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倒産と再起の流れVOL7 取引先の倒産のサインを知って連鎖倒産から自社を守る

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

倒産と再起の流れVOL7 取引先の倒産のサインを知って連鎖倒産から自社を守る

会社を経営していて一番怖いのは、取引先が倒産したときです。

取引先の倒産によって、売上金が回収できないと、自社の資金繰りも苦しくなります。

資金がまわらなくなり、自社までも倒産することを連鎖倒産といいます。

連鎖倒産を防ぐために気をつける必要があるのはどんなことでしょうか。

取引先が出す倒産のサインを見逃すな

倒産には、前兆となるサインが出ている場合が多くあります。

そのサインにいち早く気づき対策をしておくことで、連鎖倒産を免れることができるかもしれません。

では、どのようなサインに注意すればいいのでしょうか。

連鎖倒産とは

会社が倒産する理由の一つに連鎖倒産というのがあります。

これは、取引先などの企業が倒産したことによって、売掛金の回収ができなくなり、自社の資金が回らず倒産することをいいます。

また、企業によっては、メインの取引先が一つ、ないしは二つぐらいしかないという企業も多くあります。

いつも仕事をもらっているメインの取引先が倒産してしまうと、売上が大きく下がってしまい、新規の取引先を見つけることができず、倒産というような事例も多くあります。

このように、会社は自社のミスや責任ではない部分での倒産ということも十分にあり得るのです。

特に自社の売上や取引先を、特定の企業に頼っている場合は、その企業への依存度が強くなりますので、その企業の倒産によって資金繰りや売上減少などの事態に巻き込まれる可能性は大きくなります。

そこで大事になってくるのが、その企業が出す倒産のサインを見逃さないことです。

どのようなサインが危ないサインなのでしょうか。

取引先企業の倒産のサイン

次のような事例があると、ひょっとすると危ないサインかもしれません。

もし気がつくことがあれば、その取引先に対して、より注意深く観察していくべきでしょう。

支払いは期限内に行われているか

支払いが金額通りきちんとされているか、期限内に振り込まれているか、などはとても重要なサインです。

支払いが遅れだしているというのは、もしかすると資金繰りが苦しくなっているのかもしれません。

また、売上減少などの事態が発生している可能性もあります。

支払遅滞が生じ出すというのは、とてもわかりやすく一番気づきやすいサインです。

これは見逃さないようにしましょう。

また、もともと支払い期限にルーズな社長というのもいます。

その場合、社長の性格だから仕方ないと思うのではなく、ルーズだからこそ危なくなることもあることを理解しておきましょう。

従業員の入れ替わりが激しくなっていないか

そこの会社に働く従業員も倒産のサインとしては重要な情報になります。

従業員の入れ替わりが激しくなってくると、そこには何か理由があるかもしれません。

社長の求心力の低下が原因なのか、それともそれ以外の理由が生じているのかもしれません。

どちらにしろ、従業員の入れ替わりが激しくなっているというのは、危ない兆候かもしれません。

また、従業員に明らかに態度が悪くなっている、あるいはやる気がなくなっている、というようなことが見られる場合もあります。

こういった場合も内部で何かが起こっている可能性があります。

このあたりも気をつけて見るようにしましょう。

社長自身の金遣いが荒くなっている

社長自身の普段の金遣いや、あるいは会社としての資金の使い方が大きくなっている場合、気をつけたほうがいいでしょう。

もちろん、売上があがり利益が出ているからこそ、遣えるお金が豊富にあり、金遣いが荒くなってしまっているのでしょう。

ですが、人間とはなかなか生活レベルを下げることができない生き物です。

一度金遣いが荒くなると、なかなかそれを改められずそれが原因で倒産に至るというケースも多くあります。

高級車や高級不動産の購入を繰り返している、あるいは毎日のように高級クラブを飲み歩いているなど、外から見ても分かるような金遣いの荒さが目立つようであれば、気をつけたほうがいいでしょう。

