東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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交通事故のけがで仕事を休まざるを得なくなってしまった場合、減ってしまった分の収入を事故による損害として、加害者側に請求することができます。
この休業損害は、本来であれば税金がかかるはずの収入を補填してもらうものなので、所得税がかかってしまうのではないかと考えがちですが、実際には非課税となります。
この記事では、交通事故でもらえる休業損害や休業補償に税金がかかるのかどうかについて、わかりやすく解説していきます。
休業損害に税金はかからないのが原則です。
交通事故の被害者が請求できる休業損害とは、事故のけがで働けなくなったことにより減ってしまった収入のことです。この減収分は、事故による損害として保険会社に請求できます。
たしかに、交通事故に遭うことなく働いていれば、その収入には所得税や住民税などが課税されるため、休業損害も、本来の収入と同じように税金がかかるように思えるかもしれません。
しかし、休業損害を含む交通事故の賠償金は、本来であれば被害者が負担する必要のなかった損害を補てんしてもらう意味を持っています。賠償金により事故前と同様の経済状態に戻ったにもかかわらず、そこからさらに課税することは、被害者を救済するという法律の趣旨が失われてしまいます。
また、所得税法では、交通事故による賠償金については非課税であることを内容とした規定があります( 所得税法9条1項18号)。
なお、被害者が人身傷害保険に加入している場合、休業損害を人身傷害保険から受け取る場合がありますが、この場合でも、原則として税金はかからないことを覚えておきましょう。
通勤もしくは業務中に事故に遭った場合、労災保険から休業補償を受け取ることができますが、この休業補償も非課税となります。
また、勤務先の就業規則次第では、労働基準法で定められている割合を超えた部分につき「付加給付金」が支払われることがあります。この給付金は、労働基準法に基づく給付だけでは補てんされない部分を、民法上の損害賠償として請求する意味を持っています。したがって、保険会社から支払われる賠償金と同様に、非課税となります。
なお、治療費等を補償してもらえる「療養補償」や、障害が残った場合の補償である「障害補償」なども非課税となります。
休業損害は基本的に非課税ですが、以下に該当する場合、例外的に課税対象となるケースがあるので注意が必要です。
休業損害や慰謝料などの賠償金が非課税なのは、事故の損害を補てんする意味を持っているからです。
つまり、損害以上の補償を受けて、もはや新たに利益を得ているのと同様だと判断された場合には、その賠償金について課税される可能性があるのです。
なお、それぞれのくわしい内容については、関連記事をご覧ください。
交通事故で賠償金を算定するための基準は大きく3つあります。たとえば、弁護士や裁判所が採用する「弁護士基準」と呼ばれる基準を使って休業損害を計算する場合、次のような計算式を使います。
休業損害の計算式【弁護士基準】 |
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1日当たりの基礎収入×休業日数 |
1日あたりの基礎収入 = 事故前3カ月の給与総額 ÷ 稼働日数 |
この「基礎収入」は、手取りではなく各種税金が引かれる前の支給総額から計算します。
休業損害を含めた損害賠償金は非課税なので、実際に休業損害額を算定する際にも、税金を控除せずに損害額を算出することになるのです。
税金が引かれる前の総支給額から休業損害を計算することで、手取り額から計算するよりももらえる休業損害の額が大きくなります。
ー事案ー
先行する交通事故の被害者が道路上に倒れていたため、現場を自動車で通りかかった被害者が道路上で介抱していたところ、後方から進行してきた被告車両に追突され、脳挫傷や右急性硬膜外血腫などの傷害を負った事故です。
ー加害者の主張ー
休業損害を算定する際は、総所得から所得税や住民税などの各種税金を控除した手取り額を基に算出した金額が、実質上の休業損害である。
ー裁判所の判断ー
損害賠償額の算定基礎収入につき、「税金分を賠償額から控除することは必ずしも当事者間の公平に資するものとはいえないところであって、損害賠償額の算定基礎収入につき、当然に、税額分を控除すべきものとはいえない。」と判断しました。
その結果、税金が引かれる前の支給総額から基礎収入が算定され、最終的に約760万円の休業損害が認められています。
交通事故の被害者が受け取れる休業損害は非課税なので、別途、確定申告をする必要はありません。
ただし、 過度な賠償金を受け取った場合など、賠償金の実態や金額によっては税金がかかる場合もあるので、この場合には確定申告が必要となります。本来であれば、確定申告をして税金を納める必要があるにもかかわらず、対応せずにそのままでいると、無申告加算税などの罰則が課される可能性があります。
もし、休業損害を含む賠償金について悩みがあるのであれば、なるべく早めに弁護士に相談することをおすすめします。