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会社を潰す方法とは?流れや注意点を弁護士が解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 会社を潰す流れ
  • 会社を潰すメリット・デメリット
  • 会社を潰すことを先延ばしにするリスク

「会社を潰したい」と考えているなら、早い段階から破産手続きに精通した弁護士に相談し、破産・清算など、自分の会社に合った方法を選ぶことが重要です。会社を潰すとしても、単に解散登記をすれば終わるわけではなく、借金や未払いがある場合は債権者への対応も必要になります。

会社の資金繰りがうまくいっていないにもかかわらず、自己判断で付き合いの長い債権者にのみ返済したり、資金確保のために会社財産を処分したりすると、破産手続きで問題になる可能性があります。

会社を続けるのか、廃業・清算するのか、破産を申し立てるのかを早い段階で弁護士に相談し、自分の会社と経営者個人への影響を踏まえて方針を決めることが、適切に会社を終わらせるための有効な方法の一つです。

この記事では、会社を潰す具体的な流れやメリット・デメリット、先延ばしにするリスク、弁護士に相談するメリットについて、実務上の注意点を踏まえて解説します。

Contents

会社を潰すとは?

「会社を潰す」とは、一般的には事業をやめたり、会社を解散・清算したり、破産手続きを利用したりして、会社を終了させることを指します。法律上の正式な用語ではなく、実際には「廃業」「解散・清算」「破産」など、異なる意味をまとめて表現した言葉です。

「廃業」は事業をやめることを指す一般的な言葉です。

「解散」は会社を清算するための手続きに入ることをいい、解散後は清算人が会社の財産や債務を整理します。債務をすべて弁済して清算を完了できれば、会社は消滅します。

一方、「破産」は、会社の財産だけでは債務を返済できないなど、支払不能や債務超過の状態にある場合に、裁判所を通じて会社の財産を整理する手続きです。破産手続きが終了すると、会社は法人格を失い、原則として残った債務も法人とともに消滅します。

このように、「会社を潰す」といっても、事業をやめるだけなのか、会社を解散・清算するのか、破産手続きを利用するのかによって意味が異なります。法的な効果も異なるため、自分の会社がどの状態にあり、どの手続きを選択するのかを正確に把握することが大切です。

会社を潰す流れとは?

会社を潰す方法の一つに破産手続きがあります。債務をすべて返済できない会社が利用するケースがあるため、ここでは破産手続きを前提に流れを解説します。

破産手続きの主な流れは、以下のとおりです。

破産手続きを進める途中で、会社財産の処分や債権者への支払いについて判断を誤ると、破産管財人による否認権行使の対象となるなど、破産手続きに影響する可能性があります。会社の財産や債務、資金繰りの状況を正確に整理し、弁護士と確認しながら手続きを進めることが重要です。

なお、債務をすべて返済できる場合は、破産ではなく通常清算によって会社を終了させる方法があります。通常清算の流れについては、関連記事をご覧ください。

【重要】弁護士に相談し、破産手続きの方針を決める

破産手続きは、裁判所への申立てだけでなく、会社の財産・債務の整理や債権者への対応など、準備すべき事項が多岐にわたります。自分だけで対応すると、必要な手続きを漏らしたり、債権者への対応を誤ったりするおそれがあるため、早い段階で弁護士に相談することが重要です。

弁護士に依頼すると、各債権者に対して受任通知が送られます。貸金業者や債権回収会社については、受任通知を受け取ると債務者に対する直接の取立てが法律上禁止されます(貸金業法21条1項9号)。また、貸金業法が直接適用されない一般債権者(仕入先や外注先などの取引先、個人の債権者など)についても、弁護士が窓口となって対応するため、経営者が債権者からの連絡に直接対応する負担を軽減できます

また、弁護士は、会社の資産・負債・資金繰り・保証関係などを細部まで確認し、破産が適切かどうかを検討します。たとえば、債務をすべて返済できる見込みがある場合には通常清算、債務の返済が難しくても事業を継続できる可能性がある場合には民事再生や会社更生、債権者との交渉によって返済条件を調整できる場合には任意整理など、破産以外の方法を選択できる可能性もあります。債務超過の株式会社では、特別清算が選択肢となる場合もあります。

加えて、支払不能で破産を検討している段階では、特定の債権者への返済や会社財産の処分を自己判断で行わないことが重要です。たとえば、親族や付き合いの長い取引先などに優先して返済する偏頗弁済(へんぱべんさい)は、破産管財人による否認権行使の対象となる可能性があります(破産法162条)。法人破産に精通した弁護士であれば、現時点でやってはいけないこと、逆に現時点から準備しておくことを整理し、破産手続きがスムーズに進むようサポートしてくれます

