

東京弁護士会所属。
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破産財団に属する不動産は、開始決定後に破産管財人に管理権限が移り、管財人が売主となります。
通常の不動産売買との大きな違いは、裁判所の許可や担保権者である金融機関との価格交渉を経て換価が進む点です。
所有する不動産は資産になる一方で、破産時には他者に奪われる不安を抱える原因になる場合も少なくありません。
本記事では、この手続きの特徴や流れ、必要書類、売却できない場合の扱いまでを詳しく解説します。
Contents

破産開始決定により、不動産の管理・処分権は破産管財人に帰属します(破産法78条1項[注1])。
以降、所有者自身による契約や処分はできません。
売却は競売ではなく任意売却が選ばれるケースが多く、管財人が売主となる点で通常の不動産売買と異なります。
自己破産の開始決定後、不動産は破産財団に属し、所有者自身が自由に処分できなくなります。
管理処分権を持つのは破産管財人ですが(破産法78条1項[注1])、管財人も裁判所の許可なく自由に売却できるわけではありません。
価格や条件について事前に裁判所の許可を得る必要があります。
財産を換価し、債権者への配当原資を確保するのが管財人の任務であり(同法83条等[注1])、親族への不当な安値処分などには一切応じません。
客観的な市場価値での売却を追求する厳格な性質があるため、弁護士が独自の市場査定を用意し、売却活動を適正に牽制します。

不動産の換価方法は破産法184条[注1]に定められていますが、実務では競売より任意売却が選ばれやすい傾向にあります。
競売では市場価格の6割から8割程度まで価格が下がりやすいです。
一方で任意売却であれば市場価格に近い金額での売却が期待でき、債権者への配当原資も確保しやすくなります。
売却条件や引渡し時期も調整しやすく、抵当権抹消料や引越し費用を売却代金から控除する交渉の余地も生まれます。
任意売却は、担保権消滅許可制度(同法186条等[注1])とは異なり、担保権者である金融機関の同意が前提となる点に注意が必要です。
破産管財人が行う不動産売却と通常の不動産売買の主な違いは以下の3点です(破産法78条2項等[注1])。
順に解説します。
破産管財人は、不動産など重要な財産を自由に売却できません。
売却には裁判所の許可が必要であり(破産法78条2項1号[注1])、許可のない売却は法律上、無効です。
許可制度は、破産財団の適正な換価と債権者全体の利益確保を目的としています。
裁判所は、複数の不動産業者による査定書や担保権者の同意書の有無を確認したうえで許可を判断します。
価格の妥当性を論理的に示す許可申請書の作成は、円滑な売却を行うためのカギです。
契約不適合責任とは、旧法の瑕疵担保責任にあたります。
引渡し後に雨漏りや設備の故障、説明と異なる状態が見つかった場合に、売主が補修や代金減額の責任を負う制度です(民法562条等[注2])。
しかし、一般的に破産管財人は、契約不適合責任を一切負わないよう完全免責特約を付けます。
物件の使用者本人ではなく、破産財団を換価して速やかに配当を実現する立場にあるためです。
契約書に免責文言が過不足なく盛り込まれているかは、弁護士が精査します。
通常の不動産売買では、契約日から決済日を1~2カ月ほど空けるケースも珍しくありません。
しかし、破産管財人による売買では、契約・決済・引渡し・登記を同日に行う運用が一般的です。
同日に行うのは法律上の要件ではなく、破産財団の換価を迅速かつ確実に進め、途中で権利関係を不安定にしないために行う実務上の工夫です。
決済当日は担保抹消書類の準備や金融機関との細かな段取りが重要となるため、弁護士が他士業と密に連携し、進行を管理します。

