東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故に遭ってしまい怪我を負って、仕事を休まざるをえなくなってしまった。
こんな時、被害者は加害者側に対して「本当は稼げていたはずの収入分」として休業損害を請求することができます。
じゃあ実際に、休業損害はどうやって計算するの?また、どうすれば適切にちゃんとした額の休業損害を受け取ることができるの?今回は、そんな疑問と、休業損害の計算方法について分かりやすくお応えしていきます。
目次
休業損害とは、交通事故に遭ってケガをしたことにより,働くことができずに収入が減少することによる損害をいいます。
具体的には
(1)交通事故で仕事を休んでしまったために、給与が一部,または全部支払われなかった。
(2)事故によるケガによるものでボーナスが減った,または支払われなかった。
などがあります。交通事故により収入が途絶えると生活がままならなくなるため、交通事故の被害者にとって、非常に重要な請求対象のひとつですね。
休業補償は、正しくは休業補償給付といい、勤務中や通勤中に交通事故等により負傷し働けなくなった時に労災保険から給付される補償です。
交通事故による損害は、財産的損害と精神的損害に分けられます。
さらに、財産的損害は積極損害と消極損害に区別されます。
・積極損害=交通事故が発生したことにより、被害者の方が支出することになった費用です。例えば、入院費、治療費、通院費、通院交通費、付き添い看護費、修理代など。
・消極損害=事故にあっていなかったら得られていたであろうお金で、休業損害、後遺症による逸失利益、死亡による逸失利益の3種類が代表的なものです。つまり、休業損害は消極損害の一部ということなのです。
休業損害の基本的な計算式は
1日あたりの基礎収入×休業日数
交通事故の休業補償の計算方法は、大きく自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という3つの計算基準のどれをもとにするかで違ってきます。
さらに、一般的に交通事故の慰謝料の算出基準は、下記の順に慰謝料が高額に請求できるとされています。
弁護士・裁判基準での裁判における休業損害も、基本的な計算式で算定されます。
1日あたりの基礎収入×休業日数
たとえば会社員の場合は、交通事故の前3ヶ月分の収入の平均をとって基礎収入とします。
事故前の3ヶ月間の収入の合計が140万円の人の場合、1日あたりの基礎収入は
140万円÷90日=約15,555円となります。
つぎに、自営業者の場合には、事故の前の1年の確定申告書に記載されている収入から1日あたりの基礎収入を計算します。
たとえば、事故の前年度の確定申告書における収入が600万円の人の場合だと
600万円÷365日=約16,438円が1日あたりの基礎収入額となります。
任意保険基準での休業損害の計算は、任意保険会社によって基準が違うので様々ですが
・自賠責基準と同様の1日あたり5,700円の計算方法を提示される
・現実の収入を基準にして基礎収入を計算する
どちらもあり得ます。
多くの場合が現実の収入を基準にして計算する方が休業損害の金額が大きくなるので、任意保険会社が5,700円で提案してきたとしても、受け入れずに現実の収入でも計算方法を主張したほうが有利に示談が進みます。
自賠責基準で休業損害を計算する場合、基礎収入は原則的に一律で1日あたり5,700円として計算します。
5,700円×休業日数の金額になります。
なお、自賠責基準であっても、資料などによって証明できる場合だと実際の基礎収入を基準にすることが可能です。この場合、19,000円が限度額となります。
この場合の休業損害の金額は
1日あたりの基礎収入額(19,000円が上限)×休業日数となります。
休業損害を計算するためには,1日あたりの基礎収入だけでなく、休業日数も算出しておく必要がありますよね。
休業日数とは、名前の通り事故によるケガで何日間仕事を休むことになったか、という日数のことを表します。
自賠責保険の場合でも、裁判の場合でも同じです。
この休業日数については、勤務先に作成してもらう休業損害証明書が必要となってきます。
個人事業者の方などであれば、入院をしていたという場合は、その診療明細を病院の方で出してもらうことによって立証できますね。