なお、経営者が会社の借入れを保証している場合、会社が破産しても保証債務は原則として消滅しません。そのため、実務上は会社の破産申立てと同時に、代表者個人の自己破産や個人再生をセットで進めるケースも多いです。会社と経営者個人の双方への影響を確認しながら、破産後の生活まで見据えて方針を決めることが大切です。

破産手続きの申し立てに向けて準備する

破産手続きの申立てに向けて、会社の財産・負債や取引状況を整理し、裁判所への提出書類を準備します。申立て前の財産や資金の動きも破産管財人による調査対象となるため、自己判断で財産を処分したり、特定の債権者に返済したりせず、弁護士と確認しながら進めることが重要です。

まず、預金、売掛金、不動産、車両、在庫、コピー機や社用車などのリース物件を含め、会社の財産や契約関係を洗い出します。たとえば、預金口座は金融機関ごとの残高、売掛金は取引先・金額・回収予定日、不動産や車両は所在地・購入時期・ローンの有無などを整理します。リース契約についても、契約内容やリース料の支払状況などを確認しておきます。

同時に、金融機関からの借入れ、買掛金、未払金、税金・社会保険料などの債務を整理し、借入先や取引先などの債権者を一覧にします。誰に、いくらの債務があり、いつから支払いが滞っているのかを整理しておくことで、会社の資金繰りや債務状況を正確に把握できます。

そのうえで、決算書、総勘定元帳、預金通帳、契約書、請求書、領収書など、会社の財産や取引状況を確認できる資料を準備します。特に預金通帳は、会社のお金がどのように入出金されたのかを確認する重要な資料です。従業員がいる場合は、雇用契約書や給与台帳などを確認し、未払い賃金や退職金の有無、従業員への支払いについても整理します。

また、申立てまでの間も会社財産を適切に保全する必要があります。たとえば、会社名義の預金を個人口座へ移したり、会社の車両や在庫を知人・親族に無償で譲渡したりすることは避けなければなりません。申立て直前の資金移動や財産処分は、破産管財人から経緯や目的を詳しく確認される可能性があります。

破産手続きには裁判所への予納金や申立代理人の弁護士費用なども必要になるため、申立てに必要な費用をどのように確保するかについても、早い段階で弁護士と確認します。特に資金が限られている場合は、どの支払いを優先するかについても自己判断せず、弁護士に相談しながら進めることが大切です。

裁判所へ破産手続き開始の申し立てを行う

破産手続きの準備が整ったら、主たる営業所(通常は本店)の所在地を管轄する地方裁判所に破産手続開始の申立てを行います。管轄裁判所は、裁判所の「裁判所の管轄区域」から検索できます。

申立てでは、会社が支払不能もしくは債務超過の状態にあることを示すとともに、財産や負債の状況を裁判所に正確に伝える必要があります。そのため、申立書のほか、債権者一覧、財産目録、決算書、預金通帳、契約書など、会社の財務状況や取引関係を確認できる資料を提出します。裁判所はこれらの資料を確認し、破産手続開始の原因があるか、申立てに不備がないかなどを審査します。

また、申立ての際には、裁判所に納める予納金などの費用が必要です。予納金は破産管財人の報酬や手続きに必要な費用などに充てられるため、申立て前に必要な金額や準備方法を確認しておきます。

なお、法人破産の開始原因である「支払不能」および「債務超過」については、関連記事『法人破産の「支払不能」とは?判断基準や証明する方法を解説』で、法人破産でかかる費用については『会社倒産・法人破産はいくらかかる?手続き費用がない時の対処法を解説』でそれぞれ詳しく解説しています。

裁判所による債務者審尋を受ける

裁判所が必要と判断した場合、代表者などが裁判所から質問を受け、会社の財産・負債や破産に至った経緯について説明します。申立書や提出資料だけでは確認できない事情について、裁判所から直接確認される場面です。

たとえば、以下のような事項について確認されることがあります。

  • 資金繰りが悪化した時期や原因
  • 現在の預金、不動産、車両、在庫などの財産状況
  • 金融機関や取引先などへの支払い状況
  • 売掛金など、今後回収できる債権の有無
  • 直近に行った財産処分や資金移動の内容
  • 特定の債権者だけに返済していないか
  • 破産に至るまでの経営状況や事業の経緯

