東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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交通事故の被害にあったとき、怪我の治療費や慰謝料などを加害者に損害賠償請求できます。
しかし、どのような方法でどこまで損害賠償請求すればいいのか、疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
今回は、交通事故の被害者が請求できる損害賠償の内訳や手順について解説します。
損害賠償請求で損をすることがないよう、賠償金を増額させるテクニックもあわせて確認しましょう。
目次
交通事故の被害にあったときに、損害賠償を受け取ることができる場合があります。
損害賠償とは、交通事故の加害者の不法行為によって発生した損害を、その加害者に補償してもらうことをいいます。
損害賠償を請求できる根拠は、民法709条の規定に設けられています。
民法709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とされています。
交通事故の被害者となった人は、加害者に対して、この条文を根拠に損害賠償を請求できます。
損害賠償の中身としては、治療費、交通事故にあったことに起因する収入の減少、精神的苦痛などがあげられます。
交通事故により発生する損害賠償を請求する場合、上記の図のような流れで実際の支払いを受けることとなります。
この流れについて、順番に解説していきましょう。
交通事故によりけがをして治療が必要になった人は、病院に通院したり、入院したりすることとなります。
その後、症状が完治した場合には、それまでの治療費などを集計します。
一方、症状が完治せず後遺症が残った場合には、症状固定を行います。
症状固定とは、これ以上治療しても症状が改善しないと判断することです。
症状固定をした後は、その後遺症の状況に応じて後遺障害認定を行い、発生した損害額を計算することとなります。
後遺症がなく症状が完治した場合も、後遺症があった場合も、すべての損害額の計算が完了したら、加害者との示談交渉を行います。
加害者と被害者の間で示談が成立すれば、加害者から被害者に対して示談金の支払いが行われます。
一方、示談が成立しない場合は、裁判所での調停が行われます。
また、調停も成立しなかった場合には、訴訟が提起されることとなります。
その後、和解や判決により、加害者に対して示談金の支払い義務が発生することとなります。
交通事故の損害賠償を請求することができるのは、交通事故により被害を受けた人です。
基本的には交通事故の当事者となった被害者であり、交通事故によってけがをした人、あるいは収入が減少した人となります。
ただ、交通事故により亡くなった被害者の場合は、その被害者が損害賠償を請求することはできません。
そこで、被害者が亡くなった場合は、その法定相続人が損害賠償を請求することとなります。
法定相続人となるのは、まず被害者の配偶者です。
配偶者は、必ず法定相続人となります。
このほか、被害者との関係によって法定相続人となる人が自動的に決まります。
①から順に該当する人がいるかを確認し、該当する人がいればそれより後順位の人は相続人になることはできません。
また、被害者が亡くなった場合には、その配偶者や子・父母が、自身の慰謝料を請求することができます。
この慰謝料は、法定相続人の請求する損害賠償とは別に請求するものです。
交通事故の損害賠償は、財産的損害と精神的損害の2種類にわけられます。
財産的損害はさらに積極損害と消極損害にわけられます。
積極損害とは、交通事故が起こらなければ出費することのなかった費用のことです。
積極的に、財産を失わなければならない状況で発生した損害であるため、積極損害あるいは財産的損害とも呼ばれます。
積極損害に含まれるものには、以下のようなものがあります。
治療費とは、交通事故によりけがをした場合に、そのけがの治療にかかった費用をいいます。
交病院の診察費用や検査費用、あるいは入院した場合の入院費用などが含まれます。
このほか、手術した場合の手術代や薬代なども治療費に含まれます。
また、病院ではなく接骨院などで施術を受ける場合があります。
この場合も、接骨院などでかかった費用を治療費に含めることができます。
なお、入院費用に含まれる差額ベッド代や特別室料などは、特別の事情がなければ認められません。
