交通事故で多いむちうちですが、レントゲンやCT・MRIなどの画像検査では症状がわかりにくく、保険会社に症状を疑われる場合があります。
首や手足に痛みやしびれなどの自覚症状が出ていても、それを正確に医師に伝えられないケースも多いです。適切な後遺障害等級に認定してもらい、示談交渉で損をしないためにも、むちうちになったときの症状の伝え方をしっかり把握しておきましょう。
むちうちとは、交通事故の衝撃で首(頚椎)がムチのようにしなることで負担がかかり、身体のあちこちに痛みや不調が出る後遺症のことです。正式には「頚椎捻挫(けいついねんざ)」や「外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」などと呼ばれます。
むちうちの主な症状は、以下のとおりです。
むちうちの症状は人によってさまざまです。事故後すぐに症状が出るケースもあれば、事故から数日経過後に症状が出始めるケースもあります。
2〜3カ月程度で症状が回復すると言われていますが、後遺障害が残るようなケースでは数年に渡り痛みやしびれが残ってしまうケースもあります。
後遺障害が残るのを防ぐためにも、外傷がなくても事故で衝撃を受けているなら早めに病院で医師の診察を受けましょう。
交通事故でむちうちになったら、まずは病院の整形外科を受診してください。
症状によっては、接骨院・整骨院・整体・鍼灸院などでの治療が有効なケースもあるでしょう。病院が遠方にある場合、自宅から近い整体などに通いたくなる気持ちもわかります。
しかし、加害者側の保険会社は、病院以外で治療をした場合に治療費の支払いを拒否しがちです。精密検査や診断書を作成できない接骨院や整骨院などでの治療は、症状の改善に不要だと判断されるからです。
どうしても病院以外での治療を希望する場合には、あらかじめ医師に許可をもらっておきましょう。医師に病院以外での治療が必要だと認めてもらうためには、 初診のときから症状を具体的・かつ正確に伝えておく必要があります。
交通事故で負うけがの中でも、とくにむちうちになった場合には症状を正確に伝えることが重要です。
むちうちの症状を医師に正確に伝えるべき理由は、以下のとおりです。
骨折などの外傷のあるけがと違い、検査では異常が見つからないケースも多いのがむちうちの特徴です。傷や腫れがないので、触診や目視で痛みの箇所を確認しても症状を特定するのは難しいです。
レントゲンやMRIなどで症状を証明できないのであれば、医師に直接症状を伝えるしか診断書を作成してもらう方法はありません。事故状況や各種検査結果、医師の診察結果や通院頻度、自覚症状などを総合して、むちうちを患っていることを保険会社に認めさせることが重要になります。
医師に症状を正確に伝えられなければ、治療継続の判断や症状固定の時期を適切に判断できなくなります。その結果、まだ痛みが残っているにもかかわらず治療を打ち切られたり、後遺障害等級に認定されなかったりする場合もあります。
医師が治療継続の必要性を判断できないと、これ以上の治療は必要ないとして保険会社に治療費の打ち切りを主張される恐れもあるでしょう。
痛みやしびれなどの自覚症状は、自分の口で伝えなければ医師には伝わりません。症状の申告を頼りに医師がむちうちの判断をするケースも多いので、細かい症状の伝え漏れがないよう医師とコミュニケーションをしっかり取っておきましょう。
痛みやしびれなどの自覚症状が医師にうまく伝わらないと、症状に合わせた適切な治療はおこなわれません。事故直後から適切な治療を受けなければ、身体に深刻な後遺症が残ってしまう可能性もあります。
治療箇所や治療方法を間違えると症状が悪化するケースもあります。医師にむちうちの症状を正確に伝えるのは、けがの完治をめざす意味でも重要なことだといえるのです。
むちうちの症状を医師に伝える際は、具体的かつ正確に自覚症状を伝えることを心がけてください。
痛みやしびれ、吐き気や頭痛などの症状は、検査結果では確認できません。ただ漠然と症状を伝えるのではなく、症状がで始めた時期や痛みの箇所・強さなどを具体的に伝えるよう工夫してみましょう。痛みによる日常生活への影響についても適切に伝えてください。
ただし、「雨の日は痛みが出るものの、晴れの日はとくに症状が出ない」などと、症状が限定的であることを誇張して話すのは避けた方が無難です。慢性的な症状ではない場合、事故とけがの因果関係を疑われたり、適切な後遺障害に認定されない恐れがあるからです。
もし緊張などで症状をうまく伝えられない場合には、事故から今までの症状を書き記したメモなどを渡すのも有効です。自分に合った方法で医師に症状を正確かつ具体的に伝えましょう。
また、事故から一貫して症状が出ていることを正確に伝えるためにも、痛みの箇所や内容について証言をコロコロ変えないことも重要です。
もし加害者側の保険会社や医師にむちうちが嘘だと疑われてしまった場合には、以下の3つの方法を試してみましょう。
事故でむちうちの症状がある場合には、医師の指示に従い適切な検査・治療を受けることが重要です。
具体的には、レントゲンやMRIなどの画像検査だけでなく、ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学的検査もおこなうことが重要です。
画像検査ではわからなかったむちうちの症状も、さまざまな検査をおこなうことで神経部分が圧迫されていることを医学的に証明できる可能性があります。
ほかにもさまざまな検査で神経の圧迫や異常を確認できる場合があるので、画像所見に乏しい場合には別の検査をしてもらえないか医師にかけ合ってみましょう。
保険会社にむちうちが嘘だと疑われた場合には、医師の診断書や事故当時の衝撃がわかる資料を提示しましょう。
事故状況や検査結果、本人の自覚症状などからむちうちの症状があると判断した診断書があれば、保険会社に治療費の継続や慰謝料の増額を主張しやすくなります。
また、ドライブレコーダーや防犯カメラなどの映像があれば、事故の際にどれくらいの衝撃を受けたのかが伝わりやすくなります。「これだけの衝撃を受けたのであれば、むちうちになる可能性もあるだろう」と保険会社に認めさせることが重要です。
医師にむちうちの症状を疑われた場合には、別の医師にセカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。
相性の良い医師であれば、緊張することなく自覚症状を正確に伝えられます。また、交通事故に精通している医師であれば、むちうちの症状や検査方法を熟知しています。これまでの経験から柔軟にむちうちを証明してもらえる可能性が高まるでしょう。
ただし、別の医師に意見を仰ぐ際には、ファーストオピニオンをしっかり理解することを忘れないでください。事故直後から症状を見ているのは主治医です。主治医の判断や治療方針に関する理解が不十分だと、セカンドオピニオンを聞いても結果が変わらない場合もあるでしょう。
まずは症状を具体的かつ正確に伝えることを心がけてください。「どうしても痛みがあるから神経学的検査もやってほしい」などと伝えても対応してくれない場合には、そこで初めてセカンドオピニオンを検討するのがよいでしょう。
保険会社にむちうちを疑われたり、医師とのコミュニケーションに不安を感じたら、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。
むちうちは、自覚症状のみで検査結果から症状を証明できないケースも多い後遺症です。 治療の継続や適切な後遺障害等級に認定してもらうためには、事故直後から医師に症状を具体的に伝えておくことが重要になります。
医師の診断や治療方針に納得ができない場合には、弁護士に相談して医師にかけあってもらいましょう。むちうちの症状が正確に伝わり適切な診断書を作成してもらうことで、最終的にもらえる賠償金の減額を回避できます。
お困りの際は、交通事故被害者専門の法律事務所”ベンチャーサポート法律事務所”にぜひお気軽にご相談ください。
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。