特に、申立て前に会社財産を売却したり、親族や特定の取引先に返済したりしている場合は、その時期や金額、理由などを確認される可能性があります。弁護士に依頼していれば、債務者審尋で想定される質問を事前にシミュレーションし、どのように説明すべきか確認したうえで当日を迎えられます

事実を隠したり、当日に曖昧な説明をしたりすると、その後の破産手続きに影響する可能性があるため、弁護士に正確な情報を伝えたうえで、質問に適切に回答できるよう準備しておくことが重要です。

破産手続きの開始決定・破産管財人の選任

裁判所が破産手続開始の原因があると判断すると、破産手続開始決定が出され、破産管財人が選任されます。個人の破産とは異なり、法人破産では、資産が乏しい場合であっても原則として管財事件として扱われ、破産管財人が選任されます。以降は、破産管財人が会社の財産や取引を調査・管理し、代表者が会社財産を自由に処分することはできなくなります。

破産管財人には通常、中立的な立場の弁護士が選任されます。破産管財人は、会社の財産・負債だけでなく、破産に至った経緯や申立て前の財産処分、資金移動なども調査し、換価できる財産があれば処分して債権者への配当などに充てます。

「破産手続きが始まると、代表者は会社に入れなくなるのでは」と心配するかもしれませんが、破産手続開始決定によって会社への立入り自体が一律に禁止されるわけではありません。ただし、会社財産の管理・処分権は破産管財人に移る(破産法78条1項)ため、代表者が独断で会社の財産を持ち出したり、売却したりすることはできません

破産手続きが開始されたあと、代表者が行う重要なことは、破産管財人の調査に協力することです。破産管財人から求められた資料を提出したり、会社の財産・取引・経営状況について説明したりするなど、破産法上の協力義務を負います。過去の資金移動や財産処分について詳細な説明を求められることもあるため、弁護士と事前に経緯を整理しておくことが重要です。

また、管財事件では、裁判所の嘱託により会社宛ての郵便物が破産管財人に配達されることがあります(破産法81条1項)。破産管財人は郵便物の内容を確認し、会社の財産や取引状況などを調査します。そのため、手続き中は会社宛ての郵便物についても一定の制約が生じます。

このように、破産手続きが開始されたあとは、代表者が会社を自由に管理・運営するのではなく、破産管財人の調査や財産処分に協力することが中心となります。破産管財人からの質問や資料提出の求めには、事実を隠さず、正確に対応することが重要です。

債権者集会が開かれる

破産手続きでは、裁判所で債権者集会が開かれ、破産管財人からこれまでの調査結果(会社の財産状況や破産に至った経緯、財産の換価状況など)が報告されます。一般の債権者が毎回多数出席するわけではなく、実務上は数名程度、あるいは債権者が誰も出席しないことも珍しくありません。

債権者集会では、破産管財人の報告に対して、出席した債権者から「財産がどのように換価されているか」「今後どの程度の配当が見込まれるのか」といった質問や意見が出されることがあります。財産の調査や換価、否認権の行使などに時間がかかる複雑な事案では、1回だけで終わらず、数カ月おきに複数回(中間報告型など)開催されることもあります。

会社の代表者には原則として出席義務があるため、当日は弁護士とともに裁判所に出頭します。会社が破産した場合、代表者は破産に関して必要な説明をする義務を負うため(破産法40条1項3号)、正当な理由なく欠席すると手続きの進行に影響するおそれがあります。特に、破産に至った経緯や申立て前の財産処分、資金移動などについて直接質問される可能性があるため、事実関係をしっかりと整理したうえで、想定される質問への回答を事前に弁護士と綿密に準備しておくことが大切です。

破産管財人による財産換価・債権者への配当が行われる

破産管財人は会社の全財産を調査・管理し、必要に応じて売却・換価して債権者への配当原資を確保します。代表者が会社財産を自由に処分することはできず、財産の換価処分はすべて破産管財人が行います。

対象となるのは、不動産、車両、在庫、預金、売掛金などです。たとえば、会社名義の土地や建物があれば売却して現金化し、営業車や社用車などの車両も市場価格などを踏まえて処分します。在庫についても、販売可能な商品は通常の販売や一括売却などによって換価します。また、取引先に対する売掛金が残っている場合は、破産管財人が取引先から回収します。会社の預金についても、残高を確認したうえで破産財団に組み入れます。加えて、会社が役員にお金を貸し付けている場合には、役員貸付金も原則として会社財産として回収対象となります。回収・換価された財産は、法律上の優先順位に従って各債権者へ配当(分配)されます。

