東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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交通事故の被害にあったら、怪我から回復し、元の生活に戻りたいのは誰もが願うところです。
しかし、治療にかかる費用や慰謝料は、事故後すぐに全額を受け取れるわけではありません。
慰謝料や逸失利益など、示談金は細かい計算が必要な項目があります。
途中で相手方と揉めてしまえば、示談交渉が難航してしまう場合もあるでしょう。
今回は、示談までの流れや、示談をスムーズに進める方法を解説していきます。
示談成立前に慰謝料を受け取れる場合もあります。
ぜひ参考にしてください。
目次
交通事故の慰謝料は、示談が成立してから約2週間後に振り込まれるケースが多いです。
示談とは、当事者(保険会社が代理する場合を含む)同士の話し合いで示談金を確定させ「これで解決にしましょう」と最終的な合意をする行為です。
示談は、慰謝料などを全て算定してから行うため、治療等をひと通り終了させてからとなります。
また、被害者死亡の場合には、葬儀のあと四十九日が過ぎてから行うのが一般的です。
例外として、治療費や休業損害など、示談前であっても金額が確定する費用については先に受け取る手続きがあります。
特別な事情がある場合を除き、示談の成立によって事故の話し合いは終了です。
なお、示談金と慰謝料は混合される場合がありますが、示談金とは示談の賠償金総額を指し、慰謝料や治療費等を全て含めた金額をいいます。
次に、交通事故が起きてから示談が成立するまでの流れを、詳しく解説していきます。
交通事故の被害者になると、以下の流れで通常は加害者や加害者側保険会社と示談交渉をします。
では、具体的な示談交渉までの流れを解説します。
事故にあった場合、道路交通法によって警察への報告が義務付けられています。
また、警察に報告すると、後ほど事故証明書を発行してもらえます。
事故証明書は保険会社に請求する際に必要となるため、警察に必ず報告しましょう。
交通事故にあった際は、たとえ自覚症状がなくとも必ず病院で受診しましょう。
事故直後には問題なくとも、時間が経つと痛みが出てくるケースは珍しくありません。
事故後すぐに受診していなければ、事故との因果関係が立証できなくなる場合があります。
賠償請求に支障をきたす場合があるため、できる限り早く受診するようにしてください。
また、症状が固定するまでは定期的に通院を続けましょう。
通院の頻度があまりに低いと「治療はもう必要ないのではないか」と保険会社に疑われる可能性があるためです。
そうなると、症状はあるが補償はされないといった事態になりかねないため、医師による指示通りの通院を心がけましょう。
治療が終了すると、相手方の保険会社と示談交渉を開始します。
治療にかかった費用や休業損害、逸失利益、精神的苦痛に対する慰謝料などを請求します。
逸失利益とは、交通事故がなければ得られたはずの利益です。
双方が賠償金の計算方法や支払金額、支払い方法などについて合意ができれば、その内容の通りの示談書を作成し、署名捺印をして示談が成立します。
前述のとおり、示談は一度成立すると追加で賠償金などを請求できなくなるため、少しでも不安や疑問点があれば弁護士に相談しましょう。
もし示談が不成立となった場合は、調停やADR、訴訟といった手続きをする必要があります。
ADRとは裁判外紛争手続の略称で、公正中立な第三者を加えて当事者同士で話し合いによる解決を目指す方法です。
特に訴訟となった場合には、弁護士に頼らざるを得ません。
もし示談交渉を進めるうちに「交渉ではまとまりそうにない」と感じた場合は、早めに弁護士に相談しておくと、交渉や手続きをスムーズに進められます。
交通事故による示談交渉が成立した後となると、慰謝料を受け取れるのは随分先となり、当面の生活費に困るケースもあります。
示談成立前に慰謝料受け取る方法を、ケース別に解説します。
自賠責保険の場合、仮渡金請求の制度があります。
仮渡金請求とは、被害者が加害者の加入する自賠責保険に、示談金が支払われる前に仮渡金を請求できる制度です。
損害賠償責任について争っている場合や、損害額や賠償額がまだ確定していないような場合であっても、仮渡金請求をすれば慰謝料を請求できます。
しかし、加害者に損害賠償責任がないと確定した場合や、損害賠償決定額が仮渡金を下回った場合は差額を返還しなければなりません。
