東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
目次
交通事故証明書とは、交通事故が発生した事実を証明するための書類です。
交通事故で被害を受けた方が正当な補償を受けられるように発行される書類で、保険金を請求するためには原則として交通事故証明書が必要になります。
交通事故証明書は、自動車安全運転センターという機関が発行します。
自動車安全運転センターは、自動車安全運転センター法という法律に基づいて設立された法人で、交通事故証明書の発行や運転の研修などを業務としています。
詳しく知りたい方は、下記記事を参照してください。
交通事故証明書は、正当な補償を受けるために必要な書類です。
任意保険などの保険金を請求する際に使用します。
任意保険に加入している場合は、保険会社が交通事故証明書を取得してくれるのが通常ですが、未加入の場合は自分で取得の手続きをすることになります。
交通事故証明書は、人身事故・物損事故のどちらの場合でも作成されます。
ただし、人身事故の場合は、診断書を警察へ提出する必要があります。
人身事故を物損事故で処理されると、治療費や慰謝料などをもらえない可能性が高いため、人的被害がある場合は病院で診断書を発行してもらいましょう。
物損事故として処理を進めていて、あとで怪我や痛みなどが判明した場合も、警察に診断書を受理してもらえば人身事故に切り替えることが可能です。
交通事故証明書の交付を受けるためには、交通事故について警察に届け出る(通報する)必要があります。
警察に届け出がない場合は、原則として交通事故証明書の交付を受けることができません。
交通事故について警察に届け出をすると、警察官が交通事故について調査を行います。
警察官による調査の内容は、事故の発生現場や日時、当事者の氏名や住所などの身元の確認、自賠責保険の加入の有無、事故の概要などです。
警察官の調査は、後に交通事故証明書の情報として記載されることになります。
調査が終了すると、警察官は自動車安全運転センターに対して調査結果を送付します。
自動車安全運転センターは、調査結果に基づいて交通事故証明書を作成します。
交通事故が発生した場合に警察に通報することは、交通事故証明書の交付に必要なだけでなく、法律によって義務として課されています。
道路交通法の第72条には、交通事故が発生した場合には、当事者は直ちに警察官や最寄りの警察署に事故について報告しなければならないことが規定されています。
報告しなければならない内容として同法に規定されているのは、交通事故が発生した日時と場所、交通事故における死傷者の数や負傷者の負傷の程度、損壊した物と損壊の程度、交通事故に関連する車両などです。
警察に報告することが義務づけられている交通事故には制限がありません。
そのため、人身事故か物損事故かに関係なく、また事故の被害が軽微であっても、法律上は交通事故が発生した場合には直ちに警察に通報する必要があります。
警察への報告を怠った場合は、道路交通法第119条によって3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金の処罰を受ける場合があるので注意しましょう。
交通事故証明書には、主に以下のような内容が記載されます。
交通事故証明書に記載される内容
それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
事故照会番号は、警察署に照会する際に必要となる番号です。
交通事故が発生した場所と日時を証明するための情報です。
当事者の情報としては、住所、氏名、生年月日、事故時の状態(運転いていたのか、同乗していたのかなど)が記載されます。
追突した側とされた側など、当事者が2人いる場合は、当事者の一方が甲、もう一方が乙として記載されます。
事故類型には、どのような形で事故が発生したのかが記載されます。
人対車両の事故、車両同士の事故(正面衝突、側面衝突、追突事故など)、車両の単独事故(転倒、路外逸脱、衝突など)などです。
備考には、他に当事者がいるかなどが記載されます。
交通事故証明書は交通事故が発生したことを証明するための書類です。
交通事故に関する概要のみが記載されるもので、以下のような情報は記載されない点に注意が必要です。
交通事故証明書に記載されない内容
交通事故証明書には、損害の種別とその程度、事故の原因、過失の有無とその程度を明らかにするものではないため、補償金額や過失割合に関することは一切書かれていません。
交通事故証明書は、警察に事故について報告した後、自動車安全運転センターに対して申請することで入手できます。
交通事故証明書には3つの申請方法があります。
交通事故証明書の申請方法
申請方法によって細かい点は異なりますが、申請書に記載する必要がある情報としては、事故の種類(人身事故か物損事故か)、事故の発生日時と発生場所、事故について報告をした警察署と報告した月日、事故の当事者の氏名、申請者の住所氏名などがあります。
各都道府県に設置された自動車安全運転センターで申請を行う方法です。
センターの窓口に備え付けの申請用紙に必要事項を記入し、手数料を支払って申請します。
申請書1通で、同一の証明書は何通でも申し込み可能です。
事故が発生した都道府県を管轄するセンターの窓口で申請をした場合、交通事故に関する資料が既に警察からセンターに届いている場合は、原則として交通事故証明書の即日交付を受けることができます。
交通事故資料がまだ届いていない場合や、事故が発生した以外の都道府県を管轄するセンターで申請をした場合は、交通事故証明書は後日郵送されます。
郵便局かゆうちょ銀行で申請を行う場合、警察署や駐在所などで事前に交通事故証明書申込用紙を入手しておく必要があります。
申込用紙に必要事項を記入し、窓口またはATMで交付手数料と払込手数料を支払います。
支払いと申請手続きが完了すると、10日前後で交通事故証明書が郵送されます。
郵便は、申請者の住所または通信欄に記入した郵送希望宛先に届きます。
インターネットでの申請は、自動車安全運転センターのホームページで行います。
インターネットから申請できる方は、交通事故の当事者に限られます。
申請者の氏名や住所、事故の発生場所などを入力して申請し、申請が受付されると、申請時に入力したメールアドレスに申請受付完了のメールが届きます。
交付手数料は、申請後に金融機関のネットバンキングやコンビニの店舗などで支払いが可能です。
申請後7日以内に支払わないと申請がキャンセルされてしまいますので、気をつけましょう。
インターネットでの申請には、次のような制約があります。
交通事故証明書は、入金の確認後、申請者の手元に届くまで10日程度の日数をがかかります。
交通事故証明書の申請書の方法がわかったところで、注意すべき2つの項目について確認していきましょう。
それでは1つずつ解説します。
交通事故証明書には当事者に関する個人情報が記載されており、欲しい方が誰でも申請できるわけではありません。
証明書を申請できるのは以下に該当する方のみです。
交通事故証明書を申請できる人
交通事故証明書は代理人が申請することも可能です。その場合、証明書を申請できる本人が署名した委任状が必要になります。
交通事故証明書の取得期限は、発生した事故が人身事故か物損事故かによって異なります。
交通事故形態 | 申請期限 |
---|---|
物損事故 | 事故が発生してから3年間 |
人身事故 | 事故が発生してから5年間 |
物損事故よりも人身事故の方が取得できる期間が長い理由は、人が負傷した場合には事故の重要度が高く、情報を長期間保管する必要性が高いからです。
交通事故証明書は、交通事故が発生したことを証明する書類です。保険金を請求する場合には、原則として交通事故証明書が必要です。
交通事故証明書には、事故の派生場所や日時、当事者の住所や氏名、事故の簡単な類型などが記載されています。
交通事故証明書の発行を受けるためには、事前に事故について警察に報告することが必要です。
警察に報告をした後、各都道府県の自動車安全運転センター、郵便局、インターネットなどで申請を行います。