コピー機や社用車などのリース資産については、会社が所有権を持っていないため、原則として破産財団として換価する対象にはなりません。これらは契約内容や未払リース料の有無を確認したうえで、破産管財人の指示に従ってリース会社へ速やかに返還するなどの対応を進めます。

一方で、法人の破産では、会社の財産が少なく、破産手続費用を支払うと債権者への配当に充てる原資が一切残らないケースも多く見られます。その場合、配当を行わずに手続きが終了することもあります。

破産手続きが終結し、会社が消滅する

破産管財人による財産の調査・換価や債権者への配当など、必要な一連の手続きがすべて完了すると、裁判所により破産手続きの終結が決定され、最終的に会社は消滅します。個人の自己破産における「免責許可」とは異なり、法人破産では手続きの終了と同時に法人そのものが法的に完全になくなるため、同一の法人格で事業を継続することは不可能となります。

会社が消滅すると、会社が負っていた借入金、買掛金、リース料などのすべての債務も、原則として法人とともに消滅します。ただし、代表者が会社の借入れや賃貸借契約などについて連帯保証人になっている場合、会社の消滅によってその保証債務まで自動的に消滅するわけではありません。 会社破産後、金融機関や保証会社などから代表者個人に対して残債の一括請求がなされることが一般的です。

そのため、会社の破産手続きと並行して、代表者個人の債務についても自己破産や個人再生などの法的整理をどのように進めるか、事前に弁護士と綿密な対策を立てておく必要があります。

会社を潰すメリットはどこにある?

会社を潰す大きなメリットは、破産手続きを利用することで、会社を法的に終了させ、残った債務も原則として法人とともに消滅させられることです。事業を継続しても収益の改善が見込めず、債務の返済が難しい場合には、会社を整理することで将来的な損失や経営者の負担を抑えられる可能性があります。

ここでは、会社を潰すことで得られる主なメリットについて解説します。

会社の債務を整理し、さらなる損失を防げる

法人破産を利用することで、会社が抱えている借入金や買掛金、未払金などを法的な手続きによって整理できます。会社を存続させるために返済を続ける必要がなくなり、資金繰りの悪化によって負債が膨らみ続ける状況から抜け出せる点がメリットです。

「最終的には破産すれば債務がなくなるから、赤字を出し続けても問題ない」と考えるのは危険です。破産を先延ばしにすると負債が増えるだけでなく、特定の債権者への偏頗弁済や不当な財産処分など、破産手続き上問題となる行為をしてしまう可能性があります。破産手続きがスムーズに進まなくなるだけでなく、取引先との関係が悪化し、破産後に事業を再開する場合に支障となる可能性もあるでしょう。

また、毎月の借入返済や仕入代金の支払いが難しい状態で事業を続けると、金融機関からの追加借入れや買掛金の増加によって、負債がさらに膨らむ可能性があります。従業員の給与や税金、社会保険料などの支払いも重なれば会社の財産が減少し、最終的に破産手続きに必要な費用を確保できなくなるおそれもあります。

今後も事業を続けても収益の改善が見込めず、債務の返済が難しい状況であれば、早い段階で破産を含めた対応を検討することが重要です。早期に弁護士へ相談することで、会社の財産や債務の状況を整理したうえで、破産手続きを申し立てるべき時期や、申立てまでに避けるべき行為についてもアドバイスを受けられます。

会社の維持にかかるコストや経営上の負担をなくせる

会社を潰すことで、事務所・店舗の賃料や人件費、税理士費用など、事業を続けるために発生していた継続的な支出をなくせます。また、資金繰りや取引先への支払い、金融機関との返済交渉などに追われる状態から離れられる点もメリットです。

会社を経営する以上、売上が伸びなくても家賃や人件費などの固定費は発生し続けます。赤字を補うために経営者が個人資金を投入したり、新たな借入れをしたりすれば、会社だけでなく経営者個人の負担まで大きくなる可能性があります。

法人破産を行うことで会社を無理に維持する必要がなくなり、事業を続けるために発生していた継続的なコストがなくなります。その結果、会社の維持や資金繰りに追われる状態から離れ、今後の生活や新たな事業に向けた準備に時間や資金を振り向けやすくなります。また、資金繰りの管理や取引先への支払い、金融機関との返済交渉など、会社を維持するために経営者が負っていた負担もなくなります。

