東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
目次
交通事故における「慰謝料」とは、被害に遭ったことで生じる悲しみや苦しみなどの精神的苦痛を賠償する目的で支払われるお金のことを指します。
一方、交通事故における「示談金」とは、交通事故で請求できる全ての賠償金の総称です。
つまり、慰謝料はあくまでも示談金として請求できる項目の一つであり、ほかにも逸失利益や休業損害、治療費や車の修理代などの賠償金を、全部まとめて示談金として請求することになります。
示談金と慰謝料の違いをしっかり理解しておかないと、請求漏れが出てしまい、示談交渉で損をしてしまうおそれがあります。
交通事故の被害者は、慰謝料だけではなく、さまざまな賠償金を請求できることをしっかり頭に入れておくようにしましょう。
交通事故の示談金は当事者間での合意に基づき決定されるため、事故ごとに相場はさまざまです。決まった相場はなく、数万円で示談が成立することもあれば、金額が億単位になるケースもあります。
ただし、示談金の1つである慰謝料については大まかな相場が存在するため、慰謝料からおおよその示談金を計算することは可能です。
交通事故の被害者が請求できる慰謝料には、次の3つの種類があります。
交通事故における3つの慰謝料 | |
---|---|
入通院慰謝料 | 交通事故のよるけがで、通院や入院をした際に支払われる慰謝料 |
後遺障害慰謝料 | 交通事故で後遺障害を負ってしまった場合に支払われる慰謝料 |
死亡慰謝料 | 交通事故で被害者が亡くなってしまった場合に支払われる慰謝料 |
同じ慰謝料でもそれぞれ内容が異なるため、示談交渉の際にはそれぞれの違いを意識して請求するようにしましょう。
また、交通事故の慰謝料を算定する際の基準は、次の3つです。
交通事故の慰謝料算定基準 | |
---|---|
自賠責基準 |
|
任意保険基準 |
|
弁護士基準(裁判基準) |
|
慰謝料の種類と算定基準を理解したら、次に【入通院慰謝料】、【後遺障害慰謝料】、【死亡慰謝料】のそれぞれにおける相場と具体的な計算方法を解説していきます。
なお、ここでは自賠責基準と弁護士基準について解説します。
入通院慰謝料の相場および計算方法は、次のとおりです。
入通院慰謝料の相場 | ||
---|---|---|
通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準(軽傷/重症) |
1カ月 | 12万9,000円 | 19万円/28万円 |
2カ月 | 25万8,000円 | 36万円/52万円 |
3カ月 | 38万7,000円 | 53万円/73万円 |
4カ月 | 51万6,000円 | 67万円/90万円 |
5カ月 | 64万5,000円 | 79万円/105万円 |
6カ月 | 77万4,000円 | 89万円/116万円 |
*通院のみ
*2日に1回以上のペースで通院した場合を想定
表を見ればわかる通り、自賠責基準は弁護基準よりもかなり低い金額で設定されています。加害者側の任意保険会社は、自賠責基準より高い金額を提示してくることが多いですが、それでも、弁護士基準で計算した金額よりもかなり低い金額になることは間違いありません。保険会社から提示された金額が、弁護士基準以下の場合には、弁護士を入れることで、慰謝料を増額できる可能性が高いといえるでしょう。
自賠責基準で入通院慰謝料を計算する方法は以下の通りです。
自賠責基準の計算方法 〜入通院慰謝料〜
4,300円×対象日数
※1 対象日数とは、以下のいずれか少ない方の日数のことを指します。
・「入通院期間(初診日~治療終了日または症状固定日までの期間)」
・「実際の入通院日数×2」
※2 2020年3月31日以前に起きた事故については4,200円で計算します。
また、弁護士基準で入通院慰謝料を計算する場合、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)や、「交通事故損害額算定基準」(通称:青本)などに掲載されている、過去の裁判例をもとに作成された算定表が使われます。
算定表には、以下の2種類があります。
別表Ⅰ | 主に重傷の場合に用いられる ※骨折や脱臼など |
---|---|
別表Ⅱ | 主に軽傷の場合に用いられる ※軽い打撲、自覚症状しかないむちうちなど |
【入通院慰謝料算定表(別表Ⅰ)】
月 | 入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 0 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 | 318 | 325 | 332 | 336 | 342 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 | 334 | 338 | 344 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 | 336 | 340 | 346 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 326 | 323 | 328 | 333 | 338 | 342 | 348 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 | 340 | 344 | 350 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 | 342 | 346 | |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 301 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 | 344 | ||
