東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
バイクは自動車と同じように高速で走りますが、自動車と違い身体が露出しているので、事故にあった際自動車と比べて大けがを負ってしまう可能性が高いといえます。
死亡とまではいかなくとも、重大な後遺症が残ってしまう可能性も高くなります。
この記事では、バイク事故によってどういった後遺症が多いのか、後遺症が残った場合に後遺症認定を申請する方法、慰謝料などの相場、弁護士に相談するメリットについて解説していきます。
目次
後遺症と一言で言っても様々な種類があり、その度合いによっても認定等級が変わってきます。
また、すべての後遺症が補償の対象になるわけではなく、特別に補償の対象となる症状を後遺障害と表現されます。
では、バイク事故によりけがをした場合、どのような後遺障害が認定される可能性があるのか見ていきましょう。
高次脳機能障害は脳に損傷を負い、脳の認知機能の低下や、思考能力が損なわれ日常の社会行動に支障が生じてしまいます。
バイクは身体が露出しているため、事故の際に被害者が頭部を強打することが多くあります。
そのため、自動車事故と比べて可能性の高い障害です。
常時介護を必要とするような場合、最も重い後遺障害1級が認定されることもあります。
バイク事故では、衝突の衝撃により自ら運転するバイクのハンドルに胸や腹を強打し、内臓に損傷を負い、後遺障害が残る場合があります。
部位や程度によって後遺障害の等級が決められ、常時介護を必要とするほど重度であれば1級が認定されることもあります。
腕や脚をけがすると、一部が欠損したり、関節を動かすことができなくなるといった後遺障害が残る場合があります。
こちらも部位や程度によって後遺障害の等級が決められ、両腕や両足の3大関節のすべてが強直(固まって動かなくなること)した場合や、根元から切断することになった場合は1級が認定されます。
事故によって顔や頭、首などの日常的に露出している身体の部分に傷跡が残ってしまうことがあります。
外見の印象として最も影響のある部分ですので、精神的なダメージは非常に大きいといえます。
そのため、傷跡が一定以上の大きさの場合は後遺障害認定されることがあります。
この障害で認定される等級は、重い方から7級・9級、12級です。
後遺障害の等級認定を受けるためには、損害保険料率算出機構という第三者機関に申請することが必要です。
この申請の方法には二種類あり、それぞれにメリット、デメリットがあるので注意が必要です。
事前認定とは、相手方の任意保険会社が書類を提出し、申請の手続きを任せる方法です。
様々な手間のかかる手続きを全て任意保険会社に任せることができるので、非常に負担の少ないというメリットがあります。
しかし、申請代行する任意保険会社は加害者側の立場となりますので、必ずしも被害者側に有利な内容にされるわけではないというデメリットがあります。
被害者請求は、被害者が自分で必要書類を提出し、後遺障害認定請求するという方法です。
後遺障害診断書の内容について医師と話し合うなど、認定のために様々な努力や工夫ができるので、適正な後遺障害等級認定を受けるためには、メリットがあるといえます。
ただし、被害者請求をするためには多くの書類を準備しなければならず、手間も時間もかかるというデメリットもあります。
そういったエネルギーや時間を割くことが難しい方は、弁護士に依頼した方がよいかもしれません。
後遺障害の等級認定手続きを行うためには、後遺障害診断書の提出が必要となります。
この後遺障害診断書は、後遺障害の等級認定において、審査の中心となる大切なものです。
とはいえ、実際にこの診断書を作成するのは被害者自身ではなく医師です。
そのため、自分の症状について適正な診断結果を反映されているか判断できないことが多くあります。
では、医師に後遺障害診断書の作成を依頼するときには、どういった点に注意することが必要でしょうか。
診断書の内容については医師に任せましょう。
つい「こう書いてください」と言いたくなるものですが、医学に明るくない素人がプロである医師に意見すると、気分を害してしまう医師もいるかもしれませんので、やめておいた方がよいでしょう。
ただし、自覚症状については被害者本人にしかわかりませんので、認識にズレが生じないように、医師とコミュニケーションをとり、正確に漏れのないようにしましょう。
後遺障害診断書を作成してもらった後に、不備や記載漏れがないか必ず確認しましょう。
医師も人間ですので、記載ミスや記載漏れがあることもあります。
また、自覚症状などについてうまく伝わっていないこともありますので、疑問な点や不明な点があれば医師に確認しましょう。
後遺障害診断書を適切に作成してもらうためには、作成経験がある医師に依頼しましょう。
担当医であっても作成したことがない、病院の方針で作成を断られることもあります。
他の医師に依頼をすることや転院するなどして、正しく作成してもらえる医師に依頼しましょう。
交通事故の慰謝料計算基準には次の三種類の基準があります。
自賠責基準
加入が義務付けられている自賠責保険による支払いの基準です。
最低限の補償となっており、慰謝料の金額も他の基準に比べて少ないことが多いです。
任意保険基準
各任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準です。
自賠責基準よりは高額の慰謝料が支払われることが多くありますが、弁護士基準よりは低い傾向にあります。
弁護士基準
過去の裁判例を参考にして算出される基準です。
三種類の基準の中で最も高額になることが多い基準ですが、被害者自ら行う示談交渉によりこの基準の慰謝料を請求することは困難であり、通常は弁護士に依頼し請求してもらうことになります。