ただし、会社を潰せばすべての費用や負担が直ちになくなるわけではありません。破産手続きには弁護士費用や裁判所に納める予納金などが必要になるほか、事務所や店舗の明渡し、従業員への対応なども必要です。自分の会社を終了させることでどの程度の負担を減らせるのか、どのような対応が必要になるのかを事前に弁護士へ確認しておくことが重要です。

経営者が新たなスタートを切りやすくなる

会社を清算・破産することで、採算の取れない事業から離れ、新たな仕事や事業に集中しやすくなります。法人が破産したからといって、経営者自身がその後一切事業をできなくなるわけではありません。

たとえば、現在の事業では今後の収益改善が見込めなくても、これまで培ってきた経験や取引先との関係を生かして、別の事業を始めることは可能です。会社を終了することで、赤字を補うために資金を投入し続ける負担から離れ、新たな生活や事業に向けて準備しやすくなる場合があります。

ただし、法人破産と同時に経営者個人も自己破産する場合は、個人の財産や信用情報などに影響が生じることに注意が必要です。自己破産によって信用情報に事故情報が登録されると、一定期間は金融機関から融資を受けたり、クレジットカードを作ったりすることが難しくなります。また、新たに事業を始める場合も、過去の破産について取引先などから確認を受け、取引条件の設定や新規取引の開始に影響する可能性があります。

法人破産は経営者の新たなスタートを妨げるものではありませんが、代表者個人の自己破産を伴う場合などには一定の制約が生じるため、将来の事業再開も見据えて慎重に判断することが重要です。

なお、破産手続き中に会社の財産を新たに設立した会社へ不当に移すなどの行為は問題となる可能性があります。将来的に新たな事業を始めたい場合は、破産手続きとの関係や財産の扱いについて、あらかじめ弁護士に相談しておきましょう。

会社を潰すことにデメリットはある?

会社を潰すことで、債務や経営上の負担を整理できる一方、会社の財産を失ったり、経営者個人にも影響が及んだりする場合があります。

ここでは、会社を潰す前に確認しておきたい主なデメリットを解説します。

会社名義の資産を失う

法人破産をすると、会社名義の財産は破産管財人によって調査・管理され、換価できる財産は原則として処分対象になります。換価した財産は、破産手続きに必要な費用や債権者への配当に充てられるため、会社名義の資産を残したまま事業を続けることはできません。

たとえば、会社の預金、不動産、社用車、設備、在庫、売掛金などが換価の対象となります。店舗や工場などを所有している場合も、その不動産を会社に残したまま破産手続きを終えることは原則としてできません。

一方、会社の財産と経営者個人の財産は原則として別のものとして扱われます。法人破産をしたからといって、経営者個人が所有する自宅や預金などが当然に破産手続きの対象になるわけではありません。ただし、経営者個人も自己破産する場合や、会社の債務を個人保証している場合などは、個人の財産にも影響する可能性があります。

また、会社名義の財産を「新しく作る会社に移して残したい」と考える場合も注意が必要です。破産直前に会社の財産を無償で譲渡したり、著しく安い価格で売却したりすると、破産管財人による否認権行使の対象となる可能性があります(破産法160条、161条)。資産を残したい事情がある場合も、自己判断で処分せず、弁護士に対応策を確認したうえで行動することが大切です。

経営者個人の信用に影響する可能性がある

会社が破産しただけで、経営者個人の信用情報に事故情報が登録されるわけではありません。会社と経営者個人は別人格のため、会社が破産したという事実だけで経営者個人の信用情報に影響することはありません。

ただし、経営者が会社の借入れやリース契約等を個人保証している場合は話が別です。会社の破産後に金融機関から保証債務の一括請求を受け、それを一括返済できずに滞納状態となったり、保証債務の履行のために経営者個人も自己破産や個人再生などを行ったりした場合には、個人の信用情報にいわゆる「事故情報」が登録されます

その結果、一定期間(おおむね5〜7年程度)は、個人名義での新たなローン借入れやクレジットカードの新規作成・利用などに制限が生じる可能性があります。起算点は登録される信用情報機関によっても異なりますが、たとえば「一般社団法人 全国銀行協会」の場合、「官報に公告された破産・民事再生手続開始決定」については「当該決定日から7年を超えない期間」が登録期間と定められています。
参照:センターの概要|全国銀行個人信用情報センター(一般社団法人 全国銀行協会)

自分が会社の債務を保証しているかどうか、そして会社だけでなく個人としても債務整理を行う必要があるかどうかによって影響は大きく変わるため、会社を清算する前に、経営者個人の家計や資産・負債への影響までセットで確認しておくことが重要です。

