東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
目次
交通事故加害者になってしまうと、負うべき3つ責任が生じます。
ここからは、あなたが負うべき3つの責任についてご説明します。
交通事故の加害者になり、相手に損害を発生させてしまった場合には、あなたには民事責任が生じ、損害を賠償する責任があります。
しかし、事故はもちろん一人で起こすものではありません。
その際に、あなたがどれほどの賠償をするかを決める指針となるものが、よく聞く「過失割合」というものす。
この民事上の責任は、主に金銭によって果たすことになり、任意保険に加入している場合は保険会社があなたに代わって金銭の支払いをしてくれるため、あなたに直接金銭の支払い義務が生じることは稀です。
ただし、前述の通りあなたが警察への報告義務を怠った場合や、保険に限度額が設定されている場合などはその限度額を超えた分の損害賠償についてはあなたに直接支払い義務が生じることがありますので、注意が必要です。
事故を起こして警察に取り調べを受けた、警察に過失運転致傷罪と言われた、こういった責任が降りかかってくることが、刑事責任(刑事処分)です。
交通事故の加害者となり、相手を負傷または死亡させてしまった場合、その過失が0でない限りあなたには過失運転致傷罪が成立し、刑事責任を追及される可能性があります。
あなたの今後の人生に大きな影響を及ぼすことになるので、その可能性を少しでも下げるためにも、前述の通り被害に遭った相手方の心証をできる限り悪くしないことが大切です。
また、その事故の原因があなたの交通違反にある場合には、その違反について道路交通法違反等の罪が成立することに加えて、自動車運転死傷行為処罰法にもとづく危険運転致死傷罪が成立する可能性もあります。
事故を起こして、免許が取り消しになった――こういった事例が、行政上の責任を追及された、つまり行政処分を受けた例となります。
行政処分を受ける理由は、あなたが交通事故を起こした場合、その原因に交通違反があればあなたはその交通違反に基づいて反則金の徴集を受けたり、免許の違反点数が加算されるからです。
また、事故の原因に交通違反がなかったとしても、相手が負傷していた場合その負傷の度合いやあなたの過失の程度によって同じく違反点数が加算されます。
その結果、違反点数が一定限度を超え、免許の停止や免許の取り消しといった行政処分を受けることがあるのです。
交通事故の加害者になってしまったら、誰しも慌ててしまうものです。
しかし、交通事故後の対応はその後の示談に大きな影響を与えます。
いざという時のため、加害者になったときにすべきことをここで確認しましょう。
道路交通法第72条により負傷者への救護義務があることは既にご説明しましたが、事故を起こしてしまった際に警察への報告義務があることも同条に規定されています。
また、警察への報告義務を怠ることにより報告義務違反(道路交通法違反)となるだけではなく、あなたにとって保険が適用されない等の不利益を被ることになります。
事故を起こしてしまった際は、必ず警察に報告することが必要です。
しかし例えば、事故の相手方が
と言ってきた場合はどうでしょう。
自分にデメリットがないならば、相手方の立場を汲んで警察に通報しない方がいいでしょうか。
しかしこの場合も、相手方に従って報告義務を怠れば後にあなた自身が道路交通法違反の罪に問われる可能性があります。
しかもそれだけではなく、事故直後は相手方がそう言っていたものの、いざ後々になってみると修理代や治療費、過失割合でもめることになった、といった場合にもあなた自身の保険が利用できなくなってしまう可能性すらあります。
また別の例では、事故直後は怪我もなく物損の程度も軽いので当事者同士で「警察に届けずに」、という話だったはずなのに、後から首が痛いと相手方から言い出され、報告義務違反になることを恐れて結局は相手方に多大な金銭を支払った、というような例もあります。
このように、報告義務を怠ることはあなたが想像するよりもあらゆるトラブルを招く恐れがあります。
