東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
会社を新たに設立する人がいる一方で、会社を解散・清算する人も多くいます。
会社を解散・清算する際には、その会社が保有している建物をすべて手放す必要があります。
建物の名義変更を行うには、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
また、建物を持ったまま解散・清算に入った場合、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
Contents
会社を解散・清算する際には、会社が保有するすべての資産をお金に換えて借入金や債務の返済にあてられます。
それでも余った現預金は、その持株数に応じて株主に配分されることとなります。
会社が保有している資産には、不動産の他にも有価証券、機械や備品など様々なものがあります。
これらの資産については、比較的簡単に売却することができます。
上場会社の有価証券であればすぐに売却することができますし、機械なども買取業者に依頼することができます。
また、買い取ってもらうことが難しい機械や備品などは、廃棄処分することもあります。
しかし、不動産については廃棄処分をするというわけにはいきません。
特に土地の場合は、その土地を消滅させることはできないため、誰かに売却する以外の方法はありません。
一方、建物についてはいくつかの方法が考えられます。
特に、借地の上に建てられた建物の場合は、取り壊して更地にしなければならない場合もあるので注意が必要です。
解散・清算しようとする会社が、保有する建物を手放さなければならない場合、名義変更するのが最も望ましいといえます。
建物の取り壊しのための費用がかからないことや、現金収入を得ることができるためです。
そこで、建物を名義変更する方法や、そのために必要な書類について解説していきます。
会社が保有する建物の名義変更をするということは、その建物をそのままの形で売却するということです。
会社が建物を保有したままの状態では、最終的に会社を清算することができません。
そのため、建物を売却して名義変更を行う必要があるのです。
建物を売却する相手が見つかり、売買契約を結んだとしてもそれだけでは名義変更は終わっていません。
法務局で建物の名義変更を行うことで、初めて建物の名義変更が完了するのです。
建物の名義変更を行う際には、法務局にいくつかの書類を提出しなければなりません。
解散・清算しようとする会社は、建物の売り主となりますので、次のような書類を準備しなければなりません。
また、買主との契約を行う段階では、実印が必要となる他、収入印紙も準備しなければなりません。
それでは、実際に会社を解散・清算する際には、どのような流れで建物を売却することとなるのでしょうか。
会社の解散から建物を売却して、清算するまでの流れを確認しておきましょう。
会社を解散することを決定したら、解散を株主総会で決議します。
会社の解散は重要な決定事項であるため、株主総会では特別決議によることとされます。
解散を決議したら、その日から2週間以内に法務局で登記を行わなければなりません。
また、会社が解散すると、それまでの取締役は自動的にその役職を失うこととなります。
その代わりに清算事務を執り行う清算人を選任しなければなりません。
そのため、会社の解散決議を行った株主総会で、清算人の選任決議も同時に行っておく必要があります。
なお、選任された清算人についても、法務局で登記しておかなければなりません。
解散決議をした会社は、事業活動を行うことはなく、清算を行うこととなります。
清算とは、会社が保有するすべての資産を売却・処分して、会社名義ではないものとすることです。
また同時に、会社が保有する債務を返済し、会社の債権者に対する支払いをすべて終えなくてはなりません。
まずは、保有している資産を売却します。
建物や土地などの不動産については、売却することで多額の現金収入を得ることができます。
ただ、不動産の買い手を見つけるのが難しい場合もあり、思ったような金額で売却できないことも想定しておく必要があります。
一刻も早く清算したいのであれば、ある程度低い金額でも売却しなければなりません。
建物や土地を売却した場合には、売却後に法務局で所有者の変更登記を行う必要があります。
登記を行わずに放置していると清算の手続きが完了しないため、必ず登記を行うようにしましょう。
なお、売却した資産の売却代金や手数料などの金額を集計し、売却損益の計算を行います。
発生した売却損益は、残余財産確定時の法人税の計算に含める金額となります。
会社が売掛金や未収入金などの債権を保有している場合、その金額を債務者から回収することができます。
