東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
Contents
会社が破産するとは、具体的にどのようなことを言うのでしょうか。
会社が破産するとは、法人格がなくなるということです。
会社は人間ではありませんが、法律上の様々なことをできる法人格を持っています。
法人は、契約などの行為を法人名義ですることができます。
また、法人は活動目的が限定されており、具体的には定款(会社の憲法のようなもの)があり、その決まりの中にある目的の範囲内でしか活動できません。
法人には様々な種類がありますが、会社組織によくあるのは株式会社や合同会社で、そのほかにも合資会社や合名会社があります。
また、一般社団法人やNPO法人のほか、医療法人や社会福祉法人、税理士法人、弁護士法人などもあります。
会社が破産するということは、会社の持っている負債について、会社の持っている資産で清算する手続きです。
破産するまで困っているということは、多くの場合会社の持っている負債の方が会社の資産よりも大きくなってしまっているでしょう。
これを債務超過と言います。
債務が増えると、いずれ支払えない時がやってきます。
個人の場合は、借金が増えすぎて支払える見込みがなくなってくると自己破産することがあります。
破産をすると、持っている資産を負債の返済にあて、もし負債が残ってしまっても、残った部分は返済が免除されます。
これを破産による免責と言います。
個人の場合は、自己破産すると借金を返さなくていいというイメージがある人も多いのではないでしょうか。
会社の場合は、破産はできますが、負債の免責はありません。
しかし、破産をすると会社が消滅し、法人格もなくなってしまうので、実際には返済をする主体がなくなることになります。
会社組織について注意したいのは、合名・合資会社の場合は無限責任社員という制度があり、会社の借金を社員(会社のお金を出した人のこと。株主のようなもの)が負うことになります。
詳しくは後半で解説します。
会社が破産した場合、借金の返済に追われなくて済むというメリットがあります。
借金の取り立てが毎日のようにきていると、会社経営者としても疲弊してしまいます。
借金を払えないばかりか、そのうちに給与も払えなかったり遅れるようになってしまうと、さらに危ない状況にあるといえます。
会社が破産した場合は、これ以上返済に追われることはありませんので、うまくいかなくなった事業を整理して、次にどうするかを考える余裕ができます。
また、会社が消滅することで、代表者個人が会社の連帯保証人になっている場合に、負債がなくなります。
債権者としては、貸したお金を回収できないことで困るのは確かですが、貸したのに連絡が取れず、貸し倒れとして処理もできないという状況になるよりは、貸した先が破産することで貸し倒れとして損金計上できる方が良いです。
また会社を潰しても、法的なペナルティは一切ありません。
新しく法人を立ち上げることもできるため、一度会社をゼロにして、再スタートできるというメリットもあります。
経営状態の悪い会社を立て直すよりも、新しい会社を立ち上げた方が成功する可能性もあります。
銀行からの融資が難しくなるとい経営的なデメリットがありますが、法律的にはなにも問題はありません。
会社が破産した場合のデメリットは、会社の資産がなくなるということです。
借金が帳消しになる代わりに、会社の名義で持っていた様々な資産を手放すことになってしまいます。
土地や不動産のほか、機械類などもなくなります。
さらに、会社そのものが消滅するので、会社が持っていた信頼やブランドがなくなります。
また、経営者はこれまで時間をかけて収益を上げていこうと頑張ってきたのに、会社が消滅してしまうわけですから、経営者の自信はボロボロになってしまうでしょう。
代替わりで会社を引き継いだ人の場合は、自分の代で会社を閉じてしまうということで、とても残念に思うのではないでしょうか。
会社の経営者は、会社とは全く別の存在なのですが、それは法律上の話です。
お客さんにとっては、特に一人で社長をしている会社の場合は、経営者個人のイメージが会社と重なり、「あの社長は、会社を潰したらしい。経営が下手なのではないか」など、心ないことを言う人もいます。
その会社にお金を貸していた人や、その会社のサービスを利用していた人からすれば、経営者個人に文句を言いたくもなるかもしれません。
このように、会社が破産すると借金が帳消しになる代わりに、会社の資産や信用がなくなり、経営者個人の評判が落ちたりすることもあります。
何よりも、経営者自身の自信がなくなってしまうことがデメリットです。
メリットの説明では、破産をすることで次のことについて考えることができると書きましたが、経営者が自信を酷く失ってしまうと、先のことについて考えることが難しくなります。
将来的なことを考えられなくなってしまったり、心の病気になってしまうこともあります。
会社が破産したら、経営者個人の債務や資産はどうなるのでしょうか。
結論から言えば、会社が破産しても、株式会社の場合は経営者個人の債務や資産については特に影響がありません。
また、株式会社の場合は、会社が負債を背負っても株主には特に影響がありません。
株主は、出資した部分にのみ責任を負いますので、万が一会社が破産したとしても株の価値がなくなってしまうだけです。
経営者(代表取締役)も、特別な事情がない限り会社の負債を返済する必要はありません。