付添看護費とは、被害者が病院に通院したり入院したりするときに付き添いが必要な場合、その付き添いにかかる費用のことです。
家族が付き添いをできない場合には、ヘルパーなどに付き添いを依頼することができます。
この場合は、ヘルパーに対して支払った金額の全額が、付添看護費となります。
また、ヘルパーに依頼しなかった場合でも、家族が付き添いを行うことがあります。
この場合、家族が付き添いを行っても費用は支払いませんが、付添看護費を請求できます。
入院雑費とは、入院したときに必要な入院費用とは別に、入院に必要な費用を指します。
例えば入院したときには、病室内で使用する日用品や生活消耗品を購入しなければなりません。
また、新聞代などの支払いが発生することもあります。
このような雑費は、交通事故にあって入院しなければ発生しなかったはずの費用であるため、交通事故の加害者に対して損害賠償として請求する金額に含めることができます。
通院交通費は、病院に通院する際にかかった交通費のことです。
電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合は、基本的にその全額を請求することができます。
また、自家用車を利用した場合はガソリン代が交通費として認められることがあります。
タクシーを利用した場合には、その全額が認められるとは限らず、他の交通手段を利用した場合を考慮して、必要性が認められたものだけ認められます。
付添人となった家族の交通費が認められる場合もあるほか、付添看護費に交通費が含まれることもあります。
交通事故にあってけがをしたことにより、松葉杖や車いす、義足などが必要になることがあります。
また、メガネやコンタクトレンズなどが必要になったり、買い替えたりすることもあります。
このような費用は、交通事故の被害にあわなければ必要なかった費用であり、交通事故の加害者に対して損害賠償として請求することができます。
交通事故により被害者が亡くなってしまうことがあります。
この場合、亡くなったことで行われる葬儀や法要にかかった費用は、葬儀費用として損害賠償に含めることができます。
また、仏壇や仏具の購入、墓石の購入などの費用も、葬儀費用に含めることができます。
ただ、葬儀費用に含まれる費用の実費を全額、損害賠償とすることができるわけではありません。
自賠責の基準では、100万円がおおよその相場とされており、それを超える金額を請求することは難しくなります。
消極損害とは、交通事故にあわなければ、被害者が受け取っていたはずの利益を喪失したことにより発生する損害のことです。
交通事故にあったことで被害者が仕事をできなくなってしまい、収入を得られなくなることがあります。
また、交通事故にあって亡くなってしまうと、得られたはずの収入が得られないこととなります。
このような場合には、交通事故がなければ得られたはずの利益を、加害者に補償してもらうことができます。
休業損害は、交通事故にあってけがをしたために、仕事ができなくなった場合に発生します。
けがの治療のために仕事ができなくなったサラリーマンや自営業者の場合、治療を行う間の収入が途絶えてしまいます。
そこで、休業した日数に基づいて失われた収入金額を計算し、休業損害として加害者に請求することができます。
また、専業主婦が被害にあった場合も、休業損害を計算して損害賠償として請求することができます。
交通事故で後遺症が残った場合、あるいは交通事故で死亡した場合、交通事故の後にそれまでの収入を得ることができなくなります。
この場合、交通事故にあわなければ得られたであろう収入を計算し、その金額を加害者に対して逸失利益として請求することができます。
なお、実際に請求することのできる金額は、様々な統計上の割合や係数を利用して計算されるため、非常に複雑な式となります。
そのため、概算の金額を知りたい場合でも、専門家に依頼する必要があるでしょう。
精神的損害とは、交通事故によって実際に発生した被害とは別に、精神的に受けたダメージに対する損害のことです。
交通事故にあったことで苦痛を感じたり、将来に対する絶望を感じたりすれば、それは物的な損害とは異なる、精神的な損害を受けたこととなります。
そこで、精神的な被害についても、加害者に対して損害賠償を求めることができるようになっています。
実際にどのような精神的苦痛が生じたかにより、3種類に分けることができます。
