東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
目次
警察庁交通局が発表した統計である、「令和2年度中の交通事故の発生状況」によれば、平成29年における自動二輪車乗車中の死傷者の数は23,201人でした。
死傷者23,201人の内訳は、軽傷者18,635人、重傷者4,181人、死者385人で、死傷者全体に対する死者の割合である致死率は1.66%です。
一方、令和2年度中の自動車乗車中の死傷者数は225,155人でした。
内訳は、軽傷者217,260人、重傷者 7,013人、死者882人で、致死率は 0.39%です。
自動二輪車乗車中の致死率は、自動車乗車中の死亡率の約4.25倍という高い数値になっています。
警視庁発表の「二輪車の死亡事故統計」によれば、平成29年から令和3年までの5年間における二輪車の死亡事故の損傷部位は、頭部が48.7%で胸部が28%となっています。
頭部と胸部だけで全体の70%以上を占めていることから、バイクを運転する際には頭部と胸部をいかに保護するかが重要になります。
バイク事故で死亡・重傷者が多い理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
主な原因は、以下のようなものがあります。
自動車は車体が大きいため、前方の車を追い越すのに一旦車線を変更する必要がありますが、バイクは車体が小さいため、比較的簡単に追い越しをすることができます。
そのため、バイクは無理な追い越しをしてしまう可能性も高くなります。
無理な追い越しによって他の車との接触が起こり、事故につながるケースが多くなっています。
バイクは運転時の体勢やヘルメットによる制限などで、基本的に視界が狭くなっています。
狭い視界では十分な前後左右の安全確認が必要になりますが、ツーリングなどの際にはついよそ見をしがちです。
よそ見による前方不注意は、追突事故につながります。
車同士の追突事故は車両の損壊だけで済むことも少なくありませんが、バイクと車の追突事故の場合は、バイクの運転手が投げ出されて大怪我や死亡事故になる可能性が高くなります。
自動車の運転手から見ると、バイクは認識しにくいという特徴があります。
対向車の陰になっている部分、自動車の窓柱の見えない部分、ミラーに映りにくい左右の後方、トラックなどの大型車の側方などが自動車から見た死角になってしまいます。
また、バイクは自動車と比較して車体が小さく、自動車の運転手側からは距離感やスピードを把握しにくいため、事故が起きやすくなります。
バイクは運転者の身体が露出しており、自立できない構造(二輪車の場合)のため、交通事故が起きると高確率で転倒します。
シートベルトで身体を固定することもないので、転倒のはずみで運転者が投げ出されると、路面やガードレールなどに叩きつけられる可能性が高いでしょう。
同じ条件で事故が起きた場合、車であればエアバッグやピラー(支柱)などによって運転者は守られますが、バイクは重症や死亡事故につながるケースもあります。
車の場合は車体があり、運転者はそこに包まれる形で運転をしています。
一方、バイクの場合は運転者の体が剥き出しなので、車と違って自分の体を守るものがありません。
このような状況の中で、バイクの運転手が死亡事故を防ぐためにできる行動は次の通りです。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
二輪車の死亡事故の損傷部位の第1位は頭部であることから、バイク用の装備の中で一番重要なのはヘルメットです。
バイクを運転する際には、ヘルメットを着用することが法律で義務付けられているため、必ずヘルメットを着用して運転しましょう。
ヘルメットをかぶる際は、あご紐をきちんと締めることも大切です。
あご紐を締めないとヘルメットが脱着してしまう可能性があり、死亡事故につながりやすくなります。
また、ヘルメットだけでなく、体を保護するプロテクターを装着することで事故の被害を抑えることにつながります。
バイク運転時のヘルメット着用は法律で義務付けられていますが、プロテクターの着用は運転者の任意になっています。
しかし、バイクの死亡事故率が高いことを考えると、万が一に備えてプロテクターを着用する必要性は高いと言えるでしょう。
運転者の気持ちに余裕があればバイク事故を回避しやすいため、譲り合いの精神を持つことが重要です。
バイク事故は出社時や退社時に発生することが多く、会社や自宅に早く到着したいとの思いから、乱暴な運転になるケースが少なくありません。
出社・退社の時間帯は交通渋滞も起きやすいため、車両の間をすり抜けたり、一時停止を怠ったりしがちですが、他の運転者の多くも急ぎたい気持ちは同じでしょう。
焦っている状態の運転では信号の見落としも発生しやすく、後方確認も疎かになりやすいので、交通事故の発生リスクはさらに高くなります。
未然にバイクの死亡事故を防ぐためには譲り合いの精神を持ち、早さよりも「無事到着」を心がけるとよいでしょう。
バイクの状態が交通事故の原因になるケースもあるので、定期的なメンテナンスは必ず行ってください。
12ヶ月や24ヶ月の法定点検や、車検(排気量が250ccを超える場合)も必ず受けておきましょう。
乗車前や乗車直後に以下の自己チェックをしておけば、バイクの異常にもすぐに気付くでしょう。
バイクで事故に巻き込まれた場合には、まずは怪我の有無を確認することが大切です。
バイクでの事故は自動車と比較すると大怪我になりやすいため、負傷した状況の確認の必要性がより高くなります。
特に、事故の際に頭部を傷めてしまう危険性が高く、ヘルメットを着用していた場合でも、頭部を打ってしまった場合はすぐに診察を受けましょう。
怪我の確認の重要性が高いこと以外は、自動車事故の場合の対応と同じです。
被害状況、当事者の身元、目撃者の確保、警察対応、保険会社への連絡、などが主になります。
防水や防塵が施されたバイク用のドライブレコーダーも実用化されています。
万が一の際にドライブレコーダーで録画をしていれば、何が原因で事故が発生したのかを客観的に把握しやすくなるでしょう。
バイクは車体が小さく小回りがきくことから、自動車からの死角や無理な追い越しなどによって、事故率が高いです。
また、バイクの運転者は体が剥き出しなことから、事故が起こった場合に頭部や胸部の強打による死亡率も高くなっています。
バイク事故を未然に防ぐためには、主な事故の原因を知って安全運転を心がけることと、ヘルメットやプロテクターなどを適切な方法で着用することが大切です。
万が一の事故の際には、まずは怪我の有無を確認することが重要です。
特に、頭部を打った場合には要注意ですので、必ず診察を受けるようにしましょう。