サインが見えたら、深く調べてみる

もちろん、これらのサインが必ずしも倒産につながるわけではありません。

ですが、もしそれが倒産につながるのであれば、対策を打っておかないと自社も巻き込まれてしまうかもしれません。

自社にとって影響の少なくない取引先の場合は、サインに気づいたら、さらに深く調べておくことで事前に対策を取れることもあるでしょう。

では、どのような調査方法があるのでしょうか。

取引先の信用調査に役立つサイト一覧

帝国データバンク
東京商工リサーチ
登記情報提供サービス

調査会社を利用する方法

企業情報の調査会社として有名なところでは、帝国データバンクや東京商工リサーチという会社があります。

こういった調査会社を利用するのも一つの方法です。

ただし、これらの調査会社を利用するには費用がかかってきます。

また、中小企業の場合、調査会社にデータがない場合もあったりします。

そのあたりは、相手の企業の規模感によって使うべきかどうかを検討することになります。

会社の登記簿を取得して調べてみる

相手が株式会社などの法人であれば、会社の登記簿を取得するという方法があります。

会社の登記簿には、名称や本店所在地などのほかに、設立日や資本金の額なども見ることができます。

たとえば、会社の独自サイトや取引をするにあたって、手に入れた情報と登記簿の情報が違っていれば、虚偽の可能性も出てきます。

その場合は詳しく調べてみる必要があります。

また、登記簿の情報には過去変更した情報も取得することができます。

明らかに変更回数が多かったり、本店を頻繁に移動していたりなど、何かの兆候かもしれません。

また、本店所在地や資本金の額なども、実際の情報と照らし合わせることで見えてくるものがあるかもしれません。

会社の登記簿は法務局へ行けば誰でも取得できるものですので、一度手に入れてチェックしておくことで調べることができます。

不動産情報を調べておく

会社の登記簿には、会社の本店所在地が記載されていますし、代表取締役の住所も記載されています。

それらの住所をもとに、不動産登記簿謄本を取得し、不動産情報を調べることができます。

こちらも法務局で、不動産登記簿を取得することで、その不動産の所有者がわかりますし、抵当権などの土地建物に関する権利関係も調べることができます。

自社ビルを保有しているといっても、どういった抵当権がついているのかで、その情報の意味は変わってきます。

会社が持っている不動産や社長個人の不動産を見てみることで見えてくることもあるでしょう。

会社の決算内容を調べてみる

取引先の決算内容がわかれば、より詳しく見えてくるところです。

ただし、決算内容というのは、そう簡単に見られるものではありません。

ところが、営業許認可などを取得している会社の場合、官庁に決算内容を報告する義務のある許認可もあり、それが公示されていることもあったりします。

たとえば、建設業の許可の場合、毎年決算変更届を提出する必要があり、この決算変更届は一般の方が閲覧できたりします。

業種によっては、こういった方法で決算内容を調べることができます。

倒産のサインが見えたら対策を

さて、取引先に倒産の怪しいサインが見えたら、どんな対策を取るべきなのでしょうか。

以下に取れる対策をまとめてみました。

連鎖倒産しないために取れる対策は

もちろん、サインが見えたとして、それが必ず倒産につながるわけではありません。

しかし、早めに対策をしておくことで連鎖倒産を防ぐことができるかもしれません。

一つの取引先に依存しない体制を

連鎖倒産する事例の多くが、売上の大半を少数の取引先に依存していた場合があります。

一つの取引先からの依頼がその会社の売上の大半を占めている場合、その取引先が倒産すれば、かなりの確率で連鎖倒産してしまうことが考えられます。

そうならないためにも、一つの取引先に依存しない体制を作っておくべきでしょう。

また、その取引先に怪しいサインが見えたなら、新たな取引先をあらかじめ探しておくなど、早めに対策を取っておくほうがいいでしょう。

本来なら早めに取引先を切り替えていくのがいいのですが、そうは言っていられない事情もあるところです。

その場合は、倒産するかもしれないと覚悟の上、資金面での対策を強化しておきましょう。

資金の回収は早めにする

もし、倒産のサインが見えたなら、できるだけ資金は早めに回収するようにしましょう。

また、新たな売掛金が発生する場合は、現金取引に変えるなどの対策も有効です。

また、売掛の支払いサイクルを短縮するという方法もあります。

どちらにしろ、回収できなくなってからでは遅いので、できるだけ早く確実に回収できる体制に切り替えていきましょう

もしも取引先が倒産したなら

サインを見逃さず、対策をしていても、倒産してしまうこともあります。

そんなとき、資金繰りで困らないために、次のような融資先や対策があることも知っておきましょう。

取引先の倒産したときの資金繰り対策で役立つサイト一覧

日本政策金融公庫 取引企業倒産対応資金(セーフティネット貸付)

中小企業基盤整備機構 経営セーフティ共済

中小企業庁 セーフティネット保証制度 (1号:連鎖倒産防止)

日本政策金融公庫による貸付

日本政策金融公庫の貸付にはいくつもの種類がありますが、そのうち、取引先企業が倒産したときに対応してくれる融資制度があります。

中小企業基盤整備機構の共済

中小基盤整備機構の共済は掛け金を払っておくことで、取引先が倒産したときに貸付を受けることができる融資制度です。

よく「倒産防止共済」といわれていたりします。

信用保証協会の保証制度

こちらは、信用保証協会による連鎖倒産を防止する目的の保証制度です。

市区町村の窓口でこの融資の対象に該当することを認定してもらうことで融資を受けることができます。

まとめ

取引先が倒産することで自社も倒産することを連鎖倒産といいます。

連鎖倒産を防ぐためには、取引先が出す倒産のサインを見逃さないようにし、怪しいサインに気づいたら、独自に調査することも必要です。

もし、調査してみて倒産が怪しいと思ったなら、できるだけ早めに対策を打って、連鎖倒産に巻き込まれないように対策しておきましょう。

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