東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
自己破産は借金問題を抱えた際に返済を免除できる制度ですが、その手続きには費用が必要です。
「手続きにいくらかかるのか」「そもそも費用を支払えるか」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では自己破産の手続きにかかる費用や支払いのタイミングについて解説します。
また、お金がなくて自己破産を諦めようとしている方向けに、費用が準備できない場合の対処法を紹介します。
法テラスを利用するメリット・条件についても説明しているため、ぜひ参考にしてください。
Contents
自己破産にかかる費用は、裁判所費用・弁護士費用の2つにざっくり分けられます。
裁判所費用と弁護士費用を合わせて、最低でも30万円程度が必要になるでしょう。
それぞれの費用について解説します。
裁判所に自己破産を申し立てるとき、申立人は各裁判所が定める「予納金」を納めます。
予納金とは、最低限手続きにかかる費用としてあらかじめ裁判所に納める費用です。
予納金を支払うタイミングは、申し立てから2週間~1ヶ月程度です。
裁判所から支払うようにと通知を受けたら、速やかに予納金を納めます。
予納金の内訳は、以下の通りです。
予納金の内訳
引継予納金とは、相続財産の調査や管理、換価などあらゆる手続きに携わる破産管財人への報酬です。
官報とは、政府が行政機関の休日を除いて、毎日発行する広報紙を指します。
収入印紙代は、個人の破産の場合のみ必要となります。
上記の金額は一般的な相場であり、裁判所によっては総額が100万円を超えるケースも珍しくありません。
なお、自己破産手続きにおいては、生活保護受給者を除き、裁判所費用が必ずかかります。
自分で申し立てをする場合であっても、弁護士に依頼する場合であっても同様です。
予納金の金額は「同時廃止事件」「少額管財事件」「通常管財事件」の種類によって異なります。
同時廃止事件とは、破産申し立てと同時に自己破産が認められる破産の手続きを指します。
同時廃止と呼ばれる理由は、破産申し立てと同時に破産が決定するためです。
一般的に、換価できる財産や預貯金がない場合に同時廃止となります。
破産申し立てをしても、財産の差押えや換価手続きをする必要がなく、破産管財人を選任する必要がありません。
同時廃止事件の場合、予納金として納める金額は1~3万円程度です。
少額管財事件は、金額や財産の種類が少ない管財事件です。
少額管財事件として取り扱われる条件は、それぞれの裁判所によって異なります。
ただ、いずれも破産手続きをスムーズに進められる場合を前提としているため、弁護士に代理人を依頼する必要があります。
少額管財として手続きが進められる場合の予納金は、20万円前後となっているケースがほとんどです。
管財事件とは、破産手続きを進めている人に一定の財産があり、破産する際に所有している財産の換価が必要になる破産の手続きです。
破産手続きを行っている申立人名義の財産は、基本的にすべて売却します。
管財事件となった場合には、必ず破産管財人を選任しなければなりません。
そのため、費用が多くかかり、少なくとも50万円の予納金が必要となります。
弁護士へ支払う費用は、裁判費用を除いて30~80万円程度です。
弁護士に正式依頼したときに着手金を支払い、自己破産の手続き終了後に残金を支払います。
自己破産の申し立てに必要な手数料は、以下の通りです。
必要な手数料 | 金額 |
---|---|
申し立てに必要な収入証紙等の購入費 | 1,500円程度 |
債権者に破産した旨を伝えるための郵送切手代 | 債権者の数×2+5枚 |
債権者が5社の場合、必要な郵送切手代は次の通りです。
債権者5社分の郵送切手代
自己破産しようとする人は、お金がなくて借金の返済に苦しんでいます。
手続きを進める費用が必要となっても、すぐには準備できないケースがほとんどです。
そこで、自己破産の費用を準備できないときには、どのような対処法があるのか、確認しておきましょう。
法テラスでは、経済的な理由で相談できないケースもあるため、さまざまな形で支援を行っています。
経済的支援のひとつとして「民事法律扶助制度」が利用できます。
民事法律扶助制度とは、無料で弁護士に法律相談をしたり、弁護士費用の立替制度を利用できたりする制度です。