下記の表を後遺障害慰謝料の目安にしてください。
ただし、任意保険基準については各任意保険会社が定めていることもあり非公開とされているため、自賠責基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料のみ記載しています。
後遺障害慰謝料(自賠責基準と弁護士基準)
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級・要介護 | 1,650(1,600) | 2,800 |
2級・要介護 | 1,203(1,163) | 2,370 |
1級 | 1,150(1,100) | 2,800 |
2級 | 998 (958) | 2,370 |
3級 | 861 (829) | 1,990 |
4級 | 737 (712) | 1,670 |
5級 | 618 (599) | 1,400 |
6級 | 512 (498) | 1,180 |
7級 | 419 (409) | 1,000 |
8級 | 331 (324) | 830 |
9級 | 249 (245) | 690 |
10級 | 190 (187) | 550 |
11級 | 136 (135) | 420 |
12級 | 94 (93) | 290 |
13級 | 57 (57) | 180 |
14級 | 32 (32) | 110 |
参考元:民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準
※単位:万円
※()内は2020年3月31日までに発生した交通事故に適用
表のとおり、後遺障害慰謝料は自賠責基準と弁護士基準の相場では3倍近い差があります。
この差は非常に大きなものとなりますので、弁護士に依頼し、弁護士基準によって請求してもらうことをおすすめします。
逸失利益とは、事故がなければ得られたと思われる将来の利益のことをいいます。
この逸失利益の計算方法ですが「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数」によって計算されます。
基礎収入は原則として、事故前年度の年収額で考えます。
給与所得者:賞与を含んだ事故前年の年収額が基準
事業所得者:前年度の確定申告所得額が基準
専業主婦:全女性の平均賃金が基準
兼業主婦:パートなどの収入額と女性の平均賃金を比較し、高い方が基準
若年者:概ね30歳未満の場合は、男女別の全年齢平均賃金が基準
無職:原則として逸失利益は認められません
労働能力喪失率は下表のように後遺障害等級別に定められており、後遺障害の部位・程度などケースによって異なります。
例えば、10級なら今後は事故前に比べて27%(27/100)労働能力が下がると考えて計算します。
障害等級 労働能力喪失率 障害等級 労働能力喪失率 第1級 100/100 第8級 45/100 第2級 100/100 第9級 35/100 第3級 100/100 第10級 27/100 第4級 92/100 第11級 20/100 第5級 79/100 第12級 14/100 第6級 67/100 第13級 9/100 第7級 56/100 第14級 5/100 引用:国土交通省
ただし、注意点として必ずしもこの表のとおりに労働能力喪失率が認められるわけではありません
実際の収入の低下額や仕事への影響などは個別のケースによって異なるため、争いとなることもあります。
労働能力喪失期間とは、今後何年間労働能力喪失が続くのかを表した年数であり、基本的には「症状固定から67歳まで」の年数です。
67歳間近、あるいはそれを超える高齢者の方は、「症状固定時の年齢の平均余命の半分」の年数を労働能力喪失期間として計算されます。
この平均余命については、厚生労働省が取りまとめている「簡易生命表」により計算されることが多いです。
逸失利益は「将来の損害」をまとめて支払うというものなので、預金の利息分などの中間利息を差し引いて支払うことになります。
その中間利息控除係数として、逸失利益を適正な金額に調整するためにライプニッツ係数が使われます。
民法改正により、2020年4月1日以降に発生した交通事故においては、年利3%の法定利率でライプニッツ係数を計算することになるので注意が必要です。
被害者が18歳以上のときのライプニッツ係数
労働能力喪失期間 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
1年 | 0.9524 | 0.9709 |
2年 | 1.8594 | 1.9135 |
3年 | 2.7232 | 2.8286 |
4年 | 3.546 | 3.7171 |
5年 | 4.3295 | 4.5797 |
6年 | 5.0757 | 5.4172 |
7年 | 5.7864 | 6.2303 |
8年 | 6.4632 | 7.0197 |
9年 | 7.1088 | 7.7861 |
10年 | 7.7217 | 8.5302 |
11年 | 8.3064 | 9.2526 |
12年 | 8.8633 | 9.954 |
13年 | 9.3936 | 10.635 |
14年 | 9.8986 | 11.2961 |
15年 | 10.3797 | 11.9379 |
16年 | 10.8378 | 12.5611 |
17年 | 11.2741 | 13.1661 |
18年 | 11.6896 | 13.7535 |
19年 | 12.0853 | 14.3238 |
20年 | 12.4622 | 14.8775 |
