東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
農家や畜産農家が自己破産をする場合、通常の自己破産とは異なるポイントがいくつかあります。
中でも農地は、法律によって売買が制限されているため、自己破産による処分は容易ではありません。
今回は農家や畜産農家が自己破産した場合の財産の処分方法について、農地の処分を中心に解説します。
Contents
自己破産をすると、破産管財人によって財産はすべて処分されます。
農地の他、作物や家畜なども財産とみなされるため、基本的にすべてを失うことになります。
中でも農地を処分する際には、通常の不動産売買とは異なる手続きが必要です。
詳しく見ていきましょう。
農地は農地法により売買が制限されているため、簡単には売却できません。
移転・売却をする場合は、農業委員会や都道府県知事の許可が必要です。
許可なしに売買すると、その取引は無効となるため、注意しましょう。
地方の農地は、なかなか売却先が見つからないこともあります。
売却が難しい場合は、宅地などへの転用も視野に入れましょう。
しかし転用する場合も、同じように農業委員会や都道府県知事の許可が必要です。
手続きと処理には時間がかかるため、売却や転用の判断は早めに行いましょう。
育てていた作物や家畜も財産として処分されます。
今までの出荷先など、販売ルートを確保しておくとスムーズに売却できるでしょう。
農機具など機械設備は、JA(農業協同組合)などに相談すると、引き取ってくれる場合もあります。
その他、知人や近隣の農家に売却することも検討しましょう。
自己破産をしたからと言って、作物の栽培や家畜の飼育を突然やめるわけにはいきません。
破産後も一定期間、作業を続けることになるでしょう。
また、事業譲渡によって他社に事業を引き継ぐ可能性も考慮し、自己破産後もある程度、状態を維持する必要があります。
ここではそれらの点をふまえた、自己破産後の注意点を3つ解説します。
自己破産後も作物や家畜が出荷できるまでは、世話をする必要があります。
機械の運転やライフラインの維持のため、電気の確保が不可欠です。
自己破産後も電気が止まらないように、電気会社との契約は継続しておく必要があるでしょう。
従業員を雇っていた場合、自己破産によって解雇する必要が出る可能性があります。
解雇する場合は次の就職先の紹介や斡旋を積極的に行いましょう。
事業譲渡により、経営を他社に譲る場合は、従業員の継続的な雇用を打診しておくことも必要です。
また、自己破産後もしばらく作業を続ける必要があるため、すぐに解雇せず協力をあおぎましょう。
その場合、給与の支払いが滞らないようにすることも大切です。
栽培や飼育に必要な餌や肥料の仕入れ先、作物や家畜の出荷先など、取引先もいきなり仕入れや出荷を止められると困るでしょう。
突然すべてをやめるのではなく、自己破産することになった状況を説明し、今後の対応を丁寧に説明し、協議する必要があります。
農地の処分には、農地法の制限があります。
許可を得ず勝手に売買すると、その取引は無効となるため注意しましょう。
破産したからと言って突然、作物や家畜の飼育をやめるわけにはいきません。
農地の転用や事業承継も視野に入れ、自己破産後も一定期間、作業を続ける必要があることも理解しておきましょう。
農地を含めた自己破産の処理は複雑であるため、自己破産を検討する際は、専門家に相談することをおすすめします。