あなたの権利を守るためにも警察には必ず報告することを覚えておいて下さい。
警察に報告した後にやらなければいけないことといえば、二次損害発生の回避です。
これは、救護義務や警察への報告義務と同様に道路交通法第72条に規定されている、れっきとした義務の一つです。
具体的には、事故車両を安全な場所に移動させ、車に備え付けてある発煙筒や三角表示板等を使って後続車両に事故発生を伝え、注意喚起を行うことで更なる二次損害が発生することの回避に努めましょう。
交通事故で加害者になった場合の対応の流れについては、以下の記事をご覧ください。
示談交渉は過失割合や損害賠償を決定する重要な話し合いです。
基本的にはあなたが加入している保険会社の対応になりますが、丸投げというわけにはいきません。
示談成功のためには以下の3つを必ず実行してください。
あなたが加害者になったときの備えとして、任意保険には必ず加入してください。
被害者には自賠責保険からも補償されますが、後遺障害なしの人身事故は120万円の限度額があるため、十分な償いにならない可能性が高いでしょう。
また、自賠責保険の補償には治療費や慰謝料、休業損害などが含まれるため、被害者のケガの状態によっては、治療費だけで120万円を超えるケースもあります。
後遺障害が残ると自賠責保険だけでは補償しきれず、自己負担で補てんすることになるでしょう。
任意保険に加入していれば、示談交渉は保険会社の担当者が対応してくれます。
しかし、保険会社に丸投げしたことで被害者の感情を逆なでし、刑事裁判に発展したケースもあるので注意が必要です。
保険会社は営利を目的としているため、基本的には自社都合で示談を進めることが多く、被害者目線になっていないケースが一般的です。
誠実な償いができるよう、あなたも示談に関わるようにしてください。
また、任意保険に加入していなかったときは、自分で示談交渉に対応しなければなりません。
素人の対応では過失割合すら決まらず、交渉が長期化する恐れもあるため、弁護士への相談も検討しておきましょう。
保険会社に示談交渉を任せた場合、最終的には交渉力に差が出てしまいます。
被害者側に何らかの非があっても、10対0の過失割合で納得させられるケースは少なくありません。
重い後遺障害が残ったときや、死亡事故に至った場合、保険では償い切れない逸失利益(事故がなければ得られたであろう利益)を請求される可能性もあります。
示談成功のカギは交渉力ともいえるため、被害者側と揉めてしまったときは、必ず弁護士に相談してください。
弁護士が対応すると被害者も冷静になりやすく、建設的な話し合いができるため、和解の可能性が高くなります。
また、弁護士には事故対応をすべて任せられるので、示談交渉のストレスからも解放されるでしょう。
交通事故の加害者になった場合、恐らく冷静でいられる人は多くないでしょう。
事故現場という非日常の中、事故の状況、あなたの状況、被害者の状況、様々な要素が絡み合う中で、やるべきことの最善を選んでいくのは実は簡単なことではありません。
ここからは交通事故加害者がやってはいけないことをご紹介します。
まず一番に「負傷者がいるかどうか」の確認をし、負傷者がいる際には、その負傷者の救護を必ず行わなければいけません。
負傷者の救護とは
この救護義務は、道路交通法第72条に規定があり、これを怠ってしまうとあなたには救護義務違反(道路交通法違反)という罪が科せられることになります。
この罪が、いわゆる「ひき逃げ」と呼ばれるものです。
しかし、救護義務を怠っただけで「逃げて」いないのに、「ひき逃げ」になるというのにひっかかる方もいらっしゃるでしょう。
けれど、このいわゆる「ひき逃げ」というものは、この救護義務と同条に規定される警察への報告義務を怠った場合のことを指す言葉なのです。
つまり、あなたは「逃げて」いないと思っている場合でも、「ひき逃げ」と判断される場合があることに注意が必要です。
とある例としては、事故の直後には相手方が怪我をしていたけれど、「大丈夫です」という言葉を鵜呑みにしてそのままにした結果、後々に相手方の症状が悪化することで救護義務違反、つまり「ひき逃げ」とされてしまったようなケースもあります。