通院の場合も同様です。ただし、通院の場合には、傷害の程度や病院までの距離、診療の内容などによっては休業する必要がなかったのではないかという反論がなされることがありますので注意。
その場合には、休業して通院しなければならなかったという事実を主張立証する必要が出てきます。事故による傷の程度などから、本当に休業する必要があったのかどうか、と疑われることがあるからです。
そういった事態を避けるため、医師に通院する必要があった旨などを診断書に書いてもらう必要があります。
会社員と自営業の場合の休業損害の計算例は上記で分かりましたね。
では、主婦や学生、会社役員などの場合はどうなるのか、計算例を見てみましょう。
専業主婦も、家事ができない分を休業損害として認めてもらうことができます。
弁護士・裁判基準での専業主婦に対する休業損害は、賃金センサスという全年齢の女性の平均賃金をもって計算します。
以下が賃金センサス表です。
学歴計 | 平成30年 |
---|---|
全年齢 | 382万 6300円 |
~19歳 | 234万 8600円 |
20~24歳 | 304万 9800円 |
25~29歳 | 362万 3200円 |
30~34歳 | 381万 6200円 |
35~39歳 | 394万 5500円 |
40~44歳 | 411万 7600円 |
45~49歳 | 421万 3300円 |
50~54歳 | 422万 700円 |
55~59歳 | 411万 8200円 |
60~64歳 | 324万 3800円 |
65~69歳 | 292万 4100円 |
70歳~ | 296万 2200円 |
平成30年の平均賃金は382万 6300円なので、これを1日あたりに換算すると、1日当りの基礎収入額は10,483円となります。
●例えば、家事労働ができなかった日数を7日とした場合
10,483円×7日=73,381円
となります。
また、休業日数については、通院日数などを基礎にすることが多いです。
専業主婦・兼業主婦の休業損害についてはこちらの記事も参考にしてください。
交通事故の休業損害は専業主婦も請求できる?損をしないための基礎知識!
学生は本来、休業損害の対象には入りません。
しかし、アルバイトをしている学生の場合、休業損害を請求できる可能性があります。
休業損害を請求したい場合は、アルバイトで1日どれだけ稼いだか、という1日当たりの収入の平均を算出する必要があります。
そのため給与明細などが必要になってきます。
導き出したその平均額に、休業日数をかけることで休業損害額を算出することができます。
会社役員が受け取る役員報酬には、実際の労働に対して受け取る報酬と、労働していなくとも受け取ることができる報酬の2つのものが含まれています。
そして、多くの場合、労働していなくても受け取れる報酬については、休業損害の対象になりません。
ただ、どの金額までが実際の労働に対する報酬なのかは異なるため、賃金センサスの平均賃金を元にしつつ、企業の規模や被害者の持っている権限など参考にして、基礎収入額が算出されることになります。
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休業損害の金額の計算や、正当な金額でもらえるのかといった不安なども弁護士に任せると安心です。
弁護士に依頼をするメリットとしては、賠償額の増額が挙げられます。
弁護士が介入すると、保険会社としては裁判に発展させたくないため、弁護士基準での交渉に応じるケースが多くありますし、実際の裁判においても、休業損害や慰謝料等は弁護士基準で算出されます。
このように、弁護士に依頼すると、賠償額が増額する可能性が高くなります。
自動車保険に入る際に、弁護士費用特約に加入していると、費用の自己負担なしで弁護士に依頼することができます。
弁護士費用特約の限度額は、多くのものがおよそ300万円となっているので、300万円までは弁護士費用が0円で弁護士に依頼ができるんです。
もしも、その上限金額を超える場合には自己費用負担が発生しますが、300万円を超えるケースはかなり大きな事故に限られてくるので、多くの方はこの弁護士特約の範囲に収まるでしょう。
これは本人だけでなく、その家族も利用することが可能です。
自分が弁護士特約を付けているかどうか、ご自身が加入している自動車保険を一度確認してみてくださいね。