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 | 341 | |||
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | ||||
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |||||
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||||||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 | |||||||
13月 | 158 | 187 | 213 | 238 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
単位(万円)
【入通院慰謝料算定表(別表Ⅱ)】
月 | 入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 0 | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 | 206 | 212 | 219 | 224 | 229 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 | 207 | 213 | 220 | 225 | 230 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 | 208 | 214 | 221 | 226 | 231 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 | 209 | 215 | 222 | 227 | 232 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 | 210 | 216 | 223 | 228 | 233 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 | 211 | 217 | 224 | 229 | |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 | 212 | 218 | 225 | ||
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 | 213 | 219 | |||
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 | 214 | ||||
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 | |||||
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 | 199 | 204 | ||||||
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 | 200 | |||||||
13月 | 120 | 137 | 152 | 162 | 173 | 181 | 189 | 195 | ||||||||
14月 | 121 | 138 | 153 | 163 | 174 | 182 | 190 | |||||||||
15月 | 122 | 139 | 154 | 164 | 175 | 183 |
単位(万円)
なお、入通院慰謝料の計算方法については、こちらの記事もご参照ください。
後遺障害慰謝料における「後遺障害」とは、交通事故が原因で身体に残ってしまった後遺症のうち、法律上補償の対象として一定の要件を備えた後遺症のことを指します。
後遺障害には、その症状の重さによって細かく等級が定められており、それぞれの等級ごとに認められる慰謝料の額が異なります。
後遺障害等級に認定されるためには、各種検査結果や後遺障害診断書などの必要書類を揃えて、後遺障害等級認定の申請をする必要があります
ここでは、後遺障害の等級ごとに、自賠責基準、弁護士基準のそれぞれについて認められる金額を確認していきます。
【後遺障害慰謝料の相場】
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1級 | 1150万円 (1100万円) | 2800万円 |
2級 | 998万円 (958万円) | 2370万円 |
3級 | 861万円 (829万円) | 1990万円 |
4級 | 737万円 (712万円) | 1670万円 |
5級 | 618万円 (599万円) | 1400万円 |
6級 | 512万円 (498万円) | 1180万円 |
7級 | 419万円 (409万円) | 1000万円 |
8級 | 331万円 (324万円) | 830万円 |
9級 | 249万円 (245万円) | 690万円 |
10級 | 190万円 (187万円) | 550万円 |
11級 | 136万円 (135万円) | 420万円 |
