東京弁護士会所属。
破産するということは社会的な信用や財産を失うと恐れている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、早期的に適切な手段で破産を行えば、多くの場合、少ないダメージで済みます。
経営が悪化している状況の中で、交渉ごとを本人でまとめようとすることは非常に大変です。
誰にも相談できないと思わずに弁護士に破産手続きを依頼することで、心身の負担を減らすことができます。
一日でもはやく立ち直るためにも、お気軽に弁護士にご相談ください。
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破産管財人が行う任意売却は、通常の任意売却とは異なります。
通常の任意売却は、債務者が売主になって自分の意思で不動産を市場で売ることです。
しかし、不動産の所有者が自己破産した場合は、裁判所の手続きによって破産管財人が選任されることがあります。
破産管財人は、破産申立人の財産の、管理・調査・評価・換価・処分を行います。
破産管財人は、自己破産に精通した弁護士が選ばれるのが通常です。
破産管財人は、債務者の不動産を少しでも高い金額で売却し、自己破産した債務者の債権者に対して、金銭を配当することが仕事になります。
この場合、買主を探したあと売買を成立させるためには、債権者(担保権者)に売買価格からいくら配当するかを交渉しなければなりません。
買主との交渉と、債権者との交渉の両方が成立して初めて、任意売却が成立することになります。
自己破産した場合、債務者の所有する不動産は、破産財団に属することになります。
債務者は不動産を含む財産の処分が自由にできなくなります(破産法78条1項)。
破産者の不動産は、破産管財人が処分権者となりますが、破産管財人も自由に売却することはできません。
裁判所の許可を受けて、債権者と交渉の上、売却することになります。
不動産に担保権が付いている場合、他の債権者より担保権者の権利が優先します。
担保権者は、競売などによって自ら担保権を実行し、破産管財人の意思に関わらず、その不動産を換価して配当を受けることが可能です。
破産管財人が任意売却をする場合、各担保権者に配当するとともに担保権抹消の依頼をします。
この際、配当を受けられない担保権者が、担保権解除料(ハンコ代)を請求してくる場合があります。
不当に高額な担保権解除料を請求された場合、または、債権者との配当交渉が難航する場合、破産管財人は、裁判所に対して担保抹消請求を行うことが認められています(破産法186条)。
第百八十六条
破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法若しくは会社法の規定による留置権をいう。以下この節において同じ。)が存する場合において、当該財産を任意に売却して当該担保権を消滅させることが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、当該財産を任意に売却し、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める額に相当する金銭が裁判所に納付されることにより当該財産につき存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる。ただし、当該担保権を有する者の利益を不当に害することとなると認められるときは、この限りでない。
担保抹消請求後、1カ月以内に対抗措置がなければ請求は認められ、担保権抹消登記が可能になります。
その後、破産管財人は任意売却による売買契約を成立させることができます。
破産手続き中の法人が不動産を売却する場合の所有権移転登記に必要な書類は、以下のようになります。
破産手続き中は、売主本人には処分権がないため、破産管財人についての書類が必要です。
なお、破産者の登記識別情報は不要です。
住所変更登記、抵当権抹消登記がある場合は、それぞれの書類が追加で必要になります。
まず、売却側の必要書類は次の通りです。
売主側の必要書類
また、上記に加えて、住所変更登記がある場合は会社謄本、抵当権抹消登記がある場合は、抵当権者の抹消委任状、抵当権者の資格証明書(3カ月以内、抵当権者の会社法人番号を記載した場合不要)が必要になります。
次に買主側の必要書類は、個人と法人で異なります。
買主側(個人)の必要書類
買主側(法人)の必要書類
破産中の会社が所有不動産を売却するときの手続きの流れと、必要書類について解説します。
