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【2020年最新】接触事故(交通事故)の示談金相場はどれくらい?示談金の内訳と金額を決める要素と共に解説

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

この記事でわかること

  • 交通事故の示談金について理解できる
  • 交通事故の示談金を決める要素がわかる
  • 接触事故の示談金の相場がわかる
  • 接触事故で示談金が増額or減額されるケースがわかる
  • 交通事故の示談金交渉をするときの注意点についてわかる

「大ごとにしたくないからすぐに示談しちゃおう。」
「後々揉めたくないから弁護士に依頼したいけど大袈裟かな?」
「弁護士に頼みたいけど費用面で断念………。」

ある日突然交通事故の被害者なってしまったら、問題解決に至るまでには数多くの対応に迫られます。

できることなら、スムーズに解決したいと思われるのではないでしょうか?

早期解決を望むあまり、肝心なことが疎かになってしまうことも少なくありません。

示談交渉中で最も気になる「示談金」について解説していきます。

交通事故被害者にとって、示談金は事故後の生活再建の一助となるものです。

示談金の中のどの部分に関して交渉するべきなのか?

示談金がアップする要素とはどのようなものなのか?

このような示談金の中身について見ていきたいと思います。

目次

交通事故の示談金とは

「示談金」とは、交通事故の当事者が示談(話し合い)の結果“合意”することにより確定したお金(損害賠償金など)の総称のことです。

交通事故の示談金は、「交通事故の種類」や「お怪我の程度」「被害者が働いていたか否か」などにより異なるものです。

2つとして同じ事故は存在しませんので、個別具体的に精査する必要があります。

抜け漏れなく相手方に請求するためにも、まずは「示談金」について見ていきましょう。

示談金≠慰謝料

示談金イコール慰謝料ではありません。

勘違いされることの多い部分であり、似たような意味でよくわからないものです。

この小さな勘違いが大きな損となりますので、正しい知識をしっかりと備えておきましょう。

示談金を構成している「項目」とはどのようなものなのでしょうか?

代表的なものを挙げてみました。

一つずつ確認していきましょう。

(参考)「示談金」と「慰謝料」の違いについて

「交通事故の慰謝料」とは、交通事故により被害者が受けた精神的苦痛を金銭に換算したものです。

被害者は「慰謝料請求権」を有し、加害者は「慰謝料支払い義務」を負います。

  • ・即死の場合は「死亡慰謝料」のみが対象
  • ・入通院を経た後に死亡した場合は、「入通院慰謝料」+「死亡慰謝料」が対象

<参考>混同しやすい用語解説

示談金
  • ・示談(話し合い)が合意に至れば支払われるお金
  • ・交通事故の被害者が受けた「全ての損害」を金銭に換算したもの
慰謝料
  • ・交通事故の被害者が受けた「精神的な苦痛や損害」を金銭に換算したもの
  • ・人身事故にのみ発生(物損事故のみでは発生しないことに注意)
  • ・示談金の中の一つの項目に過ぎない

示談金>慰謝料(示談金の中の一つの項目)

示談金=加害者から被害者に支払われる損害賠償金+慰謝料(全ての損害)

示談金の項目(人身事故・傷害のケース)

代表的な例を挙げてみましょう。

  • ・治療費や入院費(治療や入院にかかる費用のこと)
  • ・入通院慰謝料(入通院を強いられたことによる精神的苦痛を補償)
  • ・通院交通費(電車やバス、タクシー代、自家用車のガソリン代)
  • ・付き添い費用(入通院の際に付き添いが必要な場合に認められる費用)
  • ・休業損害(事故に遭わず、休まずに働いていれば得られた現在の収入の減収分に対する補償)など
  • ・雑費(日用品やテレビカードなど) など

示談金の項目(後遺障害等級が認められたケース)

上記(人身事故・傷害のケース)に加え、以下のものが加算されます。

  • ・後遺障害慰謝料(事故による怪我が後遺障害となりそれにより生じた精神的苦痛に対する補償)
  • ・後遺障害逸失利益(事故に遭わなければ、将来得られるはずであった収入の減収分の補償)
  • ・将来の介護費用(重度障害を負ったケースで食事や排泄、入浴など生涯に渡りかかる介護費用)
  • ・装具、器具購入費用(車椅子や松葉杖、歯科補綴など)
  • ・自宅、車両などの改装改造費用(自宅のバリアフリー化や介護車両への改造など)
  • ・後遺障害診断書作成費用 など

