東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故による保険金詐欺には様々なケースがありますが、大きく2つのパターンに分類することができます。
交通事故の慰謝料・保険金詐欺のパターン
交通事故による保険金詐欺において、最も多いものが交通事故を偽装する、いわば自作自演によって不正に保険金を請求するパターンです。
知り合いなどと共謀して多くの証言を集めると疑われる可能性も低く、事故処理や示談交渉などが早く進むため、保険金が比較的早く支払われます。
実際に交通事故にあってしまった場合に、事故とは関係のない物の修理費用を請求することや、医師と示し合わせ、通院しているようにみせかけることで保険金を水増しして請求するようなパターンもあります。
具体的には、被害車両に積んでいた交通事故以前から壊れているテレビの修理費用を請求することや、通院していない日にも関わらず、受診したという虚偽の記録をすることなどがあります。
保険金詐欺だと判断された場合は、治療費や休業補償金の支払いを打ち切られたり、刑事事件として告訴されることがあります。
交通事故にあった際に病院に支払う治療費は、大抵の場合は保険会社から病院に直接支払ってもらえます。
そのため、被害者が病院の窓口で支払う必要はありません。
しかし、嘘をついて通院していると、保険会社から過剰診療・過剰通院ではないかと疑われ、治療費の支払いを拒否されてしまうかもしれません。
また、疑わしいと判断される人には治療費だけでなく、慰謝料や休業損害といった支払いも拒否されることがあります。
交通事故の賠償についての治療費の支払いは、「必要かつ相当な実費全額」の賠償が認められることになるので、医学的に必要でない治療費は拒否されることになります。
過剰診療などについて保険会社から悪質と判断されると、保険金詐欺として告訴される可能性もあります。
詐欺罪で逮捕されるかというと、基本的には逮捕されることはあまりありません。
通院をしていない日に通院したとして治療費を請求するような場合は、だまそうとしているのが明らかなので逮捕される可能性は十分あります。
しかし、自己申告でしか判断できないような症状の場合は、本当に痛みが残っているのかといったことや、保険会社をだますつもりだったのかといったことは、本人以外が証明することは非常に困難です。
そのため、刑事事件として詐欺罪で逮捕される可能性は低いでしょう。
また、交通事故にあったときに「関係のない古い傷も車両保険を使って直せばいいか」というような軽い気持ちで、修理業者などに嘘の報告をするようプレッシャーをかける人が少なからずいらっしゃいます。
言うまでもなく、嘘をつき、だまして保険金を請求する保険詐欺は、立件されるかどうかはさておき重大な犯罪行為です。
ときには取り返しのつかない事態にもなりかねませんので、絶対に行わないようにしましょう。
交通事故において、過剰診療などにより過大に保険金を請求する被害者がいるため、保険会社も詐欺ではないか慎重に判断します。
では、具体的にはどのような基準で判断しているのでしょうか。
治療費や慰謝料が適正な金額かどうかは、ケガの種類や程度と通院期間が適切かどうかで判断されます。
たとえば、事故により軽い打撲を負っただけの場合に1年以上通院しているようなときは、明らかに不適切です。
こういった場合は、保険会社から治療費の打ち切りを宣告されることがありますし、慰謝料を請求することができなくなることもあります。
通院の際に、行っている治療の内容も重要な判断材料とされます。
病院に行き有効な治療を行っているのであれば、当然慰謝料や治療費は支払われます。
しかし、特にこれといった処置も受けず、ただ湿布を受け取って帰るだけというような状況であれば、治療日数として認められないことがあります。
入通院慰謝料は、交通事故が原因で医療機関への入院や通院をしなければならなくなったことによって生じた精神的な損害に対する慰謝料です。
ケガの種類や程度によって通院する頻度も異なりますが、極端に通院頻度が低いと「本当はもう治療の必要がないのでは」と疑われてしまうことがあります。