破産手続き中は日常生活に一定の制限がかかる

破産手続きが始まると、会社の財産の管理処分権は破産管財人に専属します(破産法78条1項)。経営者個人が自己破産しなくても、代表者には破産手続きに関する説明や調査への協力が求められるため、一定の行動制限を受ける場合があります。

会社が破産した場合に代表者へ及ぶ主な制約は、以下のとおりです。

  • 引越しや宿泊を伴う旅行・出張をする際に、裁判所の許可が必要となる(破産法37条1項。会社の代表者には同法39条により準用されます)

さらに、代表者個人も自己破産する場合には、以下の制約が加わります。

  • 代表者個人宛ての郵便物が破産管財人に配達され、内容を確認されることがある(破産法81条1項)
  • 弁護士や公認会計士など、一定の資格・職業に就くことが制限される(弁護士法7条5号、公認会計士法4条4号など)
  • 破産手続き中は、弁護士や公認会計士など一定の資格・職業に就くことが制限される(破産法ではなく各資格法(弁護士法7条5号、公認会計士法4条4号など))

会社の破産と同時に経営者個人も自己破産する場合は、経営者自身が破産者となるため、個人の破産手続きとの関係でも一定の制約を受けます。引越しや旅行・出張などの予定がある場合は、自己判断で行動せず、事前に弁護士へ確認しておきましょう。

連帯保証人になっている場合は経営者も借金を負う

会社が破産しても、経営者が連帯保証人となっている借入れまで消滅するわけではありません。

中小企業では、金融機関から融資を受ける際に、経営者が連帯保証人になるケースが少なくありません。会社の返済義務とは別に、連帯保証人である経営者個人が返済義務を負うため、金融機関などから個人として返済を求められる可能性があります。

金融機関からの借入れだけでなく、事業用不動産の賃貸借契約やリース契約などについて、経営者が個人保証をしているケースにも注意が必要です。会社が契約を解除した際に未払いの賃料やリース料などが残っていれば、保証契約の内容によっては経営者個人が支払いを求められることがあります。

返済が難しい場合には、会社の破産手続きと併せて、経営者個人の任意整理や自己破産などの債務整理を検討する必要があります。法人破産を検討するときは、会社の借入額だけを見るのではなく、自分がどの債務の保証人になっているのか、会社が破産した場合に個人としてどの程度の負担が残るのかまで確認することが重要です。

特に、会社と経営者個人の双方が破産する場合には、申立ての時期や財産の扱いなどを含めて慎重に手続きを進める必要があります。早い段階で弁護士に相談し、法人と個人を一体として今後の対応を検討することが重要です。

会社を潰すことを先延ばしにするリスクとは?

会社の赤字や資金繰りの悪化が続いている場合、事業を続けるほど負債や損失が膨らみ、最終的に破産手続きの選択肢を狭めてしまう可能性があります。また、支払不能となったあとも返済を続けると、その弁済がのちの破産手続きで否認され、相手方から返還を求められる可能性があります。

借入金や買掛金、税金・社会保険料などの支払いが積み重なれば、会社の財産が減少し、破産手続きに必要な費用を確保することも難しくなります。従業員への未払い賃金や取引先への未払いが増えれば、関係者への影響も大きくなります。

さらに、会社が支払不能となったあとに行った弁済は、一定の要件を満たすと破産管財人による否認の対象となる可能性があります(破産法162条1項1号)。否認の対象となった場合、弁済を受けた債権者は、受け取った金銭などを破産財団に返還しなければならないことがあります。そのため、会社を潰すことを先延ばしにして支払いを続けることが、かえって破産手続きを複雑にする場合があります。実際、代表者や親族、付き合いの長い取引先など、特定の債権者だけを優先して返済したことで、偏頗弁済を疑われるケースがあります。

また、債権者を害する目的で会社の財産を隠したり、帳簿に記載しないなどして財産の存在を分からなくしたりした場合、破産手続開始の決定が確定することで詐欺破産罪が成立し、刑事罰を受ける可能性もあります(破産法265条1項1号、同項3号)。

加えて、返済する資力や意思がないにもかかわらず、その事実を隠して借金の返済資金を得るために借入れを行った場合には、別途、刑法上の詐欺罪が成立する可能性もあります(刑法246条)。そのため、会社の資金繰りが厳しくなった場合には、問題を先延ばしにせず、速やかに今後の対応を検討することが重要です。

もっとも、会社の状況によっては、事業を継続したほうがよいケースもあります。「赤字だからすぐに会社を潰す」のではなく、資産・負債や今後の収益見込みなどを踏まえ、事業継続、廃業・清算、破産のどの方法が適切なのかを早い段階で弁護士に相談することが重要です。

会社を潰すことを考えたときに弁護士に相談するメリットとは?