示談金の項目(死亡事故のケース)

死亡するまでに入通院や物損がある場合は、それぞれの項目が加算されます。

  • ・死亡慰謝料(交通事故で死亡したことにより被害者が負った精神的苦痛に対する補償)
  • ・死亡逸失利益(交通事故で死亡しなければ将来得られるはずであった収入の減収分の補償)
  • ・葬儀関係費用 など

示談金の項目(物損事故のケース)

物損事故と人身事故はセットになっているケースが多いです。

  • ・修理費用(車の修理にかかった費用)
  • ・休車損害(自家用車を営業用として使用していた場合)
  • ・評価差損(修理後の車両評価額と事故前の車両価格との差額)
  • ・代車費用(代車を使用した場合)
  • ・登録手続きにかかった諸費用 など

交通事故の示談金を決める要素

気になる示談金の相場ですが、どのようにして決められるのでしょうか?

ここでは、示談金を決める「要素」について見ていきたいと思います。

  • (要素1)事故の種類(人身事故、物損事故、死亡事故など)
  • (要素2)怪我の程度(軽傷、重症、後遺障害の有無)
  • (要素3)被害者が働いていたか否か(会社員、自営業、主婦など)≒逸失利益
  • (要素4)過失割合の大きさ

それでは一つずつ見ていきましょう。

(要素1)事故の種類について

単に交通事故といっても1種類ではありません。

以下のように、打撲やむち打ちなどの軽傷のケースから死亡に至るまで、そして物損事故と様々な事故態様が存在します。

人身事故
  • ・軽傷
  • ・後遺障害あり(後遺障害等級認定を受ける必要あり)
  • ・死亡
物損事故物だけが壊れて損害が発生

たとえば、接触事故でも、むち打ちの怪我と物損が合わさっている事故や、即死ではなく入通院を経てお亡くなりになる事故などがあります。

事故の場所や事故当事者、損害の程度、お怪我の程度など2つとして同じ事故は存在しません。

それ故に、個々の“事故態様”により個別具体的に精査する必要があり、示談金を決定づける「要素」としてとても重要な事なのです。

(要素2)怪我の程度について

人身事故では「軽傷」「後遺障害あり」「死亡」の3つに分けることができます。

損害の程度が最も大きいのは「死亡」であることは何となくイメージできるのではないでしょうか。

示談金は当然のことながら高額となります。

場合によっては1億円を超えることもあるでしょう。

一方で「軽傷」の場合ではどうでしょうか。

怪我の程度が打撲やむち打ちの場合、示談金はあまり高額とはなりません。

しかしながら、比較的軽傷といわれている「むち打ち」のケースでも、「後遺障害」が残った場合は示談金が高額となる場合があります。

その場合、「入通院慰謝料」にプラスして「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。

(審査あり※後述)

(要素3)被害者が働いていたか否か≒逸失利益

次に、被害者が働いていたか否かにより示談金が変わるかについて見ていきましょう。

この場合は、限られた「事故態様」に該当します。

  • ・人身事故(後遺障害あり)
  • ・死亡事故

なぜ「被害者が働いていたか否か」が示談金の金額に影響を及ぼすのでしょうか?

それは、交通事故が原因で後遺障害を負った被害者は事故前のようには働くことができなくなる場合があります。

それが原因で、収入が減少してしまうことは少なくありません。

職を失ってしまうこともあり得ます。

つまり、“労働効率が下がる”ことにより減収した分「後遺障害逸失利益」といいます。

この後遺障害逸失利益を加害者に請求することができます。

死亡事故のケースでも根本的な考え方は同じです。

交通事故が原因で死亡した被害者は、事故以後は当然のことながら生涯にわたり全く働くことができなくなります。

生存していれば生涯にわたり得られた収入は「年齢や職業など」により異なります。

つまり、「死亡逸失利益」とは“生存していれば得られた生涯年収に相当する金額”のことをいいます。

この死亡逸失利益についても加害者に請求することができます。

学生や主婦、子どもの死亡事故の場合はどうなる?!

逸失利益が認められるのは、「仕事をしていた人」が基本的な考え方です。

しかしながら、学生や主婦、子どもについても逸失利益は認められます。

個々のケースにより計算方法が異なりますので、ご不安な方は弁護士にご相談されてみてはいかがでしょうか。

(要素4)過失割合の大きさ

理解を深めるために、用語について理解してから話を進めましょう。

過失わかりやすくいえば不注意のこと。
過失割合交通事故の結果に対する過失の責任割合(加害者対被害者 例:8対2など)のこと。

端的にいえば、自身の「過失割合」が少なければ示談金は高額となります

いったいなぜでしょう?