実通院日数が少ないと、実通院日数の3倍程度を通院期間として計算されることもあります。
保険会社としては、交通事故に関する治療費の不正請求や詐欺の事例が後を絶たないこともあって、被害者の請求が適切なものであるかを慎重に確認する傾向があります。
保険詐欺と疑われないためには次のような対策方法があります。
交通事故にあった際には、すぐに病院に受診しましょう。
事故から受診までに時間がかかると、本当にその症状が交通事故によるものだという立証が難しくなり、保険会社に疑われる可能性が高くなります。
事故直後はひどい痛みもなく、大ごとにはならないだろうと思っていても、時間が経ってから痛みや不具合が出てくるといったこともあります。
交通事故の被害にあったときは、必ず速やかに病院を受診することが大切です。
ほとんどの病院や医師は問題ありませんが、ごく稀に保険会社に対しての対応が不適切で、保険会社から疑いの目を向けられている医師がいます。
そのような医師に診察を受けると必要な治療であっても疑われてしまうことがあるので、事前にインターネットなどを駆使して適切な医師を選ぶことも重要です。
通院の頻度があまりに低すぎると、通院自体が「本当は必要ないのでは」と保険会社に疑われることになりかねません。
仕事で忙しい場合などには、つい通院が億劫になり、間隔が空いてしまうことがありますので注意しましょう。
通院の頻度を適切なものにし、定期的に通院することが大切です。
むちうち症などの客観的なデータを示すことが難しい症状では、医師の診断や治療内容は被害者の自己申告によって判断されます。
そのため、被害者の申告が曖昧なときや症状が頻繁に変化すると、保険会社からすると虚偽の申告をしているのではないかと疑われることがあります。
自覚症状を医師に伝えるときは、できる限り具体的かつ正確にわかりやすく伝える必要があります。
交通事故により、むち打ち症などになった場合は整骨院にかかることは珍しくありません。
医師の指示で通う整骨院での治療も費用を保険請求できますので、それ自体には特に問題ありません。
しかし、整骨院での治療は長期間に渡ることが多く、検査が不十分で客観的な判断が難しいときがあり、また不正な行為を行う整骨院もあるため、保険会社は慎重になる傾向があります。
医師の同意もなしに、独断で整骨院や接骨院に通院してしまうと、治療費を支払ってもらえず全額自腹になってしまうこともありますので注意が必要です。
また、柔道整復師のような、医師ではない人が行う治療は治療費として認められません。
ここでは、具体的な交通事故による慰謝料・保険金詐欺として裁判になった事例を紹介します。
保険金を手に入れることを目的として、豊橋市の無職の男(71)と共謀し、この人物が客として乗ったタクシーに自分が運転するレンタカーを追突させることにより、保険金約300万円を騙し取ったなどとして、詐欺などの罪に問われた豊橋市の無職の男(59)に対する判決宣告がありました。
裁判官は「主犯は別の男であるが、被告人も重要な役割を果たしている」と述べ、また「身勝手な動機に酌量の余地はなく計画性も認められる」として、懲役1年6か月(求刑懲役2年)を言い渡しました。
こちらは、保険金詐欺の交通事故を偽装するパターンに当たります。
交通事故により障害が残ったと嘘の申告をすることで保険金を騙し取ったとして、損害保険会社2社が埼玉県宮代町の男性と同県鷲宮町の男性医師を相手取り、支払った保険金額に当たる約2500万円の損害賠償を求めた訴訟が行われました。
その判決においてさいたま地裁は、男性と男性の主治医に請求どおりに支払った保険金全額を返金することを命じました。
判決によりますと、男性は県内で3回交通事故に遭い、主治医である男性医師の診断書によって身体障害者2級の認定を受けた上で、「杖や介助具がないと歩けない」などと嘘の報告をし、保険会社から保険金の支払いを受けたとのことです。
こちらは、交通事故に便乗して不正請求するパターンです。
原告が自動車を運転し、停車中に被告車両に追突されて、頚椎捻挫・腰椎捻挫等のケガを負ったとして6か月通院したケースです。
