東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
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最悪の場合は自殺をすれば借金が返せる、と思っていませんか。
でも、そのときに保険金がいくらおりて、どの借金がいくら減るか、本当にきちんと計算してみましたか。
実は、ほとんどの方は、ただなんとなく思っているだけで、計算して確かめてまではいないのです。
資金繰りが苦しくなって、日々資金調達に悩まされるようになってくると、最悪の事態を想定してしまうものです。
中には、自殺して生命保険で借金を返そうと思う方もいるようです。
毎日毎日、資金繰りのことばかりを考えるようになると、本来考えなければならない経営のことがおろそかになってしまい、経営状態がどんどん悪化して、さらに資金繰りが厳しくなってしまうこともあります。
明日銀行にいくら支払いをし、明後日取引先にいくらの支払いをし、と毎日支払いのことを考えるだけで精一杯になります。
事態が好転する見込みがあればまだいいのですが、そうでない場合、どんどんと追い詰められ苦しくなっていきます。
「自殺してしまえばすべてから解放され楽になれる」「生命保険がおりるのなら、それで借金を返せるかもしれない」と、真面目な経営者ほど他者に迷惑をかけたくない気持ちからそう思ってしまうのかもしれません。
しかし、そういうときでも取れる方法はいくつかあります。
破産や倒産など、きちんと法的手続きを取って事業を整理していく方法があります。
警察庁が発表する自殺者数の統計データがあります。
参考:警察庁HP「令和2年中における自殺の状況」
これによると令和2年の年間自殺者数は2万1081人です。
このうち、自殺の理由が経済・生活問題にあるとされている人数は3216人と約15%の割合となっています。
経済・生活問題の内訳としては「倒産」や「事業不振」、あるいは「負債」や「借金の取り立て」などがあります。
もちろん、すべてが会社経営者の自殺というわけではないでしょうが、中には経営苦に陥って自殺したという方が含まれていてもおかしくはありません。
自殺して生命保険で借金を返そうと思っていた方もいるかもしれません。
しかし、本当に借金を返せるのか、きちんと検証する必要があります。
最初に確認しなければならないことは、死亡の理由が自殺だった場合に保険金はおりるのか、という問題です。
保険金の契約やその効力については、保険法という法律が定められています。
この保険法の第51条1項では、被保険者(保険をかけている者のこと)が自殺したときは、保険会社は、保険給付を行う責任を負わない、としているのです。
つまり、死亡の理由が自殺の場合、法律上保険会社は保険金を支払う義務を負わないということになります。
ただし、保険会社は、それぞれ独自の約款や契約内容を定めていて、その約款や契約内容のルールは法律に優先します。
もし、保険会社が自社独自の約款に自殺の場合でも保険金を支払う旨を定めているのであれば、そちらに従うことになりますので、契約している保険会社の契約内容を一度確認しておく必要があります。
しかし、ほとんどの保険会社は、自殺が保険金目的の場合や、保険に加入してから2~3年などの月日が浅い場合は保険金を支払わないとしています。
つまり、生命保険に加入したとしても、自殺の場合は保険金がおりない可能性が高いと言えます。
生命保険がおりて借金が返せるかどうかを検証するためには、次の2点を確認することが必要です。
まず、生命保険の保険金がいくらおりるのかというのが、間違った思い込みによる数字になっていることがよくあります。
特に、かなり前に契約した保険だったりすると、その数字はさらにあやふやです。
死亡保険の場合、年齢が上がるとともに保険金が少なくなっていくケースもあります。
若いときに入った保険だったりすると、そのときに受け取れる最大の金額のみを記憶していて、年を取った後の金額を覚えていないことはよくあります。
これぐらい受け取れると思っていた保険金が、実はそれほどでもなかったというケースは本当によくあります。
また、保険金で借金を返そうと思った場合、本当に借金が返せるかは、借金がいくらあるのかをきちんと知っておく必要があります。
資金繰りが苦しくなり、金融機関だけでなくあちこちから借金を繰り返していくと、総額がいくらになっているのかがわからなくなってしまっているということもよくあります。
また、金融機関や事業ローンだけでなく、親戚や友人、あるいは取引先からも借金をしているということもあるでしょう。
経営をしている場合、借金だけでなく事業を続けていくうえでの月々の支払いも発生しますし、もちろん、それらもきちんと支払う必要があります。
そういった月々の支払金額も含め、どれだけの資金が必要なのか、きちんと把握しなければなりません。
そうして保険金と見比べて、本当にすべて完済できる金額なのか、それともそうではないのか、きちんと見極める必要があります。
生命保険がおりるから借金が返せて誰にも迷惑をかけない、と本人は思っていたとしても、実際の数字を見ればそんなことはないかもしれません。
実は保険を解約していて資金調達していた、あるいは、保険金を担保にお金を借りていたというようなことは、資金繰りをしているうえでよくあることです。
資金繰りに苦しんでいるのであれば、思いつく限りのあらゆる手を使って資金調達していることでしょう。
その中で、上に挙げたような形での資金調達も、ひょっとすると忘れてしまっているだけで実はしているかもしれません。
毎月支払う保険金を思うと、解約してしまったほうがいいと考え、解約していたこともあるかもしれません。
また、自分ではそんなつもりがなかったとしても、奥さんが解約して資金調達している可能性もあります。
保険金がおりれば借金が返せるというのは思い込みで、実はそんなことはなかったということは本当によくあることなのです。
まずは、自分の借金や支払い総額がいくらあるのかをきちんと確認し、検証する必要があります。
そうしてきちんと数字化して冷静に考えることで、自殺以外の解決方法が見えてきます。
資金繰りが苦しくなり、日々の支払いに追われるようになると、楽になりたいという気持ちも相まって生命保険で借金が返せるかもしれないという思いにとらわれてしまったりします。
でも、本当に生命保険がおりて借金が返せるのかどうかは、きちんと検証してみないとわからない部分です。
一つ一つ確認して、数字を見ていくことで、自殺とは違う解決方法にたどり着けると思います。
苦しいときこそ冷静に事実としての数字を確認するようにしましょう。