不動産の売却は、買主との合意だけでは完結しません。
査定や売却活動、担保権者との調整を経たうえで、裁判所の許可を得て初めて、契約・決済・引渡しへ進む2段階の流れをたどります。
以下で各ステップを解説します。
自己破産で売却対象となる不動産には、住宅ローンなどの抵当権が付いているケースが多く見られます。
抵当権者は他の債権者に先立って弁済を受ける立場にあるため、任意売却を進めるには抵当権者との交渉が欠かせません。
資産価値がローン残高を下回るオーバーローンの状態では、抵当権を抹消してもらえるかどうかが交渉の焦点です。
結果次第で任意売却が成立するか、競売へ移行するかの見通しが大きく変わります。
同意が得られれば任意売却を進め、得られない場合は担保権消滅許可の制度(破産法186条1項)[注1]の活用が問題となります。
裁判所の許可(破産法78条2項1号[注1])が下りると、破産管財人が売主となり買主との間で売買契約を締結します。
契約後は、代金決済、物件の引渡し、所有権移転登記、抵当権抹消登記を同日にまとめて進めるのが一般的です。
売買代金は担保権者への配当や破産財団への組入れに充てられ、債権者への清算原資となります。
許可から決済までは2週間から3週間程度と短く、期間内に家財道具の搬出を終え、空室の状態で引き渡す準備を整えなければなりません。
弁護士がいれば、事前に引渡し猶予期間や引越し費用の控除について、管財人や担保権者と合意を取り付けます。
破産管財人が売却を試みても、立地や利用価値、権利関係などにより売却が難しい不動産は破産財団から放棄される可能性があります。
以下で、売却が難しい不動産の具体例と、破産財団から放棄されるケース(破産法78条2項12号[注1])について解説します。
売却が難しい不動産には、いくつかの傾向があります。
立地の面では、山林や原野など利用価値が乏しい土地は買主が付きにくい場合があります。
また、建物の面では、老朽化が進んだ物件や再建築が難しい土地も敬遠されがちです。
費用負担の面では、管理費や解体費がかさむ物件は、購入後に追加の出費を招くため避けられやすい傾向にあります。
権利関係の面では、共有不動産は自由に活用しにくく、査定額が管財人の手数料や登記費用を下回るケースも珍しくありません。
換価しても実質的な配当が見込めないため、放棄の対象となりやすくなります。
換価の見込みが乏しく、財団に残しても債権者全体の利益になりにくい不動産は、破産管財人による放棄が検討されます(破産法78条2項12号等[注1])。
ただし、売れにくい不動産がすべて直ちに放棄されるわけではなく、事案によっては競売へ移行する場合もあります。
放棄されると所有権は自分に残ります。
しかし、住宅ローンなどの担保権も抹消されないため売却はできず、固定資産税や管理費だけが将来にわたって請求され続けます。
売却できず負担だけが残らないよう、換価の見込みが乏しい不動産については申立て前から弁護士に相談し、対応方針を整理しておきましょう。
破産手続開始後は、所有者本人に不動産の処分権がないため、通常の売買とは異なり破産管財人に関する書類が必要です。
住所変更登記や抵当権抹消登記が生じる場合は、さらに追加の書類も求められます。
以下で詳細を解説します。
売主側で準備する主な書類は、次のとおりです。
書類は発行から3カ月以内であるかが実務上厳しく確認され、決済日から逆算した取得時期の調整が欠かせません。
また、登記識別情報(権利証)は、処分権が管財人に専属するため、管財売却では提出不要の特例があります。
住所変更や抵当権抹消を伴う場合は、追加の証明書類も必要となり、弁護士が司法書士と精査します。
買主側の必要書類は、次のとおりです。
【個人】
・住民票
・本人確認資料
・実印または認印
【法人】
・会社謄本(1カ月以内)
・本人確認資料
・法人の実印または認印
会社謄本は発行から1カ月以内かが確認され、同日決済に向けて本人確認や書類の照合が厳格に行われます。
不備があると決済全体が滞るため、事前の準備が重要です。
[注1]破産法/e-Gov
破産法
[注2]民法/e-Gov
民法
自己破産における不動産売却は、破産管財人が売主となり、裁判所の許可や担保権者との調整を経て進みます。
競売より価格や条件を柔軟に決めやすい任意売却が選ばれやすく、裁判所の許可、契約不適合責任の免責、同日決済の点で通常の売買と異なります。
売却が見込めない物件は放棄される恐れもあり、書類の準備や期限の管理も欠かせません。
不動産の状況によって最適な対応は変わるため、申立て前から弁護士に相談し、方針を整理しておくと安心です。
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