破産手続き開始決定があったら、裁判所書記官は職権で破産手続きの開始登記を嘱託します。
この時点で、債務者の所有する不動産は、破産財団に属することになります。
以後、破産管財人が破産者の不動産の処分権者となり、破産中の会社に代わって売却手続きの当事者となります。
また、担保権者の同意が得られるケースと、同意が得られないケースで対応が異なります。
それぞれのケース別に説明します。
破産会社の所有不動産にかかる担保権者の同意が得られるケースでは、破産管財人が裁判所の許可を得て「任意売却」を進め、売却代金を各担保権者に配当することになります。
以下、手続きの流れと必要書類を説明します。
まず、破産管財人は不動産の査定をして、不動産の各担保権者に「任意売却」による売却価格、配当額について相談をします。
各担保権者の同意が得られたら、破産管財人は、破産管財人が不動産の売却と配当の計画を取りまとめ、裁判所の許可を得ます。
裁判所の許可が得られたら、次に破産管財人は売却手続きを進めますが、実際の売却手続きは、破産管財人が専門の不動産会社に依頼することが多いです。
買主が見つかったら、破産管財人名義で買主との間で売買契約を行います。
この際、所有権移転登記と抵当権抹消登記のため、上述の書類が必要になります。
不動産の引渡しと決済が終わったら、売買代金について各担保権者に優先的に配当を行います。
各担保権者に配当後、残代金があれば破産財団に組入れられることになります。
手続きの際に必要な書類は下記です。
担保権者の同意が得られるケースの必要書類
担保権者が、任意売却による売却価格、配当額に同意しなかった場合、担保権消滅請求制度を利用して任意売却を行うことが可能です。
その場合は、各担保権者と協議を行った後、次のような流れになります。
まず破産管財人が裁判所に対し、担保権消滅許可の申し立てを行うことを裁判所が許可する旨を担保権者に通知します。
1カ月間の対抗措置期間が何事もなく経過すれば、売却手続きを進めます。
なお、担保権者には競売を申し立てる権利や、破産管財人の代わりに任意売却を行う権利が認められています。
売買契約が成立し、引渡し・決済時には、買主は財団組入れ額を破産管財人に、残りを裁判所に支払うことになります。
最終的に裁判所が、代金受領と同時に担保権の抹消登記を嘱託し、各担保権者に配当することになります。
手続きに必要な書類は担保権者の同意が得られるケースと同様です。
担保権者の同意が得られないケースの必要書類
民事再生手続き中の会社が、所有不動産を売却する場合の流れと、必要書類についてケース別に解説します。
監督委員および管財人等が選任されていないケースであれば、通常の任意売却手続きと変わりません。
必要な書類は下記になります。
監督委員および管財人等が選任されていないケースの必要書類
監督委員が選任されている民事再生手続き中の会社が、所有不動産を売却するケースの流れと必要書類について解説します。
管財人が選任されているケースは、破産中の会社の場合と同様ですので、そちらを参照してください。
不動産の売却について、監督委員の同意を得ます。
もし、不動産の売却が監督委員の同意が必要な行為として指定されていなければ、同意は不要です。
次に裁判所の許可が必要な場合、許可を得たあと、各担保権者の同意を得ます。
同意が得られたら、売却手続きを進め、売却代金を各担保権者に配当します。
手続きに必要な書類は下記です。
監督委員が選任されているケースの必要書類
破産手続きが開始されたら、債務者の財産の所有権は破産財団に移ります。
破産財団の財産は破産管財人が管理し、売却処分を行って、債権者へ配当することになります。
不動産については、担保権者がいるため、原則は担保権者の権利が優先し、担保権者が独自に競売にかけて配当を受けることも可能です。
破産管財人も、担保権者を無視して不動産を売却することはできません。
破産者の不動産を売却するには、まず裁判所の許可を得てから、各担保権者に任意売却の相談をすることになります。
各担保権者の同意が得られたら、破産管財人名義で買主と売買契約を結び、代金を各担保権者に配当します。
残りがあれば破産財団に組み入れます。
登記に必要な書類は、破産管財人の書類と、裁判所の売却決定許可書です。
各担保権者の同意が得られない場合は、担保権消滅許可制度を利用することもできます。
この場合、一定の条件の下、裁判所が担保権を消滅させ、破産管財人は任意売却することができるようになります。