弁護士に相談すれば、会社の資産・負債や資金繰りなどを確認し、破産や通常清算などの手続きから、会社の状況に合った方法を検討できます。また、事業を継続しながら債務整理を目指せる可能性がある場合には、その選択肢も含めて今後の方針を検討できます。

ここでは、会社を潰すことを考えたときに弁護士に相談するメリットを紹介します。

会社の状況に合った倒産・清算方法を判断できる

「会社を潰す=法人破産」とは限りません。実務上は、会社の資産や負債の総額だけでなく、具体的な資金繰りの残余期間、担保・保証人の状況、さらには在庫やリース物件の処分可能性まで見据えて、最も損害の少ない手続きを選択することが、経営者であるあなたの今後のことを考えると重要になります。

弁護士に早い段階で相談すれば、会社の試算表や総勘定元帳、預金通帳、主要な売掛金・買掛金の期日一覧などを精査したうえで、法的整理と私的整理を含めた多様な選択肢の中から、会社に最も適した方法を検討できます。たとえば、資産の換価処分によって債務を全額完済できる見込みがあるならば、通常清算を選択することで風評被害を防ぎつつ円満な終了を図ることが可能です。

また、事業自体に収益性や継続の価値が残されており、過剰債務のカットさえできれば立て直しが可能な状況であれば、「民事再生法」や中小企業活性化協議会等を利用した「事業再生スキーム」などを活用し、会社や雇用を存続させる道を探ることも選択肢となります。

このように、手元の現金が完全に枯渇する前の段階で会社の財務状態を正確に把握し、担保権の実行リスクや代表者の個人保証・経営者保証の扱いといった法的・財務的背景を踏まえて適切な方法を選択できることは、法的整理のコストや経営者個人のダメージを最小限に抑えるうえで、弁護士に相談する大きなメリットといえるでしょう。

破産手続きで問題となる行為を防ぎやすくなる

破産申立ての前は、資金繰りの極限状態から経営者がさまざまな判断を迫られますが、事前の法的知識がない状態での自己判断による資金移動や偏った返済は、のちに破産管財人との間で重大なトラブルに発展するリスクがあります。

たとえば、支払い不能となったあとに「お世話になった取引先や仕入先だけに先に支払いを済ませる」「身内や経営者個人からの借入れ(役員借入金)を優先して返済する」「手元の在庫や社有車、機械設備を急ぎで売却して現金化し、当面の運転資金に充てる」といった行為は、実務上、偏頗弁済や財産隠匿、あるいは不当な財産処分とみなされる可能性があります。こうした行為に対して破産管財人が否認権を行使すると、財産や弁済として受け取った金銭を返還するよう求められることがあります。

また、予期せぬ財産の流出や不自然な入出金履歴が存在すると、管財人による調査期間が長期化し、債権者集会での説明責任や追加の報告義務が増えるため、経営者であるあなたの精神的・時間的な負担も大きくなってしまうでしょう。

こうした実務上のリスクを未然に防ぐためにも、資金繰りが悪化した段階で弁護士に相談し、「どの支払いを行うべきか」「手元の現金をどのように管理すべきか」について具体的な助言を受けることが重要です。申立て前の段階から適切に対応し、破産手続き上問題となる行為を避けることで、手続きを円滑に進めやすくなります。

経営者個人の責任や財産への影響についても相談できる

法人破産を検討する際は、会社を閉じることだけでなく、経営者個人の生活や財産にどのような影響が生じるのか、今後の再起に向けてどのような対応が必要なのかも確認することが重要です。特に中小企業では、金融機関からの借入れやオフィスの賃貸借契約、リース契約などについて、経営者個人が連帯保証人となっているケースがあります。会社が破産した場合、保証契約の内容によっては、経営者個人が保証債務の返済を求められることがあります。

弁護士に早い段階で相談すれば、会社と経営者個人の資産・負債の状況を確認し、法人破産によって経営者個人にどのような影響が生じるのかを検討できます。たとえば、持ち家や土地などの不動産、預貯金、自動車、解約返戻金のある生命保険などについて、自己破産した場合に換価処分の対象となる可能性がある財産や、手元に残せる財産の範囲を確認できます。

