東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
会社とは、社長だけでなく社員、取引先、お客様など様々な関係者の関わり合いで成り立っている組織です。
会社が倒産した場合、規模が大きいほど多くの関係者に影響があります。
特に社員は全員解雇され、社長は関係者への清算手続きに追われるでしょう。
やむを得ない事情で会社が倒産せざるを得ないとき、社長の対応によって社員の再出発や関係者への影響が大きく変わります。
ここでは、会社が倒産するときに関係者への影響をできるだけ抑えるための対応方法などを詳しく解説します。
Contents
会社が倒産したら、会社の資産は原則としてすべて手放さなければなりません。
裁判所から選ばれた破産管財人が会社の資産を処分し、現金に換えて債権者に分配します。
破産によって法人格は消滅してしまうため、社員は全員解雇となります。
解雇された社員には、退職金や未払い賃金を支払わなければなりません。
また、新型コロナウイルスの影響で日本経済への打撃が懸念されています。
帝国データバンクによると、新型コロナウイルスの影響による会社の倒産数は2024年3月末段階で全国9,052件です。
参考:帝国データバンク「コロナ破たん累計が1万件目前 累計9,489件に」
経済活動が再開した一方で、コロナ禍の後遺症に苦戦する企業は少なくありません。
ここからは、会社が倒産すると、どのような影響があるのかを解説します。
会社倒産は、ここまで育てた会社の消滅を意味します。
会社がなくなると、所属する社長や社員だけでなく、会社の取引先、関係先にも大きな影響を与えます。
会社倒産では、会社の負債(マイナス)と資産(プラス)の清算を行います。
清算のうえで債権者に分配されるため、会社が倒産したら原則として会社の資産はすべてなくなります。
会社が倒産したら、社員の仕事もなくなるため、新しい仕事を探す必要があります。
倒産する会社の規模が大きい場合は、それだけ多数の社員に影響が出ます。
会社の規模によってはニュースなどで大きく取り上げられ、社会的反響も大きいでしょう。
倒産した会社の製品がなくなり、関係する他の会社の製造や事業運営にも大きな影響を与えてしまうケースがあります。
たとえば、A業界でシェア90%を誇る商品を製造していたB社があったと仮定します。
商品の仕入れを行っている会社の多くは、このB社から仕入れをしていました。
B会社が倒産によって消滅した場合、今までのような仕入れができず、他社の事業にマイナスの影響が出るかもしれません。
会社が倒産すると、上記のような他社の経営難や連鎖的な倒産が発生する可能性があります。
会社の作っている商品のファンが多い場合や特殊な商品を作っている場合は、消費者への影響も大きくなります。
商品については「その会社の商品だからこそ買っていた」「長年愛用していた」などのファンもいるでしょう。
会社が消滅すればファンは愛用品を購入できなくなるため、特殊な商品を作っていた場合も、消費者への影響が大きくなるはずです。
会社倒産を検討するうえでの重要なポイントは、社長の生活への影響の有無です。
ここからは、会社倒産後の社長の生活や影響について確認しておきましょう。
会社が倒産したほとんどのケースで、社長個人の自己破産も必要になります。
会社の資金繰りのために社長個人が融資を受け、返済に苦慮しているケースが多いためです。
会社を倒産する場合に、社長個人の自己破産も同時に行い、債務の免責を受ければ社長個人の債務の支払い義務はなくなります。
会社倒産のみしてしまうと、社長個人は債務の返済義務を背負い続けるため、自己破産も同時に行いましょう。
社長が自己破産すると、社長の財産や生活に対して主に4つの影響があります。
社長個人が会社倒産と同時に自己破産をすると、社長の主な資産は破産手続き中に処分されてしまいます。
債務の免責を行う一方で、資産を所有できません。
