東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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法人・会社が破産すると、個人の場合よりも多くの取引先等の関係者がその影響を受けます。
たとえば、破産した会社に下請業者がいた場合は、支払が滞ってその会社も倒産してしまうことにもなりかねません。何とか回収したいと関係者は思うもの。
そうして事業所に乗り込んで、一種の取り付け騒ぎが起こることもあるのです。
そのような場合に備えて注意したいことを、ここでピックアップしておきたいと思います。
弁護士に債務整理を依頼し、破産申立に至る場合、法律上はどうなるのでしょうか?
まず、弁護士に依頼した時点で窓口は依頼を受けた弁護士になります。債務整理を依頼することになりますが、この場合、窓口が弁護士と依頼者の2つあるとすれば話が複雑になります。
ですので、委任契約を結んだ時点で、債権者の窓口は弁護士1本になるのです。
次に、破産申立をした後の話に移ります。破産申立を行い、裁判所から破産手続開始決定が出ると同時に破産管財人が選任されます。
破産者の財産の管理は全て破産管財人が行うことになります。
これは、言い換えれば「破産した場合は財産に対する処分や管理する権限が法人には無くなること」を意味します。郵便物が破産管財人の元に届くようになるのも、このことの現れです。
それでは、ここから破産した場合の財産の取り扱いの注意点について見ていきましょう。
先ほど、弁護士から債務整理開始の通知を受けた、破産したような場合は、一種の取り付け騒ぎが起こりうると説明しました。
このとき、債権者の中には、事務所にある商品を引き上げていく、またはちょっとでも回収したいがために金目のものを持ち出すこともあるでしょう。
ですが、破産した会社はもう法的整理の段階に進んでいるのであります。そして裁判所の監督下に置かれているのです。このような状況下で、会社のものを持ち出すことは、たとえ債権の回収であっても認められるものではありません。
そのような行為を行った場合は窃盗罪に該当し、刑事罰に処せられる可能性があります。
近年は会社にある物品以上に、その会社が保有するデータに価値の重きが置かれています。そのデータとはいわゆる個人情報のことです。
その会社にはどのような顧客があり、その顧客のどのような情報を把握しているのか、それを同業他社に持って行けば大きな利益となるでしょう。
また、債権の回収ができないのでやけくそになって、そのようなものを奪っていく債権者も出てくるでしょう。
このような行為も、決して法的に認められるわけではありません。窃盗罪や器物損壊罪に該当する可能性があるのは上述の①の場合と同様です。
ここまで、会社の財物や個人情報等のデータの持ち出しについて見てきました。これらの行為は、破産した会社の代表者や従業員が行うことも当然認められません。
会社の経営者でしたら、自分の会社のものだから、自分が株主だからと言いたくなるのでしょうが、破産して法的整理に入ったということは管理処分する権限が法律上他人に移ったことを意味します。
このような行為をすることは刑事罰に触れるだけでなく、破産するに際し財産を隠したとの評価を受け、免責が認められない可能性が出てきます。
破産手続きが完了すると、法人が持っている財産・資産はすべてなくなります。
破産の流れは、まず資産をお金に換えて、負債を返済していきます。
すべての資産で支払いが終わって、もし負債が残ったとしても、その負債はチャラになります。
なぜかというと、破産をすると法人が完全に消滅するため、法人にかけていた負債もなくなら。
個人破産の場合は「これは手放なくてもいいよ」という自由財産が認められています。
法人の場合は破産したら完全に終わりですが、個人の場合は破産したあとも生活があるので、生活に必要な資産は保持できます。
具体的には99万円以下の現金・年金・生活保護給付受給権など。
法人の破産でよくある疑問が「代表者の資産も没収されるのか?」だと思います。
基本的には法人が破産しても、代表者の資産は没収されません。
なぜなら法律上、会社と個人は完全に別物だと扱われるからです。
基本的には法人が破産しても、代表者の資産は没収されませんが、例外もあります。
それは代表者が会社の連帯保証人になっているケース。
連帯保証人とは借金が払えないときに、肩代わりしなければいけない役割です。
中小企業だと、代表が会社の保証人になっていることもあります。
もし自分が会社の代表者で、連帯保証人になっている場合は、会社の負債を払わなければいけません。
家族で会社を経営している場合、会社が破産したら家族の資産を没収されるか、気になりますよね。
基本的には法人・個人(家族を含む)は法律上別の扱いになるので、資産は没収されません。
なので経営者の妻・夫だからといって、破産しても資産はなくならないです。
ただ家族が会社の保証人になっている場合は、負債の返済義務が発生するので、注意しましょう。
これまで、法人会社の破産の場合における財産上の取り扱いについて見てきました。連鎖倒産を防ぐために、破産した会社に来て回収したい気持ちはわかりますが、法的整理に入った以上は許されない行為です。
他方で自分のものだからという意識も最早認められないということも経営者側は自覚すべきです。法的な不利益処分を受けないためにも、財産の取り扱いには注意しましょう。