参考:国土交通省|就労可能年数とライプニッツ係数表、国土交通省|就労可能年数とライプニッツ係数表
被害者が18歳未満のときのライプニッツ係数
事故当時の年齢 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
0歳 | 7.5495 | 14.9795 |
1歳 | 7.9269 | 15.4289 |
2歳 | 8.3233 | 15.8918 |
3歳 | 8.7394 | 16.3686 |
4歳 | 9.1765 | 16.8596 |
5歳 | 9.6352 | 17.3653 |
6歳 | 10.117 | 17.8864 |
7歳 | 10.6229 | 18.423 |
8歳 | 11.1541 | 18.9756 |
9歳 | 11.7117 | 19.5449 |
10歳 | 12.2973 | 20.1312 |
11歳 | 12.9121 | 20.7352 |
12歳 | 13.5578 | 21.3572 |
13歳 | 14.2356 | 21.998 |
14歳 | 14.9474 | 22.6579 |
15歳 | 15.6949 | 23.3376 |
16歳 | 16.4796 | 24.0377 |
17歳 | 17.3035 | 24.7589 |
参考:国土交通省|就労可能年数とライプニッツ係数表、国土交通省|就労可能年数とライプニッツ係数表
計算例
500万円×5%×17年(13.1661)=3,291,525円
バイク事故によって賠償請求できるものは後遺障害慰謝料だけではありません。
慰謝料以外に請求できる損害賠償には大きく分けて二種類あります。
事故などによって被害者が実際に費用を支出しなければならなくなった損害のことです。
治療費・入院費・葬儀費用・介護費用・通院交通費などや、将来確実に発生する出費がこれにあたります。
消極損害とは、交通事故に遭わなければ得られていたはずの財産的な利益を失ったことに対する損害のことです。
被害者が請求できる損害は、以下の二種類です。
逸失利益の計算方法については、「バイク事故で後遺障害を負った際にもらえる逸失利益の相場」の項目をご覧ください。
休業損害とは、交通事故によって休業したとき、その休みによって生じた減収分の補償として支払われる賠償金のことです。
この休業損害ですが、慰謝料とは別に請求することができます。
両者は交通事故によって入通院が必要となったことを原因としているので、別々に請求することはできないように思えてしまいますが、損害の種類が異なっているため、別々に請求することができます。
この休業損害の計算方法には、慰謝料の基準と同じく三種類の基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)があります。
自賠責基準
日額5,700円 × 認定休業日数
任意保険基準
任意保険会社の独自の基準に基づく算出方法で、公開されていませんが、弁護士基準に近い内容であることが多いようです。
弁護士基準
1日あたりの基礎収入額 × 認定休業日数この1日あたりの基礎収入額は、交通事故前の3カ月の収入をもとに計算します。
バイク事故にあった際には事故直後から弁護士に相談した方がよいでしょう。
初期の段階から相談することで、示談交渉や後遺障害等級認定を有利に進めることができます。
具体的なメリットとして以下のものがあります。
交通事故にあうと治療や諸々の手続きなど、精神的にも負担は大きなものです。
そのような中、示談交渉を行うことは非常に辛いものです。
弁護士に依頼すれば、示談交渉を一任でき、治療に専念することができます。
また、法律の専門家であるので示談交渉を有利に進めてもらうこともできます。
「交通事故の後遺障害慰謝料」の項目で説明のとおり、最も高額な基準である「弁護士基準」で加害者側に慰謝料請求してもらうことができます。
この弁護士基準は、被害者本人が示談交渉で請求することは困難であり、現実的ではないため、弁護士に依頼して請求してもらうことになります。
弁護士に依頼すると、依頼費用がかかるため、依頼を躊躇することがあります。
しかし、後遺症が残り後遺障害慰謝料の請求ができるような場合は、金銭面だけを考慮しても弁護士に依頼した方が得をすることが多いので、弁護士に依頼した方がよいでしょう。
また、無料相談を受け付けている弁護士事務所も多くありますので、費用が不安な方はまずそちらで一度確認してみてもよいかもしれません。
相談をしたからといって、必ずしも依頼をしなければならないわけではありませんので、無料相談を上手に活用することをおすすめします。
バイクを運転しているときに事故にあうと、身体が露出しているため大きなけがを負うことが多く、結果後遺障害が残ってしまう危険性も高くなります。
また、後遺障害の等級認定申請は複雑であり、手間も時間もかかります。
治療をしながら申請手続きや示談交渉を行うというのは、身体的にも精神的にも大変な負担となります。
できる限り弁護士に依頼し、お任せした方がよいでしょう。
弁護士費用特約が付帯している場合は、ぜひ弁護士に依頼をしましょう。
弁護士費用特約とは、保険会社が弁護士費用を負担してくれる保険サービスですので、もし今加入している保険にこの特約が付いていない方は、特約を付けることを検討してみてもいいかもしれません。
交通事故の被害による苦痛を金銭だけでは癒すことはできません。
しかし、せめて金銭面だけでも適正な賠償は受けとることは、後々の生活のためにも大切なことです。
示談交渉は一度成立してしまうと覆すことは困難になります。
後悔することのないように、様々なことを考慮して示談交渉を行うようにしましょう。