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自転車と自動車の事故の過失割合はどう決まる?事故状況の例と併せて解説

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

自転車と自動車の事故の過失割合はどう決まる?事故状況の例と併せて解説

この記事でわかること

  • 自転車と車の事故の特徴
  • 自転車の禁止事項・遵守事項
  • 自転車と車の事故の過失割合の目安

自転車は、運転をするのに免許も燃料も不要なことから、幅広い年代で利用されています。

しかし、車との交通事故になった場合は、車体が軽く体が剥き出しであることから、大怪我や命に関わる大事故になる可能性もあります。

この記事では、自転車と車の事故の特徴や、交通事故の際の過失割合の決め方などについて、くわしく解説します。

自転車と車の交通事故では、自動車の運転者の過失割合が重くなるのが一般的です。

しかし、相手の保険会社が提示してくる過失相殺の割合は、相場に比べて自転車の責任が重くなっている場合もありますので、注意しておきましょう。

自転車との事故の特徴

自転車との事故は、自動車や歩行者の場合とは異なる特徴があります。

どのような特徴があるのかを見てみましょう。

自転車は運転者が多い

自転車は自動車と違って運転するのに免許が必要ないため、子どもから高齢者まで幅広い年代で使用されています。

自転車の動きは歩行者とは異なる

自転車は、移動する速度が歩行者よりも早く、歩行者とは異なる動きをします。

坂道の上から走ってきたときなどは加速によってスピードが出ているため、突然飛び出してくる場合もあります。

自転車の動きは予想できないことも多いため、自動車の運転者は注意して運転する必要があります。

自転車の事故は重症になりやすい

自転車が事故に巻き込まれた場合、負傷によるダメージが大きくなりやすいという特徴があります。

その理由は、自転車の車体が小さいことに加えて、運転者の体が剥き出しの状態になっているからです。

事故の衝撃によって体が投げ出されて全身を強く打ったり、ヘルメットを付けていない場合は頭部を強打することで、命に関わる事故や重症につながる場合もあります。

自転車と事故を起こして相手が重傷を負った場合は、自動車の運転者は重い責任を負うことになります。

詳しく知りたい方は、下記記事を参照してください。

自転車は法律上は車両に該当

自転車は道路交通法において軽車両に位置づけられています。

自転車は車両に該当することから、道路交通法等によって歩行者とは異なる各種の規制が設けられています。

自転車は車道が原則

自転車は道路交通法上、車道を走行するのが原則です。

道と歩道の区別が設けられている道路では、基本的に車道を通行します。

また、車道を通行する際は、原則として道路の左端を通行します。

状況によって車道を通行することが危険な場合や、通行可能なことを示す道路標識がある場合は、歩道を通行することもできます。

その場合は、歩行者を優先する必要があります。

歩行者がいる場合は速度を落として通行し、歩行者の邪魔になる場合は必要に応じて一時停止などを行います。

自転車の運転者が13歳未満や70歳以上、障害を有している場合は、標識等がなくても歩道を通行することができますが、その場合にも、歩行者を優先する必要があります。

自転車の禁止事項

自転車の禁止事項

  • ・飲酒運転
  • ・二人乗り
  • ・他の自転車と並んで通行すること
  • ・傘、携帯電話、イヤホンなどを使用しながら運転すること

自転車の運転をする際は、飲酒運転、二人乗り、他の自転車と並んでの通行(並進)は禁止されています。

飲酒運転は5年以下の懲役または100万円以下の罰金、二人乗りと並進は2万円以下の罰金または科料の対象になります。

その他、傘、携帯電話、イヤホンなどを使用しながら運転することも禁止されています。

自転車の遵守事項

自転車の遵守事項

  • ・信号を必ず守る
  • ・交差点では一時停止をして安全確認を行う
  • ・夜間にライトを点灯する

自転車を運転する際には信号を必ず守る必要があります。

信号無視は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金の対象になります。

交差点では一時停止をして安全確認を行う必要があり、一時停止違反は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金です。

