東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
交通事故の慰謝料請求でやってはいけないことは、次の8つです。
交通事故の慰謝料請求でやってはいけない8つのこと
保険会社の言いなりになって示談交渉を進めると、被害の実態に合わせた十分な補償を受けられない恐れがあります。これらから説明する8つのポイントをしっかり頭に入れて、慎重に手続きを進めていきましょう。
事故の規模が大きくないからといって、事故現場で示談交渉をおこなうのは避けてください。
外傷や痛みがない場合、人身事故ではないと判断して当事者間で話しをつけてしまうケースもあるでしょう。けががなければ通院の必要もなく、余計な手間をかけずにトラブルを解決したいと考える気持ちもわかります。
しかし、事故直後に示談すると、あとから痛みや痺れなどが出てきた場合にその治療費を請求できなくなる恐れがあります。また、事故直後には把握しきれていなかった車の破損部分などについても、自費で修理しなければいけなくなるでしょう。
加害者の提示する金額は、法的根拠がないケースがほとんどです。警察に連絡せずに加害者の「あとで必ず賠償金を払う」という言葉を信じて警察に報告しないでいると、音信不通になって賠償金を一切受け取れない可能性もあります。
事故が軽微で痛みがなかったとしても、その場で当事者同士で話をつけてしまうのは避けるようにしましょう。
示談交渉を行うタイミングは、事故におけるすべての損害が確定したあとです。加害者側の保険会社から示談を迫られても、焦って示談をまとめないよう注意が必要です。
事故状況ごとに見る示談交渉のタイミングは、以下の通りです。
事故状況 | 示談交渉開始のタイミング | ||
---|---|---|---|
物損事故 | 車の修理代や買替費用が確定したあと | ||
人身事故 | けがを負った場合 | けがが完治したあと | |
後遺障害が残った場合 | 後遺障害等級認定を受けたあと | ||
被害者が亡くなった場合 | 四十九日法要が終わったあと |
一般的に示談書には、「今後、示談書に書かれた内容以外の請求はしない」とする条項が設けられます。つまり、1度でも示談書にサインをしてしまうと、それ以降の治療費や事故の影響でかかったお金については請求できなくなってしまうのです。
特に、むちうちなどの後遺障害が残る事故の場合、医師から症状固定と診断されたあとに後遺障害等級認定を受けなければ、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などを請求できません。等級認定を受ける前に示談すると数百万円単位で損をすることにもなりかねないので、くれぐれも注意してください。
まだけがの治療が終わっていないにもかかわらず、自己判断で治療を打ち切ることは避けてください。保険会社から治療費の打ち切りを打診される場合もありますが、それでも治療を安易に中断しないようにしましょう。
治療を途中で中断すると、大したけがではなかったのではないかと主張され、治療費や入通院慰謝料等を減額される恐れがあります。また、必要十分な後遺障害診断書が作成できず、適切な後遺障害等級に認定されない恐れもあります。
なお、保険会社が治療費の打ち切りを打診してくるタイミングは、打撲で1カ月前後、むちうちで3カ月前後、骨折で6カ月前後が目安です。医学的観点から見た平均的な治療期間を参考に「もうけがは完治しているはずだ」と主張してくるのです。
しかし、けがの治療期間は人によって千差万別で、症状固定を非専門家である保険会社が判断することはできません。保険会社から治療費の打ち切りを宣告されたら、治療継続の必要性について医師に一筆書いてもらい、その書面を保険会社に提出するのがよいでしょう。
事故の影響で後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級に認定してもらうことで後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるようになります。認定される等級が1級違うだけで、請求できる賠償金が数百万円単位で変わることがあるので、申請の事前準備はしっかり行うことが重要です。
例えば交通事故で多いむちうちの場合で、認定される可能性のある等級と後遺障害慰謝料の関係性は、次の通りです。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料の相場 ※ |
---|---|
非該当(認定されなかった場合) | 0円 |
14級9号 | 110万円 |
12級13号 | 290万円 |
※ 弁護士基準で算定した場合の相場となります。
事前準備を怠り後遺症等級に認定されないと、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は請求できません。一方、仮に12級13号に認定されれば、290万円の後遺障害慰謝料を請求できます。これ以外に後遺障害逸失利益なども請求できるので、等級の認定結果によって賠償金額が大きく変わることになるのです。
