東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故の被害に遭ってしまうと、事故後の生活は驚くほど一変してしまうことがあります。
見た目ですぐにわかる後遺障害は勿論のこと、見た目ではわからない後遺障害の場合は、ご本人にとっては大変辛いものです。
周囲から理解してもらえるまでに時間もかかり、実際に「後遺障害」として認めてもらうまでには時間も労力も要します。
一生涯ともにしなければならない後遺障害ですが、今回はその中でも「高次脳機能障害」にスポットを当ててみていきたいと思います。
目次
「高次脳機能障害」は後遺障害等級認定の申請を行なってもなかなか認められません。
それはいったいなぜなのでしょうか?
その理由は、書類上の情報のみで審査され、かつ判断基準が抽象的だからです。
被害者感情からしてみれば、認定に必要な情報収集や不足している検査を受けるようにアドバイスをして欲しいと思われるでしょうが、残念ながらそれは叶いません。
「適正な等級」を得るためには、被害者自身が積極的に動かなければならないのです。
高次脳機能障害の症状は発見されにくい上に外見上ではわからないため、第三者から見れば事故が原因であるか否かの判断がつきません。
「元々こういう人だったのでは。」と捉えられてしまうこともあり、認定を受けるためには身近にいるご家族のサポートが重要であることはいうまでもありません。
したがって、事故後の治療において、主治医と細やかなコミュニケーションをご家族がとり被害者の変化について報告し診断書に反映してもらうことも有効です。
高次脳機能障害は、「等級」が認められれば高額な「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。
被害者にとって慰謝料は、事故後の生活の一助となる大変重要な役割となるものであり、その額は多いに越したことはありません。
それでは、「高次脳機能障害」が認定されるためになにかできることはないのでしょうか?
ケースバイケースなので、一概にはいえませんが、基本的には「等級」に見合った後遺症の程度を証明していくことです。
など
これらのうち不足している検査などを追加し証明していきます。
また、医師が作成する後遺障害診断書の内容も大変重要なものの一つです。
しかしながら、医師の中にも後遺障害診断書にどのように書けば認定されやすいかということを知らない先生もいらっしゃいます。
むしろ、それは仕方のないことです。
医師は病気や怪我の治療のプロであり、後遺障害等認定の申請に関わるプロではありません。
また、「認定された等級」が“適切な等級”であるかの妥当性の判断は専門家にしかわからないでしょう。
たとえ、認定されたとしても、その等級が本来得られるはずであった等級より低ければ後遺障害慰謝料の額はグンと下がってしまいます。
高次脳機能障害の「後遺障害等級認定」の申請手続きは、被害者のご家族だけで行うことは時間もかかり大変な労力を要することとなるでしょう。
したがって、交通事故発生後の治療の早い段階から専門家のサポートを受けることをおすすめします。
高次脳機能障害が疑われたら、認定に必要となる検査を受けるようにアドバイスをもらうことができ、時間のロスも回避できるでしょう。
また、先ほどもみてきたとおり「後遺障害診断書」の認定されやすい記載の方法を医師に対してアプローチしてもらうこともできるでしょう。
今まで行った検査内容を精査して、実際の症状などさまざまな情報を見直し、必要な情報を集めていくことになります。
「追加の検査が必要なのか?」
「異議申し立てが認められる可能性はどのくらいあるのか?」など
さまざまな疑問が生じることかと思いますが、これらは個々により違いますので一概にはいえません。
被害者自身で対応しようとしても限界があリます。
なぜなら、交通事故による高次脳機能障害の「後遺障害等級認定」を適正な等級で認めてもらうためには、高度な専門知識を要するからです。
異議申し立てをしても結局認められなかったと後悔する前に専門家のサポートを受けることをおすすめします。
また、異議申し立てをしても必ず認められるわけではありません。
たとえ、最新の検査を受けたとしても、その検査が本当に必要なものであるかを判断することは素人には困難です。
まずは、今まで行ってきたすべての情報を専門家に分析してもらい、可能性があるか否かの判断をしてもらうことが解決への第一歩といえるでしょう。
それでは、続いて「高次脳機能障害」が認定されない場合の異議申し立て事例をみていきましょう。
「非該当」から「9級」が認められた事例を紹介します。
先にもみてきたとおり、個々のケースにより、異議申し立てのアプローチの方法は異なりますが、不足している情報を補う形で異議申し立てを行うことが一般的です。
非該当→9級の認定 | |
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事故態様 | 乗用車運転中の女性が、カーブをはみ出してきた対向車と正面衝突された |
傷病と治療経過について | およそ2週間入院(脳挫傷、くも膜下出血) 頭痛や記憶障害などが残り後遺障害等級認定の申請を行うが「非該当」となる。 自覚症状は、就業先でミスが多くなったことや新しい仕事を覚えられないなど。 家族の証言では、自宅で料理をする際の要領が悪いことや運転がぎこちないことなどが挙げられる。 |
異議申し立て | 家族からの初回認定時の提出資料に情報不足があったため医師に対して必要な検査と診断書作成依頼を行う。 その他にも、必要なサポートを行い「第9級」の認定を受ける。 |
そもそも、「高次脳機能障害」とはどのようなものなのでしょうか?
