東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故では、時間が経ってから痛みやしびれなどの症状が出てくるケースも珍しくありません。けがをしているなら治療費や慰謝料を請求すべきですが、事故とは関係のない症状だと賠償を拒否される恐れがあります。
損害に見合った賠償金を受け取るためにも、後から痛みが出た場合の適切な対処法をしっかり理解しておきましょう。この記事では、事故から数日経過後に痛みが出てきた場合の対処法について解説していきます。
目次
外傷がある場合は別にして、むちうちや脳内出血などのけがでは後から痛みが出てくるケースも多いです。これは、事故直後の精神的パニックによる影響や、アドレナリンによる身体的な感覚の麻痺などが主な原因になります。
交通事故にあったことをうまく脳が受け入れられないと、精神的に感覚が麻痺します。また、事故により一種の興奮状態に陥ると、痛みを感じにくくなるアドレナリンが分泌されて身体的な感覚も麻痺してしまいます。
交通事故でもっとも多いむちうちについては、後になってから痛みが出てくる代表的な例として知られています。ほかにも、脳内出血などは損傷が身体の内部に潜んでいて、時間が経ってから重篤化するケースも多い後遺症になります。
交通事故で後から痛みが出てきたら、次の対処法を試してみましょう。
後から痛みが出てきたら、できるだけ早く病院で医師の診察を受けてください。強い痛みではなかったとしても、少しでも身体に違和感があるなら病院で異常がないかを確認すべきです。
病院で検査を受けておけば、症状が重篤化するのを防ぐことができます。また、事故とけがの因果関係を疑われにくくなり、保険会社に治療費や慰謝料の支払いを拒否されるリスクを減らせるでしょう。さらに、各種検査で症状が明らかになり、適切な後遺障害等級に認定されやすくなります。
通院する病院はどこでも構いませんが、 CTやMRI検査などができる総合病院での受診がおすすめです。初診は整形外科で受診するケースが多いですが、医師の指示次第では他の科で検査を受けるケースもあります。
病院で検査を受けたら、医師の指示に従い適切な頻度で通院してください。病院で治療した事実や具体的な症状がわかるよう、診断書を作成してもらうことも重要です。
後から痛みが出てきたら、被害者自身が加入する保険会社だけでなく、加害者側の保険会社にも連絡をしてください。
痛みが出てきたので物損事故から人身事故に切り替えることを伝えれば、相手方の保険会社が病院に治療費を直接支払ってくれるのが一般的です。
連絡が遅れると治療費を立て替える必要があるので、なるべく早めに連絡を入れるようにしましょう。
物損事故で処理していた場合には、人身事故への切り替え手続きを速やかにおこなってください。物損事故のまま放置するデメリットは以下のとおりです。
適切な賠償金を受け取るためにも、人身事故への切り替え手続きは速やかにおこなってください。
なお、切り替え手続きの主な流れは次の通りです。
法律上、切り替え手続きに期限はありません。しかし、時間が経ちすぎると事故とけがの関係を証明しにくくなり、警察が人身事故への切り替えを許可してくれない恐れがあります。確実に切り替えをおこなってもらうためには、事故から1〜2週間以内が望ましいでしょう。
人身事故への切り替え手続きをおこなえば、慰謝料を含むさまざまな賠償金を請求できます。ここで、交通事故で請求できる主な賠償金をご紹介します。
交通事故で請求できる賠償金一覧 | |||
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財産的損害 | 積極損害 | 治療費 | 入院・通院にかかる費用 |
付添看護費 | 介護・介助にかかる費用 | ||
入通院交通費 | 入院・通院の際にかかる交通費 | ||
装具・器具購入費 | 義手や介護支援ベッドなどの購入費用 | ||
入院雑費 | 入院で必要な日用品や雑貨などの購入費用 | ||
葬祭費 | 亡くなった被害者の葬儀等にかかる費用 | ||
家屋・自動車改造費 | 階段に手すりをつけたり、身体障害者用に車を改造する際にかかる費用 | ||
子どもの学習費 | 学習塾代や授業料等、すでに支払っているにもかかわらず、けがが原因で学校や塾を休まざるを得なくなってしまったために無駄になってしまった費用、もしくは勉強が遅れてしまった分を取り戻すためにかかった費用など | ||
保育費 | けがの影響で、子どもを保育施設に預けなくてはいけなくなった場合の保育費 | ||
弁護士費用 | 交通事故の対応を弁護士に依頼した場合の費用 | ||
消極損害 | 休業損害 | けがのせいで仕事ができず、給料がもらえなかったことによる損害 | |
逸失利益 | 【後遺障害逸失利益】 後遺障害が残ってしまったせいで、事故前と同じように働けず将来の収入が減る損害 【死亡逸失利益】 事故によって亡くなり、将来得られるはずだった収入が失われた損害 | ||
精神的損害(慰謝料) | 入通院慰謝料 | 事故による精神的苦痛を和らげるための賠償金 | |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったことによる精神的苦痛への賠償 | ||
