開放骨折、という言葉をご存じでしょうか。
全く聞き慣れない、普通の骨折とは何が違うのか分からない、と言う方も多いでしょうが、交通事故の現場においてこの開放骨折の応急処置の方法を知っているかいないかでは、予後に大きな違いがあります。
事故の被害者、加害者など当事者になった場合だけでなく、あなたが事故に遭遇した場合にもかけがえのない命が救えるかもしれない開放骨折の応急処置についてご説明します。
まず開放骨折とは、普通の骨折とは大きく異なります。
普通の骨折といえば、あなたの思い描くとおり、身体の中で折れてしまうもののことです。
けれど開放骨折は「開放」という名前の意味するとおり、骨折箇所と外界が繋がってしまっているもののことです。
そしてその場合、普通の骨折であれば、問題にならない、『感染』というものがとても重大な問題となってくるのです。
骨はとても硬い組織ではありますが、感染に弱いという特徴があります。
たとえほんの小さな傷でも、骨折部位と外界が繋がってしまうことで骨そのものに菌が感染する危険性があるのです。
もしも感染症を引き起こした場合、大きな後遺症が残ってしまったり、切断が必要になってしまったり、最悪の場合では命に関わることもあり得ます。
そのため、まず事故直後に開放骨折に気付いた場合にはどのような適切な応急処置を行うのかが、とても重要になってくるのです。
開放骨折の特徴として、骨折部位のすぐ近くから出血していることがあげられます。
そして、その出血量は骨折部位と傷つけた血管から様々です。
もちろん傷が大きいほど大量に出血しますし、痛みや腫れが強いことなども開放骨折の特徴です。
そこでまず最初にしなければいけないことは、可能な限り出血量を減らすために、出血部位を心臓より高くすることを考えましょう。
けれど、その時に一番注意しなくてはいけないことは、普段であれば患部を圧迫することによって止血する『直接圧迫止血法』を行わないことです。
出血している部分や、飛び出ている骨に触ってしまうことで更に身体の内部に深刻なダメージを与える可能性があります。
そのため、開放骨折で止血を行う際には、直接圧迫止血法は行わないことにしましょう。
もしもそれでも血が止まらない場合、直接圧迫ではなく心臓に近い辺りの動脈を暫く押さえて止血する間接圧迫止血法を用いることになります。
使用前の清潔なタオル、綺麗なシャツ等で傷口を軽く覆います。
このときも、患部を触ったり、骨を押さえたりすることのないように注意しましょう。
そして、手近なところに使えそうなものがあれば、患部を固定します。
しかしこのときもまた、無理に動かすのは厳禁です。
通常の骨折の際に添木を行うようにではなく、なるべくそのままの形を保つように、骨折している部分の上下の間接まで動かないように固定するに留めましょう。
交通事故を引き起こしてしまった場合、あなたにはもちろん警察への報告義務があります。
けれど、開放骨折が綺麗に治るかどうかは、その傷を負った時からいかに迅速に治療を行えたかどうかにかかっています。
具体的には約6時間程度と言われていますが、もしそれまでに設備の整った医療機関できちんと治療を受けることができないと
切断が必要になる可能性も出てくるため、場合によっては110番よりも先に119番で救急車を呼ぶことを優先しましょう。
参照:もし交通事故で加害者となった場合「やらなければいけないこと」
ここまでご説明したことで、あなたは開放骨折の応急処置についての知識を得られたことと思います。
けれど実際に事故に遭遇した場合、一点だけ必ず注意して頂きたいことがあります。
それは、開放骨折は出血を伴うため、直接血液に触れてしまうとあなたにも感染のリスクがあるということです。
けれども、事故の現場で命を救うためにあなたがやむを得ず応急処置を行わなければいけないこともあるでしょう。
その場合は、ビニール手袋を装着したり、もしそれが手近にない場合、ビニール袋ごしに救護処置を行うなど、絶対に血液に触れないように自分の手を多いながら処置を行うことを忘れないで下さい。
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。