また、自転車での走行は夜間にライトを点灯する必要があり、無点灯の場合は、5万円以下の罰金の対象です。

自転車との事故でも過失割合が重要

過失割合とは、交通事故の当事者について、どちらにどの程度の過失があるのかを割合で示したものです。

交通事故の当事者になった場合は、自分と相手の過失割合がどの程度なのかが非常に重要になります。

過失とは

過失とは不注意のことで、結果を予測することが可能な状態にあり、かつ十分に注意すればその結果を回避することができたにもかかわらず、不注意によって事故が発生した場合に、過失があると認定されます。

例えば、暗くて狭い住宅街の見通しの悪いカーブで、速いスピードで車が曲がったところ、カーブの傍にいた自転車に気付かずにぶつかってしまったような場合です。

住宅街の狭い道は自転車や歩行者が通行している可能性が高く、夜の暗く見通しの悪い道では、スピードを控え目にしてゆっくり曲がる必要があります。

自動車の運転者であれば、上記のことは十分に予測することができ、その予測に基づいてスピードを落として注意して運転すれば、自転車を避けることが可能なため、この場合は過失ありということになります。

過失の中には、当然払うべき注意を著しく欠いた重大な過失である、重過失という概念もあります。

故意とは

過失とよく対比される概念として、故意があります。

過失はわざとではない不注意によって結果を発生させるものであるのに対し、故意は意図的にわざと結果を発生させることです。

故意の例としては、日頃非常に恨んでいる人の車を見かけたので、思い知らせるためにわざと自分の車をぶつけるような場合です。

過失割合とは

過失がある場合は、発生した結果に対する責任が生じます。

過失に基づく責任のことを、過失責任といいます。

過失割合は、交通事故の当事者同士の過失責任の程度について、割合で表したものです。

例えば、急カーブを運転中にスリップしてしまい、対向車線を走っていた運転者Aの過失が6割で、スピードを出しすぎて運転していたために、それを避けきれなかった運転者Bの過失が割合が4割という場合です。

詳しく知りたい方は、詳しく知りたい方は、下記記事を参照してください。

過失割合は賠償金の額に影響する

交通事故の過失割合は、当事者が得ることができる賠償金の金額に影響します。

例えば、交通事故に巻き込まれた場合に、損害の全額が1000万円で、自分の過失割合が4割の場合は、全額の1000万円から自分の過失割合4割の400万円を差し引いた、600万円を加害者に請求することになります。

過失相殺とは

相手に賠償金を請求する場合は、自分の過失割合の分を差し引いて請求します。

過失割合に基づいて請求額を決定することを過失相殺といい、過失相殺をすることによって、お互いの賠償金の請求が迅速に終了します。

例えば、先の例の全損害が1000万円で自分の過失割合が6割の場合に、相手に損害賠償として1000万円を請求したとしても、相手からも4割分の400万円を請求されることになります。

結局手元に残るのは過失割合に基づく600万円のため、お互いに請求し合う手間を省くために、最初から600万円のみを請求するという仕組みです。

過失割合が変わる修正要素

自転車と自動車の事故の場合は、自動車同士の事故の場合よりも、自転車の過失割合が低くなる傾向があります。

自転車と自動車を比較した場合、自転車の方が車体が小さい、安定性がない、速度が速い、大怪我になりやすい、という特徴があります。

一方、自動車は車体が大きい、走行が安定している、速度が遅い、運転者が車体に守られている、などが特徴です。

上記の違いから、自転車と自動車の事故においては、自動車の運転者よりも自転車の運転者の方が大怪我をする危険性が高いため、事故が起きた場合に自転車の過失割合を小さくすることで、自転車の運転者を保護するという仕組みです。

自転車の過失割合が低くなる場合

自転車の過失割合が低くなるケースとして、以下のものがあります。

自転車の過失割合が低くなるケース

  • ・自転車の運転者が児童や高齢者
  • ・自転車が横断歩道を走行していた
  • ・道幅が狭い住宅地や商業地
  • ・事故の相手が大型車
  • ・車に重過失がある場合