被告が本件事故の当日時点でカードローン等の債務を抱えていたことや、原告が収入について公的な証明書を提出しないこと、原告が事故前に高額の保険金請求の実績があることなど、様々な事情を詳細に認定した上で、「被告は、原告と共謀の上、故意に被告車を原告車に追突させたものと認められる」と認定し、請求を棄却しました。
また、原告と被告はお互いに面識はなかったと主張していましたが、合理的な理由なく携帯電話の通話履歴の提出を拒んでおり「互いに面識がなかったとする原告と被告の供述を採用するのは困難である」とも異議を唱えています。
こちらは、保険金詐欺の交通事故を偽装するパターンになります。
交通事故によりケガをした場合は通院し治療を行いますが、被害者の中には治療が長引き保険会社から「治療費の支払いを打ち切りたい」と言われることがあります。
しかし、まだ症状が残っているときに打ち切られるわけにはいきません。
では、そのような場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。
ケガの種類や程度に応じて、ある程度の治療期間の基準というものは確かにあります。
しかし、当然ながら治療期間は個別のケースによって異なります。
そもそも、治療の必要性を判断できるのは医師だけであり、保険会社が勝手に判断してよいものではありません。
医師と相談した上で今後も治療が必要となれば、保険会社の申し出に従う必要はありません。
それでも強引に主張してくる場合は、弁護士に相談しましょう。
交通事故による治療費や慰謝料などの損害賠償の支払いに、加害者側の保険会社が応じない場合には、自賠責保険に被害者自らが直接請求する「被害者請求」というものがあります。
加害者の側保険会社が一括対応をしている場合であれば、保険会社から直接病院に治療費が支払われるので、被害者自身で治療費を立て替える必要はありません。
しかし、相手側険会社が一括対応をしていない場合は、被害者が治療費を立て替えなければならないこともあるので注意が必要です。
交通事故の場合は健康保険が利用できないとよく言われますが、交通事故でも健康保険を利用することは可能です。
治療費の支払いを打ち切られてしまうと、被害者自身で治療費を立て替える必要がありますが、健康保険を使うことで、自己負担は3割になりますので、経済的な負担は軽減することができます。
ただし、第三者による加害行為によって利用することになるため、「第三者行為による傷病届」を被害者が加入している保険組合に提出する必要があります。
被害者自身が加入している保険に、人身傷害補償特約が付いている場合は、その特約を使い治療費を支払ってもらうことができます。
この特約を使っても保険の等級が下がることはないため、自身の保険内容を確認し、もし付いているのであれば使うことをおすすめします。
業務中や通勤途中で事故にあった場合は健康保険を使うことはできませんが、代わりに労災保険を使うことができます。
この労災保険は、利用を申請したとしても慰謝料の請求に影響はありませんので、積極的に利用しましょう。
ただし、労災保険は使えるケースと使えないケースが細かく定められていますので、注意が必要です。
治療費の支払いを打ち切ることに合理性があるかどうかの判断は、専門家でなければ難しいものがあります。
弁護士に依頼すると、被害者の代わりに担当医師と面談をして症状固定などについて話し合い、治療費打ち切りの合理性を検証して治療費の支払いを延長するよう保険会社と交渉を行ってくれます。
交通事故による保険金詐欺は自分には縁遠いものと考える人は珍しくありません。
しかし、本人が意図するか否かに関わらず、保険会社に疑われ治療費を打ち切られるといったケースが少なからずあります。
ただ普通に治療が長引いているだけにも関わらず、保険会社から疑いの目を向けられることがありますが、正当な治療費や賠償金を受け取ることは非常に大切なことです。
交通事故の案件に詳しい弁護士であれば、適切な治療費を受け取ることができるよう保険会社と交渉してくれますし、適切な医師を紹介してもらえることもありますので、少しでも不安がある方は弁護士に相談してみるとよいかもしれません。