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低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とは

この記事の監修者 
北脇クリニック 院長 北脇文雄

交通事故被害によるむち打ちの中で、比較的最近認知されてきた症状として、低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)という症状があります。低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とはどのような症状なのでしょうか?

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)とは

脳と脊髄は、それらをおおう閉鎖空間である脳脊髄腔という空間の中を満たす脳脊髄液という液体の中に、まるで浮かぶように存在しています。

交通事故によるむち打ちによって、脳脊髄腔に穴があいてしまうことがあります。この穴から、閉鎖空間内を満たしていた脳脊髄液が漏れ出してしまうことにより、必要な量の脳脊髄液が保てなくなることがあります。これを、低髄液圧症候群といいます。

脳脊髄液とは、平常時は100~150ミリリットルほどキープされている半透明の液体です。半分は脳とその周りに存在し、残り半分は脊髄の部分に存在します。髄液がつくられる場所は、脳の内側にある脳室の脈絡叢というところで、1日に700ミリリットルほど生成されています。

脳脊髄腔のなかの脳脊髄液がもれだし不足したり、それによって腔内の圧力が低下したりすると様々な不具合が現れます。脳脊髄腔内の髄液の絶対量が不足したり、腔内の圧力が低下したりすると、浮かんでいた脳の組織が脊髄の方向に沈み込んでしまいます。その結果、頭痛、吐き気、視角の異常(一つのものが二つにみえてしまったり、視界がせばまったりする)、難聴、首の痛み、めまいなどの症状が発生してしまいます。

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の原因

かつては、交通事故も低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の要因となるということは、あまり広く知られていませんでした。低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)は、主に外科手術の失敗や麻酔の際などに脳脊髄腔に物理的に穴を開けてしまったり、尖ったものが背骨に刺さったりするような事故のせいで脳脊髄腔に穴が開いてしまうことが原因と考えられていたのです。

交通事故のむち打ち損傷の場合、脳脊髄腔に穴があくということは直接的にイメージしづらいせいか、低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の原因になることは最近になってわかりました。むち打ちは様々な種類の症状があることや、症状の程度の個人差が大きく、また比較的軽微なむち打ち損傷をきっかけにして発生する頭痛、耳鳴り、吐き気などの同様の症状が、画像所見などにもあらわれず発生原因がクリアではないこともあるのが理由かもしれません。
そのせいで、被害者の気のせいと片付けられてしまうケースも多々あったようです。

しかし、最近になって、これらの症状は、むち打ち損傷の慢性難治期におけるバレーリュー症候群の症状と共通点が多いことが注目されるようになりました。そこで、こうした症状は、交通事故の影響で脳脊髄腔に穴があき、低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)を原因として引き起こされるのではないかという仮説が生まれました。そして、実際に、交通事故にあった被害者であって、これらの症状がなかなか治らない患者に対し、低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)向けの治療を行ってみたところ、治療が功を奏したので、やはりこの仮説はあっているのだということが広く認識されるようになったのです。
具体的には、2000年頃に、当時の平塚共済病院の篠永正道氏らが「頸椎捻挫に続発した低髄液圧症候群」と題する低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)と、むち打ち症についての関連性についての学会報告が行われました。しかし、まだ海外を含めて詳細な検討は十分にはなされきっていないので、今後さらに研究がすすんでいくことを期待されています。

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の診断方法と治療方法

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の診断は、問診、MRIなどの画像所見、シンチグラフィーなどにより行われます。

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)の一般的な治療方法は、硬膜外自家血注入等という治療法です。硬膜外自家血注入は、英語名ではEpidural Blood Patchといい、ブラッドパッチとよばれたりもします。髄液が漏れている部分の脊髄硬膜外腔に、自分の自家静脈血を注入することで、髄液が漏れ出すのを防止する治療方法になります。

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)と後遺障害慰謝料

上述のように、近年低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)と交通事故のむち打ち症の因果関係がある程度示されてきたので、後遺障害等級認定申請でも、被害者が後遺症として低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)を主張できるようになってきました。むち打ちによるつらい自覚症状に苦しまれている方は、ぜひ後遺障害等級認定申請をして、後遺障害慰謝料を勝ち取っていただきたいところです。

最後に

かつては、交通事故被害者の気持ちの問題として補償をなかなか受けられなかった低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)も、医学の進歩で、交通事故との関連性が認められるようになってきました。該当するかもと思われる患者の方は、医師に相談してみましょう。

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この記事の監修者

北脇クリニック 
院長 北脇文雄

平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属

骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。

保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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