それは、“自身の過失の分”だけ相手方に補償する義務があるためです。

たとえ自身の過失が1割しかない被害者であっても、その1割分は加害者に対して補償する義務があります。

したがって、最終的な金額が確定したら、そこから自身の過失分が“差し引かれて”(過失相殺)示談金が支払われます。

示談交渉の際に必ずといってよい程、双方の主張が食い違うのは「過失割合」です。

これは、自分の過失を少しでも小さくして最終的に受け取る示談金を減額されないようにするためです。

※過失相殺の計算例については、後ほど解説しますのでご参考になさってください。

接触事故の示談金の相場


まず、示談金を構成する「慰謝料」についておさえていただきたい重要なポイントを解説します。

慰謝料の計算方法には3つの基準があります。

どの基準を用いて算出するかにより、受け取ることのできる慰謝料額に大きな差が生じますので注意が必要です。

自賠責保険基準
(最も低額な基準)
全ての車両所有者に加入が義務付けられている保険のこと。
必要最低限の補償を目的としている。
任意保険基準
(自賠責保険基準に少し上乗せした程度の金額)
車両所有者が任意加入する保険のこと。
保険会社ごとに基準が異なり計算式などは保険会社の内部運用の基準なので不明。
弁護士基準(裁判基準)
(最も高額な基準)
過去の裁判例に基づき弁護士や裁判所が使う基準。
いわゆる「赤本」と呼ばれる本に記載されている。

(case1)人身事故・軽傷の示談金相場■

人身事故で軽傷のケースでは、主に治療にかかる費用や慰謝料、休業損害などが対象となります。

過失割合や治療内容により一概にはいえませんが、数十万円〜200万円ほどとなるでしょう。

「入通院慰謝料」の金額について下記の表をご参考になさってください。

通院期間自賠責保険任意保険基準弁護士基準
3か月25.8万円37.8万円ほど53万円
6か月51.6万円64.2万円ほど89万円
8か月68.8万円76.8万円ほど103万円

(※自賠責基準は、月間の通院日数を10日間・日額4,300円として計算)

(case2) 人身事故・後遺障害ありの示談金相場

人身事故で後遺障害が残ったケースでは、治療費や休業損害などが請求できることは勿論ですが、後遺障害の「等級」により金額に大きな差が生じます。

1番軽度である14級の後遺障害(むち打ちなど)では数十万円となり、介護が必要なほど高度の後遺障害では数千万円に及びます。

後遺障害が残ってしまうと、将来に渡り不便を強いられてしまうことは勿論ですが、職を失うほどのケースも決して珍しくありません。

よって、遺失利益も高額になります。

「後遺障害慰謝料」の金額について下記の表をご参考になさってください。

※()内の数値は要介護の後遺障害のケース

等級自賠責保険基準任意保険基準(推定値)弁護士基準
1級1,150万円(1,650万円)およそ1,600万円2,800万円
2級998万円(1,203万円)およそ1,300万円2,370万円
3級861万円およそ1,100万円1,990万円
4級737万円およそ900万円1,670万円
5級618万円およそ750万円1,400万円
6級512万円およそ600万円1,180万円
7級419万円およそ500万円1,000万円
8級331万円およそ400万円830万円
9級249万円およそ300万円690万円
10級190万円およそ200万円550万円
11級136万円およそ150万円420万円
12級94万円およそ100万円290万円
13級57万円およそ60万円180万円
14級32万円およそ40万円110万円