また、会社の借入れについて経営者が保証しており、個人での返済が難しい場合には、法人破産と併せて経営者個人についても自己破産を申し立てる方法があります。一定の要件を満たす場合には、「経営者保証ガイドライン」を活用し、個人破産を回避しながら保証債務を整理できる可能性もあります。会社と経営者個人の状況を一体的に確認することで、それぞれの事情に応じた対応を検討できます。

経営者個人についても、破産後の生活費や住居の確保などを含め、今後の生活への影響を考えておく必要があります。弁護士に相談することで、会社単体の法的整理だけでなく、経営者個人の財産や生活への影響、さらに将来の事業再開まで見据えて、法人と個人の双方について今後の対応を検討できます

会社を潰すことに関してよくある質問(Q&A)

会社を潰すと経営者もブラックリストに載りますか?

会社を潰しただけで、経営者個人としてブラックリストに載ることはありません。

ただし、経営者が会社の借入れについて連帯保証人になっている場合は注意が必要です。会社が返済できなくなり、経営者個人も保証債務の返済を滞納すると、その情報が個人の信用情報に登録される可能性があります。

また、法人破産と同時に経営者個人も自己破産や任意整理などの債務整理を行った場合は、個人の信用情報に事故情報が登録されます。その場合、一定期間、金融機関からの借入れやクレジットカードの利用などに影響が生じる可能性があります。

会社を潰すと経営者個人の財産をすべて失うことになりますか?

会社と経営者個人は法律上別の人格であるため、原則として会社の破産により経営者個人が財産を失うことはありません。

ただし、経営者が会社の借入れについて連帯保証人になっている場合は、会社の破産後も経営者個人に返済義務が残る可能性があります。その場合、経営者個人の預貯金や不動産などの財産から返済する必要が生じます。

また、経営者個人も自己破産する場合は、個人の財産も破産手続きの対象となります。自宅や預貯金などについても、財産の種類や金額によって処分・換価の対象となる可能性があるため、事前に影響を十分に確認しておく必要があります。

さらに、会社の預金口座と経営者個人の口座を分けていない、会社の経費と個人的な支出を混在させているなど、法人と個人の財産を明確に区別していない場合は注意が必要です。このような状態では、実際には経営者個人の財産であっても会社の財産とみなされ、換価処分の対象となるおそれがあります。

そのため、会社の破産を検討する際は、会社と経営者個人の財産・債務・保証関係を整理し、個人の財産にどのような影響が生じるのかを弁護士に確認することが重要です。

会社を潰せばすぐに事業を再開できますか?

会社が破産手続きを行ったあとでも、経営者個人が新たに会社を設立して、事業を再開することも原則として可能です。会社法にも、取締役の欠格事由として「破産手続開始の決定を受けたこと」は列挙されていません(会社法331条1項)。

一方、取締役と会社との関係は委任関係にあるため、取締役が破産手続開始の決定を受けると委任が終了し、いったん取締役を退任することになります(民法653条2号)。もっとも、破産手続きの終了後などに再任されることや、新たに設立した会社の取締役に就任すること自体は禁止されていません。

ただし、破産手続き中に会社の財産を新会社へ不当に移すなどの行為は問題になる可能性があります。また、経営者個人の信用状況によっては、金融機関から融資を受けにくくなるなど、事業再開時の資金調達に影響が生じることもあります。

そのため、事業を再開する場合は、破産手続きとの関係や会社財産の扱い、役員就任への影響などを確認し、弁護士に相談したうえで新たな事業計画を進めることが重要です。

まとめ 会社を潰すことを考えているなら早めに弁護士に相談を

会社を潰す方法には、廃業、解散・清算、破産などがあり、会社の資産・負債や資金繰りの状況によって適切な方法は異なります。特に、債務の返済が難しい場合は、法人破産を含めて早い段階から今後の方針を検討することが重要です。

資金繰りが厳しいからといって、特定の債権者への返済や会社財産の処分を自己判断で行うと、破産手続きで問題になる可能性があります。負債が増えたり、会社の財産が減少したりすれば、経営者個人であるあなた自身への影響も大きくなるでしょう。

弁護士であれば、会社の状況に合った倒産・清算方法を検討し、破産手続きで問題となる行為を防ぎながら、経営者個人の財産や生活への影響も含めて今後の方針を立てられます。会社を潰すことを考え始めた段階で早めに相談し、会社と経営者個人の双方にとって適切な方法を検討しましょう。

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