障害慰謝料とは、交通事故でけがをした場合に発生した精神的苦痛に対して請求することのできる慰謝料です。
実際にけがをした時に発生するものであることから、入通院慰謝料と呼ばれることもあります。
具体的には、けがの痛みや交通事故により感じた恐怖、あるいは治療時に感じた恐怖などが慰謝料の根拠となっています。
また、入院や通院によって身体的あるいは時間的拘束が生じることによる精神的な負担も考慮されます。
障害慰謝料の金額は、実際に入院していた日数や通院していた日数を基に計算します。
自賠責の基準では、1日あたりの金額は4,300円とされていますが、傷害に対する補償限度額は120万円とされています。
そのため、入院や通院の期間が長引くと、120万円以上の慰謝料を請求することができなくなってしまう可能性があります。
120万円を超える金額を慰謝料として受け取ることはできないので、十分な補償が受けられないこともあります。
後遺症慰謝料とは、交通事故により後遺症を負ったことにより発生する精神的苦痛に対する慰謝料です。
後遺症を負ったことで、日常生活に不便が生じることがあります。
また、後遺症が残ったことで、精神的にショックを感じることもあります。
さらに、将来に対する不安を感じることもあるでしょう。
そこで、後遺症が残った場合に発生する精神的な苦痛を考慮して、加害者に対する慰謝料を請求することができることとされています。
なお、後遺症慰謝料の金額は、後遺障害等級に応じて定められています。
被害者に過失がなく、後遺障害等級が1級の場合、自賠責の基準では1,150万円が慰謝料の金額となります。
一方、同様の場合に弁護士の基準では、2,800万円程度の慰謝料が認められると見込まれ、その差は1,650万円にも及びます。
交通事故によって被害者が亡くなった場合、その死亡により発生する精神的苦痛に対する慰謝料のことです。
交通事故で亡くなった人が感じた痛みや苦しみなどが、死亡慰謝料では考慮されます。
また、被害者が感じた無念さや悔しさ、悲しみなども考慮されます。
さらに、被害者自身はなくなってしまっても、残された家族が悲しみや怒りを感じることもあり、遺族の精神的苦痛も補償の対象となります。
遺族には、配偶者や子、父母のほか、内縁の妻や夫、兄弟姉妹などが含まれることもあります。
なお、死亡慰謝料の金額は自賠責の基準では、遺族1名の場合550万円、遺族2名の場合650万円などと定められています。
遺族の数が増えるほど、あるいは死亡した人に扶養されていた人が多いほど、死亡慰謝料の金額も大きくなります。
これに対して、弁護士を通して損害賠償請求を行う場合は、死亡した人の本人慰謝料と、残された遺族の慰謝料を合算して金額を算出します。
弁護士の基準では、少なくとも2,000万円程度の死亡慰謝料となることが想定されます。
一般的に物損事故では慰謝料請求ができません。
物損事故とは、車が壊れただけで被害者には怪我のない事故です。
物損事故で請求できる賠償金は次の通りです。
ただし評価損が認められるケースは少ないため、基本的には修理費・買い替え費のみが多くなります。
交通事故の被害者は、その交通事故でぶつけられ被害にあった車両をもとの状態に戻すために支払った修理費を、損害賠償として請求することができます。
修理費として認められるのは、原則として車両を事故前の状態に戻すために必要な修理の分のみです。
妥当性が認められない修理については、損害賠償を請求することはできません。
また、修理費として支払った費用の全額が、必ず損害賠償の対象となるわけではないことに注意が必要です。
交通事故によって車両の修理ができない場合、修理費ではなく買替費用を請求することができます。
修理できない場合とは、交通事故によって車両が全損してしまった場合のことです。
また、車両の修理費が買替費用より高くなることが明らかな場合も、修理を行うより買替を行う方が合理性があります。
なお、車両の買替費用として請求できるのは、新車の代金ではなく、被害にあった車両と同程度の中古車の代金です。
車両が交通事故にあって修理を行うと、その車両に修復歴が残ってしまいます。
修復歴が残ってしまうと、その車両を将来的に売却するときに、売却価格が減少してしまいます。
そこで、交通事故によって下落した市場価格については、評価損として加害者に対し請求することができます。
評価損の金額を計算する際は、一般財団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書を参考にすることがあります。
