東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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Contents
自己破産手続きを申立てると、まず裁判所は、同時廃止とするか管財事件とするかを判断します。
管財事件となった場合、さらに少額管財事件となるか通常管財事件となるかに分かれます。
そもそも管財事件とは、裁判所によって選任された破産管財人が申立人(破産者)の資産を調査し、すべて換価処分(現金化)を行った上で、得られたお金を債権者に平等に配当するという自己破産の手続方法のことです。
また、申立人に「ギャンブルで借金が膨らんだ」「財産隠しの疑いがある」といった免責不許可事由がないかの調査も、破産管財人が行います。
この管財業務は、申立人の資産状況や債権者の数、免責不許可事由の確認の要否などによって、業務量が大きく変わってきます。
そこで、申立人の財産が一定額以下で免責不許可事由がないような場合は、破産管財人の業務負担を軽くした「少額管財事件」とする運用を裁判所が行っています。
この少額管財事件の運用は、東京地方裁判所はじめ他の裁判所でも行われていますが、このような運用を行っていない裁判所もありますので、事前に管轄の裁判所もしくは弁護士に確認が必要です。
自己破産手続きにおいて、少額管財事件となった場合の流れについて説明します。
申立てる裁判所によって流れが一部異なることがありますが、大まかな内容は変わりません。
手続の内容については、ステップごとに解説していきます。
管轄の地方裁判所へ、依頼した弁護士が少額管財として自己破産手続の申立てを行います。
このとき、裁判所によっては即日面接といって、裁判官と代理人弁護士とで面接が行われることがあります。
破産管財人になる予定の弁護士、申立人(破産者)、依頼した代理人弁護士の三者で面談を行います。
この面談は、破産管財人が選任された後に行われる場合もあります。
申立て後、債務を返済することが不可能であると裁判所が認めた場合、破産手続開始決定がなされます。
合わせて、破産管財人の選任も行われます。
破産管財人候補との三者面談の数日後に、最低20万円の引継予納金を支払います。
債権者集会は裁判所で行われます。
参加者は、裁判官、破産管財人、破産者、代理人弁護士、債権者ですが、一般的に個人の自己破産では債権者が参加することはほとんどありません。
債権者集会では、破産管財人より財産や負債の状況、免責不許可事由に関する調査内容などが説明されます。
債権者集会の後、1週間ほどで裁判所が免責許可決定を下します。
この事実は、官報公告として掲載されます。
官報公告は、破産者が把握していない債権者が他にいないか確認するために行うものです。
また、官報は国が発行する機関紙のようなものですが、掲載費用は破産者が負担します。
官報公告から2週間経過しても、把握していない債権者からの申し出がない場合、免責が確定します。
これにより、破産者の債務の支払い義務が免責されます。
少額管財事件は、裁判所側にとっては破産管財人の負担を軽減し、より多くの破産事件をこなすことができるというメリットがありますが、利用する側(破産申立人)にとっては、どのようなメリットがあるでしょうか。
ここで、破産申立人にとっての少額管財事件のメリットについて解説します。
自己破産手続きの申立てでは、申立ての代理を依頼する弁護士への費用のほかに、裁判所へ支払う費用が発生します。
裁判所へ支払う費用には、申立手数料、官報公告費、予納郵券代(郵便切手)、予納金(引継予納金)があります。
引継予納金とは、破産管財人への報酬です。
破算管財人は、裁判所の職員ではなく、裁判所の管轄内にある法律事務所に所属する弁護士が選任されますが、この管財人への報酬は申立人が支払わなければなりません。
裁判所費用の中で最も金額が大きいのは引継予納金で、通常管財事件の場合、50万円程度必要です。
この引継予納金を支払わなければ、破産手続きを進めることはできません。
ただし、少額管財事件となった場合、この予納金は20万円で済みます。
引継予納金は破産管財人への報酬ですから、業務量の少ない少額管財事件となった場合、引継予納金も下がるというわけです。
ちなみに、要件に合致していなければなりませんが、同時廃止となった場合は破産管財人は選任されませんので、引継予納金は発生しません。
自己破産手続きでは、資産の内容にもよりますが、通常の管財事件で半年から1年ほどの期間がかかります。
しかし、少額管財事件となった場合、手続きが簡略化されますので、2~3ヵ月という期間で終了します。
手続終了後は、借金などの債務は免責されますから、早めの再スタートが可能になります。
自己破産手続きには同時廃止と管財事件があり、同時廃止となった場合は、破産管財人が選任されませんので引継予納金の支払いが不要で、手続開始と同時に廃止となるため期間も短くて済みます。
そのため、自己破産手続きでは、当然同時廃止となった方がお得です。
しかし、同時廃止となるためには、「財産が一定額以下」「免責不許可事由に該当する行為がない」「財産隠しなどの疑いがない」等、同時廃止基準を満たしていなければなりません。
さらに、同時廃止として申立てを行っても、基準を満たしていないと判断されれば管財事件となります。
少額管財という制度がない場合、費用が少なくて期間も短い同時廃止か、50万円程度の引継予納金が必要で期間も長くかかる管財事件の2択ということになります。
管財事件とならざるを得ないとなると、自己破産が利用しづらくなってしまいます。
そこで、少額管財という制度があれば、同時廃止の基準を満たさない場合でも、通常管財事件ほどの費用や期間を要することなく、自己破産手続きを利用できることになります。
少額管財事件の場合に、裁判所へ支払わなければならない費用は以下の通りです。