仮渡金は賠償額の一部を前渡ししただけであり、賠償額が確定した際に、仮渡金の金額を差し引いて賠償金が支払われます。
治療費の一括払いと呼ばれる保険会社のサービスによって、交通事故によるケガの治療費を示談前に支払ってもらえます。
ただし、この一括払いはあくまで任意保険会社のサービスであり、義務ではありません。
任意保険会社の判断で打ち切りを行う場合もあります。
被害者自身が加入している任意保険には、示談成立前であっても保険金を受け取れる場合があります。
人身傷害保険とは、自動車事故による自身や同乗者のケガの治療費や休業損害、慰謝料などの損害について補償する保険です。
自身の過失割合にかかわらず、実際の損害額保険金として受け取れるため、損害額が確定していれば、示談成立前であっても請求できます。
搭乗者傷害保険とは、契約した車に乗っている人が交通事故によりケガをしたときの損害を補償する保険です。
搭乗者傷害保険は、あらかじめ決められた金額が支払われるため、損害額が確定する前に保険金を受け取れます。
交通事故の示談交渉には、専門的な知識や法律の知識が不可欠なため、弁護士への相談が望ましいでしょう。
しかし、中には費用などの面で依頼できない人もいるかもしれません。
そこで、示談交渉をスムーズに進める方法について解説します。
示談交渉を行う際に賠償額について主張するには、事故の状況を正確に把握するのが不可欠です。
時間が経つと記憶が曖昧になるため、事実と違う内容を主張してしまうケースがあります。
もちろん、根拠もなく事実ではない主張をしても当然聞き入れてもらえませんし、場合によっては不利になるケースも珍しくありません。
こういった状況を防ぐために、被害状況をスマホやカメラで撮影しておくと証拠として残るため、交渉をスムーズに進められます。
交通事故にあうと、ケガの治療だけではなく、さまざまな精神的負担がかかります。
メンタルが安定していないタイミングに、加害者や加害者側保険会社の担当者の対応が悪いと、つい怒鳴って声を荒げてしまうなどがあります。
しかし、被害者が感情的になったところで交渉が有利に進みません。
さらに、保険会社に「クレーマー」と判断され、交渉が難航してしまう場合もあります。
交通事故の被害者となれば加害者に文句の一つも言いたいところではありますが、自分のためにも冷静な対応を心がけましょう。
交通事故による示談交渉で確定した賠償金は、通常は加害者が加入している保険会社から支払われます。
しかし、加害者が任意保険に未加入であるときなど、自賠責保険にしか加入していない場合は、被害者は納得のいく賠償金を支払ってもらえません。
被害者が加入している保険によっては、納得のいく賠償金を支払ってもらえないケースであっても利用できる契約内のサービスがあります。
必ず双方の保険内容を確認しましょう。
また、業務中の事故などであった場合は、労災保険を利用できる場合もあり、併せて確認しましょう。
交通事故の慰謝料額を算出するために3つの基準があり、どの基準で算出するかで金額が大きく変わってきます。
自賠責保険は、車を所有すると加入が義務付けられている強制保険です。
自賠責保険は最低限の補償をするための保険のため、自賠責基準は算出する金額の基準としては最も低くなります。
任意保険は、自賠責保険のように強制保険ではなく、自賠責保険よりも手厚い補償内容を求めて任意で加入する保険です。
自賠責保険だけでは補償が満足にできない場合のための保険であり、自賠責保険よりも高い基準で算出されるケースがほとんどです。
しかし、これは各保険会社がそれぞれ独自に定めている基準であり、一般的には弁護士基準と比べても低額に設定されます。
弁護士基準は、裁判所の過去の判例に基づいて算出される基準です。
自賠責基準や任意保険の基準よりも、弁護士基準は高額に設定される傾向にあります。
しかし被害者が自ら示談交渉をするときに、相手側保険会社が弁護士基準によって慰謝料を算出するケースは基本的にはありません。
基準の金額を把握すれば、保険会社との示談交渉の際に増額を求められます。
交通事故慰謝料は、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があり、それぞれ算定の方法が違います。
計算例は以下のとおりです。
任意保険基準については、各保険会社によって計算方法は非公開のため省略します。自賠責基準と同等か、やや高い程度とお考えください。
入通院慰謝料例)初診から治療完了までに90日を要し、そのうち実際に通院したのが30日である場合
※自賠責は基準日額が4,300円(2020年3月31日以前の事故については4,200円)と
