第二東京弁護士会所属。
困った時はまずは交通事故に精通ている私たち弁護士にご相談いただければと思います。
これから何をすれば良いかなど、豊富な経験とノウハウに基づいて回答いたしますし、加害者や保険会社との交渉や、 後の裁判などに迅速に対応できるサポートをしていきます。
交通事故に遭って怪我をしてしまうと、怪我の状況や医師の指示により普段の仕事を休まざるを得なくなってしまいます。
一日丸ごと休む場合だけでなく、遅刻や早退が必要になる場合もあるため、本来なら働いて得られる収入が減ってしまうことがあります。
こういった休業による損害を証明するために必要となるのが「休業損害証明書」です。
この記事では、休業損害証明書の概要と書き方・記入例から、休業損害金の計算方法や勤務先が休業損害証明書を作成してくれなかったときの対処法まで解説します。
目次
休業損害とは、交通事故の怪我が原因で働けなかった状況によって、労働への対価である収入が得られなかった損害のことです。
休業損害証明書とは、交通事故によって受傷した怪我が原因で仕事を休んだ事実と、それによる損害を証明する書類を言います。
加害者との示談交渉において、被害者側が準備しなければならない書類のひとつです。
給与所得者の場合、休業損害証明書は勤務先の会社(派遣社員であれば派遣会社)に作成してもらいます。
多くの場合、加害者側の保険会社から休業損害証明書のフォーマットが送られ、この作成を会社の総務・人事・労務担当の部門に依頼する流れが一般的です。
休業損害証明書は加害者に提示し、仕事ができず得られなかった収入を請求するための重要な書類です。
休業損害証明書は給与所得者向けの書類になるため、自営業の場合は作成不要です。
ただし、休業損害証明書に代わる書類がなければ休業損害を請求できないため、自営業の場合は以下の書類を保険会社に提出する必要があります。
診断書と診療報酬明細書は、加害者側の保険会社が病院へ直接請求するケースが多いため、自分で取得する必要はないでしょう。
納税証明書は確定申告した税務署の窓口、または郵送やオンラインで請求できます。
勤務先に提出する休業損害は、保険会社によって内容に多少違いはありますが、主な記載項目は次の通りです。
自分では作成しないとしても、休業損害証明書の記入要領を確認しましょう。
交通事故の前の年の源泉徴収票が必ず必要になります。
保険会社によって異なりますが、証明書フォーマットに直接貼り付けたり、保険会社に送付したりする際に添付・同封します。
誰の休業損害証明書か分かるように、休業した人の「職種・役職」「氏名」「採用日」を記入する欄があります。
自動車事故により、いつからいつまでの期間仕事を休んだのか記入します(遅刻・早退した日を含みます)。
また、カレンダー形式の表に以下の休業期間の内訳を記入します。
例えば欠勤日には「○」、有給休暇日には「◎」といった具合に、フォーマットの指示どおりに書き入れます。
土日祝日等、所定の休日には「×」と記入する場合がほとんどですが、その日の欄にも忘れず記入しましょう。
休業期間中に、会社から休業した人に支払われた給与を記入します。
一部支給又は減額の場合には、その計算根拠も記入する必要があります。
この部分は後の示談交渉において重要なポイントとなります。
仮に全額支給されていたのであれば、会社が加害者に請求することは可能であるものの、そうでなければ休業損害として加害者に請求できません。
例えば、会社から給与の6割を支給されていた場合であれば、被害者が加害者に請求できるのは残りの4割までとなります。
ちなみに、労災保険等からの支給があった場合も同様です。
つまり休業した人は自分が損害を受けた範囲まで請求できるのです。
事故前(事故による休業がない)直近3カ月に支給した月例給与を記入します。
なお、「本給」とは基本給のことを指し、「付加給」とは残業代や、交通費等その他の手当てです。
併せて、給与の毎月の締切日や所定労働時間、給与計算基礎として月給・日給・時給を記入します。
パート・アルバイトの方であれば、所定の時間を超えた残業をしたり、所定の日以外に勤務したりした際の割増分は付加給扱いになります。
社会保険(労災保険、健康保険等で公務員共済組合を含む)から「傷病手当金」や「休業補償費」の給付を受けたか記載します。
また、手続き中かどうかを選択し、該当する保険者の名前と連絡先も記入しましょう。
前述のとおり、被害者が労災保険等からの支給があった場合、加害者に請求できる部分が変わる点と関係しています。