基本的には、申立人は依頼した代理人弁護士へ総額を支払い、代理人弁護士が裁判所、破産管財人へ支払います。
こちらの金額は、横浜地方裁判所の費用を紹介しています。
裁判所によって多少金額が異なりますので、ご注意ください。
また、上記は裁判所、破産管財人へ支払うべき費用で、自己破産手続の代理を依頼する弁護士への費用は別途必要となります。
代理弁護士へ支払う費用は、依頼する弁護士事務所によって、また破産内容によっても異なりますが、一般的には25~50万円必要です。
そのため、自己破産(少額管財事件)には、裁判所費用として約22万円、依頼弁護士費用で25~50万円で、合計50~70万円程度の費用が必要ということになります。
たとえ引継予納金の低い少額管財事件となっても、総額で50~70万円程度の費用がかかりますから、自己破産を検討する人にとっては、費用を捻出することが難しい場合もあるでしょう。
しかし、費用がないからといって諦める必要はありません。
ここでは、自己破産の費用が払えないときの対処法を紹介します。
法テラスとは、正式名称「日本司法支援センター」といい、総合法律支援法に基づき日本国政府が設立した法務省所管の法人で、総合法律支援に関する事業を行っています。
法テラスでは、経済的な余裕がない方でも、法律的な支援を受けられることを趣旨に業務を行っていますから、無料法律相談をはじめ、弁護士費用の立て替え業務も行っています。
ここで、法テラスを利用するメリット、デメリットについて簡単に説明しましょう。
法テラス利用のメリット
法テラス利用のデメリット
法テラス利用のメリットのひとつである弁護士費用の立て替え制度を利用すると、まず弁護士へ自己破産を依頼し手続きを行った上で、立て替え費用を法テラスへ分割払いで返済することができます。
また、法テラスには無料法律相談制度があり3回まで可能ですから、自己破産の検討段階で相談を始めることができます。
普段、弁護士と接点がなく、誰に相談したらよいかわからないという方でも、安心して手続きを進めることができます。
さらに、生活保護を受給している方であれば、立て替えではなく費用免除となる場合もありますので、事前に法テラスに確認しましょう。
法テラスを利用するためには収入基準、資産基準が一定額以下である必要がありますが、基本的に自己破産を検討するほど困窮している方であれば、この基準をクリアするケースは多いでしょう。
自己破産における費用が捻出できない場合は、まず法テラスへ相談することをお勧めします。
自己破産などの債務整理を専門に扱っている法律事務所の場合、自己破産を検討している人の経済的事情をよく理解しているため、弁護士費用の分割払いに応じてくれたり、着手金を支払わなくても契約してくれたりします。
自己破産手続きで、裁判所や破産管財人へ支払うお金を分割払いにしてもらうことはできませんが、代理人弁護士への費用が分割払いになると、かなり負担が軽くなるのではないでしょうか。
ここで注意しておきたいのは、弁護士の選び方です。
弁護士費用は法律事務所によって異なりますが、値段だけで選ぶと自己破産手続きがうまく進まないというリスクもありますので、十分に検討することが大切です。
基本的に、自己破産に関しては無料相談に応じてくれる法律事務所も多いので、そういった法律事務所をいくつか選び、見積りを比較検討するのも良いでしょう。
無料相談すれば、価格だけでなく、自分との相性や相手の人となりもわかりますから、安心して手続きを任せられる弁護士を選ぶことができます。
自己破産を検討中の方で、少額管財として申立てを行いたい方に注意点を説明しておきましょう。
管財事件の中の少額管財という手続き方法は、法律で定められたものではありません。
破産法の範囲内で、裁判所が管財事件を運用しやすくするために考えられた方法です。
そのため、少額管財もしくはこれに類似した名称で呼ばれる同様の方法は、すべての裁判所で運用されているわけではありません。
また、少額管財として運用している裁判所でも、裁判所によって少額管財とする基準は異なります。
少額管財を希望の場合は、自己破産の手続きを依頼する弁護士に、管轄の裁判所ではどういう運用がされているのか事前に確認するようにしてください。
ここまで、自己破産の少額管財事件について、弁護士が代理人として申立てるという前提で手続きの説明をしてきました。
これは、裁判所が少額管財事件として運用するための条件に「弁護士が代理人として申立てること」と規定しているためです。
少額管財は、管財事件の手続きの簡略化、スピード化を目的に運用されるものですから、法的手続きに精通している者が手続きを進めることを求められます。
例えば、法的手続きに不慣れな申立人自身が手続きを進めると、手続きに誤りがあったり、意図せず法律違反を犯してしまったりする可能性があります。
そういった不都合を回避する意味でも、「弁護士が代理人として申立てること」という条件が設定されています。
なお、弁護士費用を抑えるために、弁護士へ依頼せずに自身で自己破産の申立てを行った場合、弁護士への依頼費用25~50万円はかかりませんが、引継予納金は少額管財の20万円ではなく通常管財事件の50万円程度必要になりますから、総額では大きな差はありません。
自己破産手続きは、同時廃止もしくは管財事件のどちらかになります。
管財事件となった場合でも、一定の条件を満たせば少額管財事件となり、破産管財人へ支払う引継予納金は20万円と、通常時の50万円程度と比較して安く抑えることができます。
また、手続完了までの期間も、通常の管財事件より短くなることが一般的です。
ただし、少額管財はすべての裁判所で運用されているわけではなく、また弁護士が代理人として申立てることが条件になっていますので、ご注意ください。
自己破産を検討していて、費用の捻出が難しいときは、法テラスの弁護士費用立替制度を利用できる場合がありますので、まずは法テラスの無料法律相談を利用してみましょう。