東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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Contents
破算管財人は、スムーズに破産手続きを進めるために裁判所をサポートする役割を担います。
通常の場合、破産管財人は裁判所の管轄内にある法律事務所に所属する弁護士が選任されます。
(破産管財人は裁判所の職員ではありません。)
選任された破産管財人は、破産者の財産を調査して換価処分します。
換価処分して得られた現金を各債権者に配当を行うというのが破産管財人の主な業務ですが、破産者が免責を受けて問題ないかといった調査や、裁判所への報告なども行います。
破産手続きには同時廃止事件と管財事件があり、この破産管財人が選任されるのは、管財事件の場合のみです。
同時廃止事件とは、破産者に十分な財産がないことが明らかな場合に行われる自己破産の手続きで、この場合は、破産管財人が選任されません。
そのため、破産管財人が選任されるのは、破産者が一定の財産を所有している、免責不許可事由がある、または財産隠しの疑いがある場合などです。
ここで、破産管財人が行う仕事内容を大きく4つに分けて説明しましょう。
破産者との三者面談は、今後どのような調査が必要か判断するためのものです。
特に、免責不許可事由があるために破産管財人が選任されているような場合、事実の確認に加えて、反省しているかどうかの判断も行われるため、虚偽の説明や隠ぺいは決して行わないようにしましょう。
もし面談中に、記憶が曖昧であるとか不明点があるような場合は、正直にそのまま話すことが重要です。
無理に取り繕って、虚偽報告と判断されることがないように注意しましょう。
ちなみに、免責とは借金を返済する責任を免除されることで、せっかく自己破産手続きを申し立てても、免責が許可されなければ借金はなくなりません。
この面談では、借金を作ってしまった理由、現在の収入額、保有している財産の詳細などについて質問されます。
財産隠しなどせず、すべて正直に話すことが重要です。
預貯金などはもちろんですが、家や土地といった不動産、自動車や有価証券などの財産を調査します。
これらは、全て換価処分する(売却して現金化する)必要がありますから、現在の状況と評価額についても調査します。
財産は、一部の自由財産と呼ばれる生活に必要な最低限の財産を残して、すべて換価処分した後、各債権者に債権額に応じて平等に現金で配当が行われます。
免責不許可事由があるかどうかは、最初の面談においても確認されますが、財産隠しなどの免責不許可事由となる行為が行われていないかどうかの調査を継続するのも、破産管財人の仕事のひとつです。
たとえば、破産手続開始決定が下されると、破産手続きが終了するまで破産者宛の郵送物は、すべて破産管財人に転送されるのが一般的です。
破算管財人は、転送された郵送物をくまなくチェックし、最初に提出された書類に記載された財産以外に所有している財産がないかどうか調査します。
また、手続きの進行にあたって、破産者が調査に非協力的である場合や虚偽の説明を行うといった場合、免責不許可事由に該当するとして、裁判所へ報告することがあります。
債権者集会は裁判所で開催されるもので、出席者は破産管財人、裁判官、破産者、代理弁護士、債権者です。
主に、破産管財人から破産者の財産調査の結果報告などが行われます。
個人の自己破産の場合、債権者は金融機関や貸金業者であることが多く、基本的に出席はありません。
債権者が出席する場合でも、怒号が飛び交うようなものではありませんので、ご安心ください。
多くの場合、5分ほどで債権者集会は終了しますが、財産隠しの疑いがあるなどの報告があった場合は、出席者から質問が出てくることもあります。
破産管財人は、財産の調査を行った後、換価処分し現金を各債権者に配当しなければなりません。
そのため、実際にどれだけ財産があるのかを詳細に調査します。
調査内容は対象となる財産によって異なりますが、以下のように分けることができます。
調査内容
これらを順に説明していきましょう。
過去2年以内に所有していた銀行などの預金口座について、預金通帳または取引明細書を裁判所へ提出しなければなりません。
また、現金隠しをしていないことの証明として、残高がゼロの口座、使用していない口座でも預金通帳の提出が求められます。
