東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
法人破産は、個人の自己破産と比較しても、債権者が金融機関や消費者金融に限られず、取引先や従業員が関係してきますので、自分自身で手続きを行うことは困難です。
また破産手続は、裁判所へ申立てを行わなければなりませんから、法的知識も必要です。
実際、法人破産のほとんどは、弁護士が依頼を受けて申立て手続きを行っています。
ですから、法人破産の手続きを弁護士へ依頼する場合、その報酬費用が必要になりますし、その他にも裁判所へ支払う費用が発生します。
本記事では、法人破産の際に必要となる弁護士報酬を含めた費用と、弁護士費用が捻出できない場合の対処方法について解説していきます。
Contents
法人破産とは、債務超過や経営状態の悪化によって、事業を継続することができなくなった場合に、法人の資産と債務を整理清算し、会社そのものを消滅させる法的な手続きのことです。
法人の債務整理には、法人破産と同じく清算型の手続きとして「特別清算」、清算型ではなく事業継続を目指す手続きとして「会社更生」「民事再生」、また裁判所へ申立てを行わない「任意整理」という方法もあります。
会社の債務整理の手続きとしては、法人破産が最も一般的なものとなります。
法人破産は、裁判所へ申立てを行って、会社を消滅させる手続きですが、主な流れとしては以下のようになります。
法人破産の際には、大きく分けて4つの費用がかかります。
それぞれの費用について、順に説明していきましょう。
法人破産の手続きは、法的知識が必要ですし、ほとんどのケースで弁護士へ依頼することになります。
法人破産を弁護士へ依頼する場合、着手金という弁護士費用が発生します。
この着手金の支払いをもって、弁護士が依頼された法人破産の手続き業務をスタートしますので、最初に必要となる費用です。
法人破産の着手金については、いくらという規定があるわけではありませんので、弁護士事務所によって異なりますが、法人の規模や債権者数などによっても変動します。
一般的な中小規模の企業の破産の場合では、50万円~150万円程度が相場となっています。
弁護士費用として、他にも出張費や通信費、事務費などの実費が請求されますが、成功報酬額は基本的に発生しません。
裁判所へ法人破産の手続きを申立てると、裁判所は会社の資産・債務の整理を行う管財人を選任します。
この管財人には、手続きを依頼した弁護士とは異なる別の弁護士が選任されます。
この管財人は、裁判所から報酬を受けているわけではなく、またボランティアでもありません。
ですから、管財人の報酬は申立てを行った側が負担することになります。
管財人の報酬額は、法人の資産状況や換価業務量、その他事務業務量に応じて、手続き終了時に裁判所が決定します。
法人に現金化できる資産が残っていた場合は、そこから管財人の報酬を支払うことが可能ですが、現金化できる資産が一切なかったという場合もあります。
そうなると、管財人は報酬を受け取ることができなくなってしまうので、申立て時点で予め最低限の報酬額を確保しておく必要があります。
この最低限の報酬額が、引継予納金と呼ばれるものです。
何故、引継予納金と呼ぶかというと、破産事件を管財人に引き継ぐために、予め納めておく現金だからです。
引継予納金の額は、申立て時に裁判所が法人の規模、資産、債権者数などから判断し決定します。
通常の管財事件の場合、この引継予納金は最低70万円の納付が必要です。
ですが、東京地方裁判所を始め、少額管財事件を認めている裁判所で、少額管財事件とされた場合は、20万円の予納金で済みます。
法人破産を裁判所へ申立てるための申立手数料などが必要です。
申立手数料や、連絡用の郵便切手代は、裁判所によって多少異なりますが、東京地方裁判所の場合は、以下の金額が必要です。
官報とは、国の新聞のようなもので、法人破産の場合、債権者保護を目的に破産手続の開始があった旨を掲載しなければなりません。
中小規模の会社の場合、会社が借金する時に代表者個人が連帯保証人となることは、よくあります。
そのような状況で、法人破産の手続きを行った場合、会社の債務は連帯保証人である代表者個人に請求されることになります。
ですから、代表者個人が会社の債務を連帯保証している場合は、代表者個人も自己破産手続を行う必要があります。
法人破産と合わせて、代表者個人の自己破産手続を進める場合は、法人破産の手続きに関する弁護士依頼費用に加えて、個人の破産手続の弁護士依頼費用も必要となりますので、ご注意ください。
法人破産手続を進める際に、弁護士から自己破産の必要性についてヒアリングされますので、状況を説明し、相談するようにしましょう。
法人破産する際に、弁護士へ手続きを依頼する場合、50万円以上の費用が必要になります。
もちろん、会社の規模や資産状況、債権者の数によって異なりますし、弁護士事務所によっても異なります。
この弁護士費用を、破産手続きの書類作成や手続きの代行の対価と考えた場合、高いと思う人もいるかもしれません。