裁判所に対する費用は、弁護士費用とは異なり、分割払いや後払いを認めていません。
そこで、法テラスで立替えて手続きを進めた後に、毎月5,000円~10,000円程度の分割払いでの返済ができます。
自己破産の手続きを積極的に行っている弁護士は、自己破産費用の分割払いを認めている場合事務所がほとんどです。
これは、自己破産を依頼してくる人はお金がなく、最初にまとまった費用を準備するのが難しいとわかっているためです。
なかには、頭金が必要ない場合や全額の分割払いを認めている場合、弁護士費用はすべて後払いを認めている場合もあります。
弁護士事務所によって様々な支払い方法が認められるため、事前によく調べて弁護士を決めるようにしましょう。
自己破産の手続きを、弁護士ではなく司法書士にも依頼できます。
司法書士に依頼すると、その費用は20~30万円程度で済むため、少しでも安く自己破産したい方に利用されています。
ただ、弁護士と司法書士では業務範囲が異なるため、まったく同じように自己破産ができるわけではありません。
司法書士に依頼できる業務は文書作成業務のみです。
ご自身で裁判所に出向き、面接などを受ける必要があります。
また、司法書士の場合は、少額管財として取り扱われません。
かえって費用負担が増えてしまうケースもあるため、全体の費用を考えたうえで進めましょう。
自己破産の費用について、親族の援助を受けるのも一つの解決策です。
借金ではなく、贈与の形で受け取った資金は、裁判所費用や弁護士費用にあてられます。
ただし、親族に費用を出してもらう際は、それが借入ではないと裁判所に証明する必要があります。
自己破産の費用を借金として調達すると、免責不許可自由に該当する可能性があるためです。
具体的には次のようなステップを踏みます。
親族から贈与を受けるステップ
借入ではないと証明できなければ、その後の手続きに影響する可能性があるため注意しましょう。
親族からの援助を受ける際には、事前に弁護士に相談しておくと安心です。
弁護士に破産手続きを依頼すると、弁護士費用がかかります。
お金がないため破産しようとしているのに、多額の費用の負担は避けたいと考える方もいるでしょう。
しかし、費用が発生しても、弁護士に破産手続きを依頼するメリットがあります。
いくら自己破産をしても、裁判所から免責許可を受けなければ、借金の返済義務は免除されません。
弁護士に依頼すれば、免責を受けるための法的なアドバイスをもらえます。
破産法に定められた「免責不許可事由」に該当する場合、裁判所は免責を許可しません。
免責不許可事由には次が含まれます。
免責不許可事由
法的な知識が不足していると、知らないうちに上記のような行動をしてしまう可能性があります。
弁護士に依頼すれば、事前に免責不許可事由を避けるための助言を受けられます。
なお、免責不許可事由に該当していても、裁判官の裁量で免責が可能です。
弁護士は裁量免責を受けるための戦略を立てられます。
裁判官との面談に同席も可能なため、説得力のある説明により免責を受けやすくなります。
自己破産を弁護士に依頼するメリットとして、裁判所に納める予納金が安くなりやすい点が挙げられます。
一般的に、債務者が一定の資産価値を持つ財産を持っていれば、通常管財事件として扱われます。
通常管財事件では破産管財人が財産・債務の調査や換価を行うため、少なくとも50万円以上の予納金が必要となります。
一方、弁護士に依頼すれば、より簡易的な少額管財事件が適用できる可能性があります。
財産や債務が比較的少なく、弁護士によるサポートがある場合には、費用を抑えてスムーズに手続きが可能です。
少額管財事件で納める予納金は約20万円程度と、通常管財事件と比べて30万円ほどの差があります。
弁護士費用がかかったとしても、裁判所に納める予納金を抑えられれば、かえって全体の費用は安く済む場合があります。
弁護士に依頼する際は、少額管財事件を狙えるかについても相談しておくと良いでしょう。
法テラスを利用するメリットは3つあります。
法テラスを利用するメリット
法テラスと契約している弁護士や司法書士に、同じ案件は無料で3回相談できます。
通常、弁護士に法律相談をする費用相場は、30分で5,000円程度です。
お金に余裕のない人が弁護士への相談を考えたときに、有料だと相談しにくい場合もあるでしょう。
自己破産について話を聞いてみたい場合でも、法テラスであれば無料で気軽に利用できます。