ただし、すべての資産を処分されてしまうと、社長個人の生活が成り立たなくなるため、以下のような一部の財産(自由財産)は処分の対象外になります。
自己破産は官報に掲載されるため、周囲に知られる可能性があります。
官報とは、法律の改正や裁判内容が記載される新聞のような書類です。
法律家などの専門職の人が読むような冊子のため、一般の人が読んでいる可能性は低いでしょう。
しかし、通常の書店などでも入手できるため可能性がゼロとは言い切れません。
また、社長個人の自己破産は会社倒産と同時に行うケースが多いです。
社員や取引先、債権者などには社長個人の自己破産は知られると考えた方がよいでしょう。
なお、自己破産の記録は住民票や戸籍には掲載されません。
社長個人の自己破産では、職業や生活に一部制約が生まれます。
破産手続きによって就業が制限される資格とは士業や警備員などです。
これらの制限は破産手続きが完了すると解除されるケースがほとんどです。
社長が自己破産すると、信用情報に自己破産した金融事故情報が記録されます。
個人信用情報機関が管理している信用情報とは、個人の金融サービスの契約状況を記録している情報です。
金融事故情報が記録されている状態を「ブラックリストに載る」といいます。
ブラックリストは、金融事故の内容によって一定期間(5~10年)で抹消されます。
しかし、抹消されるまでの期間は、スマートフォンの分割払いやローンの申し込みなどで審査に通らない可能性が高いです。
ここからは、会社倒産後の社長の生活に関してのよくある誤解を解説します。
基本的に社長個人が自己破産を行っても、家族の資産や生活に影響は出ません。
ただし、以下の2つのパターンは、家族への影響が懸念されます。
家族が連帯保証人になっている場合、債権者から支払いを求められると原則として社長本人と同様の支払義務が生じます。
場合によっては、債権者の勘違いなどで連帯保証人ではない家族にまで支払いの督促があるかもしれません。
もしご家族の生活に影響がある場合、速やかに弁護士へ相談しましょう。
社長が会社倒産を選択した場合でも、社長個人に対するペナルティは特にありません。
ただし、会社が倒産したら取引先や債権者に影響が出るため、将来的に新規事業を始めるときに協力を得にくくなるケースは考えられます。
会社倒産のメリットは、以下の4つです。
経営難から会社倒産を検討している状況では、債権者の取り立てや返済をどうするかなど、会社経営の悩みは少なくありません。
会社が倒産したら返済や債権者への対応、経営の苦労などマイナスの面から解放されます。
会社倒産には、4つのデメリットがあります。
会社が倒産をすると、不動産や預金などの有形財産だけでなく、技術力などの無形財産もなくなってしまいます。
会社倒産の最大のデメリットは、有形無形を問わず蓄積された会社財産がなくなる点です。
また、会社が倒産したらその会社の社長は「倒産した社長」として知られます。
大きな会社を会社倒産させた場合、世間的にも大きなニュースになるため、後々まで会社倒産の印象がついて回る可能性があります。
会社倒産の手続きは8つのステップで完結します。
会社倒産までの手続きと流れについては、以下の記事に詳しく解説しています。
会社倒産手続きには、主に次のような費用がかかります。
裁判所への申立てには次の費用がかかります。
予納金とは、破産管財人の報酬としてあらかじめ納める費用です。
金額は負債総額や裁判所の運用で異なり、数十万円~数百万円ほどになります。
なお、少額管財事件として扱われた場合は20万円で済みます。
法人破産は調査や書類作成などの手間が多く、個人破産より弁護士費用が高くなります。
負債規模などで異なりますが、通常は50万円~100万円ほどで、大規模な場合は数百万円以上になるケースもあります。
会社が倒産すると、多くの取引先へ説明するための場が必要です。
具体的には、破産手続きの開始後、破産管財人が会社の財産や債務の状況などを調査し債権者集会で報告します。
債権者集会は、破産手続きの開始決定から3カ月後に開かれる場合が多く、その後も進捗の共有のため3~4回ほど開催されます。