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
13級 | 57万円 (57万円) | 180万円 |
14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
※()内は2020年3月31日までに発生した事故の場合
後遺障害慰謝料を算出する場合、自賠責基準と弁護士基準とでは、もっとも低い後遺障害等級14級だったとしても78万円、もっとも高い1級の場合には1,650万円もの差があることがわかります。
なお、後遺障害慰謝料の計算方法については、こちらの記事もご参照ください。
死亡慰謝料は、被害者本人の精神的苦痛に対してだけではなく、残された遺族の精神的苦痛に対しても支払われます。つまり、被害者遺族は【亡くなってしまった被害者に対する慰謝料】と【遺族固有の慰謝料】の2種類の慰謝料を請求することができることになります。
自賠責基準で死亡慰謝料を算定する場合、被害者本人分の慰謝料額が決まっており、そこにそれぞれの遺族分の慰謝料を加算して計算します。
【被害者本人分の慰謝料】
被害者本人分の慰謝料 | 400万円 |
---|
【遺族分の慰謝料】
請求権者が1名の場合 ※ | 550万円 |
---|---|
請求権者が2名の場合 | 650万円 |
請求権者が3名の場合 | 750万円 |
被害者に被扶養者がいる場合 | 上記に加えて200万円 |
※ 請求権者は、①被害者の両親 ②配偶者 ③子に限られます。
また、弁護士基準で死亡慰謝料を計算する場合、事故で亡くなった方が、家庭内で精神的・経済的にどのような立場にあったかで、死亡慰謝料の金額が変わります。
【遺族分の慰謝料】
請求権者が1名の場合 ※ | 550万円 |
---|---|
請求権者が2名の場合 | 650万円 |
請求権者が3名の場合 | 750万円 |
被害者に被扶養者がいる場合 | 上記に加えて200万円 |
被害者の立場 | 金額 |
---|---|
一家の支柱 | 2,800万円 |
母親・配偶者 | 2,500万円 |
その他の場合 | 2,000万円~2,500万円 |
※ 記載されている金額は、被害者本人分の慰謝料と遺族分の慰謝料が含まれた金額になります。
自賠責基準で死亡慰謝料を算定する場合、慰謝料額は最高でも1,350万円程度ですが、弁護士基準で算定すれば、最高で2,800万円もの慰謝料を請求できます。
死亡慰謝料は、交通事故の賠償金の中でもっとも高額になる項目の1つです。確実に弁護士基準で算定された慰謝料を獲得するためにも、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
なお、死亡慰謝料の計算方法については、こちらの記事もご参照ください。
積極損害とは、交通事故が原因で出費せざるを得なくなってしまった損害のことをいいます。
どこまで損害として認められるかは事故ごとに異なりますが、一般的に積極損害として認められるものとしては、次のようなものが挙げられます。
【積極損害として請求できる示談金の相場】
項目 | 内容 | 請求できる金額 |
---|---|---|
治療費 | けがの治療にかかった費用 | けがの治療に必要かつ相当な範囲内 |
診断書作成費 | 診断書の作成にかかる費用 | ・一般的には3,000円程度 ・後遺障害診断書の場合5,000~1万円程度 |
修理代 | 車や破損物の修理費用 | 車や破損物の修理費相当額 |
通院交通費 | 通院にかかった交通費 (バスやタクシー代など) | 必要かつ相当な範囲 |
入院雑費 | 入院に必要な洗面具や寝具など | 日額1,500円程度 |
付添看護費 | 付き添いの看護にかかる費用 | 通院:日額3,300円入院:日額6,500円程度 |
介護費 | 後遺障害が残った場合の介護費用 | 近親者であれば日額8,000円程度 |
児童学費 | 学習の遅れを取り戻したり、外部に子どもを預けるためにかかった費用 | 必要かつ相当な範囲 |
葬祭関係費 | 被害者が死亡したときの葬儀費用 | 130~170万円程度(判例) |
弁護士費用 | 弁護士に依頼したときにかかる費用 | 容認された費用の1割程度を請求可能 |
消極損害とは、交通事故が原因で失ってしまった本来得られるはずだった収入や利益のことです。
消極損害は、以下の2種類に分けられます。
休業損害 | 事故のけがが原因で仕事ができず、給料がもらえなかったことによる損害のこと。 専業主婦(夫)の場合でも、「主婦(夫)休業損害」として一定の金額を請求できる。 | |
---|---|---|
逸失利益 | 後遺障害逸失利益 | 後遺障害が残ってしまったせいで、事故に遭う前と同じように仕事をすることができず、今後もらえるはずだった収入が減ってしまうことによる損害のこと |
死亡逸失利益 | 急な事故により亡くなってしまったため、今後もらえるはずだった収入がもらえなくなってしまったことによる損害のこと |
休業損害は、自賠責基準、弁護士基準でそれぞれ以下のように計算します。
【自賠責基準】
日額6,100円×働くことができなかった日数
※ なお、1日あたりの賃金が6,100円を超えることを証明できれば、1万9,000円を上限として計算できます。
【弁護士基準】
1日あたりの基礎収入×働くことができなかった日数
※ 基礎収入は、源泉徴収票などから確認できる「事故前年における年収額」を基本とします。ただし、収入のない主婦や学生の場合は、賃金センサス(厚生労働省が実施する賃金構造基本統計調査)を参考に基礎収入を確定します。