(case3) 人身事故・死亡の示談金相場

ニュースなどでも度々取り上げられますが、交通事故による死亡者は後を断ちません。

人身事故の死亡のケースでは1億円を超える示談金となることもあります。

これは、被害者が働いていたか否か(逸失利益)や死亡慰謝料の算出基準により異なります。

死亡被害者が働いていなければ、2,000万円ほどの示談金となることもありますし一概にはいえません。

逸失利益はもちろんですが、「死亡慰謝料」の金額にも着目する必要があります。

算出基準によりかなりの差が生じてしまいますのでよく確認しておきましょう。

(自賠責基準)死亡慰謝料の計算方法

死亡慰謝料=「死亡被害者本人の慰謝料」+「ご遺族の慰謝料」

「死亡被害者本人の慰謝料」は一律400万円と定められており、ご遺族の慰謝料は慰謝料請求権を有している人数により金額が決まります。

慰謝料請求をする遺族の数(請求権者数)慰謝料額
1人550万円
2人650万円
3人750万円

※死亡被害者に「被扶養者」がいる場合は、上記金額(一律400万円)に200万円が加算される。

※内縁関係の場合は「扶養利益の喪失」を根拠として損害賠償請求をすることが可能となる。

(任意保険基準)死亡慰謝料の計算方法

自賠責保険基準の算出方法と違い「被害者の属性」により金額が左右されます。

「被害者の属性」とは「家庭内で被害者がどのような立場であったか」ということです。

また、自賠責保険基準のように被害者本人とご遺族の慰謝料を合算するわけではありませんので注意が必要です。

※一般的な相場(推定値)

死亡被害者の属性慰謝料額
一家の大黒柱(家族の生計を支えている)およそ1,500〜2,000万円
専業主婦(主夫)、配偶者およそ1,300〜1,600万円
子ども、高齢者、その他およそ1,100〜1,500万円

(弁護士基準)死亡慰謝料の計算方法

任意保険基準同様に、複雑な計算式はありません。

「損害賠償額算定基準2020」(令和元年版)通称「赤本」などに記載されています。

死亡被害者の属性慰謝料額
一家の大黒柱(家族の生計を支えている)およそ2,800万円
専業主婦(主夫)、配偶者およそ2,500万円
子ども、高齢者、その他およそ2,000〜2,500万円

(case4) 物損事故の示談金相場

損害額が比較的低額であることの多い物損事故ですが、被害者にとっては大切な車が壊れてしまえば心中穏やかではありません。

修理代や代車費用、ペットの治療費なども認められるケースがあります。

1万円でも多く補償を受けたいと思われるのが自然な感情です。

一般的には、数万円〜数十万円程度が相場です。

しかし、高級車の場合は修理費用が高額になりますので、その分示談金の額も高額となります。

接触事故で示談金が増額されるケース


これまでは、「算出基準」や「逸失利益」などによる示談金について見てきました。

それ以外でも、示談金の額が左右されるケースがあります。

いったいどのようなケースが該当するのでしょうか?

代表的な例3つを挙げてみましたのでご参考になさってください。

(case1)被害者のご遺族が精神疾患に罹患してしまった

死亡した本人ではなく、事故現場に一緒に居合わせた家族の例などです。

事故を目撃した家族が、ショックのあまり精神疾患に罹患してしまうケースなどが該当します。

医師による診断が必要ですが、自責の念に陥り抑うつや不眠などの症状が出現し、重度のストレス反応であると認められた場合です。

この場合は、ご遺族への慰謝料の支払いが認められる可能性があります。

(case2)加害者の対応が著しく不誠実

  • ・交通事故後に謝罪が全くない
  • ・虚偽の供述をしている

激しい憤りを感じるのではないでしょうか?

このような加害者の対応が著しく不誠実なケースでも慰謝料額が増額する可能性があります。

「お金で解決する問題ではない!」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

とても難しい問題ですが、人により考え方は様々です。

しかしながら、現実的には、このような不誠実な加害者を相手にすると示談交渉が長引いてしまう傾向があります。

「事故のことは思い出したくもないしできるだけ早く解決したい。」と思われるのでしたら、裁判で決着をつけることもご検討されてみてはいかがでしょうか。

(case3) 加害者に故意や重過失がある

  • ・ひき逃げ
  • ・飲酒
  • ・無免許
  • ・スピード違反
  • ・信号無視
  • ・薬物違反 など

正常に運転ができない状態であるにもかかわらず運転をしていたケースが該当します。

また、それ以外でも加害者の過失があまりにも大きいケースでは慰謝料が増額します。

接触事故で示談金が減額されるケース

慰謝料が増額したケースがある一方で、慰謝料減額となるケースもあります。

いったいどのようなケースなのでしょうか?

初めて目にする言葉があるかと思います。

難しいことはなく「なるほど」と納得できる内容のものです。

  • ・過失相殺
  • ・損益相殺
  • ・素因減額

(case1)過失相殺による減額

交通事故のほとんどのケースでは、加害者だけではなく被害者にも「過失」が認められるものです。

過失割合は、交渉次第で「増額」も「減額」もあり得る重要なポイントとなり、示談交渉の際には必ずといってよいほど争点になります。

過失割合が8対2のケースでの過失相殺の計算例を見ていきましょう。

加害者被害者
過失割合82
損害額300万円800万円
請求できる金額300万円×0.2=60万円800万円×0.8=640万円
実際にもらえる金額0円580万円

※太字で示した分が「相手方の過失分」となり、相手方の過失分は差し引かれて計算される。

(参考)過失相殺とは?!