定められており、対象日数は「治療完了までに要した日数」か「実通院日数×2」の少ない方を採用します。
※弁護士基準は、専用の基準表を用います。金額は目安であり、事案によって変わります。
後遺障害慰謝料例)むちうちによる後遺症が残り、後遺障害14級と認定された場合
※自賠責、弁護士基準ともに後遺障害等級によって金額が決まっています。弁護士基準は目安であり、事案によって変わります。
死亡慰謝料例)父が一家の支柱で、母(扶養外)、子2人(扶養)の4人家族で、父が死亡した場合
※自賠責基準では、亡くなった方が家族のどのような立場なのか、請求権者は何人か、扶養家族はいるのかでそれぞれ基準額が定められています。
本事例の場合、一家の支柱(400万円)、請求権者3人以上(750万円)、扶養家族あり(200万円)が合算され1,350万円となります。
なお、一家の支柱について2020年3月31以前の事故は、350万円です。
※弁護士基準は、亡くなった方が家族のどのような立場なのかで一律金額が決まっています。本事例の場合、一家の支柱として2,800万円が目安で、事案によって増減します。
交通事故の慰謝料を請求するときは、以下のポイントを押さえましょう。
それぞれのポイントを解説します。
交通事故による怪我の治療費は、治療のたびに加害者側の保険会社が病院へ直接支払うのが一般的です。
しかし、3カ月~6カ月ほど治療を継続していると、保険会社から、治療費を打ち切ると打診される場合があります。
その際には、提案をすぐには受け入れず、医師に相談するなどの慎重な対応が大切です。
人身事故においては、よほど特殊な事情が無い限り、怪我の治療費は必ず発生します。
そのため、事故後すぐの治療費は、基本的には示談を待たずに支払ってくれるようになっています。
しかし、治療が長引くと、保険会社は「そろそろ治療を終えてもよい時期なのでは?」と考え始めるでしょう。
「必要のない治療を行って、引き伸ばししているのでは?」と疑われる可能性もあります。
保険会社は、被害者に支払うお金が少ないほど自社の利益になるため、早めに治療を終えてもらった方が都合がよいでしょう。
しかし、実際に必要な治療を決めるのは医師です。
まず怪我があり、必要な治療があって、その損失を埋めるために治療費を請求します。
決して保険会社の営業利益のために、治療のスケジュールが決まるわけではありません。
保険会社から治療費の打ち切りの連絡が来たら、まずは医師への相談と、弁護士へ相談するのがおすすめです。
交通事故による慰謝料を受け取るには、消滅時効を迎える前に相手方に請求する必要があります。
消滅時効とは、おおまかに言うと、請求できる権利を放置すると期限切れになる制度です。
消滅時効の期限が経過したあとに相手方が時効を主張すると、賠償金を請求する権利は消滅し、受け取れなくなります。
交通事故被害における賠償請求の消滅時効は、基本的に事故の翌日から数えて5年です。
ただし、後遺障害慰謝料は後遺症が確定してから初めて請求できるため、医師から症状固定と診断された翌日からカウントします。
「相手方に請求」とは、単に保険会社へ「支払ってくれ」と連絡するだけでは不十分な場合がある点に注意が必要です。
この場合、時効完成の猶予は6カ月しか延長されません。
さらに、請求した証拠を残しておかなければ、相手方から「請求を受けていない」と主張される恐れもあります。
時効を中断させてしっかりと相手方に請求し続けるには、裁判所を通して所定の手続きを行う必要があります。
時効については、その他にも細かい規定があるため、素人判断は危険です。
期限が近づいている場合や、過ぎてしまったかもしれない場合には、すぐに弁護士にご相談ください。
交通事故の「過失割合」とは、交通事故の当事者それぞれについて、事故の結果に対する責任割合です。
当事者が二人の場合、全員の過失割合を合わせた場合を10割とすると、一方の過失割合が7割であれば、もう一方の過失割合は3割になります。
過失割合を決定する方法は、当事者同士による話し合いです。
過失割合の決定は「民事不介入の原則」により警察は介入せず、事故現場での状況確認と記録のみを行います。
この過失割合を決定する基準は、過去の裁判例です。
警察が作成する実況見分調書によって、事故の状況に応じて修正され、過失割合が決定します。
しかし、保険会社もできる限り賠償金を抑えたいと考えるため、過失割合を加害者側に有利な主張をする場合がほとんどです。
そのため、提示された過失割合に納得がいかない場合は、過去の裁判例から根拠を示して主張する必要があります。
