東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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Contents
経営が苦しくなりその会社をたたむ場合、「会社倒産」や「会社破産」といいます。
しかし、実際はこの倒産と破産はまったく異なることを説明しており、法的には明確に区別されています。
倒産とは、会社の業績が悪化して債務や借入金の返済ができず、事業の継続が困難になった状態のことを指します。
倒産には、会社の事業を終了させるための手続きである「破産」や「特別清算」と、事業を継続しながら会社の再建を目指す「民事再生」や「会社更生」があります。
そのため、その先に何を目指すのかを考えたうえで、いずれの方法を選択するのか決めなければなりません。
ただ、会社の法的整理についてさまざまな法律に規定がありますが、「倒産」という言葉を明確に使っている条文はありません。
つまり、「倒産」という言葉は法的には定義されていないのです。
会社倒産のうち、事業を終了することを「破産」と言います。
具体的には、債務超過になった会社が、すべての財産を債務の返済にあてたうえで返済できなかった債務を帳消しにしてもらい、最終的に会社を消滅させる手続きのことです。
破産は倒産と違い、法律上の言葉として明確に定義されています。
なお破産の手続きは、すべて裁判所で開始することとされているため、すでに実態がない会社であってもその手続きを行っていない場合は、破産したということにはなりません。
ここまで倒産と破産の違いを見てきました。
会社の倒産にはさまざまな方法があり、その1つに破産も含まれます。
したがって、倒産した会社であっても必ずしも破産しているわけではないのです。
一方、破産した会社は事業の継続ができない状態であるため倒産したということとなります。
倒産と破産には明確な違いがあることから、この2つを混同しないようにしましょう。
2022年の会社倒産件数は6376件、そのうち破産件数は5912件となっています。
どちらも前年に比べて増加しており、とくに破産件数は前年に比べ300件以上も増加しています。
これは、リーマン・ショック直後の2009年以来13年ぶりの増加幅を記録しています。
会社倒産のうち破産の占める割合は、約92.7%と圧倒的多数となっていることが分かります。
ただ、会社が倒産した場合には、破産以外にも民事再生法や会社更生法に基づいた再生型倒産が行われることもあります。
さらに、破産と同じ清算型に分類されるものには、他に特別清算が行われることがあります。
会社倒産の1つである破産の手続きを行う流れを確認しておきましょう。
会社の経営が苦しくなり破産すべきかどうか悩んだ場合、まず弁護士に相談しましょう。
破産すべきという結論に至った場合、破産申立の準備を行います。
実際に破産申立を行う際には多くの書類が必要となりますが、書類は弁護士が作成してくれるため、弁護士の指示に従って会社にある資料をそろえておきます。
破産申立の準備に必要な書類
これらの書類を集めて、弁護士に提出しなければなりません。
また、破産手続きを弁護士に依頼した場合、弁護士から受任通知が債権者に送付されます。
これにより、債権者からの取り立てや直接の連絡はストップします。
必要な書類をそろえて申立書を作成したら、裁判所に破産の申し立てを行います。
破産申立に必要な書類は次の通りです。
破産申立に必要な書類
ほとんどの書類は弁護士が作成してくれるため、基本的には弁護士に任せることになるでしょう。
破産申立を受けて、裁判所が破産すべきと認めたら破産手続開始決定が行われます。
同時に、破産手続きを進めることとなる破産管財人を選任します。
破産手続きの一番の目的は、会社財産をお金に換えて少しでも債務の返済を行うことです。
破産管財人が中心となって、会社の財産をお金に換えていきます。
破産手続開始決定から2~3か月ほど経過したところで、債権者集会が開催されます。
本来は、会社の債権者が参加して破産に至った経緯や今後の手続きについて確認する場となります。
しかし、実際には債権者が出席することはほとんどなく、裁判官や破産管財人と会社の代表者および会社の代理人弁護士で行われる打合せという側面があります。
会社の財産をすべて換価したら、会社の債権者に対して債務の額に応じた配当を行います。
ただ抵当権がついた債権を有している債権者に対しては優先的に配当が行われるため、配当がほとんどない債権者が現れることも珍しくありません。
会社が破産する際にかかる費用には、裁判所に納める費用と、会社の代理人となった弁護士に対する費用に大きく分けることができます。
裁判所に納める費用として準備しなければならないものに、予納金があります。
予納金の額は裁判所でおこなう破産手続きの種類によって異なります。
また裁判所によっても若干違いがあるようです。
破産の原因となる負債の金額が大きい場合には、予納金の額も大きくなります。
破産手続きを弁護士に依頼する場合の費用は、一般的に50万円~となります。
ただし、弁護士費用については一律の決まりはないため、弁護士によって差があり、また事件の複雑さによってその金額が変動する場合もあります。
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会社の破産手続きを行う際には、2種類の手続きの方法があります。
