東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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任意整理は借金問題を解決するための、債務整理の方法一つです。
債務整理の中では利用のハードルが低く、最も多く利用されています。
しかし、中には債務整理をしたことを後悔している人がいることも事実です。
今回は債務整理することを後悔しないために、任意整理について詳しく解説していきます。
任意整理のメリットや手続き後の生活についても、参考にしてください。
任意整理とは、借金問題を解決するために法的に認められた手続き方法です。
利息制限法に基づいて将来分の利息をカットし、減額した金額を3~5年(36~60分割)で返済します。
基本的に元金は減額されませんが、過払い金があれば元金に充当することも可能です。
返済額を毎月一定にし、無理のない範囲で返済することができます。
任意整理を行うには、月々の返済ができるだけの一定の収入があることが条件です。
任意整理は裁判所を介さず、債権者との直接交渉で手続きを行います。
個人で交渉することが難しい場合は、債務整理に慣れた専門家に相談しましょう。
任意整理は他の債務整理と比べ、手続きが比較的簡易であるため最も利用件数が多く、年間200万件前後行われているとされています。
しかし利用のハードルが低いため、容易に任意整理を選択した結果、「任意整理しなければよかった」と感じている人もいます。
任意整理を後悔しないために、ここでは任意整理をしない方がいいケースと、実際の失敗例について解説します。
任意整理は、誰にでも有効な手段ではありません。
任意整理を選択しない方がいいケースもあるため、実際に利用する際はよく検討する必要があります。
任意整理をしない方がいいケースとは、以下のような場合です。
一つずつ見ていきましょう。
任意整理で、借金を帳消しにすることはできません。
任意整理は、返済額を調整し、毎月返済していくことが大前提の方法です。
そのため、返済できるだけの定期的な収入や資産がなければ、任意整理をしても意味がありません。
もし任意整理をした上で返済が滞ると、個人再生や自己破産に進むことになります。
利用は慎重に検討する必要があるでしょう。
任意整理は将来分の利息をカットすることが基本です。
そのため、元々低金利で借り入れをしている場合、カットできる部分はそれほど多くありません。
任意整理をしても月々の返済金額がほとんど変わらなかった、という結果になることも考えられます。
カードローンの相場が15%であるのに対し、住宅ローンやマイカーローンの金利は0.5~4%程度で、低金利の部類に入ります。
任意整理で住宅ローンやマイカーローンを整理すると、それほど返済額が変わらない上に、抵当権や所有権留保の影響で、家や車を回収されてしまうリスクもあります。
任意整理は債権者との交渉がすべてですが、中には交渉に応じない業者がいることも事実です。
複数社から借り入れをしている場合、交渉に応じない業者を除いて任意整理をすることは可能です。
しかし借入先が1社である場合や、交渉に応じない業者からの借り入れが大部分を占める場合、任意整理自体が行えません。
また、任意整理を拒んでいる債権者に任意整理の話を持ちかけることで、訴訟によって一括返済や差し押さえを要求してくる可能性も考えられます。
このような場合、個人で交渉が難しいケースでも、専門家が交渉すると応じる可能性は十分あります。
困ったときは、交渉に慣れた弁護士に相談しましょう。
借入れから1年未満など、返済期間が短く返済額がほとんど減っていない場合は、任意整理に応じてもらえない可能性があります。
将来利息分が回収できなければ、債権者はほぼ無利息で貸し付けをしたことになるためです。
この場合、返済回数を重ねることで、任意整理に応じてもらえる可能性があります。
借入れ後すぐに滞納して、まったく返済していない場合も任意整理は難しいでしょう。
銀行のカードローンを利用している場合、任意整理をすることで、借入先の銀行口座が凍結される可能性が高いです。
口座が凍結されると引き落としや給与の引き出しができなくなり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
カードローンを任意整理する場合は、別でメイン口座を作っておくなど、影響が出ないようにする必要があります。
任意整理をしなければよかったと後悔するのは、具体的にどのようなときでしょうか。
ここでは、任意整理の具体的な失敗例について解説します。
個人で債権者と任意整理の交渉を行うことは非常に難しいです。
そのため、任意整理をする場合は、専門家に依頼することがほとんどでしょう。
しかし依頼した専門家との意思疎通がうまくいかず、失敗する例があります。
専門家は一般的に、依頼者の収入や借入先と借入金額をしっかりヒアリングし、任意整理で対応できるのかよく検討してから受任します。
しかし聞き取りが不十分である場合や、話がうまく伝わっていないことで、任意整理後に「実は任意整理に向かない条件だった」と発覚するケースがあります。
専門家に依頼する場合、話をしっかり聞いてくれるか、手続きは滞りなく進んでいるか、よく確認しましょう。
少しでも疑問や不信感があるなら、他の専門家と比較検討するのがいいでしょう。
借入時の金利が低い場合、利息をカットしたところで、それほど返済額が変わらないこともあります。
返済額が変わらなければ、任意整理をしても返済に困る状況は変わりません。
また、任意整理では基本的に3~5年(36~60分割)で返済する計画になります。
今までコツコツ返済していたものが、期限を決められることでかえって月々の返済額が増えることもあります。