また、後遺障害逸失利益および死亡逸失利益の計算方法は次のとおりです。
後遺障害逸失利益
基礎収入年額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
死亡逸失利益
基礎収入年額×(1-生活費控除率)×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数
労働能力喪失率とは、後遺障害が残ってしまったことでどれくらい労働能力が低下したのかを表した数値です。
ライプニッツ係数とは、事故がなければ将来的に得られるはずであった収入から、それらの収入を前もって得ることができる被害者の利益を「中間利息」として差し引くための係数です。
なお、労働能力喪失率やライプニッツ係数は、以下のページをご参照ください。
ここでは、具体的な事例を通して示談金がどれくらい支払われるのかを確認していきます。
交通事故の被害に遭ったときに、不当に低い提示額で納得してしまわないよう、ある程度の相場感を持っておくとよいでしょう。
打撲やねんざなどの軽傷で1カ月程度の通院が必要となり、後遺障害が残らなかったケースです。
このケースで実際に支払われた示談金は次のとおりです。
通院費用 | 2万円程度(バスやタクシーなどの交通費) |
---|---|
通院慰謝料 | 8万6,000円(実通院日数10日×自賠責日額4,300円×2で計算) |
休業損害 | 1万8,300円(休業日数3日×自賠責日額6,100円で計算) |
合計額 | 12万4,300円 |
入院がなく通院のみのケースでしたが、相場どおりの通院慰謝料と休業損害が認められています。
交通事故でむちうちになり、後遺障害等級12級13号の認定を受けたケースです。
このケースで実際に支払われた示談金は次のとおりです。
通院費用 | 30万円(バスやタクシーなどの交通費) |
---|---|
通院慰謝料 | 51万6,000円(実通院日数60日×自賠責日額4,300円×2で計算) |
休業損害 | 8万5,400円(休業日数14日×自賠責日額6,100円で計算) |
後遺障害逸失利益 | 540万円(年収500万円、症状固定時の年齢40歳で計算) |
後遺障害慰謝料 | 94万円(12等級の自賠責基準) |
合計額 | 724万1,400円 |
むちうちは、交通事故で認められる後遺障害の中でも比較的症状が軽い方ですが、それでも後遺障害逸失利益として540万円もの金額が支払われています。
あくまでも示談金の一例となりますが、被害状況によっては高額な示談金が認められるケースもあります。
車と歩行者の事故で外傷性硬膜下血腫になってしまい、高次脳機能障害として後遺障害等級7級(併合6級)の認定を受けたケースです。被害者は足にもけがを負ってしまい、可動に制限がかかる後遺症も残ったため、自賠責後遺障害等級12級も認められています。
このケースで実際に支払われた示談金は約5,000万円でした。
保険会社が最初に提示してきた示談金は約1,800万円でしたが、4カ月の入院治療や約2年間のリハビリも必要であったことから、逸失利益や休業損害の増額を主張しました。
交通事故の経験豊富な弁護士が見れば、保険会社の提示が相場よりも少ない金額であることはすぐにわかりますが、初めて事故に遭った方が正確な示談金を算出するのは難しいでしょう。
保険会社の提示額を疑いなく受け入れていた場合、示談金は1/2以下になっていたことを考えると、後遺障害が残ってしまうケースでは、慎重な示談交渉が必要といえるでしょう。
交通事故の示談金は警察や保険会社が独断で決めるわけではなく、当事者間の話し合いで決めることになります。そのため、お互い納得できる金額で話しがまとまるのであれば、示談金の額はいくらでもかまいません。
交渉の際は、以下のような事情を総合的に考慮して示談金の額を決定します。
示談金を決める際の考慮要素
具体的な金額は用いる算定基準によっても異なるので、同じ事故でも保険会社が提示してくる金額と弁護士が算出する金額とでは大きく変わります。
保険会社は少しでも示談金の額を下げるために、任意保険基準を使って示談金額を算出してきたり、高圧的な交渉をしてくることがほとんどです。
交通事故の被害者として泣き寝入りしないためにも、示談交渉は経験豊富な弁護士に任せることをおすすめします。
交通事故の示談金は、加害者側の保険会社が提示してくるケースが多いですが、加害者側に有利な条件であることがほとんどです。
弁護士が交渉することで増額の余地は十分あるため、安易に保険会社の示談案に応じないようにしましょう。
ここからは、交通事故の示談金を増額させる5つのコツについて解説していきます。
交通事故の被害に遭い少しでも身体に違和感があるのであれば、必ず病院で診断を受け、医師の指示のもとで適切な治療を受けてください。
事故直後は精神的ショックから痛みを感じないことも多く、とくにむちうちなどの後遺障害の場合には、事故後2〜3日してから突然痛みが出てくることも珍しくありません。
もし、事故直後に病院で受診しなかった場合、痛みが出てきた時点で病院で受診しても、「痛みの原因は交通事故ではなく他にあるのではないか」と保険会社に主張されてしまい、治療費を支払ってもらえなくなる可能性があります。
また、治療を継続していないと、後遺障害等級認定や慰謝料の請求で不利に働いてしまう可能性もあります。
事故直後から医師に細かい症状を伝えておくことで、適切な後遺障害等級認定に必要十分な診断書を作成してもらえます。