1つ目は「少額管財」と呼ばれるもので、予納金が少額で済む特徴があります。
会社の財産がわずかしかない、債権者が少ないなどの事例で、手続きが迅速に進められる場合には、少額管財となります。
少額管財となった場合は、すべての手続きが3か月から長くても1年程度で終了します。
もう1つの方法は「普通管財」あるいは「特定管財」です。
会社の財産の処理に時間がかかり、債権者が大勢いるような場合には、普通管財手続きが選択されます。
少額管財に比べると、債権金額が大きく権利関係が複雑で、すべてが終結するまでに1年以上の時間がかかるケースが多くあります。
とくに、なかなか売却できない不動産などがあると、すべて完了するのに数年かかることもあります。
また、弁護士に相談してから実際に破産の申し立てを行うまでに数か月かかることも忘れてはいけません。
会社の経営が悪化し事業を継続することができなくなった場合、破産以外にも選択肢があります。
いずれの場合も会社としては実質的に倒産していることとなりますが、それぞれ破産した場合とは異なる点があります。
それぞれの違いを理解し、いずれの方法を選択するのか決める必要があります。
民事再生とは、会社が抱えている債務の一部を債権者の同意のもと圧縮するとともに、残りの債務を会社が完済することを目指すための手続です。
民事再生と破産の違いは、会社を残すことを前提とするか否かです。
民事再生は会社をそのまま残し、負債の額を圧縮して返済可能な状態としたうえで事業を継続します。
民事再生の計画どおりに負債を返済できれば、普通の会社と同じように存続していくことができるのです。
民事再生の手続きを開始した場合でも、会社の代表者がそのまま会社に残り手続きを進めることができる点も破産とは異なります。
民事再生と破産の違いをふまえて考えると、民事再生を選択した方が良いのは以下の場合です。
会社を残したい場合とは、単に会社の事業を継続したいというだけでなく会社が持つ技術やノウハウが優れており、負債の返済さえ見通しが立てば収益計上の見込みがあることをいいます。
このような会社であれば民事再生手続を開始した後も、債務の返済が順調に進むだろうと考えられるのです。
ただ、民事再生はその会社の意向だけで選択できるものではありません。
会社が希望しても、債権者が負債の圧縮に同意してくれなければ手続きを開始できません。
特別清算とは、債務超過の疑いがあるため通常の清算ができない場合、裁判所が主体的に清算の手続きを進める方法です。
特別清算が選択できるのは株式会社に限られ、個人や他の形態の法人は利用できません。
破産と特別清算の違いは、手続きを特別清算人が進めることです。
破産の場合は、裁判所から破産管財人が選定されるため、会社の代表者は手続きに介入できません。
一方、特別清算では、会社の代表者がそのまま特別清算人になれるため、会社の代表者が主体的に清算を進めたい場合に向いています。
ただし、特別清算を進める際には債権者の同意を得る必要があります。
債権者からの同意を得られなければ、特別清算は選択できないのです。
一方、破産は裁判所が管轄内の弁護士から選任した破産管財人がその手続きを進めるため、破産手続きを進めるにあたって債権者からの同意を得る必要はありません。
特別清算を選択するといいのは、以下の場合です。
ただし、債権者の同意を得られない場合や事案が複雑な場合などは、特別清算ができないため、破産管財人を選任して破産手続きに移行することとなります。
会社更生とは、裁判所が選任した会社更生人が中心となり負債の圧縮と新たなスポンサーの出現を待ち、会社の再生を図る方法です。
比較的大規模な会社が再生を目指す場合に利用されます。
会社更生と会社破産の違いは、会社の存続を目指して選択されることです。
また個人や株式会社以外の法人が利用することはありません。
会社更生を選択するといい場合は、「会社を存続させたい場合」です。
ただ、大規模な株式会社であることが大前提となるため、中小企業などが会社更生を行うことはまず無理であると知っておく必要があります。
会社の倒産手続きを行うためには、従業員を解雇しなければなりません。
しかし、どのような事情があったとしても、従業員を解雇することは簡単なことではないので、慎重に進める必要があります。
会社が倒産するために従業員を解雇する場合、まずは従業員に対して丁寧に説明する必要があります。
会社が倒産せざるを得ないこと、従業員の雇用を確保できないことなどを説明します。
また、雇用保険や給料の支払いについて不安に思っている従業員がいるはずなので、そのことも説明しなければなりません。
解雇にあたっては、ハローワークでの手続きや従業員への離職票などの書類の交付も必要です。
従業員の解雇は会社を畳む日に行われるので、それに合わせて準備をしなければなりません。
会社倒産とは、会社の業績が悪化して債務や借入金の返済ができず、事業の継続が困難になった状態を指します。
会社倒産時の手続きには、事業を終了させるための「破産」や「特別清算」、事業を継続しながら会社の再建を目指す「民事再生」や「会社更生」など多くの方法があります。
しかし、いずれの方法も債権者の同意が必要であったり、株式会社しか利用できなかったりするため、希望通りに進めることができない場合があります。
ただ、会社を残したいという希望がある場合には、民事再生ができないかといったことを検討する必要はあります。
まずは弁護士に相談して、どのような方法があるのかを確認するようにしましょう。