「過失相殺」とは、自らに「過失」があれば、たとえ1割の過失でも相手方に対して、損害賠償金を支払う義務があります。

上記のケースでは、加害者に過失があるだけでなく、被害者にも2割の過失が認められます。

したがって、被害者の過失分(2割)が差し引かれた額が最終的に被害者が受け取る金額となります。

(case2)素因減額

初めて目にする方もいらっしゃるかもしれませんが、「素因」とは、被害者が交通事故の前から有していた要因のことです。

「素因減額」とは、被害者が元々有していた「要因」によって交通事故の被害が拡大したような場合に慰謝料が減額されることをいいます。

例: 被害者がヘルニア(頸椎)を有しており、むち打ちの治療が長引いた など

(case3) 損益相殺

端的にいうと「二重取りを防止する制度」のことです。

たとえば、被害者が交通事故の治療中(示談前)に「労災保険」などからすでに支給を受けている場合が該当します。

その場合は、示談交渉の際に「確定した慰謝料額」から「既払い労災保険支給分」が差し引かれて計算されます

他の該当事例は以下のとおりです。

  • ・社会保険給付金各種(健康保険、国民健康保険、厚生年金保険、国民年金など給付が確定していたもの)
  • ・被害者死亡後の生活費など(生存していればかかる生活費の支出を免れるため) など

※香典や生命保険金、生活保護に基づく給付(後に返還予定あり)、雇用保険に基づく給付は控除対象外です。

交通事故の示談金交渉をするときの注意点


これまで見てきたとおり、示談金の交渉は法律知識を有していない一般の方にとっては非常に困難です。

必要な手続きを行うだけでもあれこれと調べながら進めなくてはなりません。

これらの煩雑な手続きと相手方との交渉を自力で行うことは大変な労力が必要です。

いったいどのような点に注意すればよいのでしょうか?

弁護士などの専門家に相談する

後遺障害等級の申請や裁判手続きなどでは、特に専門家の力が功を奏します。

過去の裁判例をあてはめて様々な角度から精査して、解決へと導くためです。

また、請求できる項目についても抜け漏れの心配がなく「適正な金額」で交渉することが可能となります。

先にも見てきたとおり、最終的な示談金を左右する「過失割合」の交渉の場面では「事故態様」について客観的かつ詳細に精査します。

とても素人では対応することができないのが現実です。

“損”をしないためにも、事故後早めの段階で弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

保険会社のいうことを鵜呑みにしない

交通事故後、数ヶ月すると保険会社から連絡が入ります。

「そろそろお怪我も完治される頃かと思いますので、治療費を打ち切りますね。」

などといわれて困っている被害者の方は少なくありません。

しかし、「はい、そうですか」と鵜呑みにする必要はありません。

また、示談交渉が進み過失割合や示談金額などに納得がいかなければ合意する必要はありません

保険会社が提示してきた過失割合や示談金額は「適正な金額」といえますか?

その根拠は?

保険会社は交渉に関しては百戦錬磨でありプロです。

少しでも支出を抑えたいと思うのが営利企業であり、保険会社もその一つなので仕方のない部分でもあります。

ですが、不当な金額で合意しなければならないわけではありません。

弁護士も交渉のプロであり、法律のプロです。

裁判所や弁護士が用いる基準で算出された慰謝料額こそ「適正な金額」といえるのではないでしょうか。

まとめ

事故後の生活は苦労を伴いますが、「時効」に関してもしっかりと意識しておいてください。

2020年4月1日から民法改正が施行され「人の生命または身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の期間」が5年に延長されました。

人の生命や身体は他の利益以上に保護する必要性が高いということから改正に至りました。

損害賠償請求請求できる期限
人身損害の場合5年
物的損害の場合3年

※ひき逃げなどの加害者不明の場合

  • ・事故日の翌日から 20年
  • ・加害者判明日の翌日から 人的損害は5年、物的損害は3年

いずれか早い方となります。

交通事故問題は、早い段階で弁護士のサポートを受けることが被害者の方にとって大変有益となることが多いです。

「初回相談料無料 交通事故 弁護士」などと検索して親身になって相談に乗ってくれる弁護士を探されてみてはいかがでしょうか。

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