東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
車があると生活の質は向上しますが、不注意で事故を起こしたら相手の人生を奪ってしまうことにもなりかねません。今後、事故を起こさないためにも、交通事故で負う可能性のある責任をしっかり理解しておきましょう。
この記事では、交通事故の加害者が負う4つの責任をわかりやすく解説していきます。
目次
交通事故の加害者になった場合の対処法については、以下の記事もご覧ください。
交通事故の加害者が負う可能性のある責任は、以下の4つです。
なお、それぞれの責任は別個の責任だと考えられています。たとえば、刑事事件で不起訴処分になっても、民事責任や行政責任を負う可能性は十分にあり得ます。
また、物損事故の場合、これらの責任を負わない場合もあります。くわしくは、こちらの記事をご覧ください。
→ 人身事故と物損事故の違いは?警察が物損にしたがる理由や切り替え方を解説
行政責任とは、運転免許の停止や取り消し処分のことです。交通違反があるごとに運転免許に違反点数が加算されていき、一定の点数に到達すると免許停止(6点以上)や免許取り消し(15点以上)など行政上の処分を受けることになります。
交通違反で加算される点数は、違反した内容によって異なります。詳しくは以下のページで確認可能です。
参照:交通違反の点数一覧表|警視庁
例えば、交通事故を起こして被害者が亡くなってしまった場合、少なくとも15点以上の違反点数が加算されます。免許取消処分となる点数は15点なので、たとえ被害者に過失があったとしても車を運転することができなくなります。
また、酒酔い運転やひき逃げなどの悪質な事故の場合、運転免許の再取得ができない欠格期間も長くなります。
なお、免許停止・取り消し処分になる点数や停止・欠格期間の長さは、交通事故の前歴の有無で異なります。
また累積点数によって反則金を科されたり、免許更新の際にゴールド免許の剥奪や講習手数料の増額などのデメリットもあります。
民事責任とは、被害者や遺族に対して支払う賠償金の支払い義務のことです。
物損事故であれば車の修理代や代車使用料、人身事故であればそれに加えて慰謝料や休業損害、逸失利益などを支払う義務を負います。
具体的な賠償額はケースごとに異なりますが、死亡事故や重度の後遺障害が残ってしまったケースでは高額な賠償責任を負います。たとえば、事故で植物状態になってしまい1級に認定された場合、慰謝料の相場は弁護士基準で2,800万円になります。
対人・対物無制限の任意保険に加入していれば、慰謝料を含む賠償金は保険会社に支払ってもらえます。一方もし任意保険に加入していなかった場合には、自賠責保険の補償上限を超える部分については、加害者本人が賠償することになります。
また、示談交渉でもめて裁判にまで発展した場合には、時間が手間や時間もかかり精神的な負担も大きくなります。
人身事故の加害者は、事故状況によっては刑法上の罪に問われる可能性があります。交通事故で成立する可能性のある主な犯罪は、以下のとおりです。
成立する犯罪 | 刑罰 |
---|---|
危険運転致死罪 | 1年以上20年以下の懲役 |
準危険運転致死罪 | 15年以下の懲役 |
過失運転致死アルコール等影響発覚免脱罪 | 12年以下の懲役 |
過失運転致死罪 | 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金 |
無免許加重 | 成立する犯罪の刑が重くなる |
道路交通法違反 | 該当する項目によって異なる |
犯罪に該当する可能性がある事故の場合、警察により現場検証がおこなわれます。捜査で犯罪に該当する可能性があると判断された場合には、検察に事件が引き継がれ、場合によっては刑事裁判にかけられる可能性があります。
過失による事故であれば、不起訴処分になったり執行猶予付き判決が出たりするケースもあるでしょう。一方で、飲酒運転や高速道路でのあおり運転など悪質な事故の場合、実刑判決を受ける可能性が高いです。
交通事故の加害者は、被害者や遺族に対する謝罪やお見舞い、被害額の弁償や示談交渉で真摯に応じる姿勢など、社会人として当然負うべき社会的・道義的責任を負います。
ほか3つの責任と違い法律上要求されている責任ではありませんが、被害者の人生を大きく変えている以上、当然負うべき重要な責任だといえます。
加害者の過失で事故を起こしたにもかかわらず、被害者に事故の責任をなすりつけたり謝罪をしないでいると、精神的苦痛の増大を理由に慰謝料の増額を主張される可能性があります。また、処罰感情の増大により刑事処分が重くなるなどのデメリットもあります。
示談交渉を保険会社に任せきりにしていると、誠実な対応をしてくれないことを理由に示談交渉が難航する恐れがあります。交通事故を起こしたら、事故を起こしたことを反省し真摯な対応を心がけましょう。
交通事故で民事上の責任を負うのは、加害者本人です。家族や同乗者が責任を負うことは原則的にありません。
ただし、以下のケースでは例外的に加害者家族が責任を負う場合があります。
くわしくは、以下の記事をご覧ください。
交通事故の責任から免れることはできません。
事故を起こしたショックで負傷者の救護活動を怠ったり、警察への通報しなかったりした場合、ひき逃げ犯として処罰される可能性が高まります。重い刑事処罰を科されるほか、高額な慰謝料の支払い義務が裁判で認められる可能性もあります。
被害者のドライブレコーダーや街中・商業施設の防犯カメラから、犯人が特定されるケースもあります。事故を起こしたら必ず負傷者の救護活動・警察への通報をおこない、誠実な対応を心がけましょう。
交通事故に精通した弁護士であれば、加害者が過大な責任を負うことを避けることができます。
事故状況や当事者・目撃者の証言内容、けがの程度や治療の進行具合などから、適切な賠償金額を算定することができます。もし相場以上の賠償金を請求された場合には、裁判例などから法的に減額すべきだと主張できるでしょう。
また、証拠隠滅・逃亡のおそれがないことを主張することで、逮捕・勾留を免れるための弁護活動をおこなってもらえます。早期の示談成立や反省を示すことで、刑事処罰を軽くするための弁護活動にも対応してくれます。
交通事故の加害者は、以下の4つの責任を負います。
車を運転する際は、事故により重い責任を負う可能性があることを常に意識しておきましょう。交通ルールさえ守れば、車はQOL(クオリティオブライフ)を大きく向上してくれます。
もし交通事故に巻き込まれてしまったら、交通事故に強い”ベンチャーサポート法律事務所”にぜひお気軽にご相談ください。