恐らく交通事故によって、あなたの身体は大きく変わってしまったことでしょう。
けれど、いくら首が痛いといっても理解して貰えず、あまつさえ治療の打ち切りを打診されることすらあるでしょう。
骨折や脱臼とは違い、「痛み」という他人には理解されづらいこの症状が、果たして事故の後遺障害と言えるのかどうかと悩まれてしまう方もいるかもしれません。
しかし、あなたが交通事故によってその痛みを生じ、今もそれに悩まされているというのであれば、それは立派な交通事故による後遺障害となり得ます。
頸椎の痛みや痺れなど、長期間にわたって辛い思いをしているのであれば、それは後遺障害として認定される可能性があるのです。
後遺障害が認定されれば、それによって受け取ることの出来る慰謝料額も増額することができます。
具体的には、自賠責保険から支払いを受ける場合、局部に頑固な神経症状を残すなど12級であれば224万円が、そこまではいかずとも局部に神経障害を残しているとされる14級でも75万円を受け取ることが出来ます。
一般的なむちうちの程度であれば、おそらく14級に認定される方が多いと思いますが、それでもお金を受け取ることによってあなたはその痛みの治療にあてることができるのです。
詳しく知りたい方は、「交通事故後遺症率第1位の「むちうち」 その症状と支払われる保険金について教えます」を参照してください。
さて、その是非とも認定を受けたい後遺障害の認定条件ですが、その認定を受けるためには実はいくつかの重要な要素があります。
この要素を確実に満たすことで、あなたは適切な等級の認定を受けることが出来るのです。
詳しく知りたい方は、「金額に何倍もの差が?後遺障害認定のために知っておくべきこと」を参照してください。
頸椎捻挫(むちうち)においては、MRI画像にその局部の損傷が見て取れることが非常に重要です。
先程お話しいた自賠責保険における認定では、14級は他覚的所見がない場合――つまりはMRI画像に損傷が認められない場合、12級は他覚的所見がある場合――MRI画像に損傷が認められる場合、と明確に区別されているからです。
けれど、例えばMRI画像において軽度のヘルニアが認められるような場合では12級が認定されることは滅多にありませんが、それは14級が認められるための根拠にはなり得ます。
そのため、後遺障害等級が認定されるためには何よりもまずMRI画像の撮影を受けておくことはとても重要になります。
頸椎捻挫(むちうち)の程度がどのようなものであるかを客観的に裏付けるテストとしては、スパーリングテスト、ジャクソンテスト、深部腱反射テスト等実は様々なテストの方法が存在します。しかし、部位によって様々な種類があるこのテストを、医師が自発的に実施してくれるわけではありません。そのため、必要によってはこちらから神経学的なテストの実施を促していく必要があります。
上記の通り、画像所見、神経学的所見があれば頸椎捻挫の後遺障害等級認定はある程度確実な物になるでしょうが、実は頸椎捻挫の実態において画像や神経学的所見がハッキリと認められる場合は非常に少ないといわざるを得ません。
そのため、最終的にはあなたが痛いという自覚症状を、どうやって客観的に裏付けていくのか、というのが重要な要素になります。
そう言う意味で、定期的に、なおかつ、長期間、整形外科に通院していた,という事実は自覚症状を客観的に裏付ける証拠として非常に重要な意味を持ちます。
逆に言えば、忙しくて通院することが出来なければ、その時点で痛みはなかったのではないか、という疑いをもたれてしまうということにもなるのです。
そのため、痛みが続いている内はどれだけ忙しくても時間を何とか捻出して定期的に通院することは何より重要になります。
もしもあなたが自賠責の認定をする立場に立って考えたときに、通院三ヶ月目で急に別の箇所に痺れが出てきた、という記載を見たらどう思うでしょうか。
医学的に見てそれがあまりに妥当性を欠いていた場合、それは認定において「本当に痺れがあるのか」と疑われてしまうことになりかねません。
このような疑いを抱かれないためにも、交通事故に遭った直後から自分が感じている痛みを可能な限り医師に伝えるようにすると共に、症状の一貫性を持たせるようにしましょう。
最終的に医師の所見を診断書の形にまとめてもらうことになりますが、常日頃から医師とのコミュニケーションがしっかりと取れていないと、その診断書の内容があなたの症状をしっかりと反映していないものになりかねません。
そのため、医師とのコミュニケーションをしっかり図ることが重要になってきます。
以上のように後遺障害等級認定を受けるための重要な要素をご説明していきましたが、人によってはお医者さんと話すのに緊張して上手く話せなくなってしまったり、後遺障害等級認定を受けるために今自分に必要なものはなんなのかが分からない方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合には、第三者であり後遺障害等級認定に長けている弁護士から医師に働きかけて貰うのも一つの手段です。
あなたが適切な慰謝料額を受け取ることが出来るように、わからないことはプロである第三者に相談してみる、ということも頭の片隅に覚えておいて下さい。
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。