東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
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特別清算とは、債務超過になってしまった会社を清算する方法の一つです。
破産と同じく裁判所を通じた清算手続きですが、より簡易迅速な手続きで清算を進められます。
ただし、特別清算には債権者の同意を得なければなりません。
また会社の形態が株式会社であり、すでに解散している会社のみ利用できます。
債務超過の会社が清算を行う場合には、「破産」もしくは「特別清算」の2つの方法があります。
このうち特別清算は、協定型と和解型の2種類です。
それぞれの特徴や違いについて確認しておきましょう。
会社が特別清算を行うには、まず最初に株主総会を開催しなければなりません。
特別清算は、次の流れで行います。
特別清算をする会社は、株主総会で特別清算を決議するとともに、清算人を選任します。
清算人は、会社の財産や債権の調査、目録の作成、協定の策定、債権者集会の招集などを行う人物です。
一般的には法律実務に詳しい弁護士が選任されます。
特別清算は裁判所を通じた手続きとなるため、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に申立てをします。
申立てには、株主総会議事録、財産目録、登記事項証明書、債権者の同意書などの書類を準備する必要があります。
申立て後、特別清算開始の要件を満たしていると判断された場合、裁判所は特別清算開始決定をします。
特別清算の開始決定後、債権者から債権を届け出てもらうための催告や、債権者集会の開催、財産の換金や債権者への分配などが行われます。
債権者への弁済など清算処理がすべて終われば、特別清算の手続きは完了です。
裁判所は、会社からの特別清算終結の申立てを受けた後、特別清算終結決定をします。
特別清算の終結決定後、会社の権利義務はすべて消滅し、法人格もなくなります。
なお、裁判所から不認可の決定がされた場合や債権者からの同意が得られなかった場合などは破産手続きへ移行します。
特別清算の手続きは、債権者からの同意を得る方法により「協定型」と「個別和解型」に分かれます。
どちらかの方法により、債権者からの同意を得なければなりません。
それぞれの特徴について確認していきましょう。
協定型の特別清算は、債権者と協定を結んで債務の免除を受け、会社の清算を行う方法です。
協定が成立するためには、債権者集会に出席した債権者の過半数の同意と、債権者の議決権総額の3分の2以上(債権額1円につき1議決権)の同意が必要です。
債権者と協定を結び一部の債務の免除を受け、会社の財産を換価して得た現金で残りの債務を弁済して会社の清算を行います。
協定の内容は、清算を行う会社と債権者との間で同意を得られれば、どのような内容でも問題ありません。
そのため、取引先に迷惑をかけないようにしたい会社の意向を反映した内容にも可能です。
和解型の特別清算は、裁判所の許可を得て、債権者と個別に和解を締結して清算する方法です。
債権者の数が多い場合には選択されませんが、債権者の数が少ない場合や親会社が子会社を清算するケースでよく利用されます。
和解型の特別清算を選択した場合、債権者集会を開催する必要はありません。
債権者ごとに和解の内容が異なっていても問題ないという特徴があります。
そのため、協定型と比べても迅速に手続きを進められます。
特別清算と破産はともに「清算型」の倒産手続きです。
どちらも会社を消滅させるための手続きですが、特別清算と破産にはどのような違いがあるのでしょうか。
特別清算と破産は、主に下表のような違いがあります。
特別清算 | 破産 | |
---|---|---|
根拠法令 | 会社法 | 破産法 |
対象 | 株式会社のみ | 個人や株式会社以外の形態も可能 |
手続開始の要件 | 「清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合」または「債務超過の疑いがある場合」 | 「支払不能である場合」または「債務超過である場合」 |
債権者の同意 | 必要 | 不要 |
株主の同意 | 必要 | 不要 |
財産の処分 | 株主総会で選任された 清算人 | 裁判所で選任された 破産管財人 |
財産処分の否認権 | なし | あり |
特別清算をするには株主総会の決議が必要であり、株主以外にも債権者の同意が必要です。