また、便宜的に修理費の3割程度とすることもあります。
事故にあった車両を修理に出している期間、あるいは買い替えた車両が届くまでの期間は、代車を利用することとなります。
代車を利用する際に発生する費用は、代車費用として加害者に請求することができます。
ただし、代車費用として請求することが認められるのは、業務のために使用していた車両で事故にあった場合です。
通勤や買い物などの日常生活に車両を利用して事故にあった場合は、他の交通手段を使うことができるとして、代車費用の請求は認められません。
休車とは、車両を使って業務をしていた人が、その車両を修理に出すなどしたために使えない期間、仕事を休まざるを得ない状態をいいます。
休車となったことで、売上を計上することができなくなった場合、その間に発生するはずだった利益を逸失利益として加害者に請求することができ、その請求額を休車損害といいます。
タクシーやバス、配達などに従事するトラックが交通事故にあった場合、休車損害が発生します。
交通事故にあったことによる損害賠償請求を行う際は、その請求ができる時期に注意が必要です。
損害賠償請求できる期間には時効があるため、その時効が成立する前に請求する必要があります。
損害賠償請求権が時効により消滅するのは、以下のタイミングとなります。
時効が成立してしまうと、損害賠償を請求できる事実が発生していても、損害賠償を請求することはできなくなります。
消滅時効が成立する前に、加害者に対して請求を行うようにしましょう。
交通事故に遭って、賠償金を請求するなら「1円でも多い金額を請求したい」と思うでしょう。
そこで下記では、損害賠償金額を増額させる方法を紹介します。
損害賠償金額は過失割合によって変動します。
求める計算式は以下の通りです。
例えば損害金額が100万円で、自分の過失割合が5割だと、損害賠償額は50万円になります。
もし交渉して自分の過失割合が0になった場合は、損害賠償金額は100万円まで増額されます。
このように過失割合を交渉することで、請求できる損害賠償金額が多くなります。
交渉は自分でも可能ですが、なるべく弁護士へ依頼する方法がおすすめです。
なぜなら弁護士は専門的な知識もあり、交渉が得意だからです。
自分で証拠を揃えて相手と交渉するなら、弁護士にまるごと任せた方が確実でしょう。
交通事故の慰謝料は全部で3種類の基準があり、その中でも一番金額が高いものが弁護士基準になります。
種類 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 最低限度の補償 | もっとも低い |
任意保険機基準 | 任意保険会社が独自に設定 | 自賠責保険よりは高い |
裁判所基準 | 弁護士依頼・裁判時に採用される基準 | もっとも高い |
慰謝料の計算で弁護士基準が適用できれば、それだけで慰謝料の金額が多くなります。
ただし弁護士基準は弁護士に依頼しないと、適用できません。
なので「弁護士基準を適用したい」という人は、弁護士への依頼が必須です。
後遺障害等級認定を受ければ、補償額がかなり高くなります。
なぜなら後遺障害等級認定を受けることで、慰謝料金額が高くなり、労働能力喪失の割合に応じた逸失利益が請求できるからです。
後遺障害等級認定を受けるには、いつまで治療を継続するのか?どのタイミングで認定の申請を出すのか?といった判断も必要になります。
確実に等級認定してもらうためには、交通事故に精通している弁護士にアドバイスをもらうといいでしょう。
交通事故の損害賠償とは、交通事故による損害を加害者が補償することを指します。
交通事故の被害者は、怪我の治療費や慰謝料などを損害賠償として加害者側に請求できます。
物損事故の場合は、車の修理費・買い替え費などを請求することも可能です。
損害賠償の金額は加害者側との示談交渉で決めていくことになるため、請求する内容や金額に漏れがないようにしなければなりません。
また過失割合の交渉や後遺障害等級認定など、損害賠償金を少しでも多く受け取れるような対策をしましょう。
損害賠償請求は被害者自身が対応することも可能ですが、専門的な知識もあり、交渉が得意な弁護士に任せた方が安心です。
損がないよう適切な賠償額を請求したい、示談交渉がうまくできるか不安だという方は、交通事故対応の経験が豊富な弁護士に相談してみることをおすすめします。