東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
会社が倒産したときに抱くイメージにはどのようなものがあるでしょうか。
多くの債権者が押しかけて来て怒号や罵声を受ける、または会社内に乗り込んできて事務所の中の物品を回収していく、そんな姿を思い描く人もいるでしょう。
では、倒産の現場で債権者はどのように動いていくのか、銀行を含めた金融機関の対応について、この記事で紹介していきます。
倒産のXデーを迎えた会社は、その翌日から人がほとんどいなくなり静まりかえります。
そして、事務所の入口等に「当社は倒産しました、今後の対応は弁護士が行います」といった張り紙が掲載されることでしょう。
倒産を知って、まず会社にやってくるのはリース会社です。
会社にリースしている物品を引き上げるためです。
銀行は会社に来るでしょうか。
ケースバイケースではありますが、倒産したら会社に様子を見に来るところもあれば、電話でその状況を確認するだけのところもあります。
それでは、冒頭に紹介したような取り付け騒ぎは倒産した場合、必ず起こるのでしょうか。
テレビのドラマ等を見ていると、よくそのような場面を目にするので倒産というとそのような場面をイメージしがちです。
もちろん、ないとは言えません。
通常の取引先等でしたら連鎖して倒産という事態を招きかねません。
事務所に乗り込んで何とか自分のところだけでも回収したいと思って会社に来ることはありえるでしょう。
また、倒産するまでの短期間に多方面にわたってお金を借りる、代金の先払いを受けて仕事をしないまま倒産する、といったような計画的とも言える倒産の場合はいろいろな人が乗り込んでくることは容易に想像しえます。
ですが、このような事態は事前に準備を重ねたいわゆる「きれいな倒産」の場合には起こりえないことです。
そして、通常、銀行などの金融機関はこのような修羅場に来て督促や回収は行いません。
それでは、倒産した後の金融機関はどのように対応してくるのでしょうか。
以下では、各種金融機関について検討していきます。
まず、銀行について見ていきます。
銀行は通常、融資を実行する際には担保を求めてきます。
経営者を連帯保証人に、そして会社や経営者所有の不動産に抵当権などの担保を、場合によっては会社の所有する機械などにも動産譲渡登記などの担保を設定します。
会社から回収ができないような場合は、その担保を実行して回収していきます。
倒産した場合はどうなのでしょうか。
銀行の契約書には期限の利益喪失条項等があり、会社が倒産したような場合はその条項に基づいて担保を実行することができるようになります。
預金は会社への貸付金を反対債権として相殺します。
また、抵当権などの担保権は別除権といって、破産や民事再生などの倒産手続に左右されずに自己の債権を回収できる性質を持っています。
ですので、裁判所に差押えを申し立てて競売してその代金を回収していきます。
そして、回収できなかった債権についてはサービサーなどに債権を売却して回収します。
次に、商工ローンについて見ていきます。
商工ローン系は倒産するまでに頻繁なアプローチを試みてきます。
会社に電話することはもちろん、社長の携帯電話や自宅、場合によっては社長の親族にまで連絡してくるかもしれません。
ですが、法的対応となると対応は一律同じです。
倒産してからは弁護士が対応することになっていますので、もし倒産してから商工ローンから連絡が入って話をすることがあったとしても、弁護士に対応を一任していると伝えて話しを終えましょう。
以前、商工ローンの督促が社会問題となりました。
怒鳴るような口調の電話があれば、弁護士を通して金融庁等へ苦情申し立てをする必要があるかもしれません。
金融業者は金融庁からの許可を得て営業をしているので、法令等が遵守されていなければ許認可庁から営業停止などの処分を出される関係にあります。
倒産してもなお、経営者にアプローチをしてくるのであれば、それは法令違反に該当します。
最後にヤミ金について見ていきます。
ヤミ金は090等の携帯電話で貸付を行うところもあれば、正規の業者を装ったところなどさまざまです。
商工ローンや消費者金融には法令に定められた範囲内での利息を付けていますが、ヤミ金にはそのような縛りはありません。
そもそも法令を遵守するという概念がないからです。
ですので、異常な高金利で督促も正規の業者の範囲を逸脱した悪質かつ厳しいものが通常です。
会社が倒産したとしても、お構いなしに督促などのアプローチを試みてくることでしょう。
このような業者には、弁護士はもちろん警察にも相談するべきです。
彼らも逮捕はされたくありません。
こちらが毅然とした対応をすることで向こうからの督促もなくなることでしょう。
これまで、金融機関の対応について見てきました。
倒産した当事者となる経営者には借りたお金を返せず申し訳ないという罪悪感があるかと思います。
ですが、ここは毅然とすべき時なのです。
少しの情を見せて、その後の再起という大きな流れを見失っては元も子もないのです。
そこで付けいって利を得るのは大抵悪質な金融業者でしょう。
いま、自分は再起の途上にある、そう心に留めて一時の情に流されずにこの場面を乗り切りましょう。