後遺障害等級認定に必要な書類は多岐に渡り、申請方法もいくつか種類がある中でより適切な方法を選択する必要があります。認定結果が不服であれば異議申立も検討しなければいけません。
ご自身での対応が難しい場合には、交通事故の経験豊富な弁護士に対応を任せることをおすすめします。
加害者が任意保険に加入している場合、示談交渉は加害者側の保険会社と行うことになります。この場合、保険会社との交渉がうまく行かないからといって、加害者に直接賠償金を請求するのはやめましょう。
賠償金は保険会社が支払うので、加害者本人が賠償に応じてくれることは基本的にありません。加害者に直接賠償請求すると、弁護士をつけられてより交渉が難航する恐れがあります。
なお加害者が任意保険に加入していなかった場合、自賠責保険からの補償を超える部分については、加害者本人に直接請求する必要があります。
ただし、任意保険にすら入らない加害者が、素直に高額な賠償金を支払ってくれるケースは少ないです。加害者本人と交渉せざるを得なくなったら、弁護士に賠償金の回収を依頼するのがよいでしょう。
相手の一方的な過失による交通事故だったとしても、感情的になって交渉することはやめてください。感情的な交渉で賠償金を増額させることはできません。
到底認められない法外な金銭を要求したり、脅迫的・威圧的な態度をとったりすると、話し合い自体が難しくなったり、相手方がより高度な技術や知識を有した専門家に依頼するきっかけを与えてしまうかもしれません。場合によっては、警察沙汰になりこちらが恐喝罪などで逮捕されてしまう可能性もあるでしょう。
示談交渉は交通事故に関する法律や裁判例などを駆使して、論理的に進めていくことが重要なのです。
なお、感情的な交渉が禁物だからといって、必要以上に謙虚な姿勢になることはありません。相手に怯えていると交渉の主導権を握られてしまい、かえって交渉がうまく行かないことも頭に入れておきましょう。
示談書にサインする際は、本当にその内容で合意していいかをしっかり確かめるようにしてください。
1度でも示談書にサインをしてしまうと、基本的にあとから合意内容を変更できません。悪質な保険会社の場合、「あとは何とかするので、とりあえず書類に印鑑だけ押してください」と強引に示談を成立させるケースもあります。
示談書にサインする際は、次の点をしっかり確認するようにしてください。
自分で判断できなければ、示談書にサインをする前に弁護士に相談するようにしてください。
事故から示談がまとまるまでに数年経過している場合には、損害賠償請求権の時効にも注意してください。時効が成立すると、加害者に損害賠償を請求できなくなります。
交通事故で適用される時効は、次の通りです。
物損事故における損害賠償 | 事故発生日の翌日から 3年 |
人身事故における損害賠償(後遺障害なし) | 事故発生日の翌日から 5年 |
人身事故における損害賠償(後遺障害あり) | 症状固定日の翌日から 5年 |
死亡事故の損害賠償 | 死亡日の翌日から 5年 |
加害者が不明な場合における損害賠償 | 事故発生日の翌日から 20年 |
事故から数年経過している場合には、時効が完成する前に示談交渉をまとめる必要があります。時効完成を猶予できるケースもあるので、請求権がなくなる前に弁護士に相談することをおすすめします。
なお、「被害者が加入している保険会社への保険金請求」や「加害者側の自賠責保険会社への被害者請求」の時効は3年です。5年よりも短くなっているので、くれぐれも注意してください。
交通事故で慰謝料を含む賠償金を増額させるためのポイントは、次の4つです。
交通事故の慰謝料を増額・上乗せするポイント
交通事故の慰謝料算定基準の中でもっとも高額になるのは、過去の裁判例を基に決められる弁護士基準(裁判基準)です。この弁護士基準を基に賠償額を算出し、さらに事故ごとの個別事情を考慮して賠償金の上乗せを狙っていくのがポイントです。
被害者の受けた精神的苦痛の度合いによっては、相場以上の慰謝料額を認められるケースも珍しくありません。また適切な過失割合に認定されれば、不当に賠償額を減額される心配もありません。
交通事故の被害者として適切な補償を受けるためにも、「慰謝料請求でやってはいけないこと」と「慰謝料を増額・上乗せする方法」をしっかり頭に入れておきましょう。
交通事故の示談交渉は、相手方保険会社の言う通りにしていれば自動的に話が進みます。そのため、深く考えずに示談交渉をまとめてしまう人も珍しくありません。
しかし、保険会社はあくまでも加害者側であり、被害者の味方ではありません。むしろ自社の利益のために支払う賠償金を少なくしようと交渉してきます。
賠償金を増額するためには、本記事でご紹介した「慰謝料請求でやってはいけないこと」と「慰謝料を増額・上乗せする方法」をしっかり頭に入れて交渉に臨む必要があります。
もし1人で保険会社と交渉するのが不安な場合には、交通事故に精通した弁護士に対応を任せることをおすすめします。