東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
目次
交通事故の被害者になった場合、被害者は加害者に対して、損害賠償請求ができます。
損害賠償請求とは、病院代などの実際に支払った費用や、働けなくなった費用、慰謝料などを請求するものですが、これらを請求するためには、証拠の一つとして病院でもらった診断書が必要になります。
診断書がないと、病院代や通院代、治療費などの請求、入通院に対する慰謝料の金額にも影響がでてきます。
また、交通事故は人身事故になるのか物損事故になるのかで、損害賠償請求金額の内容が大きく変わってきます。
もちろん、人身事故のほうが損害賠償請求金額は大きくなります。
逆に物損事故になってしまうと、本来なら受け取れたはずの損害賠償請求金額が得られなくなり、大きく損をすることもあります。
交通事故を物損事故ではなく人身事故として扱ってもらうためには、警察への診断書の提出が必要ですので、病院の診断書はきちんともらっておきましょう。
交通事故の被害にあって病院などで治療を受けた場合は、必ず診断書をもらっておきましょう。
診断書をもらうと費用がかかりますが、診断書は交通事故で被害にあったという重要な証拠書類となります。
診断書には、どのような治療を受けたか、どういった症状なのか、どのぐらいの期間治療を受けたのかなどが記載されています。
基本的に、診断書は医師のみが作成できます。
個人が勝手に作成することはもちろんできませんし、医師でない者が作成することもできません。
診断書は、病院に診察を依頼した人が自身で病院に依頼しなければ、作成してもらうことはできません。
交通事故にあった人が病院に診断書の作成を依頼すると、平均して10日~2週間ほどの期間がかかります。
ただ、確実に2週間あれば診断書を手にすることができるというわけではありません。
病院の休みの期間や、担当の医師の忙しさによっては、それ以上の期間がかかる場合もあります。
交通事故で大きな被害を受けた場合は、保険会社や警察署に診断書を提出しなければなりません。
病院にかかった場合は、早めに診断書の作成を依頼しておくようにしましょう。
診断書の作成にかかる料金は病院によって変わりますが、相場としては約3,000~5,000円が多いようです。
交通事故の被害者であれば、診断書の作成料金も加害者側に請求できますので、遠慮せず診断書を作成してもらい、料金は加害者側に請求しましょう。
後々いろいろな場面に役に立ったり、必要になったりしますので、きちんと必要な枚数分作成してもらってください。
また診断書は、過去にさかのぼって作成してもらうこともできるため、もしもらい忘れていた場合は作成してもらいましょう。
詳しく知りたい方は、下記記事を参照してください。
診断書を保険会社などに提出する場合、コピーでもいいのか疑問に思われる方もいるでしょう。
コピーでも、診断の内容を確認することができるので、何の問題もないと思われるかもしれません。
しかし実際には、保険会社などに提出する診断書は原本でなければならず、コピーは不可とされていることがほとんどです。
提出先が何か所にもなると予想される場合は、あらかじめ必要な部数の診断書を取得しておくようにしましょう。
もし診断書が足りなくなった場合には、再度診断書の作成を依頼することとなり、その分さらに提出できる時期が遅くなってしまうからです。
なお、診断書の取得にかかる費用は、自己の相手方に請求することができるので、不安に思う必要はありません。
診断書の提出先 | 診断書の種類 |
---|---|
警察 | 診断書 |
自賠責保険の被害者請求 | 診断書(決まった書式のもの) 診療報酬明細書も必要 |
会社 | 診断書 |
後遺症の認定 | 後遺障害診断書 |
交通事故にあった後に病院を受診した場合、診断書を提出する先はいくつもあります。
それぞれどのような注意点があるのか、提出先ごとに確認していきましょう。
交通事故を人身事故として扱ってもらうためには、警察署に診断書を提出する必要があります。
診断書を提出していなければ、物損事故として扱われてしまうため、損害賠償請求の金額などにも大きく影響してきます。
たとえ軽微な怪我などであったとしても、きちんと診断書をもらい警察に提出しておきましょう。
また、事故当初はなんともないと思っていたけれど、後々になってから痛みが発生してきたなどの場合もあると思います。
そういった場合もきちんと病院に行って診断書をもらい、警察署に診断書を提出して、物損事故ではなく人身事故として扱ってもらうようにしましょう。
診断書は、保険会社にも提出する場合があります。
自動車保険は、車の所有者であれば必ず加入しなければならない自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と、加入が任意の任意保険に大別されます。
自賠責保険は、法律により加入を強制されているところから強制保険とも呼ばれています。
これは、かつては交通事故を起こした加害者が、損害賠償金を払えず、被害者が泣き寝入りするというケースがあったため、法律により被害者の救済を目的として、強制加入の保険が作られました。
自賠責保険は、被害者救済の意味合いが強く、いろいろな形で被害者側からも保険を請求することができます。
自賠責保険への保険金の請求には、加害者側が賠償金を支払った後に請求する加害者請求と、被害者側が直接保険会社に請求する被害者請求との2つがあります。
