東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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交通事故に遭ってしまい、保険会社から慰謝料を含む賠償金の支払いを受けたものの、これらのお金に税金がかかるのか知りたいという方は、多いのではないでしょうか。
人生で交通事故に遭う機会はそう多くはないので、保険会社から支払われた金銭の税務上の取り扱いについて、くわしく知っているという人は少ないでしょう。
そこで、この記事では、交通事故の慰謝料が課税対象となるのか、また課税対象になるのはどのような場合なのかについて、わかりやすく解説していきます。
目次
交通事故の慰謝料に、原則税金はかかりません。所得税はもちろん、相続税や贈与税、その他の税金は非課税となります。
所得税法では、交通事故で保険会社から支払われる損害賠償金は非課税であることを明記しています。
18 保険業法(平成7年法律第105号)第2条第4項(定義)に規定する損害保険会社または同条第9項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの
「損害賠償金」の中には、慰謝料・治療費・車の修理代・逸失利益・休業損害など、保険会社から支払われる賠償金のほぼ全てが含まれます。
交通事故の賠償金は、事故がなければ負担する必要のなかった損害を、保険会社に補てんしてもらう意味を持っています。賠償金によって、交通事故に遭わなかったときと同様の経済状態に戻ったにもかかわらず、税金の支払い義務が生じてしまうと、被害者を救済するという法律の趣旨が失われてしまうことになるのです。
交通事故の被害者が受け取った慰謝料・賠償金・示談金には、原則として税金がかからないことを覚えておきましょう。
一方で、いくつかのケースでは例外的に税金がかかる場合があります。
ここでは、交通事故で受け取る賠償金に税金がかかってしまうケースをご紹介していきます。
加害者側との示談交渉の結果、損害と比較して過剰な慰謝料を受け取った場合には、その過剰な部分について課税対象となる可能性があります。
交通事故で受け取る賠償金が非課税になるのは、被害者の救済を目的とする”損害賠償”としての性質を持っているからです。そのため、あきらかに過剰な賠償金については、もはや損害を賠償する目的で支払われるものとはいえないため、損害賠償としての性質を失うことになるのです。
たとえば、交通事故で被害者が全治数週間程度の軽い打撲を負ったケースで、500万円の賠償金を受け取ったような場合には、事故の規模やけがの程度からみてもあきらかに過剰な賠償金だと考えられます。
この場合、加害者から被害者への「賠償」ではなく「贈与」であるとみなされてしまい、贈与税が課されてしまう可能性があります。
社会的に相当な範囲を超える見舞金を勤務先から受け取った場合、その見舞金は課税対象となる可能性があります。
見舞金については、所得税法施行令で次のように規定されています。
見舞金の全てが非課税となるわけではなく、あくまでも「相当」な範囲の見舞金が非課税になるにすぎません。
たとえば、事故のけがで収入が減ってしまった場合に、その減収分を補填する意味で支払われる見舞金については、収入と同様の性質を持っていると考えられるため、課税対象となる可能性があるでしょう。
保険会社との示談がまとまったものの、示談金が支払われる前に被害者が亡くなってしまった場合、遺族が受け取る示談金に相続税が課される可能性があります。
交通事故で被害者が死亡したことにより支払われる”損害賠償金”については、亡くなった被害者の財産ではなく遺族固有の財産であると扱われるため、相続税の課税対象となりません。
また、所得税法に非課税規定が定められているため、基本的に所得税もかかりません。
一方で、保険会社と示談が成立し、損害賠償金を生存中に受け取ることが決まっていたものの、それを受け取らないまま被害者が亡くなってしまった場合、遺族は”損害賠償金を受け取る権利”を受け継ぐことになります。
この”損害賠償金を受け取る権利”は、遺族固有の財産ではなく、亡くなった被害者の相続財産であるとみなされるため、相続税の課税対象となってしまいます。
交通事故で壊れてしまった商品(売り物)などを弁償してもらった場合、その弁償代は所得税の課税対象になる可能性があります。
事故がなければ、その商品を市場で売却して利益を得ることになりますが、事故で破損して商品代金相当額の賠償を受けた場合には、実質的に市場で取引したのと同様だといえるからです。
商品を売却して得た利益については当然に所得税が課税されるので、同様の効果を実現できる弁償代についても、所得税が課税されることになります。
被害者の各種所得金額の計算上、必要経費に算入される金額を補てんするために支払われる損害賠償金については、所得税の課税対象となる可能性があります。
たとえば、事業用の店舗に車が突っ込んできたことで損害を受けた場合、修補期間中の貸店舗にかかる賃料についても賠償を受けることができます。
一方で、この賠償金は必要経費として算入される金額(賃料)を補てんしてもらうことになるので、事業所得の収入金額と評価され、所得税の課税対象となります。
参照:No.1700 加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき|国税庁
交通事故の被害者が受け取れる賠償金については、基本的に税金がかかりません。一方で、被害者自身が加入している以下の保険から受け取れる保険金については、状況によって所得税や贈与税、相続税の課税対象となる可能性があるので、注意が必要です。
課税対象になる可能性のある保険金
なお、くわしい解説については、こちらの記事をご覧ください。
→交通事故で死亡した場合の保険金に相続税はかかる?非課税の範囲を税金がかかるケースを徹底解説
交通事故の被害者が受け取れる慰謝料は原則として非課税なので、確定申告をする必要はありません。
しかし、「損害と比較して過剰な慰謝料を受け取った場合」や「社会的に相当な範囲を超える見舞金を受け取った場合」などの場合には、課税対象となる可能性があるため確定申告をする必要があります。
くわしくは、「【例外】交通事故の慰謝料に税金がかかるケース」の章をご覧ください。
交通事故で受け取れる慰謝料を含む賠償金は、原則として課税対象となりません。
また、被害者と加害者(もしくは加害者が加入する保険会社)がお互いの話し合いで取り決めた賠償金額のことを「示談金」「和解金」と呼ぶため、示談金や和解金についても非課税となります。
交通事故で受け取れる慰謝料を含む賠償金は基本的に非課税ですが、課税対象となる例外的なケースに該当し、かつ受け取った金額とその他課税対象となる金額の合計が、各種税金の基礎控除額を超える場合には、その超える部分につき税金を支払う必要が出てきます。
参考までに、所得税、贈与税、相続税の基礎控除額をご紹介しておきます。
所得税 | 20万円 |
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贈与税 | 110万円 |
相続税 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数 |
税務関係は複雑で、専門的な知識がないと適切な税金対策ができません。交通事故対応は弁護士に、税務関係は税理士に相談するのでは手間がかかるので、できれば、交通事故の対応と合わせて税務関係まで対応してくれる法律事務所に相談することをおすすめします。
交通事故で受け取れる慰謝料や賠償金については、基本的に税金がかかることはありません。
しかし、被害状況からみてあきらかに過剰な賠償金を受け取った場合など、事故状況によっては例外的に課税対象となる場合もあるため、注意が必要です。
交通事故の被害に遭って、けがの治療や保険会社との示談交渉で精神的にいっぱいいっぱいになっているにもかかわらず、税金のことまで気にしなくてはいけないのは、非常に精神的負担が大きいでしょう。
もし、交通事故に関してお悩みのことがあれば、全ての対応を任せられる弁護士に相談することをおすすめします。