東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故の被害者となった場合、ケガをしていれば治療のために入院や通院が必要となったり、交通事故によって仕事を休んだ場合の損害等が発生したりします。
被害者は、このような損害を賠償してもらうため、加害者側と示談交渉を行うことになります。
この記事では、交通事故の示談の概要と、示談の時系列を説明します。
「示談」という言葉は、交通事故以外で聞いたことのある方も多いと思います。
一般的に「示談」は、裁判ではなく当事者間で話し合って解決することを指します。
裁判外で行われますので、もちろん民事上の紛争に限られます。
交通事故における「示談」は、交通事故の当事者である加害者と被害者が、交通事故によって被った被害者の損害の金額や支払時期等を、裁判ではなく双方が話し合い、双方の合意によって解決することです。
交通事故の示談内容として、次のような項目が挙げられます。
交通事故により人身損害が発生した場合、病院で治療を受けることになります。その際に必要となる入院費や通院費等の治療関係の費用です。
被害者に過失がない場合には、加害者加入の保険会社が病院へ直接治療関係費用を一括対応にて支払ってくれることがほとんどです。
このような場合には、治療費が示談金に含まれません。
ケガの治療で通院するためにかかった交通費です。
一般的に、電車やバス等といった公共交通機関の運賃や、自家用車での通院によるガソリン代です。
自家用車による通院のガソリン代は、1kmあたり15円で計算します。
また、歩行困難等の事情によって、タクシーでの通院が認められる場合があります。
交通事故によってケガをしたため仕事に行けなくなり、仕事を休まざるをえなくなった場合、交通事故がなければ得られたはずの給料分の賠償となります。
自賠責基準での休業損害は、どの職業であっても1日あたり5,700円で計算します。
一方で、1日あたりの基礎収入を事故に遭う前の直近3ヵ月分の収入÷90日で計算し、それを休業損害として算定する方法もあります。
この場合には、職業によって計算式が変わります。
交通事故によるケガで、入院や通院をする必要があり、入院や通院をするために被った精神的・肉体的苦痛を賠償するのが傷害慰謝料です。
算定基準は自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3種類があり、弁護士基準での算定が一番高額となります。
交通事故によるケガで継続的に治療を行っていても、完治せずに後遺症が残る場合があります。
この後遺症が後遺障害として認められた場合、交通事故に遭う前より労働能力が低下したと認められ、事故に遭わなければ本来得られたはずの収入分が「逸失利益」として賠償の対象となります。
また、後遺障害が認められ労働能力が低下したために被った精神的・肉体的苦痛に対する賠償として「後遺障害慰謝料」が補償されます。
交通事故によって被害者が死亡した場合に、被害者自身の慰謝料と被害者遺族の慰謝料が賠償されることになります。
以上に述べた示談内容の項目以外にも、その事故の状況や発生した損害に応じて、別途示談内容に追加される項目があります。
ただし、事故車両の修理費用のような物的損害については、人身損害とは別に示談が行われる場合があります。
交通事故における示談は、次のような流れで進みます。
示談の原因である交通事故が発生します。
交通事故が発生したら、まずは落ち着いて事故の状況を確認しましょう。
そして、必ず警察へ通報します。
交通事故が発生したら、加害者に警察への届出義務が課されています。
しかし、加害者が通報しない場合やできない場合も少なからずありますので、その場合には被害者が警察へ通報しましょう。
交通事故が起きたのに警察への通報をしなかった場合には、交通事故が発生したという交通事故証明書の発行ができず、事故の発生を証明できなくなります。
そうすると、被害者であっても、損害賠償金を請求できなくなります。
警察が到着するまでの間、事故状況を記録することも大切です。
これは、後で示談交渉をする際に、双方の過失割合を主張する際に証拠として必要となります。
また、時間が経ってしまうと記憶が薄れてしまいますので、事故現場をカメラで撮ったりするのも有効です。
また、必ず加害者の氏名や住所、連絡先等を確認し、加害者の情報を把握することが大切です。
これは、当て逃げやひき逃げを防ぎ、加害者と確実に連絡を取れるようにするためです。
警察が到着し、人身事故の場合には、交通事故の当事者が立ち会う実況見分が行われます。
この実況見分は、後に示談等の際に過失割合を主張するために必要となり、強い証拠となりますので、しっかりと警察へ事故発生当時の状況を伝えることが重要です。
実況見分が終了したら、被害者も自身が加入している保険会社へ事故の連絡をします。
被害者が加入している保険の内容によっては補償を受けられます。