法テラスでは、一般的な弁護士事務所よりも細かい分割払いにも対応しています。
一度にたくさん支払えない方は、毎月5,000円から分割払いができます。
生活保護を受給している方が、法テラスを利用して自己破産を行う場合、予納金の返還を猶予してもらえます。
また、自己破産の免責確定後に生活保護を受けた場合、20万円を上限として予納金の返還が免除されます。
20万円を超える部分については自己負担となりますが、大きなメリットといえるでしょう。
法テラスを利用するデメリットは3つあります。
法テラスを利用するデメリット
法テラスには利用条件があり、誰でも利用できるわけではありません。
もともと、、弁護士に依頼したくともお金がない人に向けた制度であるためです。
法テラスの利用条件は以下の通りです。
法テラスを利用するには、収入要件と資産要件の両方を満たす必要があります。
収入や資産に関する要件
以下に、自己破産の申立人が個人である場合の要件についてまとめました。
収入要件 | 資産要件 | |
---|---|---|
手取月収額の基準 | 家賃・住宅ローン負担時に加算できる限度額 | 資産合計額の基準 |
18万2,000円以下 | 4万1,000円以下 | 180万円以下 |
簡単に説明すると「免責許可を得られる余地がある」場合を指します。
いくら債務者が困っていたとしても、自己破産手続きの免責許可を受ける見込みが全くない場合には、法テラスを利用できません。
これは限られた資源を有効に活用するために必要とされている規定です。
法テラスを利用するには、民事法律扶助の趣旨に適するのが要求されます。
単に債権者への嫌がらせをする目的や権利を濫用する目的、自己満足目的での利用は認められていません。
以下のページでは、自分が利用条件に当てはまるかシミュレーションができます。
相談する際にも質問される内容のためですので、借金の内容等を整理しておきましょう。
法テラスを介した依頼は、審査が終わってからの着手となるケースがあります。
審査が終了していないと着手できないとの規定はありませんが、弁護士によって見解が分かれています。
もし、審査が終わるまでに着手されない場合は、借金の督促をされるケースこともあるため、弁護士に依頼をする前に、審査期間中の督促について確認しておきましょう。
法テラスでは、相談者に近い地域の弁護士を探して教えてもらえますが、相談者から特定の弁護士にお願いできません。
ただし、自分で弁護士を探して依頼する場合でも法テラスの制度を使える場合があります。
自己破産で法テラスを利用する場合、弁護士に依頼するときの費用と比べて、おおよそ1/2程度になるでしょう。
かかった実費や着手金・弁護士費用などの立て替えもしてもらえるため、支払うお金に困っている人でも利用できます。
以下は、法テラスで実際にかかる費用と一般的な弁護士事務所でかかる費用の目安を比較しました。
【法テラスの場合】
1~10社:実費23,000円、着手金132,000円=合計155,000円
11~20社:実費23,000円、着手金154,000円=合計177,000円
21社以上:実費23,000円、着手金187,000円=合計210,000円
【一般的な弁護士事務所の場合】
同時廃止 | 少額管財 | 通常管財 | |
---|---|---|---|
予納金 | 1~3万円 | 20万円 | 50万円 |
弁護士費用 | 30~50万円 | 30~60万円 | 30~80万円 |
総額 | 31~53万円 | 50~80万円 | 80~130万円 |
一番安い費用を比べると、法テラスが15万5,000円、弁護士事務所は31万円です。
法テラスは一般的な弁護士事務所と比べても、破格の費用で自己破産ができると言えるでしょう。
自己破産手続きには、弁護士費用と裁判所費用を合わせて30万円以上かかります。
同時廃止事件や少額管財事件を狙えば、裁判所費用を低く抑えられる可能性があります。
自己破産手続きは自分でも申立てができますが、免責を受ける可能性を高めるためにも弁護士への依頼をおすすめします。
もし費用が支払えなくても、分割払いや司法書士、親族の援助などの手段により、対処が可能です。
さらに収入や資産などの一定の条件を満たせば、法テラスの費用立て替え制度を利用できる場合があります。
お金がないと自己破産を諦めてしまう前に、まずは弁護士に相談して費用を捻出する方法を探してみましょう。