上記のようなことを防ぐには、専門家に相談し、任意整理が妥当かどうかを事前によく調べることが大切です。
任意整理の手続きを専門家に依頼した場合、報酬が必要です。
場合によっては、カットした利息分より専門家費用が高くなることもありえます。
専門家の報酬は、債権者1社あたり3~5万円が相場です。
この他に成功報酬として、減額分の数パーセントが必要な場合もあります。
借入れ先が多いほど支払う報酬が多くなるため、依頼先はよく検討するといいでしょう。
任意整理で債権者へ交渉を行った結果、交渉がまとまらず訴訟によって、差し押さえなど強制執行をされる可能性があります。
任意整理を専門家が受任すると、支払いの催促や取り立てを止めることができます。
しかし訴訟を行うことについてまで取り決めがありません。
債権者は任意整理によって債権の回収が難しくなる前に、訴えを起こして回収しようと考える場合もありす。
訴えられれば任意整理はできません。
任意整理のメリットは、以下の通りです。
一つずつ見ていきましょう。
任意整理の大きなメリットは、将来分の利息をカットできることです。
借金問題を抱える人の多くが、利息の返済に追われて元金がなかなか減らないことに疲弊しています。
任意整理では元金の返済に注力できるため、完済の道筋が見えてきます。
利息をカットできることは、大きなメリットと言えるでしょう。
過払い金とは、払いすぎた利息のことを言います。
2010年以前に、出資法の上限金利29.2%以下の、いわゆるグレーゾーン金利で借り入れを行っていた場合、過払い金を請求できる可能性があります。
過払い金が回収できれば、借金の元金返済に充当することも可能です。
将来分の利息カットと元金充当を行えば、完済までの道のりが大幅に短縮されるでしょう。
任意整理を含め債務整理を弁護士など専門家に依頼すると、督促や取り立てを止めることができます。
貸金業法により、専門家の受任通知を受け取った後は、直接取り立てを行うことが禁止されているためです。
返済の催促に疲弊している人も少なくないでしょう。
取り立てが止まるだけでも、精神的に非常に楽になります。
任意整理に向いているのは、どのような人でしょうか。
ここでは、債務整理の中でも任意整理を選択したほうがいい人の特徴を解説します。
任意整理は、借金返済の免除はできません。
あくまでも、借金を減額して完済することが目的です。
そのため計画に沿って返済できるだけの一定の収入や資力がある人が、任意整理に向いていると言えます。
毎月の返済が難しい場合や収入がない場合は、任意整理はできません。
任意整理は、整理対象の債務を選択することができます。
保証人付きの債務を整理すると、保証人に一括請求がいく可能性があり、支払えなければ保証人も一緒に債務整理をすることも考えられます。
中には「保証人に迷惑をかけたくないので債務整理に踏み出せない」という人もいるでしょう。
そのような場合は、保証人付きの借金を対象から外して整理できるため、任意整理が向いていると言えます。
任意整理で減額できる額は、利息分に限られています。
借金の総額が多ければ、利息をカットした程度では思ったほど返済額を減額できません。
総額で200~300万円程度であれば、任意整理で対応できるでしょう。
基本的に、債務整理をしていることを周囲に知られる可能性は低いです。
しかし個人再生や自己破産は、手続きが開始されると官報にその事実が掲載されるため、知られる可能性があります。
その点、任意整理は官報に掲載されることはなく、任意整理を行っていることは、当事者と専門家以外に知られることはありません。
家族や周囲の人に知られずに借金問題を解決したい人は、任意整理を選択するといいでしょう。
任意整理をした後の生活は、どのように変わるのでしょうか。
ここでは任意整理後の生活の注意点や、疑問について解説します。
任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報として掲載され、ブラックリストに載った状態になります。
ブラックリストに載ると、クレジットカードの利用や新規発行ができなくなり、ローンを組むこともできません。
そのため、現金払いや口座振替を利用することになります。
ブラックリストは、完済後およそ5年は掲載されたままであるため、その間はローンやクレジットカードは利用できません。
住宅ローンや教育ローンの利用予定がある場合は、任意整理を行う時期や、ローン以外でお金を工面する方法を検討する必要があります。
任意整理では、財産を処分して返済する必要はありません。
家や車などの財産は手元に残るため、任意整理後も今まで通りの生活を送ることができます。
ただし、返済が滞ることがないように、生活資金の見直しは必要でしょう。
返済が行きづまると、最終的に自己破産につながる恐れもあるため注意が必要です。
任意整理を含め債務整理を行うと、仕事を辞めなければいけないと思う人もいるでしょう。
しかし、仕事を辞める必要はありません。
任意整理をしていることが会社に知られることもないため、居づらくなって転職を迫られるようなこともないでしょう。
むしろ完済するためには、仕事を続けていくことが大切です。
また、転職すると給与が下がることが少なくありません。
給与が減ると返済計画通り返済できなくなる可能性があるため、転職する場合は慎重に検討しましょう。
任意整理は法的に認められた債務整理の方法で、安心して利用することができます。
しかし任意整理には向き不向きがあるため、利用する際はご自身の状況をふまえ、慎重に検討しましょう。
任意整理しなければよかったと思っても、手続きを始めてしまえば戻すことはできません。
任意整理を検討する際は、手続きに慣れた専門家に相談することをおすすめします。