東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故の被害に遭っても、不幸中の幸いにも、軽傷や物損のみで済んだ場合、わざわざ弁護士などの専門家に依頼しないこともあるでしょう。また、加入している任意保険会社によっては、ご自身で示談交渉をすることもあると思います。
今回は、ご自身で慰謝料請求のため示談交渉をする場合の、やってはいけないポイントについて見ていきましょう。
そもそも、示談とはなんでしょうか?
示談とは、裁判外において当事者や関係者のみの任意の話し合いで、さまざまなトラブルを解決する方法、話し合いのことを言います。ですので、交通事故以外でも行われます。
裁判手続きとなると、通常、裁判手続きは1ヵ月に1回程度しか行われません。したがって、解決まで時間がかかります。その点、示談は関係者のスケジュールさえあえば、1ヵ月に何度でも話し合うことができますから、迅速な解決を目指すことができます。
弁護士などの専門家に依頼したり、裁判手続きをしたりするとなると、弁護士への相談料がかかります。しかも裁判手続きの場合は、所定の手数料が最低限必要になります。
いくら話し合いといっても、相手が自分より専門的知識を有していたり、交渉力に長けていたりする場合は、上手く相手に丸め込まれる危険性があります。
示談が成立すると「交通事故加害者であるAさんは、被害者であるBさんに金〇〇円を支払う」などの、話し合いの結果の内容を記した示談書(和解書、合意書)を作成します。
しかし、公正証書という特殊な文章を作成しない限り、必ずしも示談書に記された話し合いの結果通りに金銭が支払われるとは限りません。強制的に、相手に対し示談書の内容を実行させる(お金を支払わせるなど)場合は、別途裁判手続きが必要になります。
示談でやってはいけないポイントとしては、時期を誤ることです。
迅速な解決を求めるあまり、資料が揃っていない段階や、まだ治療中の場合、病院から「もうこれ以上は治らない」と診断され後遺障害が認定されるまでは、示談を行うべきではありません。もう少し細かく説明しますと、示談を開始してもいいのですが、示談をまとめ、書類に押印することだけは避けましょう。
なぜならば、ほとんどの示談書の場合、清算条項といって、「今後、示談書に書かれた内容以外の請求はしない」という文言が組み込まれることがほとんどです。一度、示談が成立し、示談書が作成されますと、上記清算条項により、示談成立後に発生した治療費などが請求できなくなるおそれがあるからです。慰謝料の請求額にも影響を与えます。
逆にのらりくらりと解決を無駄に引き伸ばすことも避けた方がいいでしょう。相手から一方的に裁判を起こされたり、相手に請求できなくなったり(原則、交通事故発生から3年以内に請求しなければ時効が成立してしまう2020年の法改正により5年になる)してしまうからです。
ポイントその②は、たとえ、こちらが被害者であり、相手の一方的な過失による交通事故でも、感情的になって交渉をしないようにしましょう。
感情的になると相手も感情的になり、話し合い自体を行うことが難しくなったり、相手方がより高度な技術や知識を有した専門家に依頼したりするきっかけにもなりかねません。感情的になるあまり、到底認められない法外な金銭を要求したり、脅迫的・威圧的な態度をとったりすると、警察沙汰になり、こちらが恐喝罪などで逮捕されかねません。
また、逆に相手に怯えるばかり、必要以上に謙虚な姿勢でいても、相手方に弱みを握られることもあるので、示談には毅然とした態度で望みましょう。
①と関連しますが、解決を急ぐあまり、まだ通院中にもかかわらず、治療を打ち切りことは避けましょう。交通事故における被害者の立場において、最も優先すべき事項は、治療です。相手からなんと言われようと、ご自身や病院が納得するまで治療は継続しましょう。
相手が保険会社の場合、打撲であれば1ヵ月前後、むち打ちであれば3ヵ月前後、骨折であれば6ヵ月前後を目安に、「もう治療は終わった」として、示談を持ちかけてくることがあります。
この期間は今までの保険会社の経験に加え、医学的な平均的な治療期間を参考にしているとのことですが、治療にどれほど時間や費用がかかるかは千差万別です。法律上、治療が継続している間は、ポイントその①で述べた時効は成立しませんので、相手からの示談の申し入れに臆することはなく、まずは治療に専念しましょう。病院の治療方法に納得がいかない場合は、病院を変えることも方法の一つです。
治療費などで金銭的に苦しい場合は、相手方自賠責保険会社への一時金・仮渡金制度の活用も検討しましょう。
加害者が自転車であった場合などを除き、ほとんどの交通事故の示談において被害者が相手にすべき人物は、加害者本人ではなく、保険会社であることがほとんどです。したがって、たとえ、保険会社の対応に納得がいかなかったとしても、加害者本人と直接交渉をすることは避けましょう。
確かに保険会社は、専門的知識や交渉に長けている場合が多く、あの手この手を使って示談をまとめようとしたり、こちら側の請求に応じたりしてくれないことがあります。
このような場合でも、加害者本人に直接請求したりすると、相手もより高度な専門的知識を持つ弁護士などの専門家に依頼してしまうきっかけともなり、かえって交渉が難航するおそれがあります。
示談の内容をよく確かめずに示談を完了させてしまうことは避けましょう。示談書にはポイント①でも説明した通り、一度成立した示談を覆すことは専門家に依頼したとしてもかなり難しいです。相手が保険会社の場合は「後はなんとかするので、とりあえず、書類に印鑑を押して下さい」と、半ば強引に示談を成立させることがあるので注意が必要です。示談書に押印するときは
などの細かな点にも注意してください。示談交渉中に相手方と話した内容や、送った書類をきちんと保存しておくとよいでしょう。
示談は、迅速かつ安価にすむメリットがあります。しかし、示談で決してやってはいけないポイントを押さえておかなければ後悔することもあるでしょう。
まず、示談をすべき時期には気をつけましょう。資料が出揃っている段階や治療継続中など、今後、金銭に変化が生じる可能性での示談締結はやめましょう。
次に、感情的になることはやめましょう。かえって交渉が難航し、示談に迅速性というメリットが失われる可能性があります。同様に、加害者と直接交渉することは避けましょう。話し合いがかえってこじれてしまいます。
また、解決を急ぐばかり、治療を途中でやめることはせず、最後まで治療に専念しましょう。一度示談が成立してしまうと、それ以後に費用は請求できません。
急ぐあまりにやってしまいがちなのが、示談書や示談金の中身を確認せず、示談を成立させることです。トラブルの元になるため絶対に避けるべきです。
これらのポイントをよく理解したうえで、示談交渉に挑みましょう。もし不安になった場合や、弁護士に示談交渉を依頼する、あるいは相談するのも方法の一つです。