ですが、弁護士へ依頼することで得られるメリットを考えて総合的に判断する必要があります。
少額管財が適用された場合、引継予納金は通常の最低70万円以上という額から、20万円に下がります。
この少額管財が適用される条件のひとつに、「弁護士が代理人になること」というものがあります。
これは、手続きをよく把握している弁護士が代理人ならば、手続きに不慣れな個人が手続きを行うよりも、破産手続きが迅速に進められるからです。
ですから、少額管財の適用を受けられるのであれば、弁護士へ依頼した方が金額的にもお得ということになります。
弁護士へ破産手続きを依頼すると、弁護士から各債権者へ受任通知というものが送られます。
これは、弁護士が会社から正式に依頼を受けたという通知になりますが、この通知の送付後、債権者からの問い合わせや催促は、すべて弁護士宛とすることができますので、会社で対応してなくてよくなります。
法人破産の場合は、金融機関だけではなく、馴染みの取引先から債権の取り立てを受けることになりますので、これを弁護士へ依頼せず、代表者個人または会社の従業員が対応することは、精神的にもキツイです。
例え、弁護士費用を節約したとしても、会社の資産すべてが換価され、債権者へ配当されることになりますので、会社には何も残すことができません。
それよりも、余力のあるうちに、弁護士へ依頼し、破産手続きを円滑に進めることの方が大切です。
50万円といった費用額だけに固執せず、幅広くメリットについても考えましょう。
法人破産する場合、当然会社にお金はありませんから、弁護士費用が払えないというケースもあります。
そのような場合、どんな対処ができるでしょうか。
法人破産では、確かに弁護士費用も必要ですが、裁判所への引継予納金も必要になります。
また、裁判所で少額管財事件として扱われない場合は、最低予納金は70万円です。
弁護士費用が50万円としても、予納金70万円を足すと、120万円は最低必要になります。
個人資産であれば高額に感じるでしょうが、法人が抱える負債を帳消しにする手続きですから、この金額を捻出できないところまで会社を継続しても、会社を立て直すのは難しいでしょう。
ですから、弁護士費用が捻出できない場合の対処ではありませんが、そういった事態になる前、会社に余力があるうちに冷静に判断することが重要となります。
弁護士に依頼する費用を捻出できないのに、何故弁護士にするのかと疑問に思うでしょう。
ですが、結局のところ、法人破産において弁護士へ依頼する方が得なのです。
法人破産の引継予納金は、少額管財となれば、通常最低70万円のところ、20万円になります。
すべての裁判所で適用されるものではありませんが、東京地方裁判所はじめ多くの裁判所で適用できます。
この少額管財の適用を受ける条件は、弁護士が代理することです。
弁護士費用50万円が捻出できず、代表者自身が手続きを行った場合、通常管財事件として扱われますので、予納金は最低70万円必要です。
同じ会社が弁護士に依頼した場合、弁護士費用は50万円必要ですが、少額管財が適用されると予納金20万円となりますので、合計70万円となります。
つまり、弁護士へ依頼しても、しなくても合計額に大きな差が出ないということになります。
また、弁護士へ依頼する時点で、弁護士へ支払う報酬額を用意できない場合でも、分割に応じてくれる弁護士事務所もありますし、未回収の売掛金などの債権があれば、それを回収して弁護士費用に充当することができます。
ですから、弁護士費用を準備することができないから、弁護士へ相談しても仕方がないと判断せずに、費用を捻出する方法は弁護士も一緒に考えてくれますので、まずは相談することをおすすめします。
法人破産の手続きには、ある程度の費用が必要だということは理解いただけたでしょうか。
ですから、会社の資金繰りが完全に行き詰ってしまう前に、弁護士へ相談することをおすすめします。
早期に弁護士へ相談しても、必ず法人破産しなければならないということはありませんし、任意整理や民事再生といった別の方法で会社をたたむことができる場合もあります。
また、最近ではM&Aなどの事業引継ぎ、事業承継によって、債務を整理できる可能性もありますので、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
破産手続を先延ばしにしてしまうと、新たな借入金をつくったり、債権者が増えたりします。
そうなると、法人破産する際には余計に費用がかかることになります。
法人破産しか道がないような場合でも、余力を残した状態で計画的に弁護士へ相談しましょう。
法人破産には、裁判所へ支払う「引継予納金」「申立手数料」のほかに、破産手続きを依頼する弁護士費用が必要です。
弁護士費用は、相場としては50万円以上必要となりますが、少額管財の適用や、債権者からの取り立てストップなど、費用以上のメリットもあります。
法人破産で、そういった費用を捻出できないという場合でも、まずは弁護士へ相談してみることをおすすめします。
また、法人破産にかかる費用を意識しながら、会社に余力のある段階で、弁護士へ相談するようにしましょう。