これらの預金通帳の明細を管財人が調査し、破産手続開始時点の預貯金額の確定を行います。
なお、自己破産は個人のみが対象となるため、原則として本人以外の配偶者などの名義の通帳は提出する必要はありません。
株式などの有価証券、投資信託なども、調査対象となります。
提出された書類や証券会社の口座取引概要などが、申告通りか確認されるとともに、時価評価についても調査されます。
破算管財人は、破産者の不動産や自動車を調査し、評価します。
このとき、対象となるのは破産者の名義のものだけです。
調査されるのは、基本的に破産者名義のものに限られますが、破産手続き直前に他の人に名義変更することは、財産隠しと判断されることになりますので注意が必要です。
生命保険や個人年金は、解約して戻ってくる解約返戻金が財産の対象となりますので、管財人の調査対象となります。
ただし、解約返戻金がすべて換価処分される財産として没収されるわけではありません。
たとえば、東京地方裁判所の基準では、この解約返戻金が20万円未満となる見込みの場合は、没収されることはありません。
また、生命保険や個人年金に限らず、自動車保険、火災保険、損害賠償保険、養老保険、地震保険なども対象となりますが、解約返戻金の合計20万円未満となる場合は、没収されません。
このような基準は、裁判所によって異なりますので、管轄裁判所へ事前に確認することをおすすめします。
いずれにしても、不明な場合は、破産手続き申し立て時、または初回の破産管財人との面談で確認しましょう。
破産者は、お金を借りているだけでなく、他人にお金を貸している場合もあります。
そのような場合、破産者の債権は、お金を回収する権利という財産ですから、管財人の調査対象となります。
他者への債権に関しては、契約書やメモ、口頭で、誰にいくら貸しているかを細かく調査されます。
基本的に破産管財人は、破産者から提出された書類や面談での聞き取りを元に財産調査を行いますが、破産者からの説明を100%信じるわけではありません。
破算管財人は、破産者の財産を調査、換価処分した上で、正当な金額を債権者へ配当を行うことが目的です。
もし破産者が財産を隠したとしても、不自然な点があれば、正確な財産を没収するために追加調査を行います。
最終的には、破産管財人の追加調査により、財産隠しは発覚してしまう結果となります。
ここでは、財産別に財産隠しが発覚してしまうケースをご紹介しましょう。
破産者が預金口座を隠していても、破産管財人は銀行に対して直接照会することが可能です。
また、預金口座から現金を引き出して、タンス預金のように自宅に隠したとしても、口座の出金明細から、多額の現金の行方を調査されますので発覚します。
前述したように、破産手続き開始後から破産者への郵送物はすべて破産管財人に転送されます。
証券会社などからの郵送物があれば、管財人から証券会社へ問い合わせが行われ、発覚します。
また、その問い合わせにより取引内容の明細も調査されますから、過少申告を行った場合でも発覚します。
不動産の場合は、固定資産税、不動産登記などを調査すれば、所有者や評価額はすべてわかります。
また、自動車の場合も自動車税、車検証により調査は簡単に行えますので、たとえ形式的に他者へ名義変更を行ったとしても、すぐに発覚します。
給与明細や源泉徴収票、確定申告書類などを確認して、所得税から生命保険控除があれば発覚します。
また、前述したように郵送物もすべてチェックされますから、保険会社からの郵送物があれば、そこからも調査が行われます。
たとえば、財産隠しを目的に、他人へ現金を貸し付け、その債権を隠ぺいしたとします。
これも元々現金を所持していたわけですから、預金口座やその他債務の支払状況などを調査すれば、隠ぺいしていることが発覚してしまいます。
同様に、離婚届を提出しただけで離婚を偽装し、過大な財産分与により財産隠しを行ったとしても、不自然な財産移転はすぐに発覚します。
破算管財人の仕事は多岐にわたりますが、メインは破産者の財産を調査・換価処分し、現金を債権者へ配当することです。
その仕事の中でも、特に財産の調査は重要です。
破算管財人は、提出された書類や面談でのヒアリング以外にも調査手段を持っていますので、たとえ財産隠しを行っても、すぐに発覚してしまいます。
悪質な財産隠しは、免責不許可事由となりますので、決して行わないようにしましょう。