破産では、取締役会決議(または取締役の過半数の同意)で申立てを決定するため、原則として債権者や株主からの同意はいりません。
財産処分の否認権とは、破産手続きで特定の債権者のみ優先して弁済したなど、債権者間の公平を害する行為があった場合に財産の取り戻しができる制度です。
特別清算にはこの否認権の制度はなく、原則として債権者の同意があれば任意の財産処分ができます。
特別清算や破産は「清算型」と呼ばれる倒産手続きですが、別の方法として「再建型」の倒産手続きもあります。
再建型の倒産手続きとは、会社を存続させながら債務の減免や弁済方法の変更により企業活動の再建を目指す方法です。
手続き後は、再生計画や更生計画に従い、減額された債務を弁済していきます。
手続きの方法には、民事再生手続きと会社更生手続きがあります。
民事再生手続きは、現在の経営陣が引き続き経営に参画できる手続きです。
一方、会社更生手続きでは、手続きの開始とともに事業の経営権や管理処分権がすべて管財人へ委譲されるため、現在の経営陣は退任しなければなりません。
一時的に債務超過となってしまったものの、将来的に経営の黒字化が見込める場合は再建型の倒産手続きを検討するのもよいでしょう。
特別清算のメリットには、次の3つが挙げられます。
特別清算のメリット
特別清算のメリットの1つ目は、破産に比べて手続きが簡便で時間がかからない点です。
特別清算は、債権者の同意を得られるかどうかが大きなポイントとなります。
それさえクリアすれば、破産手続きより短時間で手続きを進められます。
破産手続きに比べて柔軟な対応が認められるため、債権者の同意を得やすい形で進めるのも可能です。
一般的に、破産手続きは申立から終了まで6カ月~1年半ほどかかります。
和解型の特別清算では、債権者からの同意が得られた場合は2~3カ月ほどで終結するケースもあります。
特別清算を行う清算人を会社が選任できることも、会社にとってはメリットになります。
会社の消滅に関する手続きを、経営者がそのままできる、あるいは懇意にしている弁護士に依頼できるのは安心です。
破産手続きの場合は、まったく知らない弁護士が破産管財人に就任します。
会社の事情を知らない人が手続きを進める点や、破産管財人に対する報酬など、会社にとっては不安な要素が多いです。
裁判所に支払う費用が少なくて済むのも、特別清算のメリットです。
特別清算も破産も、裁判所に予納金と呼ばれるお金を支払う必要があり、破産の場合は数十万円から数百万円に及びます。
これに対して、特別清算の場合は金額が低く、場合によっては数万円程度で済む可能性もあります。
特別清算は、費用が安く時間もかからない手続きです。
非常に良い点ばかりのように思われますが、実際にはデメリットもあります。
このデメリットについても知ったうえで、破産と比較しておく必要があるでしょう。
特別清算のデメリット
特別清算を利用できるのは、株式会社だけです。
個人では利用できないだけでなく、有限会社・合同会社・社団法人などの法人でも特別清算できません。
そもそも選択の余地がない点がデメリットのひとつです。
特別清算を行ううえで最大のポイントは、債権者の同意を得られるかどうかです。
破産手続きの場合は債権者の同意は不要ですが、特別清算を行うためには債権者の同意が必要とされます。
同意を得られなければ、特別清算を行えないのです。
特別清算の場合、手続きにかかる費用相場は100万円以上となるのが一般的です。
費用は主に次があります。
特別清算人の職務に対して支払われる報酬です。
報酬額は、清算人の業務内容から裁判所が判断しますが、破産手続きを行う破産管財人報酬より低い金額となるよう定められています。
予納金とは、特別清算人の最低限の報酬を確保するために裁判所へ納めるお金です。
報酬と同様に、予納金も破産手続きの場合より少なくなるよう定められています。
なお、事前に債権者の同意が得られていない場合、破産予納金も別途必要になる可能性があります。
申立ての手数料として、2万円の印紙代がかかります。
そのほか、解散登記の登録免許税や官報掲載代など、合計して10万円ほどの手数料がかかります。
弁護士に特別清算の申立てなどを依頼する場合に必要です。
弁護士事務所の定める報酬基準によりますが、相場として50万円~100万円ほどかかるケースが多いようです。
特別清算と破産の違いについて見てきましたが、会社の清算処理は非常に複雑で、どの方法を選択すべきか自分で判断するのは難しいです。
まずは特別清算のメリットとデメリットについてよく理解して、どの方法が最適なのか考えてみてください。
そのうえで専門家である弁護士に相談すると良いでしょう。