東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
何かと不安の多い交通事故の示談交渉。
どうせやるなら、有利に進めたいものです。
示談交渉を有利に進めるためには、相手方がどのような対応をしてくるか、それに対する対処方法などを知っておく必要があります。
この記事では、示談の相手方となる加害者の保険会社の予想される対応、こちらが取りうる有効な手段についてまとめました。
どうぞ参考にして下さい。
示談について詳しく知りたい方は、「「示談」ってなに?交通事故発生から示談までの流れをチェックしよう」を参照してください。
まずは予想される保険会社の対応についてお話していきます。
基本的には、保険会社は相手方の代理人ですから、こちらに有利となる言動はとってきません。
保険金を支払ってくれる保険会社も民間企業である以上、自社の利益をあげるため、抑え目の賠償金額を提示してきます。
こういった事情を念頭に置いて、予想される保険会社の対応を見ていきましょう。
交通事故によって通院、入院して治療を受けていると、その治療費は加害者側の保険会社が払ってくれます。
これは当然のことですが、治療開始から一定期間が経過すると「そろそろ示談交渉をはじめたいから、症状固定してほしい」とお願いされることがあります。
一定期間とは、骨折の場合は約6ヵ月以上、むち打ちの場合は約3ヵ月以上が目安です。
保険会社がこんなことを言うのは、出来る限り保険金を支払いたくないからです。
まず、被害者の治療にかかる費用は、加害者の自賠責保険から優先的に賄われます。
しかしこの自賠責保険は最低限の金額しか支払われないので、自賠責保険だけでは足りないケースが出てきます。
例えば、傷害では、自賠責では120万円までしか支払われません。
そして、120万円を超える部分については、任意保険会社が支払うことになります。
各ドライバーはこうした万が一のために、自賠責保険だけでなく任意保険にも加入しているのです。
当然ながら任意保険会社としては保険金の支払いによる出費は抑えたいですから、何とかして自賠責保険の範囲内で治療を終わらせたいと考えます。
そのため、治療期間が長引いてくると、保険会社は治療の打ち切りを求めてきます。
保険会社が求めてくる「症状固定」というのはこれ以上治療を続けても、症状に改善が見られない状態であり、症状固定となると、その日以降の治療費や交通費の支払いを保険会社から受けることはできなくなります。
しかし、「症状固定」かどうか決めるのは保険会社ではなく「主治医」です。
実際に治療を続けたほうがいい場合でも、保険会社は症状固定を要求してくる場合もあるので、注意してください。
各保険会社は、独自に社内で定めた任意保険基準を使って、賠償金を算出します。
保険会社が示談交渉の際まず提示してくる金額は、任意保険により出した金額ということです。
しかし、そもそも賠償金の基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準の3つがあると言われています。
そして、この3つの中で最も賠償金の金額が高くなるのは裁判所基準なのです。
任意保険基準は、賠償金を算出する各保険会社によって基準は異なりますが、裁判所基準と比べて大幅に少ない場合がほとんどです。
賠償金の提示を受けた被害者は、このように賠償金の算出にあたっての基準に種類があることは通常知りませんから、プロである保険会社が算出してきた金額が適正だと信じてしまいます。
しかし、裁判所基準を使えば、もっと多額の賠償金を請求できる可能性は高いのです。
交通事故の示談交渉の争点としてよく挙げられるのが、当事者双方の過失割合です。
過失割合とは、事故の当事者に、どちらがどれくらいの程度責任があるのかという問題です。
被害者側の過失が大きければ、その分賠償金の金額は減らされてしまいます (過失相殺) 。
しかし、被害者側に法律の知識が無いと、過失割合で賠償金額が変動することを知らない場合があるでしょう。
保険会社はその知識の欠如につけこんで、本来の判断基準より、大幅に被害者に不利な形で過失割合を設定してくることがあります。
被害者に知識が無ければ、滅茶苦茶な過失割合だとしても気づかずに、「そういうもんなんだな」と思い込み、示談書にサインしてしまうこともあるでしょう。
加害者側の保険会社の口車に乗せられないよう、被害者側はどう対処すべきなのでしょうか?ここでは、保険会社と交渉する際に、被害者側が意識すべきことをまとめました。
事故でケガを負わされた上に、納得いく金額での賠償金提示が得られないとあっては、怒りを覚えてしまうのも無理がありません。
しかしここで感情的になってはいけません。
損害賠償額は、被害者が事故で被った損害で決まってきます。
そのため、示談の条件に納得できないと感情的に訴えたとしても、そこに合理的な理由が無ければ、その主張は認められることは無いのです。
相手方の保険会社の担当者も、示談交渉のたびに怒鳴り散らしてくる被害者に対しては、示談条件を少しでも良くしてあげたいと思ってくれなくなってしまうでしょう。
保険会社の担当者に対していくら怒っても、状況が好転する可能性は低く、なんの利益にもなりません。
無駄なパワーを消費することはせず、冷静な対応を心がけましょう。
これは後で「言った、言わない」の問題を生じさせないためです。