また、弁護士費用特約が保険内容に入っていれば、被害者自身で弁護士費用を負担せずに弁護士に相談可能です。
交通事故に遭ったら、すぐに病院へ行き診察してもらうことが大切です。
交通事故に遭っても目に見えるケガをしておらず、交通事故直後に痛みが出ない場合も多いですが、初診日が事故から時間が経っていると、その症状が事故と関係があると認められないこともあります。
その場合、加害者の保険会社から治療関係費用の支払いを拒否されてしまう可能性が高いのです。
通院を開始したら、完治または症状固定と診断されるまでは通院を続ける必要があります。
症状が軽いからといって、病院から完治または症状固定の診断を受けていないのに独断で通院を中断してしまうと、正確な通院慰謝料を受け取れなくなる可能性が高くなります。
継続的に通院し、完治または症状固定と診断された場合は、交通事故のケガの治療は終了となります。
完治または症状固定と診断されてからの治療関係費用は、加害者加入保険会社へ請求できなくなります。
ここで完治していれば治療は必要なくなりますが、症状固定はこれ以上の回復が見込めないということになり、まだ症状が残っているということですので、その賠償を請求するための事前準備として後遺障害等級認定の申請手続をします。
加害者加入保険会社から、まだ通院中に示談交渉を持ちかけられる場合もあります。
しかし、示談交渉を開始するタイミングとしては、治療終了後が適切です。
つまり、完治と診断された後か、症状固定と診断されてから後遺障害等級の認定結果が出た後です。
示談交渉が開始したら、まず加害者加入の保険会社から過失割合や賠償額を提示されることが多いです。
しかし、加害者加入の保険会社はもちろん加害者の代理人ですので、被害者に有利な提示はしないと考えても良いでしょう。
必ずしも加害者側の保険会社の提示する条件が正しいものではありません。
特に、傷害慰謝料については、保険会社が提示する金額は任意保険基準によって算定されるものです。
弁護士に委任すると、弁護士基準で算定してもらえますので、より高額な賠償額を請求することも可能です。
被害者自身が納得できる条件となったら、双方が合意して示談成立となります。
ここで注意が必要なのは、示談は一度成立してしまうと、原則示談内容を変更したり取り消したりすることができなくなります。
これは、示談成立後に示談書を作成して双方の署名捺印をすることで、示談に法的拘束力を持たせているからといえます。
被害者に不利な内容なのに、しっかりと内容を確認しないと本来なら受け取れる賠償金を受け取れずに損する場合もあるので、示談は慎重に行うことが大切です。
交通事故における示談とは、事故による損害賠償の額を加害者側と被害者側とで話し合って解決することです。
ちなみに法律上には「示談」という言葉はありません。民法六九五条、六九六条の「和解契約」が示談に該当します。
示談とは、加害者・被害者双方が譲歩し合い、納得のいく妥協点を見つけて、その時点で争いを止めるための手続きともいえます。
第3章でも説明したように、損害賠償額には
*自賠責基準
*任意保険基準
*裁判基準
の3種類があります。
最も低いのが自賠責基準で次が任意保険基準、最も高いのが裁判基準となっています。裁判基準は裁判によって決められた正当な損害賠償額です。示談交渉においてはそこを目指していくようにしましょう。
まずは被害者自身が、自分の被った損害に対して裁判基準ではどれくらいが支払われているのかを調べてみることをおすすめします。
加害者側の保険会社は被害者のすべての損害を賠償してくれるわけではないので、できるだけ冷静に自分の意見を伝えることが必要です。
しかし、被害者が自ら交通事故のプロである保険会社を相手に直接交渉をするのは、限度があります。
示談交渉を弁護士に委任するという方法もあります。
弁護士に示談交渉のすべてを委任することで、被害者自身はケガの治療に専念でき、あらゆる手続を弁護士が行ってくれるので、被害者の負担を減らしたりできます。
交通事故被害者にとって、加害者との示談は必要不可欠な交渉です。
示談には、人身損害に関するさまざまな項目が含まれます。
また、示談交渉を開始するタイミングは、治療が終了してからが適切です。
示談交渉が開始してから、加害者側の保険会社から過失割合や賠償額が提示され、それに対して被害者が合意すると示談は成立します。
しかし、一度成立して示談書を取り交わした示談の内容は原則的に覆すことができません。
交通事故に慣れていない場合、加害者側の保険会社の言うことに流されてしまいがちですが、交通事故の被害者は相当の賠償額を請求できる権利を持っているため、示談交渉はしっかりと内容を確認して合意しましょう。
適正な賠償額を請求したい場合、弁護士に相談することもひとつの方法として有効です。
交通事故に遭うと被害者にはさまざまな負担がかかりますが、被害者自身ができることを確実に行い、納得がいくまで冷静に交渉を進めていくことが大切となります。