それでは、特別な事情とはどのようなものでしょうか。
個人保証をしている場合は、特別な事情がある場合に経営に影響が出てしまうことがあり得ます。
例えば、会社組織の中でも、株式会社にしていてれば会社の所有と経営は別です。
しかし、合名会社の場合は、無限責任社員という制度があるので、会社が負った負債についても負担をします。
もしかすると会社と一緒に自己破産しなければいけなくなるかもしれません。
また、株式会社を経営している場合であったとしても、個人で会社の連帯保証人として会社をサポートしていたのであれば、メインの債務者が支払えないので連帯保証人に請求がいきます。
会社の破産手続きをしている最中でも、経営者個人の生活は別物なので、特に生活に制約はありません。
しかし、法律上の制限により就けない職種もあります。
例えば、弁護士、宅地建物取引士の登録、保険外交員の登録などはできません。
ただし、ずっとできないわけではなく、破産の手続きが終わってからであればできます。
資格を持っていても、登録がない状態をイメージしたらわかりやすいかもしれません。
これらの職種に就きたい場合は、破産手続きが終わってから登録をしてください。
宿泊を伴う旅行や出張も、裁判所の許可を得ない限り基本的にできなくなります。
手続きの途中でいなくなってしまうことを防ぐためです。
また、破産した情報は官報に掲載されますので、破産した会社に関わっていたということで、お金を借りてくださいという営業があるかもしれませんが、無視してください。
会社を破産させたからといって、何か罰則があるわけではなく、また別の会社を立ち上げることはできます。
将来的に、再び会社を経営してみたいと思った時に、会社経営者になることも可能です。
会社の破産手続きの流れとしては、以下のようになります。
会社の破産手続きの流れ
必要な費用は、申し立てに必要な印紙代が1,000円、官報広告予納金が13,000円から15,000円くらいです。
さらに、破産管財人への予納金が20万円ほどかかります。
予納金は、ケースによってまちまちですが、規模の大きい破産になると高額になる傾向があります。
破産にあたり、弁護士をつけることが多いですが、弁護士報酬は50万円程度です。
破産の規模が小さい少額管財事件扱いになれば、予納金も20万円、弁護士費用は50万円程度に収まるものの、一般管財事件になるとさらに費用が高額になります。
どちらの事件で扱うのかは裁判所が決めます。
会社だけではなく個人としても破産に追い込まれてしまった場合、それぞれ別に破産手続きをする必要があるので、費用もそれぞれでかかってしまいます。
弁護士事務所によっては、会社の破産と個人の破産をセットにして割引しているところもあります。
個人の破産では法テラスを使える場合がありますので、法人の破産と個人の破産の両方を考えていて、経済的に破産するのが難しい時は、弁護士に使える支援がないかどうか相談してみることをおすすめします。
「会社を潰した方がいいのか?」と悩んだら、早い段階で弁護士への相談がおすすめです。
早いタイミングであれば、負債額が少なくダメージがない状態で、破産手続きができるからです。
会社の状態・資金繰りが悪いのに、判断を下さずに悩んでいると、どんどん負債が増えて状態が悪化します。
弁護士に依頼すれば、負債の支払いをストップする「受任通知」の送付もできます。
さらに弁護士を介入させることで、すべての連絡・取り立てを弁護士宛に変更できます。
自分は会社のことに専念できるため、弁護士への依頼はおすすめです。
また会社の状態によっては、破産手続きを選ばずに、再生手続きを取れるかもしれません。
破産は完全に法人を消滅させることですが、法人を消滅させずに事業再建する方法もあります。
「どんな方法を選ぶか?」を弁護士に相談して的確なアドバイスをもらうことで、再生・破産の手続きがうまくいく可能性が高くなります。
「弁護士に依頼したいけど、支払うお金がない」というケースもあるでしょう。
弁護士費用は下記のような方法を使えば、抑えられます。
弁護士費用を抑える方法
弁護士費用は高額になるため、一括で支払うのはお金に余裕がないと難しいでしょう。
弁護士費用は分割での支払いも可能なので、正直にお金がないことを伝えて、分割支払いの相談をしてみてください。
弁護士側も事情をわかってくれ、分割対応してくれるケースがあります。
また上記でも紹介しましたが、法テラスの利用もおすすめです。
法テラスは誰でも利用できる法的支援サービスで、3回まで無料相談できます。
一定の基準を満たせば、完全無料で弁護士依頼できるケースもあります。
その他に「そもそも費用が安い事務所を選ぶ」という方法もあります。
弁護士への依頼費用は一律で決まっているわけではなく、事務所によって設定金額・報酬体系が違うため、なるべく安い事務所を探してみるのもおすすめです。
今回は、会社の破産について、どのようなメリットとデメリットがあるのかをご紹介しました。
会社の破産手続きには、お金が必要です。
もはやお金も全くないところまでいってしまうと、破産すらできなくなってしまい、冒頭で述べたような夜逃げをすることになってしまうかもしれません。
事業がうまくいかなくなることは、経営のリスクとして常にあります。
もう会社をたたもう、と思うのも重要な決心です。
もし会社を破産させようと思う場合は、早めに弁護士に相談してください。