死亡慰謝料 | 死亡によって生じた精神的苦痛への賠償 | ||
その他 | 物損(物件損害) | 車の修理代や代車使用料などの損害 | |
弁護士費用 | 弁護士に依頼する際にかかった費用 |
請求できる具体的な金額はケースごとに異なりますが、原則として実費もしくは治療に必要かつ相当な範囲で請求可能です。実際に支出額を証明できる領収書や明細書を大切に保管しておきましょう。
なお、各慰謝料の相場は以下のとおりです。
慰謝料の種類 | 相場 |
---|---|
入通院慰謝料 | 重傷:28万円~116万円 軽傷:19万円~89万円 |
後遺障害慰謝料 | 110万~2800万円 |
死亡慰謝料 | 2000万~2800万円 |
保険会社との示談が成立している以上、その後に生じた痛みについて治療費や慰謝料は請求できないのが原則です。通常、示談書には「示談書に記載されている以外の損害については、今後一切請求できない」などと記載されているからです。
一方で、次のようなケースでは例外的に成立後の損害について賠償請求できる場合があります。
成立した示談の無効が認められる特別な事情があるときは、例外的に示談後の損害についても賠償請求が可能です。たとえば、以下のようなケースです。
あきらかに不当な示談を強いられた場合には、弁護士に示談を取り消せるか相談してみましょう。
交通事故では「物損部分」と「人身部分」に分けて示談できます。もし成立した示談の内容が車の修理費などの物損部分についてのみであれば、治療費や慰謝料などの人身部分についてはまだ示談していないことになります。
示談書のタイトルが「示談書(物損)」だったり、本文中に「物損部分についてのみ賠償する」などの記載があれば、示談後の治療費や慰謝料も請求可能です。
人身部分について示談が成立していても、本文中に「新たな損害が判明した場合には別途協議する」「人身の損害については別途協議する」などと記載されていれば、示談成立後の損害も賠償請求できる可能性があります。
この場合、示談成立後に発覚した損害については、示談していないことになるからです。
過去の裁判例では、示談成立時に予測できなかった損害が発生した場合については、示談成立後でも賠償請求できるとしたものがあります。
たとえば、事故直後は軽いけがだと考え少額の示談に応じたものの、1カ月経過してから重傷であったことが発覚し再手術になり、後遺障害が残ってしまったようなケースです。
ただし、「その症状は示談成立時に予測できた損害で、すでにその分の賠償金を支払っている」と主張される恐れがあるので、注意が必要です。
期限はありませんが、事故後1〜2週間以内に受診するのが望ましいです。
事故から時間が経つと、「事故が原因のけがであること」を証明しにくくなります。他の原因で負ったけがの場合、治療費や慰謝料を請求することはできません。
痛みが出たら速やかに病院で受診することを心がけてください。
事故後1回も病院で受診していなかった場合には、その後症状が出て通院しても保険会社に賠償金の支払いを拒否される可能性が高いです。この場合、痛みの原因は事故ではなくほかにあると考えられるからです。
ただし、身体に違和感が出た時点で1度でも病院で検査を受けていれば、カルテの内容次第では治療費を支払ってもらえるケースもあります。
少しでも身体に違和感があれば必ず病院に行き、医師に細かい症状を伝えるようにしましょう。
交通事故で後からむちうちの症状が出たと訴えても、保険会社に嘘だと疑われる可能性があります。
保険会社から症状に見合った賠償金を支払ってもらうには、以下の行動を取るよう心がけましょう。
保険会社からむちうちが嘘だと言われた場合の対処法については、以下の記事もご参照ください。
近くに行きつけの整体や接骨院・整骨院がある場合、病院ではなくそちらに行くべきか迷うかもしれません。しかし、後から痛みが出た場合には必ず病院で受診してください。
病院以外では診断書を作成してもらえません。診断書がなければ「本当はけがをしていないのではないか」と疑われる可能性があります。
また、病院以外でMRIやレントゲンなどの精密検査はできません。特に症状が客観的にわかりにくいむちうちなどの場合、検査結果や治療経過を記したカルテがないと適切な後遺障害等級に認定されない可能性が高いです。
さらに、医師の指示なしで整体や接骨院・整骨院に行くと、けがの治療には不要だったとして治療費の支払いを拒否される可能性もあります。
交通事故直後に痛みがなかったとしても、後から痛みが出てきたら速やかに病院で受診してください。その後は、医師の指示に従い適切な頻度で通院しましょう。
また治療費を支払ってもらうためにも、保険会社への連絡も忘れないようにしましょう。物損事故で処理をしていた場合には、警察に人身事故の切り替え手続きの申請もおこないます。
切り替え手続きがスムーズに行かない場合には、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。示談交渉やさまざまな手続きを任せられるので、精神的負担を大きく軽減できます。
「慰謝料を増額したい」「面倒な手続きを任せたい」「治療費の打ち切りに対応して欲しい」など、お困りごとがあれば”VSG弁護士法人”にぜひお気軽にご相談ください。