このような場合において大切になるのが、やはり念のため病院に行くことを勧める、などの救護義務を適切に行っていくことです。
さぁ、あなたは事故直後、適切に救護義務を行いました。
そして相手方が即救急車で搬送されるような状況でない限り、恐らく次に行われるのがお互いの免許証の確認、氏名、住所、連絡先等の交換ではないでしょうか。
一息ついて、事故の状況について詳しく思い起こすような心の余裕も出てくるかも知れません。
しかし、ここで相手方と過失割合や示談の話をするのはおすすめできません。
なぜなら、事故直後あなたの目の前にいるのが必ずしも冷静な相手方とは限りません。
そんな中で事故直後に事故の過失割合や損害賠償額を軽々しく判断してしまうことによって、後々に本当はもっとあなたにとって有利になるはずだった状況を覆せなくなる恐れがあるからです。
事故の過失割合や損害賠償額は、様々な調査を経てから慎重に確定する必要があります。
正式に示談書を交わしていないのだから大丈夫、と思われることも多いですが、実際に法的な拘束力でいえば口約束でも契約は成立してしまうのです。
事故の原因や過失割合については触れずに、今後は保険会社等を通じて誠意のある対応をさせていただく、と述べるに留めておいた方がいいでしょう。
救護義務を果たし、いざ被害を被った相手方に対応する際に、あなたは重要な事故直後の相手方への対応を全て専門家に任せた方が良いのではないか、という疑問が湧いてきたのではないでしょうか。
しかし、実際に事故現場で相手方と一切会話すらせず、保険会社にすぐに連絡をして対応の一切を保険会社に任せてしまうことはおすすめできません。
確かに、保険会社の担当者はプロではありますが、被害に遭った相手方はプロではないのです。
あなたが平静でいられないのと同じように、相手方も平静ではありません。
特に、自分側の過失が大きい場合や、相手が負傷している場合には、事故現場で保険会社に全てを任せるといった対応が相手方の感情を害することが多くあります。
それは後々の交渉の場においてもマイナスに働きます。
相手方があなたの事故現場での対応がきちんとしていなかったと気分を害してしまえば、交渉の場においても態度を硬化させてしまうでしょう。
また、あなたが相手方を負傷させてしまった場合、あなたには過失運転致傷罪が成立するため、警察や検察の取り調べを受けることになります。
そしてその後に起訴されるかどうかが判断されるわけですが、その際にもしも示談が成立していなかったり、相手方があなたを強く処罰することを望んでいた場合、それはあなたにとってとても不利な要素となり得ます。
もちろん、前述した通り相手方への対応を保険会社に丸投げすることによって万が一にでも相手方の気分を害してしまうことも、同時に避けなければいけないことなのです。
よって、示談の内容や過失割合について踏み込んで発言することは避けつつ、相手方に対して、一人の人間として事故直後から誠意ある対応をし、今後もそうするという立場を明らかにしておくことは大切なことだと言えるでしょう。
交通事故を起こしてしまうと多くの責任が発生します。
そして、交通事故の加害者になったときに平静でいられる人はいません。
しかし覚えておくだけで、その事故の直後、あなたが負わなくてもいい責任を負わされたり、不当な悪意につけ込まれたりしないようにできることがあります。
そのために、交通事故で加害者になったらすべきことや注意点を是非覚えておいて下さい。
事故というものは誰にでも、加害者になる可能性をもたらします。
交通事故の加害者がやってはいけないことの一つとして、絶対に一人で悩まないようにしましょう。
わからないことを放置したり、一人で思い悩んでいては更なる悪循環を生み出すこともあります。
事故後の初期対応に自分で失敗したと思っても、その後弁護士のアドバイスによりリカバリーすることが可能な場合も多数あります。
あなたの正当な権利を守るために、また、あなたの平穏な日常を一刻も早く取り戻すためにも、弁護士にアドバイスを受けることが有効であることも是非覚えておいて下さい。