東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、皆様の問題に真摯に取り組む所存です。
目次
軽い接触事故の場合、車をぶつけられた被害者とぶつけた加害者が「警察を呼ばないで済ませてしまおう」と考えてしまうことも多いです。
しかし、接触事故で警察を呼ばないのはNGなのです。
接触事故では、警察を呼ばなければいけないルールになっています。
もし、接触事故で警察を呼ばなかったらどうなるのでしょうか。
接触事故で警察を呼ばなければならない2つの理由について解説します。
交通事故の際は、たとえそれが軽い接触事故でも、警察を呼ぶことが義務づけられています。
加害者側から「示談にしてくれ」と言われて応じてしまい、警察を呼ばなかったら、道路交通法72条に違反してしまうのです。
どんなに軽い事故でも、警察を呼んで被害届を出さなければいけません。
接触事故を起こしたのに警察を呼ばなかった、つまり報告義務を果たさなかった場合は、義務違反に対して罰則がさだめられています。
接触事故で警察を呼ばなかったら、懲役または罰金の処罰を受けることになってしまいます。
加害者側から「警察を呼ばないで」と言われても、義務があるため呼ばなければいけません。
接触事故のときに警察を呼ばなかったら、保険金請求などに使う書類の作成ができません。
警察を呼ばないと作成できない書類は、「交通事故証明書」と「実況見分調書」です。
交通事故証明書は自動車安全運転センターが発行する書類で、接触事故の証明書です。
警察を呼ばなかったら交通事故証明書を作成してもらえないため、保険金の請求が難しくなってしまいます。
実況見分調書は、事故の状況などを証明する書類です。
接触事故では、接触事故の後になって加害者側とトラブルになる可能性があります。
たとえば、事故現場では加害者は自分の非を認めていたのに、後から「被害者側の過失が大きい」と言ってくることがあります。
また、接触事故の状況説明でも、事故現場と事故後では二転三転する可能性があります。
実況見分調書には事故当時の状況や証言などが記録されていますので、後から加害者側とトラブルになった場合などに使えます。
また、接触事故にまつわるトラブルの防止策としても役立つのです。
接触事故で警察を呼ばなかったら、交通事故証明書や実況見分調書の作成ができないので、保険金の請求や接触事故後のトラブルなどがあった場合に困ります。
軽い接触事故で警察を呼ばずに示談してしまうと、後から「失敗した」と後悔する可能性もあります。
なぜなら、接触事故で警察を呼ばずに示談することは報告義務違反に該当する可能性があるだけでなく、車をぶつけられた被害者側にもリスクがあるからです。
軽い接触事故で警察を呼ばずに示談する2つのリスクについて解説します。
警察を呼ばずに軽い接触事故の示談交渉をする1つ目のリスクは、損害賠償を受け取れないリスクです。
接触事故があった場合、保険会社を利用するケースが多いのではないでしょうか。
軽い接触事故の現場で、車をぶつけた加害者とぶつけられた被害者が勝手に示談交渉してしまうと、後で保険会社に請求しても、保険会社が支払いを拒む可能性があります。
接触事故のときは保険会社にも通知し、賠償を負担する旨の承諾を保険会社側から受けなければいけません。
保険会社への連絡を怠ると、保険会社からルール違反を指摘されて、請求に応じてもらえず損害賠償が受け取れないリスクがあります。
また、前述のとおり、軽い接触事故のときに警察を呼ばなかったら、示談の際に実況見分調書を作成することができません。
そのため、事故の状況について証拠がなく、適正な損害賠償額を算出できない可能性があります。
加えて、証拠が乏しいことにより加害者側から「証拠がない」「言いがかりだ」などと逃げられて、結果的に損害賠償が受け取れないこともあります。
示談の法的な拘束力も問題となります。
示談には「内容が真実でなくても、合意内容に従わなければいけない」という法的な義務が発生します。
たとえば、70万円で示談したけれど後から接触事故についてさらに高額の損害賠償を請求できることがわかった場合や、後遺障害があった場合などに、損害賠償の追加が認められない可能性があるのです。
このように、正当な損害賠償を受け取れないリスクがあります。
接触事故の場合、加害者側が刑事罰を受けるという印象があるかもしれません。
しかし、警察への報告義務を怠っていた場合には、被害者側も刑事処分を受けるリスクがあるため注意が必要です。
車両事故の場合は、車をぶつけられた被害者側の運転手も警察に接触事故について報告する義務があります。