上記のようなケースにおいては、自動車の方がより注意して走行すべき状況なので、自転車の過失割合が低くなる傾向があります。

自転車の過失割合が高くなる場合

反対に、自転車の過失割合が高くなるケースとしては、以下のものがあります。

自転車の過失割合が低くなるケース

  • ・飲酒運転や夜間の無灯火などの違反がある場合
  • ・自転車に重過失がある場合

上記の場合は自転車の運転者に大きな責任が認められるため、自転車の過失割合が大きくなる傾向があります。

自転車事故における過失割合

自転車と自動車の交通事故の過失割合については、事故の状況ごとに目安があります。

目安はあくまで一般的なもので、実際は具体的な状況によって異なりますが、事故の類型ごとの大まかな傾向を知るのに便利です。

交通事故の類型ごとに過失割合の目安を見ていきましょう。

信号機のある交差点での事故

信号機のある交差点で事故が起きた場合、信号の色が過失割合に大きく影響します。

赤信号を無視して走行した場合は、過失割合が大幅に上昇します。

黄色も法律上は原則として止まる必要があるので、過失割合が上がる要因になります。

また、直進車同士の事故においては、自転車の信号が青で自動車の信号が赤の場合、過失割合は自転車0自動車10割です。

【過失割合】

自転車0%
100%

反対に、自転車の信号が赤で自動車の信号が青の場合は、過失割合は自転車2割自動車8割になります。

【過失割合】

自転車20%
80%

自転車が信号を無視した場合よりも、自動車が赤信号を無視した場合の方が過失割合が大きい理由は、大きくて速い自動車の運転の方が、より重大な責任になるからです。

信号機のない交差点での事故

信号機のない交差点での過失割合は、状況によって異なります。

自転車と自動車がお互いに対向方向から進入し、自転車が直進して自動車が右折したケースでは、過失割合はそれぞれ1割9割です。

【過失割合】

自転車10%
90%

自転車が右折して自動車が直進したケースでは、過失割合はそれぞれ4割6割です。

【過失割合】

自転車40%
60%

また、自転車と自動車が同一方向から交差点に進入した場合、過失割合の目安は自転車1割5分自動車8割5分です。

【過失割合】

自転車15%
85%

ドアを開く際の事故

自動車のドアを開く際に、後方から走ってきた自転車がぶつかって事故になってしまう場合があります。

ドアの開放時の事故の過失割合については、自転車1割自動車9割が目安になります。

【過失割合】

自転車10%
90%

公道での乗り降りの際にハザードランプをつけていないなど、安全のための措置を怠っていた場合には、自動車の過失割合が更に上がります。

一方、ドアの開放を予測させる行動があったにも関わらず、自転車の運転者がそれを見落とした場合には、自転車の過失割合が上がります。

まとめ

自転車で自動車との交通事故に巻き込まれた場合、相手側の保険会社が提示してくる過失割合は、自転車側の過失が相場よりも高くなっている場合があります

保険会社は営利企業であるため、自分がなるべく損失を出さないように、裁判などでの相場よりも自転車の責任が重い過失割合を主張してくるからです。

相手や保険会社が提示してきた過失割合や賠償金の金額に納得がいかない場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談するのも一つの方法です。

特に、交通事故によって重症を負ったり、後遺症が残ったりした場合は、弁護士に依頼するのをおすすめします。

交通事故に詳しい弁護士であれば、様々な交通事故のケースを知っているので、その事故における適正な過失割合や、妥当な賠償金の基準を把握しています。

また、相手の保険会社も、弁護士が相手になれば無茶な過失割合や金額を提示することはできなくなるため、適正な過失割合と賠償金を獲得しやすくなります

弁護士に依頼するとそれなりの費用がかかりますが、事件が重大であればそれ以上の成果を得られる可能性は高くなります。

加入している保険に弁護士費用特約がついている場合は、自己負担なしで弁護士に依頼することができるので、積極的に活用しましょう。

詳しく知りたい方は、下記記事を参照してください。

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