記憶や思考、知覚、学習などの「認知面」および精神状態(感情面を含む)をつかさどる脳の働きのことを「高次脳機能」といいます。
そして、疾患や損傷によりダメージを負った状態を「高次脳機能障害」といいます。
この中でも、代表的な3つの症状を挙げてみます。
人格の変化 | 怪我を契機として衝動的な行動がみられるようになる、怒りっぽくなったなど |
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行動障害 | 複数のことを同時に処理できない、行動を抑制できない、社会生活上マナーやルールを守れないなど |
認知障害 | 記憶障害、遂行機能障害、集中力障害など |
記憶障害として代表的なのは、新しいことを覚えられなくなったなどという事例です。
聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
事故以前と変わってしまった被害者に対して、被害者のご家族は大変胸を痛めるものです。
被害者が辛い思いをすることはもちろんのこと、被害者のご家族にとっても「交通事故」は大変なダメージを及ぼします。
続いて、気になる「高次脳機能障害」の診断基準についてもみていきましょう。
大きくわけて5つあります。
いったいどのようなものなのでしょうか?
概要を解説していきます。
「頭部外傷の傷跡」があるケースでは、高次脳機能障害が認定されやすいでしょう。
MRIやCT、脳波の検査などで“脳に異常が確認できる”ことが重要です。
たとえば、脳挫傷や急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫であればCTで病変が認められることが多いといわれています。
また、脳浮腫や蜘蛛膜下出血などはCTでは確認できないのでMRIによって病変を判定することもあります。
さまざまな検査結果を診て評価がなされることとなります。
交通事故により頭部外傷を負うと「意識障害」を起こすことがあります。
これを客観的に測定するためのものです。
以下の2種類があります。
たとえば、「刺激をしても覚醒しない状態」や開眼、言葉による最良の反応、運動による最良の反応など細かな項目を点数で加算していき客観的に評価していきます。
以下に挙げる検査は絶対的なものではありませんので、ご参考程度に留めてください。
「高次脳機能障害」における、認知障害、注意障害、人格変化、遂行機能障害などを客観的に測定するための検査です。
知能テスト | 長谷川式簡易地方スケール改訂版(HDS−R)、MMSE、WAIS−R、コース立方体組み合わせテスト、RCPM(レーヴン色彩マトリックス検査)など |
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言語機能テスト | WAB失語症検査、SLTA(標準失語症検査)など |
記憶検査 | WMS−R、Benton資格記銘検査、三宅式記銘検査など |
遂行機能検査 | WCST、FAB、tmt、BADなど |
被害者である患者本人ではなく、あくまでも被害者のご家族に対する質問です。
(例)
など
自賠責保険における後遺障害の等級審査は「書面主義」で行われるため、被害者の方の障害を立証するために漏れなく情報を落とし込まなくてはなりません。
つまり、専門家のサポートを受けて「別紙」としてご家族から聞き取った日常生活に関する情報などを全て盛り込んで提出することが功を奏します。
主治医が記入するものとなりますので、普段の診察の時から良好なコミュニケーションを取ることがとても重要です。
上手く伝えられないなど、不安がある場合はメモ書きや日記のようなものを使って伝えるという方法も有効です。
患者に寄り添い、親身になってくれる主治医に巡り合えればよい結果が期待できるかもしれませんが、記載漏れなく的確な「所見」を書いてもらうようにお願いしておくとよいでしょう。
(例)
「高次脳機能障害」では、後遺障害等級表の「神経系統の機能又は精神の障害」にあたります。
一般的に太字で示した部分の「等級」が当てはまります。
賠償金の交渉をされる際に、相手方から提示された金額の“妥当性”を知るためにも相場を頭に入れておくことをおすすめします。
【後遺障害慰謝料】
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準(推定値) | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1,150万円(1,650万円) | 1,600万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円(1,203万円) | 1,300万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 1,100万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 900万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 750万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 600万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 500万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 300万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 200万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 150万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 100万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
参考元:自賠責保険基準、弁護士基準は日弁連「赤い本」
※「任意保険基準」に関しては、各保険会社の自由裁量による内部基準のため、あくまでも推定値となります。
※()内の数値は要介護のケースに適用されます。
後遺障害慰謝料の算出基準には、「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類があります。
表からみてもおわかりいただけるように、2〜3倍ほどの差が生じており、その金額差は歴然です。
より高額な後遺障害慰謝料を得るためには、弁護士に依頼することが必要ですので、一度ご相談だけでもされてみてはいかがでしょうか。
また、高次脳機能障害を負うほどのお怪我を負われる方もそれほど多くはいらっしゃいません。
そのため、専門的に対応できる弁護士の数も限られてきますので探される際にはご注意ください。
今回みてきたとおり、「高次脳機能障害」に関わる後遺障害等級認定が適正に評価されるためには、被害者のご家族のサポートが欠かせません。
しかしながら、被害者のケアを行いながらさまざまな対応を並行して行うことは簡単ではありません。
また、現実は綺麗事だけでは済まされません。
たとえば、自宅を介護仕様に改装したり、車を介護用車輌にしなければならないケースもあります。
その費用はどうすればよいのでしょうか?
慰謝料だけではなく、多岐にわたる損害賠償の項目を漏れなく適正な金額で請求することができます。
最終的にもらえる示談金が大幅に異なりますので、“誰に何をお願いするのか”を明確にして無駄なく示談交渉に臨まれることをおすすめします。
そのためには、弁護士等の専門家の手を借りることをおすすめします。
【交通事故 高次脳機能障害 後遺障害等級認定 弁護士】などとインターネットで検索されてみてはいかがでしょうか。