まだ未回収となっている金額がある場合には、相手先に請求して支払ってもらう必要があります。
また、買掛金や未払金など、相手先に支払いが完了していない金額がある場合には、その相手先に支払う必要があります。
もし、支払いをせずに放置していても、相手から支払いの請求を受けることとなります。
そのため、確実に支払いを済ませてしまうようにしましょう。
保有する資産や債務をすべて整理すると、最後には現金だけが残ることとなります。
この現金は、会社が消滅する前に株主に配分してしまうものです。
そこで、残余財産がいくらになるかを計算したら、1株あたりの金額を計算します。
その後、すべての株主に1株あたりの残余財産の金額をもとに計算した金額の分配を行います。
残余財産の分配を行えば、会社の清算事務が終結し、清算結了登記を経て会社は消滅します。
会社の解散・清算を行う際に、保有している資産はすべて売却するか処分するかをしなければなりません。
もし、会社の解散を行うまで時間がある場合には、いつ建物を売却するか選択することができます。
どのように考えて、建物の売却時期を決定するといいのでしょうか。
建物の帳簿価額より売却価格の方が高い場合、建物を売却すると売却益が発生することとなります。
この売却益が発生すると法人税の負担が増えることとなりますが、売却時期によってはその負担を軽減することができます。
建物売却益以外に会社の利益が発生せず、逆に赤字になった場合、その赤字と建物売却益を相殺して法人税の負担を軽減できます。
そのため、赤字になりそうな事業年度に建物を売却して、税負担を軽減することを考えておきましょう。
たとえば、清算を行う事業年度であれば売上は発生しませんから、大きな利益は生じないと考えられます。
そのため、解散後に建物を売却することでその税負担を軽減することが可能となるのです。
建物を売却して売却損が発生する場合は、その損失をうまく利用して法人税の負担を減らすようにしましょう。
毎期のように利益が出ている会社であれば、解散を行う前に建物を売却してから清算を行うのも、1つの考え方です。
一方、慢性的に赤字を計上している会社の場合は、建物の売却損をいつ計上しても大差はありません。
ただ、赤字を計上することで資金繰りに苦労している会社の場合は、できるだけ早く解散・清算を行う方がいいでしょう。
もし、債務を全額支払うことができなければ、解散・清算ではなく破産手続きとなってしまうためです。
破産手続きはすべて裁判所で行われ、弁護士に依頼して進めることとなるため、金銭的にも時間的にも負担が増えるのです。
建物をいくらで売却できるかまったく見当がつかない場合は、できるだけ早めに建物売却に取りかかりましょう。
建物を売却しようにも、その買い手が見つからなければ売却はできませんし、金額的に折り合わないことも考えられます。
建物を売却できなければ、会社を清算することはできません。
建物が売れるのを待って清算を行うということにならないよう、余裕をもって売却できるような準備をすべきです。
建物を所有している会社が解散・清算を行う際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
解散・清算を行うためには、通常の売却などとは異なる注意点もありますので、確認しておきましょう。
残余財産を確定する際に忘れてはいけないのは、固定資産税の負担をしなければならないことです。
固定資産税の納税義務者はその年の1月1日時点の所有者とされており、仮に途中で建物を売却しても変わりません。
そのため、1年分の固定資産税は未払金などとして債務の額に含めておく必要があります。
なお、実務上は年の途中で売却した場合は、建物の売却代金に固定資産税を月割した金額を含めて買主から受け取ることとなります。
ただ、いったんは建物所在地の市町村に固定資産税を納付しなければならないのです。
建物は、その使用者の状況にあわせて建てられて利用されるものです。
また、建物が建っている場所を移動することはできません。
そのため、建物を売却しようとしても、簡単には売却できない場合も少なくありません。
そのような場合には、建物を売却することにこだわらず、取り壊さなければならない場合もあります。
取り壊しにはかなりの費用がかかるため、残余財産の計算を行う際には注意が必要です。
会社の解散・清算を行う際には、会社が保有する財産をすべて現金に換える必要があります。
現金化した財産は、債務の支払いにあてられた上で、残りを株主に分配されることとなります。
建物を保有している場合、その建物を売却するか取り壊すかをして、会社名義でない状態にしなければ解散・清算ができません。
解散・清算を行う際には、余裕をもって建物を売却あるいは取り壊しできるように準備しておくようにしましょう。