東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故にあった場合、その時のけがのせいで仕事を休まなければならないことがあります。
この場合、仕事を休んだために給料が減ってしまうなどの影響があるため、その減収を穴埋めするために「休業損害」を受け取ることができます。
この休業損害はいつ受け取ることができるのか、ご紹介します。
交通事故にあってけがをした場合、休業損害を受け取れることがあります。
休業損害が発生するのは、けがの原因が交通事故であり、そのけがの治療のために仕事を休まざるを得ない場合です。
そこで、交通事故の被害にあった人は、勤務先の会社に休業損害証明書を書いてもらいます。
またこの時、源泉徴収票の提出が必要になる場合もあります。
自営業者の場合は、交通事故の影響で仕事ができなかったこと、その影響で収入が減少したことを明らかにする書類を提出します。
その後、休業損害証明書を加害者側の保険会社に提出します。
休業損害が発生しているとする書類を提出すると、1~2週間後に休業損害の金額が振り込まれます。
休業損害の金額は、交通事故の影響で実際に減収となった金額です。
そのため、基本的な計算は「1日あたりの基礎収入×休業した日数」となります。
ただ、1日あたりの基礎収入の金額は、その人の職業や就労状況によって異なります。
①給与所得者の場合
サラリーマンやアルバイト・パートの方は、直近3ヶ月の給与の額を使って1日あたりの基礎収入の金額を求めます。
休業損害の計算式は、「直近3か月の給与の合計額÷90日(または稼働日数)×休業日数」となります。
②自営業者の場合
自営業者の方は毎月の給料をもらっていないため、その前年の事業所得の金額を基に計算します。
休業損害の計算式は、「交通事故にあったう前年の所得金額÷365日×休業日数」となります。
交通事故の被害にあった人の中で、休業損害証明書の提出が必要になるのは、勤務先から給料を受け取っている人です。
サラリーマンと呼ばれる会社員のほか、アルバイトやパートとして働く人も、勤務先から給料を受け取っているため、ここに含まれます。
平日には基本的に毎日、会社に出社している正社員だけでなく、週に何回かだけ出社しているアルバイト・パートも、交通事故による被害のせいで欠勤し収入が減少した場合は、休業損害証明書を提出することとなります。
一方、自営業者や会社経営者の場合、会社に雇用されている人ではないため、休業損害証明書は不要とされます。
休業損害証明書を提出しない場合は、代わりに診断書など仕事ができなくなったことを証明する書類を準備します。
給料を受け取っている人の場合、休業損害証明書がなければ休業損害を受け取ることはできません。
そのため、勤務先の会社に依頼して、休業損害証明書を早めに準備してもらう必要があります。
ただし、実際に交通事故が原因で休業損害が発生した場合、いつまでに休業証明書を準備しなければならないのか、わからない方もいることでしょう。
この点について、休業損害証明書の提出期限は特に定められていません。
ただし、交通事故にあった場合の損害賠償請求権には時効があり、人身事故の場合は原則、事故の日の翌日から5年となります。
また、後遺障害の損害について請求する場合は、症状固定の日の翌日から5年となります。
この時効が成立してしまうと、請求自体が無効となるため、注意が必要です。
休業損害証明書という書類はどのようなものか、実際に目にしたことのない方も多いでしょう。
証明書を作成するのは勤務先の担当者ですが、おおまかな記載内容については自身でも確認しておきましょう。
休業損害証明書の書式を作成しているのは、保険会社になります。
被害者が自身の休業損害証明書を作成する際は、加害者側の保険会社から休業損害証明書を入手しなければなりません。
加害者の保険会社から必要書類を受け取っている場合は、その書類の中に一緒に入っている可能性もあるため、確認しておきましょう。
また、加害者側の保険会社のホームページからダウンロードできるようになっているため、紛失した場合にはホームページから入手しましょう。
休業損害証明書自体に前年の給与支給額を記載する項目はありません。
その代わり、前年の源泉徴収票を添付することとされています。
休業損害証明書に、前年の源泉徴収票を添付するようにコメントが書かれているので、忘れないようにしなければなりません。
なお、前年の源泉徴収票を自身では持っていない場合でも、勤務先に依頼すれば間違いなく再発行してもらうことができます。
また、源泉徴収票で対応が難しい場合には、賃金台帳や雇用契約書、所得証明書などで対応する必要があります。
休業損害証明書を作成するうえでのポイントの1つは、交通事故が発生した影響でどの程度仕事を休んだのかを記載することです。
仕事を休んだ日数は、そのまま休業損害の計算につながるため非常に重要であり、必ず間違いないように記載しなければなりません。
まずは仕事を休んだ期間を記載しますが、ここには通院などの影響で遅刻した日数や早退した日数も含めて記載します。
その下には、仕事を休んだ期間の内訳を欠勤、有給休暇、遅刻・早退の別に記載します。
交通事故により仕事を休んだとして記載した期間に、勤務先から給与が支払われたかどうかを記載します。
選択肢としては、全額支給した、全額支給しなかった、一部支給した、一部減額したといったものがあり、その中から実状にあった選択肢を選びます。
全額支給した場合には、収入には影響がなかったこととされます。
一方、全額支給しなかった場合には、収入に大きな影響が生じていることとなります。
また、一部支給あるいは一部減額となった場合は、どのような計算により支給(減額)されたかを記載します。
休業損害の金額は、事故の直前3ヶ月間の給料の額から計算します。
そこで、直前3ヶ月間の支給金額と徴収された社会保険料、所得税を記載し、差引支給額を記載します。
仕事を休んだ期間に支給された給料を記載するわけではないため、注意が必要です。
また、この期間に賞与の支給があったとしても、賞与の金額は記載しないことにも注意しましょう。
パートやアルバイトの方は、所定勤務時間や給与計算の基礎となる月給・日給・時給を記載します。
交通事故の被害にあった場合、加入する社会保険から何らかの補償を受けられる場合があります。
傷病手当金、あるいは休業補償金といった名目で支給された金額があると、休業期間の収入が減少した分を穴埋めすることができます。
このような補償給付を受け取った人が、休業損害の金額を受け取ることとなれば、同じ交通事故から発生した収入減に対する補償を二重で受け取ることとなります。
しかし、二重に補償を受けることは認められず、先に社会保険からの補償を受けた人は休業損害を受けられません。
そこで、社会保険からの給付の有無を記載することとなっています。
勤務先で作成してもらった休業損害証明書と、前年度の源泉徴収票などの添付書類は、一緒に加害者の保険会社に提出します。
加害者が任意保険に加入している場合は、その任意保険の保険会社が提出先となります。
一方、加害者が任意保険に加入していない場合もあり、この場合は自賠責保険が提出先となります。
交通事故の被害にあった人が、加害者の保険会社に提出しなければならない休業損害証明書について確認してきました。
休業損害の金額を請求する際には、この証明書は非常に重要な書類となります。
基本的に勤務先の担当者に記載してもらうものですが、勤務先でも不慣れな場合があるため、記載内容に誤りがないか、一緒に確認しながら進めるといいでしょう。
なお、加害者側の保険会社に休業損害証明書を提出しても、実際の金額はかなり低く見積もられることもあります。
場合によっては、保険会社とのやり取りを始める段階から弁護士に依頼して、不利な条件が提示されないようにすることも検討しましょう。