交通事故により支払われる賠償金は、慰謝料のみではありません。
治療費や休業損害、逸失利益なども支払われるため、トータルで支払われる金額に注意して交渉を進める必要があります。
保険会社が提示してくる金額が、慰謝料は高いが休業損害や逸失利益が低く設定され、トータルでみると相場より安いケースになっていないか、確認してください。
交通事故の慰謝料請求は、専門知識が必要となるため弁護士に依頼しましょう。
ここからは、弁護士に交通事故の慰謝料請求するメリットを解説します。
弁護士に依頼すると、慰謝料の増額に期待できます。
理由は、主に2つあります。
まずは、慰謝料の算定基準が高いためです。
弁護士は、弁護士基準で賠償額を算定するため、他の自賠責や任意保険の基準よりも高くなります。
例えば、入通院慰謝料について初診から治療完了までに90日を要し、そのうち実際に通院したのが30日としましょう。
あくまで目安ではありますが、弁護士基準の場合、他の基準より20〜40万円以上高い入院慰謝料を受け取れるケースがあります。
さらに、後遺障害慰謝料や死亡慰謝料については、さらに大きな差が出ます。
2つめの理由は、弁護士が法律と交渉のプロであるためです。
慰謝料について個人で交渉をしようとすると、法的な主張が難しい可能性が高いです。
相手が契約している保険会社からの圧力に押されてしまう場合や、いかにも正当に聞こえる言葉で言いくるめられる場合も出てきます。
請求できる賠償金を見落として慰謝料を受け取れなくなってしまうケースも見られます。
弁護士に依頼すると、こうした不利な状況を避け、適正な手続きを進められます。
弁護士に依頼すると、慰謝料の早期受け取りが期待できます。
その理由は、以下のとおりです。
交通事故の手続きに慣れている人は少なく、個人の方は初めて見る書類や手続きがどうしても多くなります。
証拠を集めるにしても、法的に何が利用できるのか、何が有利になって何が不利になるのかわからない場合がほとんどです。
一つひとつ調べるにしても、インターネットに書いてある情報の多くは一般的なパターンであり、個別の状況に対応できるかの判断がつきません。
そうした事情から、中途半端な書類や証拠を集めると、逆に保険会社から指摘が入り、不利になってしまう場合もしばしばです。
弁護士に依頼すると、手続きに必要な書類や書き方、証拠収集、交渉を全て任せられます。
保険会社としても、弁護士に対しては無理な主張は通らないと知っているため、素直に交渉に応じてくれるようになります。
手続きをスピーディーにするには、弁護士へ依頼するのがよいでしょう。
弁護士に相談するタイミングは、怪我の初診後すぐがベストで、その後は早いほどよいです。
初診前であっても、気になる点があればすぐに相談して大丈夫ですし、遅くても示談が成立する前には相談するのがよいでしょう。
また、示談成立後にもやり直しできる場合もあるため、諦めずにまずは相談してください。
弁護士への相談までに時間が経過してしまうと、必要な診察を忘れる、残しておくべき証拠を捨ててしまうといった状況が起こりかねません。
さらに、弁護士は手続きや交渉を代理できるため、早いほど被害者自身の精神的な負担も少なく、治療に集中できるようになります。
また、相手方に対して言ってはいけない内容や、やってはいけない行動を把握でき、不利な状況を防ぐ行動にも繋がります。
費用が気になるかもしれませんが、交通事故における弁護士費用は、相談が早いと高くなるわけではありません。
むしろ、相談が遅れるほど請求できたはずの賠償金を逃してしまうパターンが増え、金銭的にも損をする場合があります。
弁護士への相談は、可能な限り早めに行うようにしましょう。
交通事故の慰謝料は、できるだけ早めにもらいたい方が多いでしょう。
治療費など、示談前に受け取れる金銭もありますが、基本的には治療等が全て終わったあとに示談を行うまで、待つ必要があります。
しかし、最後まで個人で交渉を続けるのは得策ではありません。
過失割合から揉めてしまうと、治療費が減額される可能性があるほか、治療ごとにすぐに支払われないケースも出てきます。
さらに治療費の打ち切りを打診された場合や、思ったより示談金を低く提示された場合は、交渉が難航するケースがあるでしょう。
こうなると、慰謝料の受け取りはどんどん遅れていってしまいます。
弁護士に依頼すると、交渉をスムーズにして素早く慰謝料を請求可能になり、増額にも期待できます。
交通事故については、弁護士に早めに相談し、解決を依頼するとよいでしょう。