記事の要約
- 代表相続人とは、相続手続きにおける「相続人の窓口役」
- 代表相続人は法律で定められた正式な役割ではない
- 代表相続人になったとして有利なことがあるわけではない
金融機関で相続手続きを進めようとした時などに、「代表相続人を一人決めてください」と案内されることがあります。
代表相続人は法律で定められた正式な役割ではありませんが、その役割や決め方を正しく理解しておくと、相続手続きのスムーズな進行に繋がるのです。
この記事では、「誰がなるべきなのか」「どんな役割があるのか」「どうやって決めればいいのか」など、代表相続人に関する疑問にお答えします。
目次
相続の代表相続人とは?選び方から役割まで詳しく解説!
動画の要約相続手続きの中心となる代表相続人の役割や選び方を解説。手続きの効率化やトラブル回避のための重要ポイントを紹介しています。
代表相続人とは相続手続きの「窓口役」

代表相続人とは、一言でいえば「相続手続きにおける相続人の窓口役」です。
代表相続人は法律で定められた制度ではありませんが、金融機関や役所が相続手続きを円滑に進められるように、金融機関や役所が実務上で担う人を決めることがあります。
たとえば、相続人が3人いるケースにおいて、金融機関や役所側が一人ひとりに対応する形で進めた場合、大きな手間が生じます。
誰にどの書類を渡したか分からなくなったり、情報の伝達漏れが発生したりすると、手続きの停滞にも繋がりかねません。
そこで、相続人の中から代表者を一人立ててもらい、その方を窓口として連絡や書類のやり取りを一本化することで、手続きをよりスムーズに進められるのです。
代表相続人になっても納税義務を一人で背負うわけではない
代表相続人になったからといって、税金を単独で全額支払うようなことはありません。
たとえば、被相続人が亡くなって相続が発生したとき、相続人の一人に「相続人代表者指定届」が届くことがあります。
「相続人代表者指定届」とは
地方税の納税義務者が亡くなった際に相続人が複数いる場合、市区町村が納税通知書などの書類の送付先を明確にするための届出書です。
亡くなった納税義務者の相続人のうち一人を代表者として選び、「相続人代表者指定届」に必要事項を記載し、自治体が指定する添付書類とともに提出します。
「相続人代表者指定届」で指定された代表相続人は、あくまでも固定資産税をはじめとする納税通知書等の受取人となるだけです。
このとき、固定資産税等の支払い義務自体は、代表相続人1人だけが負うのではなく、法定相続人全員が「その法定相続分に応じてあん分した額」を納付します。
固定資産税の支払いを立て替えた場合は清算できる
納付期限などの関係で、代表相続人が一時的に固定資産税等を全額立て替える場合があります。
この場合、代表相続人は他の相続人に対して、それぞれの負担割合に応じた金額を後から請求することができます。
代表相続人に強い権限があるわけではない
代表相続人は手続き上の「窓口役」にすぎず、他の相続人よりも優遇されるわけではありません。
代表相続人に選ばれたからといって、「他の相続人全員の同意なしで遺産を処分・分割する権限はない」点に注意しましょう。
- 遺産分割前の不動産の処分
- 他の相続人の同意なく、遺産分割前に被相続人の不動産を売却することはできません。
- 預貯金の無断引き出し
- 預貯金の仮払い制度を適用できる額を超えて、勝手に被相続人の預貯金を引き出すことはできません。
- 遺産分割前の有価証券の無断売却
- 被相続人が保有していた有価証券を、独自の判断で勝手に売却する権限はありません。
また、「代表」という名称がついていますが、「自身の相続分が増える」等の優遇を受けることもありません。
ただし、相続人間で合意していれば、手続きの負担を考慮して多めに財産を分けることは可能です。
代表相続人が担う主な役割

代表相続人が実際に担当する手続きは多岐にわたりますが、大きく分けて5つの役割があります。
- 金融機関とのやり取りの窓口
- 必要書類の収集と提出
- 預貯金の解約・払い戻しや相続人への分配
- 固定資産税の納税通知書など、役所からの書類の受け取り
- 相続税申告に向けた税理士との連絡対応
ここからは、代表相続人が担う主な役割について、それぞれの項目ごとに詳しく解説していきます。
金融機関とのやり取りの窓口
被相続人が利用していた複数の金融機関に対し、手続きに関する連絡や問い合わせを他の相続人に代わって行います。