休業損害金とは、被害者が交通事故の怪我で仕事を休んだために、収入が減った場合の補償です。
名称に「休業損害」とありますが、家事労働にも経済的価値があるため、専業主婦・主夫などの未就労者も請求できます。
休業損害を証明する義務は、被害者側にあります。
何らかの事情で勤務先の会社に休業損害証明書の作成を依頼できない場合は、休業損害証明書の代わりに休業損害を証明できる資料を自分で準備する必要があります。
給与所得者の場合、作成は決して難しくはありません。
補償を受けられるよう、相手方との示談交渉に先立って準備を進めましょう。
なお、休業日数には、治療通院のために有給休暇を使用した日も含めます。
休業損害の計算方法は、人によって異なる1日あたりの収入金額により、大きく2つの計算方法に分かれます。
どちらの計算に当てはまるのか、まずはその計算方法を確認しましょう。
①1日あたりの収入が不明確な場合あるいは6,100円を下回る場合
休業損害の額=6,100円×休業日数
②1日あたりの収入が6,100円を超える場合
休業損害の額=1日あたりの基礎収入×休業日数
(ただし、1日あたりの基礎収入の金額は、19,000円が上限)
1日あたりの収入が6,100円を超える場合には、そのことを申請する人が立証しなければなりません。
1日あたりの基礎収入の金額は、一般的に事故が発生する前3カ月分の収入の合計額を90日で割った金額となります。
サラリーマンなどの給与所得者の場合は、事故前3カ月間の給与や賞与の額を合計し、1日あたりの金額を計算する必要があります。
なお、給与の額には、基本給だけでなく各種手当の金額も含められます。
また休業日数は事故が原因で休業した期間です。
欠勤した場合も有給休暇を取得した場合も含まれるため、その日数を正確に計算する必要があります。
交通事故で負傷した場合、休業補償給付や傷病手当金を受け取れるケースがあります。
休業補償給付は労災保険からの補償になっており、業務扱いとなる勤務中や通勤中の交通事故で負傷し、仕事ができなくなったときに支払われます。
ただし、休業補償給付と休業損害金はどちらか一方しか受け取れません。
労災保険に加入していない自営業者も、休業補償給付は受け取れないため注意してください。
傷病手当金は健康保険から支払われますが、休業損害金と重複して受け取ることはできず、国民健康保険は対象外になるため、自営業の方は受け取れません。
勤務先で休業証明書を作成してもらえないというのは、基本的にはあってはならないことです。
しかし、勤務先の担当者が不慣れな場合や、忙しくて対応してもらえない場合なども想定されます。
このような場合には、休業損害証明書の代わりになる書類を作成し提出する行為が認められます。
休業損害証明書を作成する際に重要なのは、収入金額と休業日数を確定させる点です。
この2つの内容を証明できるのであれば、休業損害証明書以外の書類でも代用可能です。
例えば給与明細やタイムカードであれば、その人の収入金額や勤務の実態を明らかにできます。
休業した日数も確認できるため、休業損害証明書がなくても、休業損害の申請が可能となります。
ただ、休業損害証明書がないのは例外的な処理となるため、スムーズに処理が進まない場合もあります。
このような場合は弁護士に相談し、専門家のアドバイスを受けましょう。
休業損害証明書を保険会社に提出する場合、前年度の源泉徴収票を添付しますが、準備できないときは以下の書類を添付しても構いません。
会社との雇用契約がない生命保険の外交員など、自由業の場合は以下の書類を保険会社に提出します。
支払調書は発行してもらえない場合があるため、早めに支払企業に連絡しておきましょう。
休業損害証明書は、交通事故による怪我が原因で仕事を休んだ事実と休業による損害を証明するための書類です。
示談交渉の際、休業で得られなかった収入を加害者に請求するために必要となります。
給与所得者の場合は、勤務先の会社に依頼して作成してもらいましょう。
自営業の場合は作成する必要はありません。
「休業損害証明書を作成してもらえない」「休業損害を補償してもらえない」などでお困りの場合は、交通事故案件を専門とする弁護士への相談をおすすめします。
弁護士が勤務先への依頼や催促などに対応してくれるためです。
また、弁護士が休業損害証明書の適切な書き方を指導してくれます。
保険金請求の手間が省けるだけでなく、困り事や不明点をスムーズに解決してくれるでしょう。
一人で抱え込まずに、ぜひ専門家への相談を検討してください。