報告義務や義務を怠ったときの刑事処罰については、道路交通法72条と119条に定められています。
すでにお話ししましたが、接触事故のときに警察を呼ばなかったときは、加害者、被害者問わず懲役や罰金のリスクがあります。
接触事故で警察を呼ばなかった場合の刑事処分については「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」となっています。
車をぶつけた加害者、車をぶつけられた被害者ともに接触事故で警察を呼ばなかったら刑事処分の可能性があるからこそ、加害者に「軽い接触事故だから警察を呼ばないで欲しい」といわれて警察を呼ばないのはNGです。
車をぶつけた加害者側からは「警察を呼ばないで欲しい」といわれることがある他、「この場で示談して解決しましょう」と持ちかけられることもあります。
加害者側はなぜ急いで示談したがるのでしょうか。
加害者側が示談にしたがる理由は、次の4つです。
加害者側が示談にしたがる理由
それでは1つずつ見ていきましょう。
交通事故では、時間を置いて車をぶつけられた被害者側の不調が出てくる可能性があります。
そのため、加害者には接触事故の現場において示談交渉で解決し、後日怪我が発覚するなどの面倒な話になる前に、さっさと解決したいという思惑があります。
接触事故の現場ですぐ示談交渉をしてしまうと、請求できたはずの損害賠償が請求できないなどのリスクがあります。
示談は口約束でも成立します。
接触事故の現場で示談を持ちかけられたら、しっかり断ることが重要です。
家族や会社の同僚、ご近所などに接触事故を知られたくないために、加害者が接触事故の現場で示談交渉を持ちかけてくることもあります。
接触事故を会社に知られれば、社内での評判や昇進などに影響などに影響するのではないかと心配しているケースもあります。
そもそも、事故を起こしたという事実を知られたい人はあまりいません。
接触事故の現場で示談交渉してその場で解決できれば、周囲に知られるリスクが低くなるため、加害者側のメリットになります。
接触事故を起こすと、免許の点数状況によっては、運転免許の取り消しや運転免許停止などの措置が取られる可能性があります。
軽い接触事故の現場で警察を呼ばずに解決すれば、免許の点数に影響はありません。
運転免許への影響をなくすために、加害者側が示談交渉を持ちかけることもあります。
地方都市においては、運転できないと生活にも関わります。
加害者側から生活に困るなどの同情を誘う言葉を出され、車をぶつけられた被害者側が示談交渉に応じかけることもあるかもしれません。
しかし、すでにお話ししたように、接触事故のときは警察を呼ぶ義務があります。
同情心などから示談交渉に応じないよう、注意しておきましょう。
軽い接触事故を起こして保険を使うと、基本的に保険の等級が下がってしまいます。
保険の等級が下がると、保険料が高くなったり割引率が低くなったりするため、接触事故の加害者側は保険料の負担が増え、デメリットになります。
上記のような理由から、保険の等級を下げないために、加害者側が軽い接触事故の現場で被害者に示談交渉を持ちかけることがあるのです。
示談交渉を接触事故の現場でしてしまうと、正当な額での示談ができなくなる可能性があります。
また、接触事故の後に、車をぶつけられた被害者に不調などのトラブルが起きた場合も対処が難しくなります。
示談交渉は正確な接触事故の資料をもとに金額を計算し、車をぶつけられた被害者の被害状況なども含めて算出する必要があります。
加害者側の事情から示談交渉に応じると、被害者は十分な補償を受けられない可能性もあるため、接触事故のときはまず警察を呼ぶことが重要です。
警察に接触事故の状況を整理してもらい、交通事故証明書などの書面を作成してもらいましょう。
接触事故の損害賠償の算出や示談交渉には専門的な知識が必要です。
車をぶつけられた被害者が十分な補償を受けられるよう、弁護士に相談の上で進めることをおすすめします。
接触事故のときに警察を呼ばないのはNGです。
接触事故のときは、車をぶつけた加害者・車をぶつけられた被害者ともに警察を呼ぶ義務があります。
警察を呼ばないと、被害者も刑事処罰の対象になることがあるのです。
また、接触事故のときに警察を呼ばなかったら、交通事故証明書などの書面を作成してもらえません。
被害者が十分な補償を受けるという点ではマイナスになります。
接触事故があったら、まずは警察を呼びましょう。
接触事故後は加害者側が示談交渉を持ちかけてくることがあります。
その場で示談に応じることには、被害者側のリスクやデメリットがあります。
交通事故に強い弁護士に相談し、十分な補償を受けられるよう対処しましょう。