示談金を増額するためには、事故直後に受診し、医師の指示の下、適切な通院頻度や通院期間で治療をおこなうことが重要です。
示談金を増額させるためには、適切な後遺障害等級に認定されることも重要です。
たとえば、同じむちうちでも、後遺障害等級14級9号と認定されるか、12級13号と認定されるかで、もらえる後遺障害慰謝料の金額が、弁護士基準で180万円も変わってきます。
医師に、これ以上治療を継続しても症状がよくならない状態である「症状固定」と診断されたら、後遺障害等級認定を申請しましょう。
なお、後遺障害等級認定には、「被害者請求」と「事前認定」の2つの申請方法があります。
どちらの申請方法を選択すべきかは状況に応じて異なりますが、被害者請求であれば、認定に必要な書類を自分で集めることができます。認定が難しいケースであれば、弁護士と相談して被害者請求で申請するのが良いでしょう。
準備不足で後遺障害等級「非該当」になってしまうと、本来請求できる後遺障害慰謝料などを請求できなくなってしまうおそれがあります。後遺障害が残る場合の対応は、交通事故に注力している弁護士に相談してみることをおすすめします。
交通事故でけがを負った場合、損害状況やけがの状態から総合的に損害額を確定するため、示談交渉に応じるタイミングは基本的に治療の完了時点となります。
保険会社によっては治療開始直後に示談交渉を要求してくるケースもあるので、安易に交渉に応じると、相場よりも低い示談金でまとまってしまう可能性があります。
保険会社から提示される金額が、一見すると納得できる金額であっても、示談交渉がまとまったあとに後遺障害が発覚するケースもあるため、事故後しばらくの間は治療に専念して回復を目指すのが無難です。
後遺障害が残った場合は適切な等級認定も必要となりますが、すでに示談交渉が成立していると、後遺障害への補償が受けられなくなるので注意してください。
示談金を増額したいときは、安易に加害者側の提示金額に応じないことも重要です。
交通事故の示談金は過失割合やけがの状況によって決まりますが、金額を提示するのは加害者側の保険会社なので、基本的に加害者に有利な金額で提示してきます。
とくに大手の保険会社が提示してくる金額の場合、提示額も妥当なものになっているだろうと思われがちですが、保険会社が優先するのはあくまでも自社の顧客である加害者です。
一度示談交渉がまとまると原則としてやり直しはできないため、安易に承諾すると後遺障害慰謝料などを請求できなくなってしまいます。
自分の主張を聞き入れてもらえない、または示談金額に納得できない場合には、自分で交渉を進めるのではなく、一度弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故に精通している弁護士に示談交渉を任せれば、示談金を増額できる可能性が高いです。
弁護士なら、弁護士基準に基づいて算出された金額を、加害者側の保険会社に認めさせるだけの知識と交渉ノウハウを有しているからです。
また、交通事故の示談金交渉を弁護士に依頼した場合、示談金の増額とともに以下のようなメリットがあります。
交通事故に関する判例や法的知識がないと妥当な示談金の算出も難しいですが、弁護士に依頼すれば被害の実態に合わせた適切な示談金額を算出することが可能です。
平日の日中におこなわなくてはいけない示談交渉も、被害者にとって大きなストレスになりますが、弁護士であれば交渉を含めてすべての対応を依頼できるので、治療に専念することも可能になります。
被害者自身が加入している保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、実質無料で弁護士に依頼することができるので、まずは自身の保険を確認してみるところから初めてみるのが良いでしょう。
交通事故でけががなかった場合、「人身事故」ではなく「物損事故」として処理されるため、慰謝料を請求することはできません。
車の修理費や修理期間中の代車使用料などを請求することができますが、けがや後遺障害を負ったことに対する精神的苦痛を賠償する目的の慰謝料は認められません。
交通事故で少しでもけがをした場合、たとえ加害者から物損で処理してほしいと懇願されたとしても、必ず人身事故として処理してもらうようにしてください。
また、物損事故で処理したにもかかわらず、後日身体に痛みが出てきた場合には、すぐに病院で検査をしてもらい、その診断書を警察に提出することで、人身事故への切り替えをしてもらうのが良いでしょう。
交通事故が発生してから示談金を受け取るまでの流れは以下のとおりです。
示談交渉は、相手の保険会社と被害者の話し合いで行われるため、示談が成立するまでにかかる期間はそれぞれのケースにより異なります。
話し合いで示談がまとまらず、裁判で示談金額を決める場合には、示談金が振り込まれるまでにさらに時間を要することになります。
示談が成立すると、おおむね2週間程度で保険会社から示談金が振り込まれます。
交通事故の被害に遭うと、仕事や学校を休んだ場合の損害、けがの治療、心理的苦痛などさまざまな負担が被害者にかかってきます。
すでに発生している損害をなかったことにはできませんが、せめて金銭的補償については、少しでも多くの示談金を受け取りたいことでしょう。
弁護士費用特約があれば無料で弁護士に依頼できますし、弁護士事務所によっては初回相談を無料でおこなっているところもあります。
お一人で悩まず、ぜひ一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
被害者の皆様に明るい笑顔が一日でも早く戻ることを心からお祈り申し上げます。