交通事故の場合、本来であれば、被害者の症状が固定して示談が成立したあと、加害者側が被害者に損害賠償金を支払い、その分を保険会社が補填するという流れが自然です。
しかし最初から加害者側に誠意が見えない場合や、加害者側が損害の支払いに応じてくれない場合があります。
このような場合、被害者は救済を受けることができないため、被害者側からも自賠責保険金の請求ができるようになっています。
この被害者側からする請求を、被害者請求といいます。
被害者請求をするためには、必ず医師の診断書が必要になっています。
また、被害者請求は、通常は損害賠償額が決定してから支払われますが、被害者側は入院代や病院代、治療費と何かと支出が多くなり、緊急に支払いが必要となることも多くあります。
そのため、とりあえずすみやかに一定金額を保険会社に対して請求できる仮渡金制度というものがあります。
これも被害者請求をすることができ、仮渡金は傷害の程度に応じて、40万円、20万円、5万円の3段階になっています。
また、被害者が治療継続中で損害賠償額が決定していない段階でも、すでに発生した傷害による損害が10万円以上になった場合、10万円ごとに保険金の請求をできる内払という制度もあります。
この内払請求は、加害者側からでも被害者側からでも請求できる制度となっています。
これらの制度を利用して被害者請求をするためには医師の診断書が必要なため、保険金を請求するためにも診断書はとても重要な書類となります。
なお、交通事故の加害者側となった場合に、損害賠償請求を行う際には時効があります。
保険会社に対して加害者や被害者が損害賠償請求を行うことは、保険会社に対する保険金請求権と呼ばれ、民法により3年が時効と定められています。
時効となる期間の始まりは、「権利を行使できる時から」3年間とされます。
請求する保険の内容により、時効の起算日は異なるため、注意しましょう。
交通事故で傷害を負って出社ができず、会社を休むなどした場合には、会社に提出するために診断書が必要になることもあります。
交通事故の損害賠償請求では、会社を休んだ期間の給料分を加害者に請求でき、これを休業補償といいます。
また、怪我で通院しなければならないといった理由で会社を休む必要がでてくることもありますので、会社に提出する分としても診断書が必要になってきます。
会社を休んで減収になった給料分は、休業補償として加害者に損害賠償請求しましょう。
診断書の取り扱いについて、気を付けるべき3つのポイントを解説していきます。
自賠責保険会社に提出する診断書には、決まった書式があります。
病院で診断書の作成をお願いすると、その病院備え付けの診断書で作成されることがあり、警察署に提出する場合はその診断書で問題ありませんが、自賠責保険の診断書の場合は決まった書式で作成してもらう必要があります。
自賠責保険会社への被害者請求をする場合は、自賠責保険会社から書式を取り寄せて、その書式に基づいて病院で診断書を作成してもらいましょう。
また、診療報酬明細書も合わせて提出する必要があります。
診断書には、通常もらう診断書とは別に後遺障害診断書という診断書があります。
後遺障害診断書とは、後遺症を認定するために必要となる書類です。
後遺症とは、怪我や傷の治療自体は終わったのに、後々まで障害が残るもののことをいいます。
通常の診断書は、いろいろな傷病について治療を受けた内容を記載するものですが、後遺障害診断書は、後遺症が残った場合のみ作成される診断書です。
後遺症が残ってその認定を受ける場合には、必ず必要な診断書となります。
一般的に損害賠償請求は、傷害による損害と後遺症による損害とは別にして算定していますので、この後遺症が認定されると損害賠償請求金額も大きく変わってきます。
どのような症状を後遺症というかは、法律により細かく決められています。
もし症状が固定したあとにも後遺症が残ることがわかった場合は、必ず後遺障害診断書をもらい後遺症何級かの認定を受けるようにしましょう。
また、この後遺障害診断書も書式が決まっていますので、保険会社から決まった書式を取り寄せて、病院で作成してもらってください。
警察における交通事故の処理が物損事故となったまま、事故の相手方に対して慰謝料を請求することはできません。
ただし、物損事故となった場合でも、その後に慰謝料を請求したいと考えることがあります。
そこで、物損事故から人身事故に切り替えなければなりませんが、警察での手続きも含めて、非常に煩雑な手続きを行う必要があります。
そこで、人身事故への切り替えを行わずに、交通事故が人身事故であると証明する書類の存在が大きな意味を持ちます。
発生した交通事故が人身事故であると証明するための書類を、「人身事故証明書入手不能理由書」といいます。
この人身事故証明書入手不能理由書は、人身事故であるにもかかわらず、人身事故であることを証明する書類がない場合に、その証明書がない理由を記載する書類です。
人身事故証明書入手不能理由書が入手できれば、その書類を保険会社に提出します。
保険会社によって書式が定められている場合もあるため、相手方に保険会社にまずは確認してみましょう。
診断書は交通事故で被害にあった証拠となる重要な書類です。
警察や保険会社に診断書を提出することで、人身事故として扱われることになるため、受け取れる損害賠償請求の金額が大きく変わってきます。
交通事故の被害で治療を受けた場合は、忘れずに病院で診断書をもらいましょう。
診断書は示談交渉時のときにも必要になりますので、詳しく知りたい方は、下記記事を参照してください。
診断書は、これとは別に後遺障害診断書というものがあり、こちらも後遺症を認定するために必要な書類となります。