金融機関ごとに相続手続きの流れや必要書類は異なりますが、主に以下の流れで行います。
- 1.金融機関へ相続発生の連絡
- 被相続人名義の口座がある金融機関に連絡を入れます。
連絡を入れると手続きに必要な書類(相続手続依頼書など)や案内が金融機関側から送られますので、内容を確認しましょう。
なお、金融機関への連絡後に被相続人の口座は凍結されます。 - 2.必要書類の準備
- 取り寄せた「相続手続依頼書」の記入や、金融機関が指定する書類の収集を行います。
一般的には、「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」、「相続人全員の戸籍謄本」「相続人全員の印鑑証明書」などが必要です。
なお、遺言書がない場合は、相続人間で「遺産分割協議」を行い、合意内容をまとめた「遺産分割協議書」をあわせて準備します。 - 3.必要書類の提出
- 書類がすべて揃ったら、金融機関の窓口または郵送にて提出します。
- 4.払い戻し・名義変更
- 金融機関側で書類の確認が済んだ後、口座の解約(払い戻し)や名義変更の手続きが行われます。
金融機関の多くは「相続手続依頼書」に相続人の代表者を記載する欄を設けています。
この項目に記載された人が、金融機関とのやり取りにおける「代表相続人」として扱われることになります。
相続手続依頼書に関する注意点
「相続届」「相続関係届書」など、金融機関ごとに「相続手続依頼書」の名称が異なるため、注意しましょう。
必要書類の収集と提出
相続手続きに不可欠な戸籍謄本や印鑑証明書といった書類を他の相続人から預かり、まとめて提出します。
相続手続きの段階や相続の状況によって用意する書類は異なりますが、手続きごとに以下のような書類を準備します。
- 金融機関での預金払戻しの主な必要書類
- ■金融機関所定の相続手続依頼書
■相続の状況がわかる書類(遺言書・遺産分割協議書など)
■被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
■相続人全員の戸籍謄本
■相続人全員の印鑑証明書
■通帳、キャッシュカード - 不動産の相続登記で主に必要となる書類
- ■登記申請書
■被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
■被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
■相続人全員の戸籍謄本
■相続人全員の印鑑証明書(※遺産分割協議を行った場合)
■相続の状況がわかる書類(遺言書・遺産分割協議書など)
■不動産を相続する人の住民票
■固定資産評価証明書または固定資産税課税明細書 など - 相続税の申告で主に必要となる書類
- ■被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等(または法定相続情報一覧図の写し)
■被相続人の住民票の除票
■各相続人の戸籍謄本等(または法定相続情報一覧図の写し)
■各相続人の住民票
■各相続人の印鑑証明書(遺産分割協議書作成時)
■遺言書または遺産分割協議書
■各相続人のマイナンバー確認資料
■各相続人の本人確認書類 ほか
預貯金の解約・払い戻しや相続人への分配
相続人全員の同意のもと故人の預貯金を解約した後、払い戻された預金は代表相続人の口座などで一時預かりとなります。
たとえば、必要書類の提出後、仮に合計1,000万円の預金を解約したとすると、そのお金が代表相続人が指定した預金口座に振り込まれることになります。
その後、遺言書に記載された内容や、遺産分割協議で決定した内容(例:配偶者に500万円、長男に250万円、長女に250万円)に基づき、各相続人の口座へ正確に送金します。
固定資産税の納税通知書など、役所からの書類の受け取り
被相続人が不動産を所有していた場合、相続登記が完了するまでの間、代表相続人は固定資産税の納税通知書などの書類を受け取る窓口にもなります。
固定資産税のケースであれば、被相続人名義の不動産が所在する市区町村役場に、代表相続人が「相続人代表者指定届」と添付書類を提出します。
なお、「相続人代表者指定届」を提出したとしても、被相続人の不動産を取得した相続人は、法務局での「相続登記」が別途必要です。
相続税申告に向けた税理士との連絡対応
遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えて相続税の申告が必要な場合、税理士のような専門家に手続きの代行を依頼するケースは珍しくありません。
このとき、代表相続人を通して税理士との窓口が一本化されていると、専門家側もスムーズに作業を進められます。
正確な相続税申告書を申告期限内に作成・提出できるよう、代表相続人は税理士と連携しながら以下のような準備や対応を行います。
- 税理士から求められる必要資料の準備や提出
- 申告スケジュールや手続きの進捗などに関する定期的な面談
- 税理士から受け取った確認事項などを他の相続人へ共有
代表相続人の適任者とその選任方法
法律上の「相続人」であれば、故人の配偶者や子、親、兄弟姉妹など、誰でも代表相続人になる資格があります。
とはいえ、誰でもなれるからこそ円満に手続きを進めるためには、その役割に適した人を選ぶことが重要です。
代表相続人を決める際は、以下のような「求められる要素」を相続人全員が理解したうえで話し合い、全員が納得して合意することを目指しましょう。
- 時間的に融通が利く人
- 金融機関や役所の窓口などは平日の日中に開いていることが多いため、平日に動ける人や時間の融通が利きやすい人が向いています。
- 他の相続人に連絡が付きやすく、こまめに報告できる人
- 手続きの進捗状況などを、こまめに他の相続人へ報告できる誠実な人が適しています。
たとえば「A銀行の解約手続きが完了し、〇月〇日に預金が振り込まれる予定です」等の情報をこまめに共有できる方であれば、無用な疑念を生まずに手続きを進められます。
たとえば、「自身が長男だから」「故人と同居していたから」といった理由だけで、1人が一方的に代表者として手続きを進めてしまったとします。
この場合、他の相続人から「何か隠しているのではないか」という不信感を招く可能性があります。
これが原因で遺産分割協議の停滞に繋がる恐れもあるため、まずは候補者を立て、誰が最も適任かを相続人全員で話し合う場を設けましょう。
代表相続人が預貯金を分配するときに贈与税はかかる?
金融機関の実務上、複数の相続人がいる場合でも、解約された預貯金はいったん代表相続人の口座に一括で振り込まれるのが一般的です。
その後、代表相続人から各相続人へ送金する流れになりますが、この送金自体が贈与とみなされることはなく、贈与税の課税対象にもなりません。
遺産分割協議の合意内容に基づいた預貯金の分配は、あくまでも「遺産分割の履行」として扱われるためです。
ただし、この扱いが認められるには、預貯金の分配が「遺産分割の一環である」と立証されなければなりません。
そのため、遺産分割協議書には、以下の内容を明確に記載しておきましょう。
- 誰を代表相続人とするか
- 代表して解約手続きを行い、一時的に預かる旨の明記
- 各相続人への具体的な分配割合
- 振込手数料を誰が負担するか
遺産分割協議書の記載例
(0)預貯金
××銀行××支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇 名義人×× ××
取得割合
〇〇 〇〇 2分の1
△△ △△ 2分の1
代表相続人に関するよくある質問
Q1:代表相続人になるのを断ることはできますか?
Q2:代表相続人が複数いても良いですか?
Q3:手続きにかかった費用は誰が負担しますか?
Q4:代表相続人が手続きの途中で亡くなってしまった場合はどうなりますか?
Q5:代表相続人に報酬(お礼)は必要ですか?
相続手続きに関する相談は相続専門の税理士へ
被相続人の財産を相続した相続人が複数いる場合、税の申告や金融機関での手続きは基本的に相続人が全員で行うのは混乱を招きかねません。
相続人の中からその代表となる代表相続人を選んでおけば、固定資産税の納付、相続税の申告を税理士に依頼する場合の窓口、金融機関での預貯金等の手続きなどをスムーズに行えるようになります。
代表相続人になったからといって遺産を多くもらえるわけではありませんが、責任のある作業を行う立場です。相続人間で納得いく人を選任しましょう。
なお、相続税の申告などの相続手続きでは、状況次第でより専門的な知識を求められる場合があります。
そのようなときは、相続専門の税理士への相談がおすすめです。
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