相手方の了承のもと、示談交渉の場にボイスレコーダーを持ち込んで、示談の内容を記録する、または相手方の保険会社に依頼して示談の内容を書面にしてもらいましょう。
自分で交渉記録を作成してもいいですが、慣れていないと思うので、プロにお願いしたほうが楽でしょう。
なお、交通事故の示談交渉は、書面だけでのやり取りも可能です。
保険会社の担当と自分で直接交渉するのが不安な場合は、保険会社に書面でのやり取りが可能か相談してみましょう。
保険会社から質問をうけ、どう答えたらよいか分からない時が出てきます。
例えば、事故から時間が経ってしまい、事故時の状況を聞かれても即座に状況が思い出せない時などです。
こういった場合は、その場ですぐ回答しないようにしてください。
万が一、誤った回答をしてしまうと、不利な条件で示談が進められて、後からの訂正が難しくなる可能性もあるからです。
そのため、回答内容に自信が無い場合は「確認し、後でお伝えします」と持ち帰ったほうが賢明です。
「たぶんこうだったはず…」など曖昧な記憶の場合は、その場での交渉はひかえるようにしましょう。
示談交渉に入る前に前もって示談金の相場を把握しておけば、保険会社が提示してきた条件が適正なものかどうか判断しやすくなります。
保険会社が提示してきた示談金が明らかに相場より低くなっている場合は、どのようにして算定したか確認し、増額の交渉をしてみてもいいでしょう。
示談金の総額について、この事故の場合はだいたいこの額の示談金が貰えるという相場はありませんが、慰謝料や休業損害等、個別の項目については基準が定められているので、ネットや本を使って調べてみてください。
参照:「休業損害」の職業別計算方法と抑えるべきポイントを一挙解説!
なお、交通事故の示談金を算出できるツールもあります。
ご自身が請求できるおおまかな目安が知りたい場合は、こちらのツールを利用してみましょう。
交通事故の示談交渉では、一度決定した事項は後から覆せないのが原則です(のちになって後遺症が発覚した場合など、もちろん例外はあります)。
提示された示談金の額がどんなに相場より低かったとしても、一度サインをしてしまえば、その内容は覆せません。
相手方が提示してきた示談条件に不満がある場合は、その場での承諾はしないようにしてください。
しかし、かといってなんの対策も無しに、いつまでもサインをごねているのはいけません。
自己に有利となる新たな証拠を探す、自分ではらちが明かないので弁護士に依頼するなど、何らかの対策を行いましょう。
損害賠償額の交渉は、いくら時間がかかったとしても、将来的に必ず決めなければいけない事項だからです。
早く被害を補てんして欲しいという気持ちから、示談を早く始めたがる人がいますが、示談交渉に入るのは全ての損害が確定するまで待ちましょう。
全ての損害が確定する時期とは病院での治療が終わり、後遺障害等級認定が下りたあとです。
交通事故の示談金は事故によって被った損害に対する補償なので、損害の額が確定してから示談するのが基本です。
まだ損害が発生する可能性があるのに、示談書にサインしてしまうと、その追加で発生した損害については、原則として損害賠償請求が出来なくなることに注意してください。
後遺症が残っていたり、死亡事故だったりと事故の様態によっては示談交渉に入るタイミングは違います。
後遺症が残っている場合は後遺障害等級認定が下りたあと、死亡事故の場合は49日が済んだあとが望ましいとされています。
損害賠償請求には、消滅時効が存在します。
消滅時効とは、ある権利を一定期間以上行使しないとその権利が消滅してしまうことで、損害賠償請求が消滅時効にかかると、それ以後損害賠償請求が出来なくなってしまいます。
加害者に対する損害賠償請求の時効は「損害及び加害者を知った時から3年」です。
ひき逃げのように加害者が特定できないようなケースでは、事故日から20年が損害賠償請求の時効です。
また、交通事故から2年後に加害者が判明した場合は、その時点から3年後が期限となります。
交通事故の示談交渉で消滅時効が問題となるケースはあまりありませんが、あまりに長期間示談が成立しないと、消滅時効にかかることもあるので、時効があることは頭の隅に置いておきましょう。
示談交渉において、相手方保険会社がどのような対応をとってくるか、それに対して被害者側はどのような対応をすべきか、説明してきました。
交渉のスタンスとしては、まず相手方の保険会社を味方だと思ってはいけません。
どれだけ丁寧な扱いをしてくれたとしても、相手方の保険会社はあくまでも加害者側の代理人です。
また、保険会社も民間企業である以上、利益の追求を目的としますので、賠償金の額は出来るだけ少なくしたいと考えています。
このような事情があるので、保険会社の話す内容を鵜呑みにしてはいけません。
自分でも賠償金の内容を確認する姿勢が必要です。
とはいっても交通事故の示談交渉は法律的な用語もたくさんでてきて、書類の記載も日常では使うことがないような難しい言葉だらけ。
しかも対峙する相手は保険のプロですので、一人で戦うのは心もとないかもしれません。
そんな時、こちらが取りうる手段として最も有効なのは、示談交渉を弁護士に依頼することです。
法律の専門家である弁護士であれば示談交渉もこちらに有利になるよう上手くやってくれますし、裁判所基準が使えますので、損害賠償金額が跳ね上がる可能性も高いです。