債権者集会の流れは以下の通りです。
破産者自身は原則として出席が必要ですが、破産者が債権者集会で発言する機会は少なく、ほとんどは代理人の弁護士が対応します。
取引先への対応と債権者集会については、以下の記事で詳しく解説しています。
社長が会社を倒産するときは、社員に対して以下の対応を取りましょう。
それぞれの対応について詳しく解説します。
破産手続き終結後、会社の法人格がなくなるため雇用しているすべての社員は解雇されます。
一般的には、破産申立てをする前に説明会を実施し、事業停止のタイミングで一斉解雇するケースが多いでしょう。
説明会では、主に以下のような内容を説明します。
未払賃金立替払制度の詳細については、厚生労働省のホームページを参考にしてください。
なお、従業員を解雇するときは以下の解雇予告が必要です。
債権者一覧表とは、債権者の名前、住所、債権額などを個別に記載した一覧表で、破産の申立時に裁判所へ提出します。
会社に給料や退職金、解雇予告手当などを支払う資金がない場合、従業員も債権者となるため、債権者一覧表にそれらを記載しましょう。
従業員の生活を保護するため、労働債権は他の一般債権よりも優先して弁済されます。
ただし、会社に残っている財産が少ない場合、従業員に弁済できる額も限られるでしょう。
会社財産をすべて清算しても従業員の債権を弁済できない場合、社長個人からそれ以上を支払う必要はありません。
もし社長個人の財産から弁済した場合、特定の債権者のみ優先して弁済したとして破産手続きに支障が生じる可能性があります。
会社を倒産させる際には、社員の失業保険や社会保険に関する手続きを行わなければなりません。
手続きの内容は、以下の通りです。
退職日から10日以内に管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」「離職証明書」「解雇通知書の写し」を提出します。
ハローワークから交付された離職票を社員に送付し、社員がハローワークで失業保険の受給手続きをします。
なお、破産による解雇は会社都合となるため、社員は7日間の待機期間後に失業保険が受給可能です。
管轄の年金事務所に「適用事業所全喪届」と「従業員の資格喪失届と健康保険証」を提出し、社会保険の適用事業所の廃止をします。
提出のため、事前に社員から健康保険証を返却してもらわなければなりません。
社員は、転職先の社会保険加入、国民健康保険の加入、退職後2年間の任意継続のうちいずれかを選択します。
従業員の住民税や所得税に関する手続きも、会社倒産の際には必要です。
会社は社員の給料から住民税を天引きし、市区町村へ納付しています。
これを特別徴収といい、解雇後は社員自身が納付する普通徴収に切り替えるため、市区町村へ「給与所得者異動届」を提出します。
社員の給与から天引きする点は同じですが、所得税の天引きは源泉徴収といわれています。
会社負担分とあわせて金融機関または所轄税務署に納付します。
会社は、社員へ1年間に「支払った給与額」と「源泉徴収した税額」が記載された源泉徴収票を交付しなければなりません。
源泉徴収票は、社員の収入を証明する大切な書類であり、再就職先での年末調整手続きに必要です。
離職日までの源泉徴収票を作成し、社員へ速やかに交付しましょう。
会社が倒産をすると、社長だけでなく取引先や社員の人生にも大きな影響を及ぼします。
やむを得ず倒産を決意した場合、解雇された社員が再出発するため、できる限り労働債権の未払いがないようにしましょう。
失業保険・社会保険・住民税・所得税関連の手続きを確実に行っておくのも、従業員のスムーズな再出発のために重要です。
将来的な存続の見通しが立たない場合、会社破産や社員への対応に精通した弁護士にできるだけ早く相談をしておくとよいでしょう。
場合によっては、破産手続き以外の対応方法が見つかる可能性もあります。
会社破産を検討している場合、弁護士へ相談し、社員や関係者への対応で準備が必要な事項を十分に確認しておきましょう。