書類の準備:約1〜4週間(戸籍の通数や相続人の人数による)
- 申立てから期日の通知まで:約2〜3週間
- 検認期日:1日
- 検認済証明書の受領:当日または数日後
検認に期限はないが、遺言書を見つけたら速やかに申し立てること
遺言書の検認手続き自体には、法律上の明確な期限はありません。
ただし、民法では「相続の開始を知った後、遅滞なく」検認を請求することとされています。
また、下記のように期限が設けられている相続手続きもあります。
また、検認が完了して「検認済証明書」を取得するまでは、遺言書を用いた相続登記や預貯金の払戻し・名義変更の手続きを進めることができません。
申立てから検認完了までに1〜2カ月程度を要することも考慮すると、スムーズな相続手続きのためにも、遺言書を見つけたら速やかに申立てを行うことが大切です。
検認を受けないことによる2つのリスク
遺言書の検認を受けないと、以下のような支障があります。
(1)相続登記や預貯金の払戻しが進められない
検認の必要な自筆証書遺言の場合、「検認済証明書」がないと、原則として法務局での相続登記ができません。
金融機関での預貯金の払戻し・口座解約なども手続きを進められないことがあります。
(2)過料や相続人同士のトラブルにつながる
遺言書の提出を怠ったり、検認を経ずに遺言を執行したりした場合も、5万円以下の過料の対象になります。
また、検認をしないまま遺言書を保有し続けることで、ほかの相続人から「改ざんしたのではないか」「都合の悪い遺言書を隠しているのではないか」と疑われ、相続人間のトラブルに発展するおそれがあります。
検認完了後の主な相続手続き
検認後、遺言書の有効性に争いがなければ、原則として遺言内容に沿って名義変更などの手続きを進めます。
(1)不動産の相続登記(法務局)
検認済証明書付きの遺言書を添付して、法務局に相続登記を申請します。
なお、相続登記は2024年4月から義務化されており、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記する必要があります。
(2)預貯金・有価証券の名義変更(金融機関)
銀行や証券会社での払戻し・名義変更をする場合も、検認済証明書と遺言書の提出が一般的です。
(3)相続税の申告・納付(税務署)
正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は、原則として「相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内」に相続税の申告・納付を行います。
検認に1〜2カ月を要した場合、残された期間で財産の調査や評価、遺言書に記載のない財産の遺産分割協議なども並行して進める必要があります。
そのため、相続税申告の準備は、検認の申立てと並行して始めておくと安心です。
また、不動産や株式など評価の難しい財産が含まれる場合は、相続に強い税理士へ早めに相談することをおすすめします。
遺言書の検認に関するよくある質問
Q1:申立人が検認期日に欠席したらどうなる?
Q2:相続人以外でも検認の申立てはできる?
Q3:複数の遺言書が見つかった場合はどうすればいい?
Q4:検認後に遺言書と異なる内容で遺産を分けることはできる?
Q5:パソコンやスマートフォンで作られた「デジタル遺言」に検認は必要?
まとめ:遺言書を見つけたら開封せず、早めに検認の申立てを
今回は、遺言書の検認について、手続きの流れや必要書類、検認期日の当日にすることをお伝えしました。
遺言書を発見した際は、開封せずに保管し、速やかに家庭裁判所へ検認を申し立てることが重要です。
- 遺言書の検認は、家庭裁判所が遺言書の状態を確認・記録する手続きで、自宅などで保管されていた自筆証書遺言と秘密証書遺言に必要となる
- 封印のある遺言書を勝手に開封すると、5万円以下の過料が科されるおそれがある
- 検認の完了までは1〜2カ月かかるため、相続税申告などの期限から逆算して早めに申立てる
私たちVSG相続税理士法人は、これまでに19,000件を超える相続税申告を行ってまいりました。
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