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交通事故により受傷をした際に、治療を終えたにも関わらず痛みがやしびれが引かない…といったことが発生します。
このような症状を神経障害性疼痛と呼びますが、症状によってはQOLを著しく下げるものになりますので、示談交渉には注意を要するものです。
詳しくはどのような症状なのでしょうか。交通事故の示談交渉でどのような事に気を付けるべきでしょうか。
このページでは神経障害性疼痛などについてお伝えします。
神経障害性疼痛とは、神経が障害されたことが原因で神経の働きがおかしくなり、痛みを感じる信号を過剰に出してしまう症状のことをいいます。
疼痛というのが医学的に痛みのことを言うのですが、通常痛みは怪我や火傷をしたときにその場所にある末梢神経が刺激され起こるものです。
交通事故で開放骨折(体の外側に骨が飛び出る骨折)をするくらいの酷い受傷をしたときには当然この痛みが発生します。
手術をしてギブスなどの固定治療を行うと元通りに回復するのが通常なのですが、神経に異常が発生した場合に治療が終わっても痛みやしびれといった症状がひかないということがあり、このような症状を神経障害性疼痛と呼んでいます。
また、このようなケースではほかに腫れが引かない・皮膚の色が正常にならない、といったこともあり、このようなケースを総合して疼痛性感覚異常という言い方をすることもあります。
CRPSとはComplex Regional Pain Syndromeの頭文字をとったもので、日本語では複合性局所疼痛症候群という呼び方をしています。重度で長期間持続している、慢性化した神経障害性疼痛のことをいいます。
疼痛の発生のみならず、発汗・血管運動異常などの自立神経性の変化、筋力低下・ジストニアなどの運動機能の変化、皮膚や骨の萎縮など萎縮性の変化などもみられる場合があります。
CRPSは神経損傷のないRSDと神経損傷のあるカウサルギーという2つの種類に分けられます。
神経障害性疼痛の治療には理学療法・薬物療法・神経ブロック法といった治療方法がとられます。
神経障害性疼痛で、CRPS・RSD・カウサルギーという症状は、症状がどの程度ひどいかによって、以下の後遺障害等級に認定される可能性があります。
第7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
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第9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
では、神経障害性疼痛(CRPS・RSD)の後遺障害の認定にあたってはどのようなポイントがあるのでしょうか。
まず、そもそもこの診断については医師でも難しいということを知っておきましょう。
痛みが発生しているかどうかは客観的に検査で数字となって現れるわけではなく、患者本人がどのように感じるか次第になってしまいます。
そのため、医師としては過剰反応をしているだけなのか、神経障害性疼痛あるいはCRPS・RSDの症状が出ているのかは性格に判断できるものではありません。
後遺障害を勝ち取るための診断書を書いてもらうためには、医師にきちんと症状を伝える、ことは非常に重要になります。
神経障害性疼痛は痛みが慢性的に発生している場合なので、骨折をしている場合のように初診で判断できるようなものではなく、一定期間経過しての判断が必要になります。
そのため、どのような経過でどのような症状が出てきたのか、ということがきちんと説明できることが必要です。
適切な治療を早期から開始し、カルテなどに残してもらうことを通じて、客観的に伝えられることが必要となります。
このページでは神経障害性疼痛についてお伝えしてきました。
開放骨折などによって重傷を負った場合など、交通事故に起因するものでもあることから、後遺障害のためのポイントをしっかり知っておくと良いでしょう。
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。